世界に1人だけの魔物学者

ベルリン

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第3章 竜と迷宮

氷の勇者とその一行

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勇者…それは魔王と戦う人類の希望。

…だったのだが数十年前に魔族と人類の間で和平が行われ勇者という存在は形式的なものとなった。

第50代勇者、氷の勇者レイ•アーツ。その圧倒的強さをもってアルテマ教国に置いて氷の勇者を拝命した彼はすることが無くて困っていた。
戦争もなければ、巨大な魔物災害もない。喜ばしきこの状況が彼には退屈だった。

レイは自身の力をぶつけられる相手と戦いたかった。粋枠の戦闘狂だったのだ。
レイは金や地位よりも戦うことの方が好きだった。
それゆえにレイは多くの魔物の討伐依頼も進んで受けている。
獣重鬼ベヒーモス石の神ケツァル宙鯨そらくじらといった魔物のさらに上、魔獣と呼ばれるクラスの相手とも戦ってきた。

そんな彼に新たな強敵が現れる。
伝承上、空想上の生き物であるドラゴンだ。

彼はワクワクしていた。次なる強敵に出会えることに。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それでレイ、ドラゴン」の依頼、承諾したの?」

「もちろんしたよ。レナ。ドラゴンだぞ?どんなやつなんだろうワクワクするなぁ」

僕は朝食を摂りながらレナと話す。メニューはシンプル。ローストハムのサンドイッチにコーヒーだ。

向かいに座っているグラデーションのかかった茶髪の女の子はレナ・アルファ、幼馴染の魔導士だ。レナはその先端につれて明るくなっている髪の毛を巻きながら話しだす。

「あんたねぇ…どうせ組合ギルドに足元見られた金額で請け負ったんでしょ?ドラゴンよ、ドラゴン。そこら辺の魔物とは違うのよ。」

呆れた顔をするレナ。それを見た朝食の席についていたもう1人の男が声を出す。

「しかし、慈善事業は勇者の務め。生活できるだけの報酬が有れば良いという考えも捨てたものでは無いでしょう。」

彼の名前はアルバ・ゴールドスタイン、角骨族イラバミと呼ばれる魔族と人間とのハーフだ。年齢はわからない。彼は頭の右側にネジ巻いた大きな角が生えている。なんでもその種族の力の結晶らしい。
彼とは勇者拝命時代から共に行動している、僕らのパーティーの重要な壁役だ。

「アルバ、あんたレイを甘やかしすぎなのよ。大仕事には大仕事を受けるだけの価値ってもんが必要なの。」

相変わらずレナの機嫌は直らない。

「次はもっと交渉するから。」

「それ聞くの何回目??…まぁいいわ。メヴィアの王都はもう一度行きたかったし。甘いお菓子に綺麗な服!ねぇいつ頃メヴィアに行くの?」

勝手に機嫌を直したレナが質問をしてくる。

「もうすぐあっちの組合ギルドから竜出現の報せが大々的に広がるから…そこから1、2週間で正式に討伐隊として派遣されるだろうね。」

それを聞いたアルバが反応した。
「案外、時間がかかるのですな。」

「うん、詳しくは知らないけど、今すぐ行くより時間をかけて行った方が都合が良いらしい。勇者のイメージアップってとこかな。危機感を煽ったところに颯爽と駆けつけるって構図にしたいんだろう。」

「へー、レイって意外と名誉とか考えてたんだ。」

その質問に僕は乾いた笑いで答える。

「ははっ、先代の顔に泥は濡れないからね?まぁ僕の行動原理の一番は強敵と戦いたいってことだよ。」

「…相変わらず戦闘狂ね」

やになっちゃう…と言ったような顔をしたレナはコーヒーを一口啜った。

「それで今回は案内人も居るのでしょう?その方とはもうお会いされたので?」

皿が空になったアルバが質問をしてくる。

「いや、まだ会ってない。と言うかメヴィアに行かないと会えないし…」

「案内人ねぇ… 私守りながら闘うの嫌いよ?」
レナがため息をつく。

「まぁそれは私の仕事ですから。」
アルバが自信満々に答えた。

「それでは私、鍛冶屋に用事がありますので。ご馳走様でした。」
そう言ってアルバはアルテマ銀貨を1枚置いてお店から出て行った。

「レイは今日予定あるの?」

レナが聞いてくる。

「特には無いかな。」
そこまで言って僕は「しまった」と感じた。

「そう、じゃあ私と一緒に服屋に来ること。荷物持ちを任命します。」

「…急に予定ができたかも」

逃げ出そうとする僕は首根っこを掴まれ、無事大量の荷物を持たされるハメになった。

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