23 / 73
23話
しおりを挟む
Side 白海
放課後の帰り道。
私はなぎくんを昼食に誘ったことを思い出して後悔する。
「私のヘタレ……! なに? あの思わせ振りな感じは! なんで直接的に言えないの! 好き、って2文字だけでいいのに……」
でも私は怖くて言えない。
振られることを考えてしまったら恐怖で体がすくんで、口も動かなくなってしまう。
勇気が出ない、というのもあるけど、私の場合は、心理的支柱にしているなぎくんに、振られた時、取り乱すことを防ぐための防衛本能だと思う。
「振られる前提なのがネガティブなんだよね……」
私の悪い癖だ。
なんでも悪く考えてしまう。
いい意味だと、慎重。
悪い意味だと、ネガティブ。
私はハッと今気がつく。
「あーん、くらいはしても許されたのでは……!? 早く気付けばよかった……」
あーんをしていたら少しは状況が変わってたかもしれないのに……
私は後悔しながら歩くと、いつもは気付かなかったが、神社が建っていた。
細い一本道の先にあるので気が付かなかったのだろう。
私の今の心境は神にもすがりたかった。
だから私は神社に寄ることにした。
鳥居の真ん中を通らないように端を通る。
真ん中は神様の通り道と言われてるため、通ってはいけない、と教えられた。
「……お邪魔します」
鳥居をくぐる瞬間、小さな声で挨拶をし、お辞儀をする。
参拝するための場所に向かい、財布を取り出す私。
5円玉が運良く見つかり、それを手に取る。
「なんか、大きい金額の方がご利益ある気がするんだけどなぁ」
だが、500円玉は使ってはいけないことを知っている。
もうこれ以上の効果(硬貨)が無い、という意味らしい。
私は5円玉を入れる。
チリンチリンと音がして、5円は入っていった。
そして、強く願う。
「神様……! どうか私となぎくんをくっつけてください!!」
願う……はずだったのだが、いつまにか叫んでいた。
「ッ!」
急いで周りを見渡すも、誰もいなくホッとする。
危ない、危ない……危うく醜態を晒すとこだった。
願ったことは直接的で欲にまみれているが、本心だ。仕方ない。
参拝までしたのならいいだろう、とおみくじを引くことにした。
「えいっ!」
これまた、良い引きになるように気合いを入れて引く。
ピリピリと音とともに開く。
運勢は……
「やった! 大吉だ!」
運勢を確認したらすぐに、恋愛のとこをみる。
……仕方ないもん。恋する乙女なんだから。
「ええと……積極的が吉。難あり」
ヒェッ、私と正反対のことが書いてあるよ……
積極的……私の課題そのままじゃん。
もっと……攻めるしかないか……
私はそう決意した。
☆☆☆
Side 春風
はわわわっ。
どうしよう! 狭山くんのこと、目で追っちゃうよぉぉ。
彼の行動一つ一つが気になっちゃう。
絶対不自然に思われてるよね!?
部活があるからと、今日の勉強会を断られた私は、帰り際歩く。
秋に入ったせいか、少し肌寒い。
なのに、顔だけが熱い。
狭山くんと関わりができてから、私は益々彼のことが好きになってしまった。
目で追っちゃうのもそのせいだ。
よくよく考えたら思春期の初恋のような感じ。
いや、この表現はよくないよね。
初恋は酸っぱいとか言われてるのって、振られるの前提じゃん! 私はこの恋を甘くするの! いや! どゆことさ!
そんなことを考えていると、ふいに私の肩を誰かが叩いた。
「や、やあ春風さん」
ビクッとして後ろを振り向くと、そこには学校でそこそこ有名な、横凪くんがいた。
とりあえず私は仮面を被って接する。
「ん~? どうしたの?」
「いや、ちょっと言いたいことがあってさ」
少し照れくさそうに言う横凪くん。
これは……告白では? と思った私。
……まずい……考えてることはゲスいけど、クラスで立ち位置のある人を振るとめんどくさいことが起こる。
でも、私はそこで思い出す。
あ、この人そういえば残念イケメンで、振る人多いっけ。
じゃあ大丈夫か。
だが、横凪くんは予想外のことを口にした。
「その、さ。渚のこと好きなのか?」
「はぇ?」
私の中で時間が止まった。
言われてる内容を咀嚼し、次第に意味がわかり、顔が赤くなっていく。
え、ヤバい他人から聞かれるとすごい恥ずかしい!
でも、どうしてそれを横凪くんが? と疑問を感じた。
「やっぱりそうなんだな……渚はな、俺の親友なんだけど、ちょっと原因があってモテないんだよ。だから心配でさ……その……渚の良いところをわからないってことがさ」
ポリポリと厚朴を掻いて照れている横凪くん。
へぇ、狭山くんと喋ってるのは見たことあるけど、親友だったんだ。
それで、モテなくて心配……か。
はっきり言って狭山くんはモテなくていい。
だってライバル増えるじゃん。
狭山くんの良いところがわかる女の子は私で充分。
でも、横凪くんも見る目があるね。
狭山くんの良いところがわかるなんて。
たまには口にしないといけないこともある、と思った私は横凪くんに、狭山くんについて想っていることを話す。
「うん、私は狭山くんが好き」
こればかりは偽りの表情を捨てて話す。
改めて好意を言うって恥ずかしいのね。
「そっか、じゃあ安心だな」
そう言って横凪くんはフェードアウトしていった。
それにしても、狭山くんは友達にも恵まれたんだね。
放課後の帰り道。
私はなぎくんを昼食に誘ったことを思い出して後悔する。
「私のヘタレ……! なに? あの思わせ振りな感じは! なんで直接的に言えないの! 好き、って2文字だけでいいのに……」
でも私は怖くて言えない。
振られることを考えてしまったら恐怖で体がすくんで、口も動かなくなってしまう。
勇気が出ない、というのもあるけど、私の場合は、心理的支柱にしているなぎくんに、振られた時、取り乱すことを防ぐための防衛本能だと思う。
「振られる前提なのがネガティブなんだよね……」
私の悪い癖だ。
なんでも悪く考えてしまう。
いい意味だと、慎重。
悪い意味だと、ネガティブ。
私はハッと今気がつく。
「あーん、くらいはしても許されたのでは……!? 早く気付けばよかった……」
あーんをしていたら少しは状況が変わってたかもしれないのに……
私は後悔しながら歩くと、いつもは気付かなかったが、神社が建っていた。
細い一本道の先にあるので気が付かなかったのだろう。
私の今の心境は神にもすがりたかった。
だから私は神社に寄ることにした。
鳥居の真ん中を通らないように端を通る。
真ん中は神様の通り道と言われてるため、通ってはいけない、と教えられた。
「……お邪魔します」
鳥居をくぐる瞬間、小さな声で挨拶をし、お辞儀をする。
参拝するための場所に向かい、財布を取り出す私。
5円玉が運良く見つかり、それを手に取る。
「なんか、大きい金額の方がご利益ある気がするんだけどなぁ」
だが、500円玉は使ってはいけないことを知っている。
もうこれ以上の効果(硬貨)が無い、という意味らしい。
私は5円玉を入れる。
チリンチリンと音がして、5円は入っていった。
そして、強く願う。
「神様……! どうか私となぎくんをくっつけてください!!」
願う……はずだったのだが、いつまにか叫んでいた。
「ッ!」
急いで周りを見渡すも、誰もいなくホッとする。
危ない、危ない……危うく醜態を晒すとこだった。
願ったことは直接的で欲にまみれているが、本心だ。仕方ない。
参拝までしたのならいいだろう、とおみくじを引くことにした。
「えいっ!」
これまた、良い引きになるように気合いを入れて引く。
ピリピリと音とともに開く。
運勢は……
「やった! 大吉だ!」
運勢を確認したらすぐに、恋愛のとこをみる。
……仕方ないもん。恋する乙女なんだから。
「ええと……積極的が吉。難あり」
ヒェッ、私と正反対のことが書いてあるよ……
積極的……私の課題そのままじゃん。
もっと……攻めるしかないか……
私はそう決意した。
☆☆☆
Side 春風
はわわわっ。
どうしよう! 狭山くんのこと、目で追っちゃうよぉぉ。
彼の行動一つ一つが気になっちゃう。
絶対不自然に思われてるよね!?
部活があるからと、今日の勉強会を断られた私は、帰り際歩く。
秋に入ったせいか、少し肌寒い。
なのに、顔だけが熱い。
狭山くんと関わりができてから、私は益々彼のことが好きになってしまった。
目で追っちゃうのもそのせいだ。
よくよく考えたら思春期の初恋のような感じ。
いや、この表現はよくないよね。
初恋は酸っぱいとか言われてるのって、振られるの前提じゃん! 私はこの恋を甘くするの! いや! どゆことさ!
そんなことを考えていると、ふいに私の肩を誰かが叩いた。
「や、やあ春風さん」
ビクッとして後ろを振り向くと、そこには学校でそこそこ有名な、横凪くんがいた。
とりあえず私は仮面を被って接する。
「ん~? どうしたの?」
「いや、ちょっと言いたいことがあってさ」
少し照れくさそうに言う横凪くん。
これは……告白では? と思った私。
……まずい……考えてることはゲスいけど、クラスで立ち位置のある人を振るとめんどくさいことが起こる。
でも、私はそこで思い出す。
あ、この人そういえば残念イケメンで、振る人多いっけ。
じゃあ大丈夫か。
だが、横凪くんは予想外のことを口にした。
「その、さ。渚のこと好きなのか?」
「はぇ?」
私の中で時間が止まった。
言われてる内容を咀嚼し、次第に意味がわかり、顔が赤くなっていく。
え、ヤバい他人から聞かれるとすごい恥ずかしい!
でも、どうしてそれを横凪くんが? と疑問を感じた。
「やっぱりそうなんだな……渚はな、俺の親友なんだけど、ちょっと原因があってモテないんだよ。だから心配でさ……その……渚の良いところをわからないってことがさ」
ポリポリと厚朴を掻いて照れている横凪くん。
へぇ、狭山くんと喋ってるのは見たことあるけど、親友だったんだ。
それで、モテなくて心配……か。
はっきり言って狭山くんはモテなくていい。
だってライバル増えるじゃん。
狭山くんの良いところがわかる女の子は私で充分。
でも、横凪くんも見る目があるね。
狭山くんの良いところがわかるなんて。
たまには口にしないといけないこともある、と思った私は横凪くんに、狭山くんについて想っていることを話す。
「うん、私は狭山くんが好き」
こればかりは偽りの表情を捨てて話す。
改めて好意を言うって恥ずかしいのね。
「そっか、じゃあ安心だな」
そう言って横凪くんはフェードアウトしていった。
それにしても、狭山くんは友達にも恵まれたんだね。
3
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる