世界に1人だけの魔物学者

ベルリン

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第3章 竜と迷宮

任命

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組合ギルド、というよりアストラに呼び出された俺は何故か、組合ギルドの奥の応接間にアストラと2人きりでいた。

華やかな装飾とは裏腹に不自然なほどに沈黙の漂う空間。壁掛けの時計の秒針の進む音しか聞こえない。
やがて沈黙に耐えかねた俺が口を開く。

「それで、話っていうのは?」

アストラはしばらく俺の目を見つめ、重い腰を上げ口を開く。

「実はな、国から正式にドラゴン討伐の討伐隊が派遣されることになったんだが、お前もその隊に加わらな…「嫌です。」」

光もびっくりの速さで断る俺、そして珍しく動揺するアストラ。

「そっそこを何とか引き受けてくれないか!?いや、断るのは予想していたんだが…こうもあっさりいかれるとは…」

「嫌だろそんなの。焼死体になって帰還するオチだ。」

よし。帰るか。他のやつが竜を倒してめでたしめでたしってやつだ。

「い、いや別に戦闘員で派遣しようって話じゃない。」

俺はそれを聞いて少しだけ顔を上げる。

「実は、もうすぐドラゴンの出現の情報を発表しようと言う動きがあってな?それに合わせて隣国にいる氷の勇者一行に竜退治をしてもらうことになったんだ。
勇者一行はさらなる名誉を獲得できるし国はわざわざ騎士団を派遣する必要が無くなる。そう言うことだな。」

珍しく熱の入っているアストラ。

「それで?なんで俺?」

「氷の勇者がこの迷宮に潜ったのは一回、私含め組合ギルドは現地民の案内人がいるんじゃないかと言う話になったんだ。」

「それで俺か。」

「ローランは私が推薦した。君は迷宮にソロで潜れる単体性能もある。簡単には死なないと踏んでいる。それに迷宮のことをよく知っている。あとできれば竜について詳しい情報が欲しい…都合が言いこともわかっているが…」

なるほど。俺は戦わなくてもいいのか。そうなると話は変わってくる。俺はなんやかんやいって魔物が好きだ。ドラゴンの生態は正直観察したい。
でも氷の勇者かぁ…以前彼らが氷魔法をぶっ放して迷宮の生態系が大きく変わったという過去がある。うーん、暴れられすぎると俺も困る。

悩んでいる俺をみたのかアストラは付け加える。

「この依頼を受けてくれるならまず事前に組合ギルドから支援をさせてもらう。その後成功したらさらに報酬を出そうと思っている。戦闘員としてではないのであまり大きなものではないが…」

「…じゃあ冒険者組合ギルドのコネが欲しい。…製本組合や魔術組合などの他の組合ギルドだ。」

それを聞いたアストラは驚いた表情をする。今日は表情が豊かですね。これが組合ギルド一の冷徹エルフらしい。

「何か…?」

「いや、君が他の組合との繋がりを所望するとは…。あまりコネクションを広げるタイプじゃないだろう?」

「…否定はしない。やりたいことがあるだけだ。ビジネス的な付き合いで構わない。」

「それは私ができる限り善処しよう。っということは引き受けてくれるんだな?」

「あぁ。」

「詳しいことは追々伝える。引き受けてくれてありがとう。ではまた。」

そう言い残しアストラは部屋の奥へ消えていった。

しかし…勢いで引き受けてしまったものの本当にそれでよかったのか。
俺は帰路につきながら考える。

氷の勇者…レイ・アーツ一行は以前、迷宮を氷漬けにして俺の魔物図鑑をダメにした張本人だ。
それほどまでの力を持つものならドラゴンにも刃が届き得るのかもしれない。少なくとも冒険者組合ギルドはそう見ている。
俺も、戦闘力だけで判断するなら彼らほど頼りになるものは居ないだろう。

だが素行はどうだ。迷宮を所構わず迷宮を氷漬けにした奴らだぞ?できる限り迷宮をそのままの状態で保存しておきたい俺とは対極の存在にいる。彼らには迷宮の生態系などちっぽけでどうでもいいことなのだ。

いや…待てよ?

俺が案内役ということは俺が彼らをある程度コントロールできるのではないか?
何かに理由をつけて力を制御できれば、迷宮に変化もなく竜を退治できるかもしれない。
そんな甘い考えを持ちながら俺は家へ着いた。

差し当たっては大規模な準備が必要だな。

まずはポーション。それに再度迷宮の地図を確認。剣や防具の手入れに…竜となれば熱対策をどうするか…

俺はしばらく無心で作業をすることになった。



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