54 / 73
54話
しおりを挟む
今俺たちは、互いに向かい合って座っている。
それは、日夏父を待つためである。
じっと黙って座っている日夏の心情は、父に認めてもらえるかという不安が渦巻いていることだろう。
こればっかりは俺はどうしようもない。
日夏父が認めてくれるなんて、神のみぞじゃなくて、父のみぞ知る。
もしかしたら、あの出した目標は、建前かもしれない。
絶対に取れるはずがない、と。
……いや、俺が不安になってどうするんだ。
でも、実際に日夏はその点を取った。
杞憂……だといいんだが。
☆☆☆
「それで、結果は?」
俺は日夏の横に座り、対面には渋い表情をしている日夏父がいる。
なんか日夏父がゲームのラスボスに見えてきたな……。
あらかじめ、日夏が結果を伝えることになっている。
日夏は意を決した表情で、父に伝える。
「お父さん! はい!」
いや、紙渡すんかーい。と思ったけど、口よりも説得力があるだろう。
日夏父は日夏が渡した模試の結果を見て、表情を変える。
「ほぅ。目標を達成したのか」
感心はしたけども、感慨は抱いていない様子だった。
その目には、目標を叶えた娘に対する嬉しさ等は無い。
当たり前と言わんばかりの顔に、俺は少しばかりか苛立ちを覚えた。
「それで、認めてくれるんですか?」
その苛立ちを一端置いておき、最初の議題である俺が日夏へ教える許可についてを尋ねた。
そもそも許可がいること事態おかしくね?
勉強を教えることに許可もないだろうに……。
俺はそう思ったが、実際日夏父に言われてる以上、無視して教えることはできなくなってしまっている。
ならば、日夏父に見つかる恐怖を感じながら教えるよりも、許可を得て気持ちよく教えれる方が何倍も良いだろう。
「……わかった。教える腕は確かなようだ。認めよう」
少し時間をかけて悩んだあと、渋々といった感じで認めた。
許可が出たことに喜んだ俺たちは思わず顔を見合わせ笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「ありがとう、お父さん!」
俺たちは日夏父に礼を言う。
すると、日夏父はカッと目を見開き、だが、と付け加えた。
「だがッ! 認めるのは勉強を教えることだけだッ! 付き合うこととかは認めんぞ!」
と、鬼の形相で言い放った。
……ガチの表情で何を言っているんだか。
そもそも、この人俺と日夏が付き合ってるって勘違いしてたのか?
まあ、二人きりで教えてるわけだし、疑われるのも仕方ないかもな。
俺は荒ぶる日夏父を落ち着かせる。
「大丈夫ですよ春風さん。俺たちは付き合ってるわけではないので」
「君にお父さんと言われる筋合いはないッ!」
言ってねぇよ!? なんか話の通じない雰囲気を感じるぜ……! 厄介だなおい。
そして、日夏父はふぅふぅと息を吐き、落ち着く。
「本当なのか? 付き合ってないというのは」
「本当ですよ。付き合うつもりもないので」
日夏はそもそも俺のことなど、意識してないだろう……多分。
だから安心させるように言う。
すると、何故か隣に座っていた日夏が愕然とした表情を俺に向けていたが、気にしないようにする。
「まあ、いいだろう。
日夏。ちゃんと成績を維持するんだぞ。満点近く取らないと東大には入れないんだからな」
そう言うと、日夏父は家を出ていった。
ガチャっという扉を閉める音が聞こえると同時に、俺たちはハァ……と安堵のため息を吐く。
いや、疲れるなぁ……。主に精神が。
「ごめんね、うちの父親。ちょっと変だからさ」
ちょっとじゃなくない? って思ったけど、それを面と向かって言えるほど俺は図太くない。
「大丈夫。癖強い人なら死ぬほど知ってるから」
ケイヤ、先輩方、天笠の面々etc……。
挙げれば数多くの人がいる。
考えてみれば癖強い人多すぎなんだよ。
「そんな嘘ついて…………って本当みたいだね」
俺が嘘をついてフォローしようとしたのだと思ったのだろうか。
嘘をついて、と言いかけたが、俺の渇いた笑みに本当のことだと感じ取ったのか、苦笑いを浮かべる。
くそっ。まともな人なんて日夏と花ちゃんくらいしかいないっ!
そもそも俺の知り合いのほとんどが裏社会の人間なのが問題なんだろうけどね。
「とりあえず帰るな」
時間を見ると五時半で、秋に差し掛かった北海道では、外は暗闇へと変わろうとしている。
日夏はそれに頷き、送ろうとしてくれたが、それを断り一人で出た。
さて、とりあえず問題は解決……か。
何故かしこりの残った感傷に浸りながらも、俺は日夏の住んでいるマンションを出た。
それは、日夏父を待つためである。
じっと黙って座っている日夏の心情は、父に認めてもらえるかという不安が渦巻いていることだろう。
こればっかりは俺はどうしようもない。
日夏父が認めてくれるなんて、神のみぞじゃなくて、父のみぞ知る。
もしかしたら、あの出した目標は、建前かもしれない。
絶対に取れるはずがない、と。
……いや、俺が不安になってどうするんだ。
でも、実際に日夏はその点を取った。
杞憂……だといいんだが。
☆☆☆
「それで、結果は?」
俺は日夏の横に座り、対面には渋い表情をしている日夏父がいる。
なんか日夏父がゲームのラスボスに見えてきたな……。
あらかじめ、日夏が結果を伝えることになっている。
日夏は意を決した表情で、父に伝える。
「お父さん! はい!」
いや、紙渡すんかーい。と思ったけど、口よりも説得力があるだろう。
日夏父は日夏が渡した模試の結果を見て、表情を変える。
「ほぅ。目標を達成したのか」
感心はしたけども、感慨は抱いていない様子だった。
その目には、目標を叶えた娘に対する嬉しさ等は無い。
当たり前と言わんばかりの顔に、俺は少しばかりか苛立ちを覚えた。
「それで、認めてくれるんですか?」
その苛立ちを一端置いておき、最初の議題である俺が日夏へ教える許可についてを尋ねた。
そもそも許可がいること事態おかしくね?
勉強を教えることに許可もないだろうに……。
俺はそう思ったが、実際日夏父に言われてる以上、無視して教えることはできなくなってしまっている。
ならば、日夏父に見つかる恐怖を感じながら教えるよりも、許可を得て気持ちよく教えれる方が何倍も良いだろう。
「……わかった。教える腕は確かなようだ。認めよう」
少し時間をかけて悩んだあと、渋々といった感じで認めた。
許可が出たことに喜んだ俺たちは思わず顔を見合わせ笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「ありがとう、お父さん!」
俺たちは日夏父に礼を言う。
すると、日夏父はカッと目を見開き、だが、と付け加えた。
「だがッ! 認めるのは勉強を教えることだけだッ! 付き合うこととかは認めんぞ!」
と、鬼の形相で言い放った。
……ガチの表情で何を言っているんだか。
そもそも、この人俺と日夏が付き合ってるって勘違いしてたのか?
まあ、二人きりで教えてるわけだし、疑われるのも仕方ないかもな。
俺は荒ぶる日夏父を落ち着かせる。
「大丈夫ですよ春風さん。俺たちは付き合ってるわけではないので」
「君にお父さんと言われる筋合いはないッ!」
言ってねぇよ!? なんか話の通じない雰囲気を感じるぜ……! 厄介だなおい。
そして、日夏父はふぅふぅと息を吐き、落ち着く。
「本当なのか? 付き合ってないというのは」
「本当ですよ。付き合うつもりもないので」
日夏はそもそも俺のことなど、意識してないだろう……多分。
だから安心させるように言う。
すると、何故か隣に座っていた日夏が愕然とした表情を俺に向けていたが、気にしないようにする。
「まあ、いいだろう。
日夏。ちゃんと成績を維持するんだぞ。満点近く取らないと東大には入れないんだからな」
そう言うと、日夏父は家を出ていった。
ガチャっという扉を閉める音が聞こえると同時に、俺たちはハァ……と安堵のため息を吐く。
いや、疲れるなぁ……。主に精神が。
「ごめんね、うちの父親。ちょっと変だからさ」
ちょっとじゃなくない? って思ったけど、それを面と向かって言えるほど俺は図太くない。
「大丈夫。癖強い人なら死ぬほど知ってるから」
ケイヤ、先輩方、天笠の面々etc……。
挙げれば数多くの人がいる。
考えてみれば癖強い人多すぎなんだよ。
「そんな嘘ついて…………って本当みたいだね」
俺が嘘をついてフォローしようとしたのだと思ったのだろうか。
嘘をついて、と言いかけたが、俺の渇いた笑みに本当のことだと感じ取ったのか、苦笑いを浮かべる。
くそっ。まともな人なんて日夏と花ちゃんくらいしかいないっ!
そもそも俺の知り合いのほとんどが裏社会の人間なのが問題なんだろうけどね。
「とりあえず帰るな」
時間を見ると五時半で、秋に差し掛かった北海道では、外は暗闇へと変わろうとしている。
日夏はそれに頷き、送ろうとしてくれたが、それを断り一人で出た。
さて、とりあえず問題は解決……か。
何故かしこりの残った感傷に浸りながらも、俺は日夏の住んでいるマンションを出た。
11
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる