恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸

文字の大きさ
上 下
42 / 73

42話

しおりを挟む
 「ハッハッハ! どうした! お前の力はこんなものかー!」

 「やめろ……! やめてくれ!」

 俺は薄暗い場所で、ケイヤと対面になり、お互いを殴りあっていた。
 いや、俺が一方的に殴られている。
 
 くそ……! 勝てない……!
 俺は自分の敗北を悟った。

 仕方ない……と俺は負けを認めようとした。
 だが、俺の微かに残っていた闘志の炎が、言おうとした口を塞いだ。

 そうだ……! 俺は負けたくない!

 小さな炎は、いつしか輝く大きな炎へと姿を変え、俺に力を貸す。

 「うぉぉぉ!」

 「な、なに!?」

 叫び闘志を迸る俺に、初めてケイヤが動揺した。

 「俺は負けない!」

 「それは俺もだ!」

 俺とケイヤ、二人の勝負への想いが、互いにその戦いを昇華させていく。
 いつしか、俺たちの声は一つになり、気持ちが混ざり合う。

 「「うぉぉぉぉ!」」

 互いの一撃が、刺さったとき、決着はついた──

 「俺の勝ちだな!」

 ガッツポーズを挙げたのは──ケイヤだった。

 「相変わらずは弱いんだな、渚は」

 「くそー! やっぱり勝てないか……」

 場所は薄暗い
 とあるアーケードの格闘ゲームをプレイした俺たちは健闘を称える。

 「俺に勝つなど100年早いわ!」

 どや顔で言い放つケイヤ。
 こいつ……。
 
 「ほぼ全ジャンル俺に勝てないくせに」

 俺はせめて負け惜しみと、そんな言葉を口にする。
 少しは悔しがると思ったのだが……

 「おう、知ってるさ。だから勝てるジャンルでコテンパンにしてるだけだからなぁ!」

 「お前最低だな!?」

 よくもここまで堂々と言えるものだな、おい。
 てか、こいつわかっててやりやがったな……。
 ゲスい……。

 完全にお前も負け惜しみかよ。

 「勝てる所で、全力で叩き潰すのは常識だぜ?」

 「ぐぬっ」

 否定はできないため、俺は悔しそうな声を出す。
 勝負は非情だもんな……。

 「だが、それで誇ってるのはどうなんだ!」

 どや顔がやけに鼻に付き、腹立つ俺はビシッと指差しで反論する。

 「ふ、勝負で勝って嬉しがるのは当然だよなぁ!」

 くっ、全く効いてない……。
 完全に自分の世界に入ってやがるな。

 「くそ、うざい」

 「負け惜しみかね、渚くんや」

 あー、うぜぇ!
 ニヤニヤしながら俺の肩を突つき、ここぞとばかりに俺を馬鹿にする。
 そこで、俺は隠し持っていた言葉の刃を放つ。

 「黙れ、昨日で告白玉砕回数67回目」

 「は?」

 俺の情報に、ニヤニヤ笑っていたケイヤの顔がピしりと固まる。

 「おま、おま、な、なんで知ってんだよ、お前ぇ!?」

 すぐに再起動したかのような動きをし、焦る。
 イケメンが台無しな、情けない顔をしている。

 「ふ、俺の情報量舐めるなよ」

 今度は立場が逆転する。
 これ見よがしに、おれは勝ち誇った顔をする。
 そして、愕然としているケイヤを、フッはっはっ! と笑う。いや、嗤う。

 「お前ストーカーだぞ!? 回数の把握はともかく、昨日は絶対にバレない所で告白したぞ!? 相手もばらすような人じゃないし!」

 「親友舐めるなよ! お前が告白失敗した時のサインがあるんだよ!」

 そう、こいつは表情には出ないが、行動には出る。

 こいつには教えないが、ケイヤは玉砕した日は必ず購買でチョコクリームパンを買って食べる。
 
 失敗した苦い記憶を、甘い食べ物で上書きしようとした結果なのだろうか。
 アンニュイな気分でチョコクリームパンを食べてるのかと思うと、シュールで笑ってしまう。
 つうか、こいつ一々行動がイケメンなんだよ。
 そんなケイヤを嗤う俺も性格が悪いようだな。

 「うぐぅ……」

 涙目に睨むケイヤを見て、俺はつい、ニヤリと笑ってしまう。
 
 「お前本当に性格悪いな!?」

 いやいや、偶々。
 悪気はちょっとしかないさ。

 「なんでお前は俺が10やったことを100にして返してくるんだよ……」

 「俺の主義」

 「ないわー」

 すでに立ち直っている様子のケイヤは立ち上がり、やれやれとため息を吐く。

 「あ、バイトあるから俺、帰るわ」

 時計を見たケイヤがそう言って帰ろうとする。

 「あ、ちょっと待って」

 俺はカバンから、こいつのために買っていた物を投げて渡す。

 「ちょっ、おっとっと」

 取り損なうことなく、受け取ったケイヤ。
 それを見て、少し驚くと、再びため息を吐く。

 「お前、そういうとこが憎めないんだよなぁ」

 「さあ、なんのことかな」

 俺が渡したを手に取り、見ながらそう呟く。

 俺はたまたまカバンにあったのを渡しただけだし。
 別に偶々だし!

 って、俺もツンデレみたいじゃん。

 ツンデレってか、男は素直になれないだけだな。

 あ、それがツンデレか。

 「じゃあな」

 そして、ケイヤは帰っていった。

 結局遊んだだけって何事?
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!   「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。 主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。 話もだいぶ変わると思います。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...