恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸

文字の大きさ
上 下
71 / 73

71話

しおりを挟む
「寒いな……」

 薄く草や土に霜が張っていて、その寒さが窺い知れる。11月の下旬に差し掛かりそろそろ初雪が降るだろうと思う。
 早い時には10月に降るはずの雪だが、今年は少し遅いようだ。
 その冬の知らせに今年の終わりも見えて、なんだか色々あったなあと思い返す。

 前当主を救出したのが二週間前で、あれから『若草組』は取り潰されて、平和が訪れていた。
 組員をどういう処遇にしたかは……聞きたくないな。とはいっても、前当主が残虐だというのは噂でしかなかったようなので、そこまで酷いことはしてないだろう。
 まあ、五回くらいボコってる……かも?       

 戦闘狂ってキャラがジジイとも被ってるし、この界隈にはそういう人しかいないんじゃないかって思ってきた。いや、まあ《そういう》界隈なんだから当然ではあるが。
 案外ジジイと前当主って仲良くできるんじゃね……? あの二人が組んだら最強そうだけど。
 ……そんなことにはならないか。

 あり得ないに決まってる。……多分。

 そんなフラグめいたことを考えていると、後ろから肩をトンと軽く叩かれた。

「おはよ」

「おはよう。なんか最近よく会うな」

「そ、そうだね。ぐ、偶然にしては多いね」

 何故か落ち着かない様子で答えたのは花ちゃんだ。
 ここ最近、通学路で会うのだが時間をずらした時でも会うのは奇跡だ。きっとたまたまだろう。

「にしても寒いな」

 会った時は、一緒に学校に行くことが決まってるので、隣で歩く花ちゃんとの話題を作る。

「そうだね~。でも、私は冬好きだから楽しみなんだ」

「へぇ。なんで好きなの?」

 北海道民は例外なく冬が嫌いかと思ってたけど。 
 雪に憧れる内地の諸君。地獄見るぞ……。雪なんて良いものじゃないんだよ。寒いし、寒すぎると顔が痛くなるし、電車とか止まるし。

「いや、だってさ。クリスマスと正月あるじゃん! プレゼントとお年玉貰えるじゃん! おまけに誕生日もあるし」

「物目的かよ!」

 思ったより俗っぽい理由にビックリだよ。
 いや、まあわからんでもないけど。高校生だし、遊ぶお金も必要だからな。

「女の子はね。服とか化粧とかにお金使うものなの!」

「そ、そうですね」

 ここら辺が男女の違いだろうけど、花ちゃんが化粧してるのは見たことないな。

「というか、誕生日冬だったな。えーと……12月15日だったっけ?」

 記憶を頼りになんとか思い出して言う。花ちゃんは嬉しそうに笑顔になって、うんうん、と頷いた。

「そう! 憶えててくれたんだ……」

「まあ、憶えやすいしな」

「一言余計だよ」

 ブスッとした表情で釘を刺された。すみません。
 まあ、誕生日を知ったし、盛大に……は無理かもしれないけど祝おう。本当は日夏とか瞳さんとも仲良くなってくれれば嬉しいんだけど、これはエゴかな……。
 一度紹介するのも良いかもな。というか、もうするつもりなんだよな。

「なあ会って欲しい人が────」

「嫌」

「え?」

 全部言う前に断られたんだけど。え、気のせいだよな。

「だって、それって春風さんでしょ?」

「そ、そうだけど」

 なんでか言い立てられたけど、知ってて嫌って言ったってことは、普通に日夏に会うのが嫌ってことか!?

「私が嫌って言ったのはもう春風さんとは知り合いだからだよ」

「あ、そういうことね」

 ビビったわ……。なんか因縁あるのかと思った……。
 いや、でもそれなら嫌って言わなくね? もう、知り合いだよ、って言うんじゃね……?

 やっぱりなんかありそうだな……。

「で、でも知り合いならちょうどいいし、三人でお茶でも────」

「嫌」

「え?」

「嫌っていったの!」

 少し怒った様子で勢いよく言われた。……早計だったかな。
 無理矢理はよくないか。仕方ない諦め……るわけないんだよな。

「わかったよ。じゃあ、の会わせたい人と日夏の三人で行くよ」

「え……」

 意地悪だとは思うが仕方ない。どのみち断られたらそうするつもりだったし、そうすれば、色々解決することがあるかもしれないのだ!

 一つは、瞳さんの許嫁問題。 
 女の子同士で仲良くなったら、許嫁のことなんて忘れるかもしれない。
 あとは、日夏の勉強問題。
 一度引き受けたからには最後までするつもりだけど、俺と同じくらい勉強のできる瞳さんがいればもっと成績を伸ばすことが可能になる。
 どのみち一人で教えることが不安だった。それも解決できれば日夏のためになる。


「ちょ、ちょっと待ってよ! なら行く!」

「あれ、嫌なんじゃなかったっけ?」

 俺が意趣返しにニヤニヤしながら言うと、むぅ、と唸って上目遣いに言った。

「……意地悪」

 グハッ! 破壊力高い……。

 そうして、三人との……なんて言うんだろう。顔合わせ? が決まった。

 ちなみに他二人にはもう許可を取っている。



☆☆☆


「初めまして。ワタシは六道瞳よ。のお友達として気軽に瞳って呼んで」 
「……初めまして、春風日夏です(呼ぶわけないでしょ、ぽっと出の泥棒猫)」
「白海花です……(誰が呼ぶの。いきなり現れてなぎくんを誑かした女狐を)」


 なんか三人の後ろにそれぞれ鬼がいるような気がするんだけど気のせいだよね?
 気のせいだと言ってくれ!

 にこやかに、とは程遠いほどピリピリしている空気感。
 最初から仲良くはできないとは思ってたけど、さすがにこれは予想外なんだけど。

 あと、この三人に挟まれた俺の肩身が狭い!!

 誰か助けて救ってこの現状!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!   「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。 主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。 話もだいぶ変わると思います。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...