恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸

文字の大きさ
上 下
50 / 73

50話

しおりを挟む
 なんか日夏、歩いている間ずっと無言だな……。

 俯いている日夏はどこか決意したような姿で。
 なぜだか、俺も緊張してしまった。

 それにしてもどこに行くのだろうか。
 テレビジョン塔、略してテレ塔に何かあったっけ?

 そして、なぜか互いに無言のまま、大通公園の、テレ塔の前に到着した。


 「それで……どうするんだ?」

 夕方というには少し遅い頃だ。
 空は暗闇に染まりかけている。

 「もうちょっとだから、少し待って?」

 時計を気にしながら、そう言う。
 時間でわかる仕組み……?

 あ! そこで俺は気付いた。

 と、同時にその現象は起こった。

 無機質な鉄の色だったテレビジョン塔が、青く光輝く。
 ライトアップされたのだ。

 「おぉ……」

 俺はその光景に少し感動する。
 横では日夏もライトアップに目を奪われている。

 「すごいね」

 無意識なのか、俺に聞こえるか、聞こえないかの声でポツリと呟く。

 「あぁ。綺麗だな……」

 俺はそれに答える。
 すると、日夏が決意に満ちた顔で、俺の方を向いた。
 唇を固く結んでいて、端から見ても緊張しているのは容易にわかる。

 「は、話があるの」

 俺はそんな日夏に応えるために、しっかり日夏の方を向き、しっかり見つめる。

 「なんだ?」

 俺にはその話とやらが、皆目検討もつかないが真面目な話だとわかる。
 そのために、日夏の言葉を聞き逃さぬよう、耳に集中する。

 「わ、私と────」

 日夏が話そうとした時だった。
 俺の携帯電話がピピピと音を鳴らした。

 くそ、こういう時は切っとくのがマナーじゃないか。

 ふと、着信先を見ると近くの病院とある。
 さすがに病院からというのは出なければいけない。

 「ごめん、日夏。病院からだ。出ていいか?」

 もちろん、了承を取る。

 すると日夏は決意を邪魔されて、放心状態だったが、辛うじて残っていた意識で、頷く。

 「もしもし──」

 俺が電話に出ると、聞き慣れた声が聞こえた。

 「もしもし!? 若ですか!?」

 電話に出た相手はヒョロガリのおっさん、ヤスだった。

 「なんだ、お前か。今重要な時なんだ。くだらない用事なら切る──」

 俺が切ろうとすると、切羽詰まった声で、言葉を重ねてきた。

 「ぼ、ボスが倒れたんです!」

 「は、はぁ!?」

 ボスを指しているのは、もちろん当主、天笠英隆。ジジイである。
 その言葉に、俺は衝撃を覚える。
 
 「どこだ!」

 「ちょうど電話してるとこです!」

 なにやら言葉がおかしいが、それだけ焦っているのだろう。
 かくいう俺も焦ってる。

 電話してるところ、ということはかかってきた着信先のところか……!
 俺のやりとりを不安そうに見つめている日夏。
 正気には戻ったらしい。
 俺は急いで日夏に事情を伝える。

 「日夏……! ごめん、俺のおじいちゃんが倒れた!」

 「え!? 嘘!?」

 ジジイをおじいちゃんというのは癪だが、そうも言ってられない状況だ。
 おじいちゃんと呼ばないと通じないからな。

 「悪い。すぐに向かってもいいか?」

 「うん、もちろん。すぐに行ってあげて!」

 日夏はそう言ってくれたが、どこか影を落としたような表情だった。

 俺はそんな様子に気付きながらも、踵を返し、病院へ向かう。

 くそ……! 何があったんだよ……!

 性格は最低でも、お世話にはなった。
 それに血が繋がっている、まぎれもなく祖父なのだ。

 無事でいてくれよ……!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!   「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。 主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。 話もだいぶ変わると思います。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...