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22話
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「嵐のようですね」
俺が舞阪先輩について思ったことを、三人の先輩に言う。
三人は苦笑しつつも頷く。
舞阪先輩のことは、この三人の方がよく知っているだろう。
なにせ、俺よりも一年長く付き合ってるのだから。
「まあ、それがあいつの良いところでもあるがな」
武田先輩はしみじみ呟く。
「あの子には助けられたからねー」
「うん、でも時々悪い子」
伊縫先輩と森先輩は、舞阪先輩に助けられた過去があると聞いたが、俺は詳しくは知らない。
その時のことを思い出してか笑う、二人。
色々なことがあろうと、ここにいる人はみんな舞阪先輩のファンなのだ。
……本人には口が裂けても言えないが。
「だから羨ましいよ」
ふいに武田先輩が真剣なトーンで返した。
羨ましい?
「原稿を最初に読めるからですか?」
最初に思い浮かんだのはそれだった。
先輩のファンである人からすれば、一番最初に原稿が読めるのは何よりの幸せだ。
俺はだから羨ましいと言ったのだと、ふんだのだが、
「ガハハ。それもあるけどな。一番は渚を頼ってることだ。俺たちはお前みたいに頭が良いわけではないからな。そういう意味で舞阪に協力することができない」
俺はハッとした。
俺を頼る。
その意味は他の三人よりも俺が便りになると暗に言っているようなものだ。
舞阪先輩にはそんな意図があるわけではないだろうが、武田先輩が言いたいのは、最初に頼ったのが俺たちでなかった。
ということなのだろう。
羨ましい、と表現したが、本当は悔しい思いもあるのではないか、とも思う。
「……すみませ」
「何も謝ってほしいわけじゃない。というか謝るな。謝るってことは舞阪の原稿チェックに後悔とか罪悪感が現れる時だけだ。もし、そんなことを思ったならば今すぐ降りてほしいがな」
俺が謝ろうしたのを遮り言った。
確かにそうだ。
俺が謝る時は先輩に頼まれた仕事に、自責の念が生まれるときだ。
だが、俺は誇らしいと思うし、嬉しい。
謝るのは筋違いだ。
俺が言うべき言葉は、
「ありがとうございます。でも俺は降りるつもりはありませんよ」
俺が感謝と決意を口にする。
そうすると、武田先輩はフッと口元を緩めた。
「武田、長い」
武田先輩が何かを言おうとしたとき、森先輩が、武田先輩をひっぱたいた。
「いてっ、何をする」
武田先輩が抗議するも、森先輩の眼光一睨みで黙った。
……おう……体は鍛えても、心がまだあれだったのね……
でも、メンタルも強かったような。気のせいか?
「渚。私たちはあなたに感謝してる。あなたが選ばれたことに何も感じないというと嘘になるけど。それでも本当にあの子が信頼できる人を見つけられてよかったって思うよ」
森先輩は珍しく感情が籠っている口調で喋った。
「先輩、最後の意味って──」
俺が聞こうとする前に、パンパンっと手を叩く音がした。
「はいはい。暗い話は終わり! 下校時刻過ぎてるからそろそろ帰らなきゃね」
伊縫先輩が言った。
時計を見ると、6時10分と下校時刻を過ぎている。
俺は最後の意味について聞けなかったことにモヤモヤしながらも、いつか聞けばいいか、っと切り替える。
そのまま、帰り支度を整え、先輩方に挨拶をし学校を出る。
空は夕焼けに染まっていた。
黄金色が辺りを包み込んで、どこか温かい雰囲気の感じる光になっている。
いつもと変わらない気色のはずなのに、夕焼け色に染まるだけで、新鮮さと清浄さが満ちて世界を鮮やかに変える。
俺はそんな景色を見てあることを思い出す。
母さんが俺に言った言葉にこんなのがある。
『夕焼けとは人々の心を照らし、感情を鮮やかに染めゆくもの。それは……恋もね? つまり、燃える恋はバーニングファイヤぁぁぁ!』
……前半はよかった。
詩的で、俺の心に納得と、共感を得ることができた。
……後半? 知らん。
……夕焼けを見たせいで、アンニュイな気持ちになってしまった……
俺は母さんの言葉の後半を思い出し、少し笑う。
「燃える恋はバーニングファイヤって、ハハハ。よく恋のことを燃え上がる炎だ、とか表現するけど、炎はいつか消えるものなんだからいつか恋も覚めるって暗に言ってるよなあ……ま、俺はそんな恋をすることはないだろ」
そして、俺は夕焼けに染まる下校道を辿っていった。
俺が舞阪先輩について思ったことを、三人の先輩に言う。
三人は苦笑しつつも頷く。
舞阪先輩のことは、この三人の方がよく知っているだろう。
なにせ、俺よりも一年長く付き合ってるのだから。
「まあ、それがあいつの良いところでもあるがな」
武田先輩はしみじみ呟く。
「あの子には助けられたからねー」
「うん、でも時々悪い子」
伊縫先輩と森先輩は、舞阪先輩に助けられた過去があると聞いたが、俺は詳しくは知らない。
その時のことを思い出してか笑う、二人。
色々なことがあろうと、ここにいる人はみんな舞阪先輩のファンなのだ。
……本人には口が裂けても言えないが。
「だから羨ましいよ」
ふいに武田先輩が真剣なトーンで返した。
羨ましい?
「原稿を最初に読めるからですか?」
最初に思い浮かんだのはそれだった。
先輩のファンである人からすれば、一番最初に原稿が読めるのは何よりの幸せだ。
俺はだから羨ましいと言ったのだと、ふんだのだが、
「ガハハ。それもあるけどな。一番は渚を頼ってることだ。俺たちはお前みたいに頭が良いわけではないからな。そういう意味で舞阪に協力することができない」
俺はハッとした。
俺を頼る。
その意味は他の三人よりも俺が便りになると暗に言っているようなものだ。
舞阪先輩にはそんな意図があるわけではないだろうが、武田先輩が言いたいのは、最初に頼ったのが俺たちでなかった。
ということなのだろう。
羨ましい、と表現したが、本当は悔しい思いもあるのではないか、とも思う。
「……すみませ」
「何も謝ってほしいわけじゃない。というか謝るな。謝るってことは舞阪の原稿チェックに後悔とか罪悪感が現れる時だけだ。もし、そんなことを思ったならば今すぐ降りてほしいがな」
俺が謝ろうしたのを遮り言った。
確かにそうだ。
俺が謝る時は先輩に頼まれた仕事に、自責の念が生まれるときだ。
だが、俺は誇らしいと思うし、嬉しい。
謝るのは筋違いだ。
俺が言うべき言葉は、
「ありがとうございます。でも俺は降りるつもりはありませんよ」
俺が感謝と決意を口にする。
そうすると、武田先輩はフッと口元を緩めた。
「武田、長い」
武田先輩が何かを言おうとしたとき、森先輩が、武田先輩をひっぱたいた。
「いてっ、何をする」
武田先輩が抗議するも、森先輩の眼光一睨みで黙った。
……おう……体は鍛えても、心がまだあれだったのね……
でも、メンタルも強かったような。気のせいか?
「渚。私たちはあなたに感謝してる。あなたが選ばれたことに何も感じないというと嘘になるけど。それでも本当にあの子が信頼できる人を見つけられてよかったって思うよ」
森先輩は珍しく感情が籠っている口調で喋った。
「先輩、最後の意味って──」
俺が聞こうとする前に、パンパンっと手を叩く音がした。
「はいはい。暗い話は終わり! 下校時刻過ぎてるからそろそろ帰らなきゃね」
伊縫先輩が言った。
時計を見ると、6時10分と下校時刻を過ぎている。
俺は最後の意味について聞けなかったことにモヤモヤしながらも、いつか聞けばいいか、っと切り替える。
そのまま、帰り支度を整え、先輩方に挨拶をし学校を出る。
空は夕焼けに染まっていた。
黄金色が辺りを包み込んで、どこか温かい雰囲気の感じる光になっている。
いつもと変わらない気色のはずなのに、夕焼け色に染まるだけで、新鮮さと清浄さが満ちて世界を鮮やかに変える。
俺はそんな景色を見てあることを思い出す。
母さんが俺に言った言葉にこんなのがある。
『夕焼けとは人々の心を照らし、感情を鮮やかに染めゆくもの。それは……恋もね? つまり、燃える恋はバーニングファイヤぁぁぁ!』
……前半はよかった。
詩的で、俺の心に納得と、共感を得ることができた。
……後半? 知らん。
……夕焼けを見たせいで、アンニュイな気持ちになってしまった……
俺は母さんの言葉の後半を思い出し、少し笑う。
「燃える恋はバーニングファイヤって、ハハハ。よく恋のことを燃え上がる炎だ、とか表現するけど、炎はいつか消えるものなんだからいつか恋も覚めるって暗に言ってるよなあ……ま、俺はそんな恋をすることはないだろ」
そして、俺は夕焼けに染まる下校道を辿っていった。
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