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第3章 竜と迷宮
岩窟その2
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羽音は大きくなったり小さくなったりをしている。遠かったり近づいたりしているのだ。
俺はナタリア達を連れて左の道を走っていった。この先の角を右へ曲がれば…
きた。ここはかなりの広さを持つホールのような空洞だ。縦の高さも申し分ない。
「ナタリア、灯りを。」
「…はい!」
ナタリアは上手く光を操りホールの隅を照らす。青白い壁が光を受けて反射する。よし、異常なしだ。
俺はホールの真ん中に印をつける。
「ペンタクール、ここを少しだけ傷つけてくれるか?」
「傷つける?」
「あぁ、地面に突きをして欲しいんだ。」
ペンタクールは頭にハテナを浮かべているが槍を構えて力を込める。集中している、側から見ても分かるほどペンタクールは気を研ぎ澄ませ…
「ハァッ!!」
一突き。
地面に垂直に落とされたその突きは、着弾の瞬間に風が巻き起こるほど重みのある突きだった。ペンタクールの槍は地面に刺さりヒビを造る。
「ありがとう」俺はそう告げヒビを掘り起こし、小さな穴を作った。
「鉱石の神よ、我が魔力を依代に我ら醜き人の子らに豊穣を授けたまえ。油の生成」
俺はその穴の中に黒い油をたっぷり流し込んだ。
「よし、準備はできたな。」
あとはタイミングだ。
「ここでしばらく待つぞ。」
3分ほど待つと急に羽音が大きくなるのを感じた。
「来たか、ペンタクール、ナタリア!壁を背にして武器を構えろ!!」
「はい!」
そして俺は火打石を擦り、火種を造る。そして俺はその火種を油の海へ投げ入れた。
轟々と燃える炎の火柱が上がる。火力が強いのですぐ無くなるが、その力は絶大だ。
羽音がさらに大きくなる。洞穴が揺れる。
「くるぞ!!!」
俺が叫ぶと同時に、数千匹の陽虻が突っ込んできた!!!多すぎて黒い大蛇のようなうねりを生んでいる。
「いやぁ!キモっ!!」
一匹一匹は非常に小さいが大群を成して飛ぶ羽虫。そんな羽虫を見てナタリアは絶叫する。
ペンタクールも口には出さないがドン引きしているご様子。
この二層でゾンビやグールなどのアンデットがいないのはコイツのおかげ。コイツが通るとその場には骨しか残らない。
さて、なんでこの生き物が陽虻、太陽の意味を含んでいるのか説明しよう。
答えは簡単。コイツらの行動原理は太陽を追い求めているからだ。暗い迷宮で。哀れな生態というか…虚しくなってくるほどに救いがない。故に、恐ろしいスピードで光に突っ込んでくる。
例えそれが彼らを焼き尽くす炎だとしても。
黒い羽虫の大群はそのまま火柱に突っ込んだ。
ジューっと肉が焼ける音。パチパチとそいつらの含んでた水分が爆ぜる音が聞こえてくる。
「うげぇっ」
ナタリアが嗚咽する。あたり一面に生き物の焦げる匂いが充満する。
1分ほど虫達は突っ込み続け、やがて煤だけがその場に残った。
「…っ」
あまりに儚すぎる虫の死に絶句するペンタクール。俺を見る目が少し変わったらしい。…多分悪い意味で。
「ちなみに、コイツらの素揚げは美味しいぞ。しゃりしゃりしてて。それじゃあ…次へ進もうか。」
以前、ドン引きしたままの2人を連れて俺たちは先へ進む。
アロギリオスの素揚げが美味しいというのは割と本当だ。
南方の国では普通に食卓に並ぶらしい。
俺たちはきた道を戻り、二層を歩き出した。二層にはスケルトン達の魔物部屋があるのでナタリアとペンタクールの場所を教え、そこを避けるように言った。
その後の動きは順調で、昼頃には三層に着くだろうと予想する。
20分ほど歩いていくと急に空気が変わるのを感じた。
「なんか…ひんやりしませんか??」
ナタリアが疑問に持って質問するとペンタクールがそれに答える。
「これは…不死者出現の前触れですね。彼らは死の魔法で動いているので、魔力があたりの空気にも影響を及ぼします。」
「そういうことだ。スケルトン種のどれかだろうな。人型ならラクなんだが」
俺は前方にランプを掲げる。
「ん?いない?」
目の前には何も見えず道は先へ続いていた。
「ローラン、右!!」
ナタリアの声が響く、俺は咄嗟に剣を構え左へ飛ぶ。ペンタクールが一歩前へ出て踏み込み、突きを放った。
グチャっと肉にぶち当たる音が聞こえ、一瞬沈黙が流れる。ナタリアが導火を操作し、その体を照らし出した。
…肉?スケルトンなのに?
「コイツは驚いた…」
「これって…」
俺とナタリアは目を見開く。そいつを俺たち2人は鮮明に覚えている。
非常に見覚えのあるそいつは全身の腐ったアンデット化した古代百足だった。
知覚した瞬間酷い腐乱臭が鼻を刺激する。あいも変わらず強酸を撒き散らして。
「よーし、逃げろ~~!!!!」
俺は2人の手を引っ張って第三層へ駆け込んだ!!
俺はナタリア達を連れて左の道を走っていった。この先の角を右へ曲がれば…
きた。ここはかなりの広さを持つホールのような空洞だ。縦の高さも申し分ない。
「ナタリア、灯りを。」
「…はい!」
ナタリアは上手く光を操りホールの隅を照らす。青白い壁が光を受けて反射する。よし、異常なしだ。
俺はホールの真ん中に印をつける。
「ペンタクール、ここを少しだけ傷つけてくれるか?」
「傷つける?」
「あぁ、地面に突きをして欲しいんだ。」
ペンタクールは頭にハテナを浮かべているが槍を構えて力を込める。集中している、側から見ても分かるほどペンタクールは気を研ぎ澄ませ…
「ハァッ!!」
一突き。
地面に垂直に落とされたその突きは、着弾の瞬間に風が巻き起こるほど重みのある突きだった。ペンタクールの槍は地面に刺さりヒビを造る。
「ありがとう」俺はそう告げヒビを掘り起こし、小さな穴を作った。
「鉱石の神よ、我が魔力を依代に我ら醜き人の子らに豊穣を授けたまえ。油の生成」
俺はその穴の中に黒い油をたっぷり流し込んだ。
「よし、準備はできたな。」
あとはタイミングだ。
「ここでしばらく待つぞ。」
3分ほど待つと急に羽音が大きくなるのを感じた。
「来たか、ペンタクール、ナタリア!壁を背にして武器を構えろ!!」
「はい!」
そして俺は火打石を擦り、火種を造る。そして俺はその火種を油の海へ投げ入れた。
轟々と燃える炎の火柱が上がる。火力が強いのですぐ無くなるが、その力は絶大だ。
羽音がさらに大きくなる。洞穴が揺れる。
「くるぞ!!!」
俺が叫ぶと同時に、数千匹の陽虻が突っ込んできた!!!多すぎて黒い大蛇のようなうねりを生んでいる。
「いやぁ!キモっ!!」
一匹一匹は非常に小さいが大群を成して飛ぶ羽虫。そんな羽虫を見てナタリアは絶叫する。
ペンタクールも口には出さないがドン引きしているご様子。
この二層でゾンビやグールなどのアンデットがいないのはコイツのおかげ。コイツが通るとその場には骨しか残らない。
さて、なんでこの生き物が陽虻、太陽の意味を含んでいるのか説明しよう。
答えは簡単。コイツらの行動原理は太陽を追い求めているからだ。暗い迷宮で。哀れな生態というか…虚しくなってくるほどに救いがない。故に、恐ろしいスピードで光に突っ込んでくる。
例えそれが彼らを焼き尽くす炎だとしても。
黒い羽虫の大群はそのまま火柱に突っ込んだ。
ジューっと肉が焼ける音。パチパチとそいつらの含んでた水分が爆ぜる音が聞こえてくる。
「うげぇっ」
ナタリアが嗚咽する。あたり一面に生き物の焦げる匂いが充満する。
1分ほど虫達は突っ込み続け、やがて煤だけがその場に残った。
「…っ」
あまりに儚すぎる虫の死に絶句するペンタクール。俺を見る目が少し変わったらしい。…多分悪い意味で。
「ちなみに、コイツらの素揚げは美味しいぞ。しゃりしゃりしてて。それじゃあ…次へ進もうか。」
以前、ドン引きしたままの2人を連れて俺たちは先へ進む。
アロギリオスの素揚げが美味しいというのは割と本当だ。
南方の国では普通に食卓に並ぶらしい。
俺たちはきた道を戻り、二層を歩き出した。二層にはスケルトン達の魔物部屋があるのでナタリアとペンタクールの場所を教え、そこを避けるように言った。
その後の動きは順調で、昼頃には三層に着くだろうと予想する。
20分ほど歩いていくと急に空気が変わるのを感じた。
「なんか…ひんやりしませんか??」
ナタリアが疑問に持って質問するとペンタクールがそれに答える。
「これは…不死者出現の前触れですね。彼らは死の魔法で動いているので、魔力があたりの空気にも影響を及ぼします。」
「そういうことだ。スケルトン種のどれかだろうな。人型ならラクなんだが」
俺は前方にランプを掲げる。
「ん?いない?」
目の前には何も見えず道は先へ続いていた。
「ローラン、右!!」
ナタリアの声が響く、俺は咄嗟に剣を構え左へ飛ぶ。ペンタクールが一歩前へ出て踏み込み、突きを放った。
グチャっと肉にぶち当たる音が聞こえ、一瞬沈黙が流れる。ナタリアが導火を操作し、その体を照らし出した。
…肉?スケルトンなのに?
「コイツは驚いた…」
「これって…」
俺とナタリアは目を見開く。そいつを俺たち2人は鮮明に覚えている。
非常に見覚えのあるそいつは全身の腐ったアンデット化した古代百足だった。
知覚した瞬間酷い腐乱臭が鼻を刺激する。あいも変わらず強酸を撒き散らして。
「よーし、逃げろ~~!!!!」
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