72 / 73
72話
しおりを挟む
板挟みのような状況で、もう八方塞がりだ。
ピリピリとした空気感に押しつぶされそうで、会わせたことを早くも後悔している。
なんでこんなに初見で仲悪いんだ……? もしかして俺の知らないところでコンタクトがあったのだろうか……。にしてもこんな雰囲気になるか?
ヤバい、怖い。
「それで、渚くんは私たちを会わせて何をさせたいの?」
無言の空気に耐えきれなくなったように、日夏が俺に言う。
「一応、仲良くなってもらえたらなあ、って……あはは」
「多分無理じゃないかしら?」
ですよねー。
即答する瞳さんに同意しそうになったのを堪えて、俺は慌てたように話す。
「ほ、ほら。まだ会ったばかりですし、しゅ、趣味とかを話せば!」
三人とも思案顔になる。
次は代表して花ちゃんが、日夏と瞳さんを見ながら嫌々、といった表情で切り出す。
「ご趣味のほどは……?」
いや、言い方ァ。気まずくなったお見合いかよ! いや、前者に関してはあってるわ。
「音楽が好きわね」
「あ、私も好きですね」
三者ともに頷く。
よし! 良い感じ!
「どんなジャンルのを聴くの?」
瞳さんが聞く。ここで声が重なればもう友達だろ。
そう願う。
三人は顔を見合わせて一斉に言う。
「ロック」「クラシック」「J-POP」
「……oh」
見事にバラバラである。
ロックが花ちゃんで、クラシックが瞳さんで、J-POPが日夏である。
三者三様……だけど、今に関しては間が悪い。
再び無言へと陥る。
くっ、まだ手はあるはず!
「す、好きな食べ物とかはどうです!?」
もう自棄糞に言う。合コンみたいだけどしゃーないよ!
「スイーツが好きだよ」
「私も好き」
「嫌いではないわね」
ふむふむ、良い調子だ。やはり女子はスイーツだな。
「大通りにあるカフェ、Finとかオススメですよ」
「へぇ、今度行ってみようかしら」
「どんなメニューあるの?」
「うーん、パンケーキとかパフェとか色々あるけど、特にオススメはパンケーキかな」
オススメの店を口にした花ちゃんを発端に、盛り上がる女子陣。
よしよし、良いぞ……! 俺は空気と化してるけどいいぞぉ!
「なぎくんはカフェとか行く?」
盛り上がる女子陣をほっこりしながら見ていると、俺にも話題を振ってくる。
そうだなあ、
「たまに行くかな。でも、あんまりオススメとかわかんないから、適当にレビューとか見て行く」
女子の間で知られるニッチなカフェとか知らんし。スイーツ自体は普通に好きだからたまに行くくらいだなあ。
あとは、カフェにいる人のほとんどは女性だから肩身狭いんだよ……。
わかるか? 男一人で行った時のお前はお呼びじゃねぇんだよ感。実際には言ってないにしろ、そういう雰囲気を感じる。
すると、何の気なしに花ちゃんが場に着火した爆弾を注いだ。
「じゃあ、今度二人で行こうよ。オススメ紹介するよ?」
「おぉ、いいね────ひぃっ!」
良い提案だと思ったから同意を示した瞬間、日夏と瞳さんの二人からまるで射殺さんと言わんばかりの表情で俺を見た。
いや、何故に!?
「じゃあ、私とも行けるよね?」
「ワタシも行くわよ」
厳しい目付きのまま、有無を言わさず口調で言う。
「じゃあ、4人で行けばいいじゃん……」
「「「は?」」」
「すみません、なんでもないです」
何も言えないよ俺。
あっれぇ、おかしいなあ。暖房効いてるはずなのに冷や汗が止まんねぇや。
女子って怖い。
互いを牽制するような目付きで睨み合う。先程までの朗らかな雰囲気は完全に霧散。俺の作戦は徒労に終わった。
「あのぉ、他に話すことは……」
「ないよ」
「ないわ」
「ないね」
くそっ! アカン。このままでは何の得るものないまま終わっちまうぞ!
ぬぅ、この三人の共通の事柄……思い付かないな……。
てか、今更だけど学園三大姫が揃ってね? なかなか豪華なメンバーだな。雰囲気最悪だけど。
共通の知り合いも俺しかいないだろうし…………ん? 俺しか? 俺がいるじゃん。
くっ、恥ずかしいけど仕方ない。
ええい! ままよ!
「そ、その。三人の中で俺ってどういう立ち位置だと思う?」
すると、三人の目の色が変わった。牽制から焦りへと変わり、緊迫した時間が流れた。
え、そんなに考えることか。
「……なぎくんは先に帰ってて。あとは仲良くなるから」
ふいにそんなことを言われる。
「な、なんで?」
「女子会よ。男子がいたらダメでしょう」
合わせたように瞳さんがフォローする。いや、さっきの雰囲気で女子会もくそもないと思うんだけど。
……まあ、任せるしかないか。
邪魔って言われてるんだろう。従うしかない。
仲良くなれますように、と一縷の望みをかけて俺はその場を離れた。
嫌な予感しかしない……。
ピリピリとした空気感に押しつぶされそうで、会わせたことを早くも後悔している。
なんでこんなに初見で仲悪いんだ……? もしかして俺の知らないところでコンタクトがあったのだろうか……。にしてもこんな雰囲気になるか?
ヤバい、怖い。
「それで、渚くんは私たちを会わせて何をさせたいの?」
無言の空気に耐えきれなくなったように、日夏が俺に言う。
「一応、仲良くなってもらえたらなあ、って……あはは」
「多分無理じゃないかしら?」
ですよねー。
即答する瞳さんに同意しそうになったのを堪えて、俺は慌てたように話す。
「ほ、ほら。まだ会ったばかりですし、しゅ、趣味とかを話せば!」
三人とも思案顔になる。
次は代表して花ちゃんが、日夏と瞳さんを見ながら嫌々、といった表情で切り出す。
「ご趣味のほどは……?」
いや、言い方ァ。気まずくなったお見合いかよ! いや、前者に関してはあってるわ。
「音楽が好きわね」
「あ、私も好きですね」
三者ともに頷く。
よし! 良い感じ!
「どんなジャンルのを聴くの?」
瞳さんが聞く。ここで声が重なればもう友達だろ。
そう願う。
三人は顔を見合わせて一斉に言う。
「ロック」「クラシック」「J-POP」
「……oh」
見事にバラバラである。
ロックが花ちゃんで、クラシックが瞳さんで、J-POPが日夏である。
三者三様……だけど、今に関しては間が悪い。
再び無言へと陥る。
くっ、まだ手はあるはず!
「す、好きな食べ物とかはどうです!?」
もう自棄糞に言う。合コンみたいだけどしゃーないよ!
「スイーツが好きだよ」
「私も好き」
「嫌いではないわね」
ふむふむ、良い調子だ。やはり女子はスイーツだな。
「大通りにあるカフェ、Finとかオススメですよ」
「へぇ、今度行ってみようかしら」
「どんなメニューあるの?」
「うーん、パンケーキとかパフェとか色々あるけど、特にオススメはパンケーキかな」
オススメの店を口にした花ちゃんを発端に、盛り上がる女子陣。
よしよし、良いぞ……! 俺は空気と化してるけどいいぞぉ!
「なぎくんはカフェとか行く?」
盛り上がる女子陣をほっこりしながら見ていると、俺にも話題を振ってくる。
そうだなあ、
「たまに行くかな。でも、あんまりオススメとかわかんないから、適当にレビューとか見て行く」
女子の間で知られるニッチなカフェとか知らんし。スイーツ自体は普通に好きだからたまに行くくらいだなあ。
あとは、カフェにいる人のほとんどは女性だから肩身狭いんだよ……。
わかるか? 男一人で行った時のお前はお呼びじゃねぇんだよ感。実際には言ってないにしろ、そういう雰囲気を感じる。
すると、何の気なしに花ちゃんが場に着火した爆弾を注いだ。
「じゃあ、今度二人で行こうよ。オススメ紹介するよ?」
「おぉ、いいね────ひぃっ!」
良い提案だと思ったから同意を示した瞬間、日夏と瞳さんの二人からまるで射殺さんと言わんばかりの表情で俺を見た。
いや、何故に!?
「じゃあ、私とも行けるよね?」
「ワタシも行くわよ」
厳しい目付きのまま、有無を言わさず口調で言う。
「じゃあ、4人で行けばいいじゃん……」
「「「は?」」」
「すみません、なんでもないです」
何も言えないよ俺。
あっれぇ、おかしいなあ。暖房効いてるはずなのに冷や汗が止まんねぇや。
女子って怖い。
互いを牽制するような目付きで睨み合う。先程までの朗らかな雰囲気は完全に霧散。俺の作戦は徒労に終わった。
「あのぉ、他に話すことは……」
「ないよ」
「ないわ」
「ないね」
くそっ! アカン。このままでは何の得るものないまま終わっちまうぞ!
ぬぅ、この三人の共通の事柄……思い付かないな……。
てか、今更だけど学園三大姫が揃ってね? なかなか豪華なメンバーだな。雰囲気最悪だけど。
共通の知り合いも俺しかいないだろうし…………ん? 俺しか? 俺がいるじゃん。
くっ、恥ずかしいけど仕方ない。
ええい! ままよ!
「そ、その。三人の中で俺ってどういう立ち位置だと思う?」
すると、三人の目の色が変わった。牽制から焦りへと変わり、緊迫した時間が流れた。
え、そんなに考えることか。
「……なぎくんは先に帰ってて。あとは仲良くなるから」
ふいにそんなことを言われる。
「な、なんで?」
「女子会よ。男子がいたらダメでしょう」
合わせたように瞳さんがフォローする。いや、さっきの雰囲気で女子会もくそもないと思うんだけど。
……まあ、任せるしかないか。
邪魔って言われてるんだろう。従うしかない。
仲良くなれますように、と一縷の望みをかけて俺はその場を離れた。
嫌な予感しかしない……。
21
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる