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第2章 迷宮の異変
新魔法を習得せよ
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「じゃあ私、行ってくるから。」
「お気をつけて。行ってらっしゃいませお嬢様。」
ローランさんと別れてから2日経った今、ナタリアはあるところへ出掛けていた。
ペンタクールは一週間は宿で安静にするようにルナさんに言われたので療養中だ。
私が出かけると言った時、意地でもついていこうとするペンタクールを説得するのにとても苦労した。
結局、ペンタクールの体調をどれだけ心配しているか涙の演説をしたら感動して引き下がってくれたが。
今から私が向かうところは王都近郊の街道だ。魔物はほとんど出現しないし、ただっぴろい草原が広がっている。
そこへ向かう目的は一つ。新しい魔法を習得したいからだ。
初めての迷宮探索は大失敗に終わった。ローランさんがいなければ2人とも死んでいた。我ながら不甲斐ない。
せめてもう少し魔法の扱いが上手ければピンチを切り抜けられたかもしれない。
今から魔法の威力を上げる練習と新しい魔法の練習をしよう。っと流石に街中で魔法をぶっ放すわけにもいかないので外へ向かっていたのだ。
「ここでいいかな?」
主要な街道から数分歩いたところにある草原に私は腰を下ろした。
まずは現状の私の使える魔法を整理しておこう。
私は手に魔力を込め、杖に浸透させる。
魔法というのは元となる魔力回路に全ての効能が記されている。そこをいじれば違う魔法にも変容したりするのだ。
頭の中に魔力回路を描いてそこへ魔力を流す。
そして詠唱を唱えることなく杖を前に出し
「閃光!!」
杖先から眩い光が飛び出した。日中にも関わらず、とてつもない量の光量でしばらく目が見えなくなる。
今のが私の最大光量。攻撃には使えないがひたすら汎用性の高い魔法なので気に入っている。
次に頭の中に思い浮かべた魔力回路を少し変えて魔力を流してみる。
次は威力を絞りに絞って消費魔力を少なくする。
「導火」
杖先から羽の生えた淡い光が飛び出し、私の周りをくるくると廻る。
これは閃光を省エネにし持続力を上げる魔法。小さな灯りとして利用できる。
私は覚えた魔法を無詠唱で唱えることができる。通常は詠唱することで自動的に魔力回路に魔力が流れ発動するのだが、逆に言えば手動で魔力回路に魔力をながしてしまえば魔法を発動できるというわけだ。
私はこれを頭で思い浮かべてやっている。
それなりに難しい技術らしく、初めてやった時にはいろんな人に褒められた。
だからと言って驕るつもりはない。実際死にかけたし。
次は攻撃魔法
私は杖に魔力を込める。杖の先に風の力が集まるのを感じる。
そして魔力回路でその魔力が渦を描くように設定する。
限界まで魔力を貯めて、一気に解き放つ。
「風の渦」
瞬間、突風が巻き起こり飄を形成する。
風は迷宮で作ったものよりも大きく重そうな石を上空へ吹き飛ばすほどだった。
突風で敵を突き飛ばし、落下死させる。凶悪かつ強力な魔法のはずなんだけど‥
空を飛んでる敵や体重の思う敵には効かないのが難点だ。
そういう意味でもう一つ魔法を覚えたい。
魔力回路の他に魔法を使う上で重要なことがある。
それは術者自身の魔力の性質だ。
魔法にはいろいろな属性というものがあり、魔法を使い続けると自身の魔力がその属性に変化していく。
そして性質の違う魔力で性質の異なる魔法は使えない。
簡単にいうと、炎の魔術師は水の魔法を使えないのだ。
私は今まで使ってきた魔法から風と光の性質を持っている。
が、定着しきっていないのでもう一属性なら手を出せるかもしれない。
魔法の属性は主に5つある。
火、水、風、光、闇だ。そしてその5つをベースとしてさらに分かれていくそうだ。
例えば光から雷、水から氷のように。ちなみに闇の派生の死の魔法は禁術として設定されている。
「うーんどの魔術に手を出そうかなぁ。」
私は貴族出身だった頃に買ってもらった魔術書。
「魔術教本」をペラペラめくり習得魔法を探す。
やっぱり仕留めきれない敵を倒せる火力が欲しいよなぁ。
となると、火か闇か…。水魔法と風魔法はバランスがいいが器用貧乏なところがある。
そして光と闇の魔力は決して共存することはない。
うーん、火の魔術か。火の魔術は原初の魔術と言われ、人類が初めて創り上げた魔術の一種である。それ故派生が最も多い魔術なのだ。
その分、火の魔術は魔力が定着しやすい。
私が火の魔術を覚えたら風や光の魔法に影響は出るのだろうか。
「ええーいままよ!やってみるしかない!」
教本のページをペラペラめくる。火の魔術は序章にまとめられていた。さすが原初の魔術。
本には魔術の説明と、詠唱、そして魔術回路の図が永遠と載っている。魔術回路はすごく複雑で覚えるには難しい。ゆえにそうポンポンと魔法の種類を増やせないので、しっかり魔法を吟味しなければならない。
火球は応用が効くし、多分火の魔術でも簡単な方だけど… どうせならもうちょっとカッコいいやつ…。
炎壁は防御系魔法だし…揺炎は…
魔法を見て、あれじゃないこれじゃないと悩んでいるだけで小一時間経ってしまった。
これじゃ決まらん!!
パラパラとページを流しちょうど止めたとこにすることにした。要するに運任せだ。
なんとでもいえー!
目を瞑りページを数枚めくる。
これだ!
私は眼を恐る恐る開ける。
炎塊
それは古代語で書かれた魔術。古代魔術は森林族の得意とする魔術である。
それが意味することはつまり、ヒュームにとっては非常に難しい魔術という事だ。
「そんなに難しい魔術は嫌なんだけどなぁ」
文句しか言わない私であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お嬢様首尾はどうですか?」
ペンタクールが鎧と槍を磨く手を止めて聞いてくる。
「ちっとも進んでません。なんだアレは。」
私は本と睨めっこしながら答えた。
アレとはもちろん炎塊のことである。
練習を始めて早3日。炎の塊どころか、火の粉すら出せていない。
「お嬢様、今日はそこら辺にして休息を取られては?明日はルナさんのところへ服を返しにいくのでしょう?」
「え、あーうん、もうちょっとだけ…明日はペンタも来るの?」
「お邪魔じゃなければご一緒させていただきたく…」
「じゃあ一緒に行こ!」
そう言って私は本に目を落とす。
うーん、やっぱり魔力が風と光の性質に染まりきってるからなのか…それとも魔力回路が複雑すぎて…
あれそれと思案しているうちに視界が暗くなった。
ペンタクールに灯りを消されたのだ。
「あー、暗いよー」
「良い子はもう寝る時間ですよお嬢様。また明日にしましょう。」
「良い子って私はもう17だぞ!結婚だってできるのに…」
「私にとっては17歳はお尻の青い子供です」
…10年後も言われてそうでなんか嫌だ。いいことを思いついた。少しばかり反抗してみる。
「ふーん、別に私にはこれがあるし」
そう言って私は手に魔力をこめる。
「導火」
私から生み出されたその光は私の周りを周り、やがて本を照らす温かい照明になった。
ペンタクールは「あっ」という表情をしたが何も言わなかった。なんやかんや私に甘いなペンタは。
さてさて、魔力回路を解読する続きでもやりますかね~
っと本を見ていると急にペンタクールに話しかけられた。
「お嬢様!それ…」
「ん?」
ペンタクールの示す方向をみる。そこには私の生んだ光球が…
…ん?特に変化も…
「あぁっ!!!!」
私は光球の本当に小さな異変を見つけた。光球の中心に本当に小さな羽虫ぐらいの大きさの炎が生まれていたのだ。
なるほど、私の魔力は炎の性質を持ち始めているようだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ルナさん居なかったね」
「ちょうど入れ違いだったそうです」
翌日、私たちはルナさんに借りていた服を返しに行ったのだが、ルナさんには会うことはできなかった。神殿の人に服とお礼を伝えてもらえるよう頼んできたところだ。
「ところで、そろそろ私も体を動かしたいのですが。体が鈍って仕方がありません。」
そう言ってペンタクールは槍を地面にドンとたてる。
「えー、一週間は安静にって言われてたでしょ?」
「軽い運動ぐらいならセーフなのでは?」
実際、蘇生時の血の気のなさとは裏腹にペンタクールは血色も良く、元気を持て余している…という感じだった。
私は特に反論することもなくいつもの練習場所へペンタクールを連れて行った。
さて、私の魔法はどうなっているのだろうか。私の魔力が火の性質を帯び始めた。逆に言えば今まで使えた魔法に支障をきたすかもしれない。
導火は仄かに暖かい光になったが…
私は杖に魔力を通す。思い浮かべる魔力回路は閃光のそれだ。
「さて、どうなることやら!閃光!!」
それは眩い白い光…ではなくほんのり赤いギラついた光が射出された。
「眩し!!うわぁ、痛、ってお嬢様!魔法撃つ時は事前に言ってください!」
原っぱをランニングしていたペンタクールから非難が飛んでくる。どうやら目が眩んで転んだようだ。
「ご、ごめん!次はいうから」
目をくらませる、といった効能には影響はなさそうで安心した。
「次は風起こすからねー」
一応言っておく、一応。
頭に思い浮かべるは旋風、杖に力を浸透させ風を作り出す。
「風の渦」
杖の先から風が吹き出し、巨大な旋風を創る!
ってあれ?なんだか風の渦が小さいような。
それになんだか暖かい、温風が吹き荒れる。
「え、嘘でしょ!?」
「お嬢様…これは…心地いいですね。なんて魔法ですか?」
「風の渦だけど…」
「ふむ、にしては威力がちょっと弱い気が…」
そう、私の魔力が火の特性をもったおかげか仕業か、私の唯一の攻撃魔法が温風製造機になってしまった。
ま、まじか。
これが色々な属性に手を出すことの危険性だ。今まで使えていた魔法が全く違うものになる可能性がある。
「もう一度!!風の渦」
今回は注ぎ込めるだけ魔力を注ぎ込んでみる。
っと本来の風の渦ができた。攻撃力は大丈夫…ただ…
消費魔力がデカすぎる。熱気に魔力のリソースを割かれてるんだ。
こうなると魔力回路をいじるぐらいしか解決策がない…が、それは非常に高度だしよりおかしくなるリスクもある。しばらくはコストの重い魔法だと捉えておくしかないかぁ。
さて、本命のあの魔法やってみますか。
杖に魔力を貯める。あの複雑な魔力回路を思い浮かべ、教本に載っている詠唱を口にする。
「起こりの火、始まりの炎。神より盗みしこの力。悠久の時を経てここに顕さん。」
周りを流れる魔力が変わった。古びた、物悲しい色だ。
杖の先にどんどん魔力が集まっていき……
雰囲気が変わった!いける!!
私は杖の先を遠くの岩に向けて魔法を放とうとする
「ふぎゃぁ!?」
杖の先端で小さな爆発を起こし私は後ろに倒れた。
その拍子に頭をぶつける。
し、失敗だ。
「なんなのよー!!!」
頭を抑えながら酷く嘆くナタリアであった。
「お気をつけて。行ってらっしゃいませお嬢様。」
ローランさんと別れてから2日経った今、ナタリアはあるところへ出掛けていた。
ペンタクールは一週間は宿で安静にするようにルナさんに言われたので療養中だ。
私が出かけると言った時、意地でもついていこうとするペンタクールを説得するのにとても苦労した。
結局、ペンタクールの体調をどれだけ心配しているか涙の演説をしたら感動して引き下がってくれたが。
今から私が向かうところは王都近郊の街道だ。魔物はほとんど出現しないし、ただっぴろい草原が広がっている。
そこへ向かう目的は一つ。新しい魔法を習得したいからだ。
初めての迷宮探索は大失敗に終わった。ローランさんがいなければ2人とも死んでいた。我ながら不甲斐ない。
せめてもう少し魔法の扱いが上手ければピンチを切り抜けられたかもしれない。
今から魔法の威力を上げる練習と新しい魔法の練習をしよう。っと流石に街中で魔法をぶっ放すわけにもいかないので外へ向かっていたのだ。
「ここでいいかな?」
主要な街道から数分歩いたところにある草原に私は腰を下ろした。
まずは現状の私の使える魔法を整理しておこう。
私は手に魔力を込め、杖に浸透させる。
魔法というのは元となる魔力回路に全ての効能が記されている。そこをいじれば違う魔法にも変容したりするのだ。
頭の中に魔力回路を描いてそこへ魔力を流す。
そして詠唱を唱えることなく杖を前に出し
「閃光!!」
杖先から眩い光が飛び出した。日中にも関わらず、とてつもない量の光量でしばらく目が見えなくなる。
今のが私の最大光量。攻撃には使えないがひたすら汎用性の高い魔法なので気に入っている。
次に頭の中に思い浮かべた魔力回路を少し変えて魔力を流してみる。
次は威力を絞りに絞って消費魔力を少なくする。
「導火」
杖先から羽の生えた淡い光が飛び出し、私の周りをくるくると廻る。
これは閃光を省エネにし持続力を上げる魔法。小さな灯りとして利用できる。
私は覚えた魔法を無詠唱で唱えることができる。通常は詠唱することで自動的に魔力回路に魔力が流れ発動するのだが、逆に言えば手動で魔力回路に魔力をながしてしまえば魔法を発動できるというわけだ。
私はこれを頭で思い浮かべてやっている。
それなりに難しい技術らしく、初めてやった時にはいろんな人に褒められた。
だからと言って驕るつもりはない。実際死にかけたし。
次は攻撃魔法
私は杖に魔力を込める。杖の先に風の力が集まるのを感じる。
そして魔力回路でその魔力が渦を描くように設定する。
限界まで魔力を貯めて、一気に解き放つ。
「風の渦」
瞬間、突風が巻き起こり飄を形成する。
風は迷宮で作ったものよりも大きく重そうな石を上空へ吹き飛ばすほどだった。
突風で敵を突き飛ばし、落下死させる。凶悪かつ強力な魔法のはずなんだけど‥
空を飛んでる敵や体重の思う敵には効かないのが難点だ。
そういう意味でもう一つ魔法を覚えたい。
魔力回路の他に魔法を使う上で重要なことがある。
それは術者自身の魔力の性質だ。
魔法にはいろいろな属性というものがあり、魔法を使い続けると自身の魔力がその属性に変化していく。
そして性質の違う魔力で性質の異なる魔法は使えない。
簡単にいうと、炎の魔術師は水の魔法を使えないのだ。
私は今まで使ってきた魔法から風と光の性質を持っている。
が、定着しきっていないのでもう一属性なら手を出せるかもしれない。
魔法の属性は主に5つある。
火、水、風、光、闇だ。そしてその5つをベースとしてさらに分かれていくそうだ。
例えば光から雷、水から氷のように。ちなみに闇の派生の死の魔法は禁術として設定されている。
「うーんどの魔術に手を出そうかなぁ。」
私は貴族出身だった頃に買ってもらった魔術書。
「魔術教本」をペラペラめくり習得魔法を探す。
やっぱり仕留めきれない敵を倒せる火力が欲しいよなぁ。
となると、火か闇か…。水魔法と風魔法はバランスがいいが器用貧乏なところがある。
そして光と闇の魔力は決して共存することはない。
うーん、火の魔術か。火の魔術は原初の魔術と言われ、人類が初めて創り上げた魔術の一種である。それ故派生が最も多い魔術なのだ。
その分、火の魔術は魔力が定着しやすい。
私が火の魔術を覚えたら風や光の魔法に影響は出るのだろうか。
「ええーいままよ!やってみるしかない!」
教本のページをペラペラめくる。火の魔術は序章にまとめられていた。さすが原初の魔術。
本には魔術の説明と、詠唱、そして魔術回路の図が永遠と載っている。魔術回路はすごく複雑で覚えるには難しい。ゆえにそうポンポンと魔法の種類を増やせないので、しっかり魔法を吟味しなければならない。
火球は応用が効くし、多分火の魔術でも簡単な方だけど… どうせならもうちょっとカッコいいやつ…。
炎壁は防御系魔法だし…揺炎は…
魔法を見て、あれじゃないこれじゃないと悩んでいるだけで小一時間経ってしまった。
これじゃ決まらん!!
パラパラとページを流しちょうど止めたとこにすることにした。要するに運任せだ。
なんとでもいえー!
目を瞑りページを数枚めくる。
これだ!
私は眼を恐る恐る開ける。
炎塊
それは古代語で書かれた魔術。古代魔術は森林族の得意とする魔術である。
それが意味することはつまり、ヒュームにとっては非常に難しい魔術という事だ。
「そんなに難しい魔術は嫌なんだけどなぁ」
文句しか言わない私であった。
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「お嬢様首尾はどうですか?」
ペンタクールが鎧と槍を磨く手を止めて聞いてくる。
「ちっとも進んでません。なんだアレは。」
私は本と睨めっこしながら答えた。
アレとはもちろん炎塊のことである。
練習を始めて早3日。炎の塊どころか、火の粉すら出せていない。
「お嬢様、今日はそこら辺にして休息を取られては?明日はルナさんのところへ服を返しにいくのでしょう?」
「え、あーうん、もうちょっとだけ…明日はペンタも来るの?」
「お邪魔じゃなければご一緒させていただきたく…」
「じゃあ一緒に行こ!」
そう言って私は本に目を落とす。
うーん、やっぱり魔力が風と光の性質に染まりきってるからなのか…それとも魔力回路が複雑すぎて…
あれそれと思案しているうちに視界が暗くなった。
ペンタクールに灯りを消されたのだ。
「あー、暗いよー」
「良い子はもう寝る時間ですよお嬢様。また明日にしましょう。」
「良い子って私はもう17だぞ!結婚だってできるのに…」
「私にとっては17歳はお尻の青い子供です」
…10年後も言われてそうでなんか嫌だ。いいことを思いついた。少しばかり反抗してみる。
「ふーん、別に私にはこれがあるし」
そう言って私は手に魔力をこめる。
「導火」
私から生み出されたその光は私の周りを周り、やがて本を照らす温かい照明になった。
ペンタクールは「あっ」という表情をしたが何も言わなかった。なんやかんや私に甘いなペンタは。
さてさて、魔力回路を解読する続きでもやりますかね~
っと本を見ていると急にペンタクールに話しかけられた。
「お嬢様!それ…」
「ん?」
ペンタクールの示す方向をみる。そこには私の生んだ光球が…
…ん?特に変化も…
「あぁっ!!!!」
私は光球の本当に小さな異変を見つけた。光球の中心に本当に小さな羽虫ぐらいの大きさの炎が生まれていたのだ。
なるほど、私の魔力は炎の性質を持ち始めているようだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ルナさん居なかったね」
「ちょうど入れ違いだったそうです」
翌日、私たちはルナさんに借りていた服を返しに行ったのだが、ルナさんには会うことはできなかった。神殿の人に服とお礼を伝えてもらえるよう頼んできたところだ。
「ところで、そろそろ私も体を動かしたいのですが。体が鈍って仕方がありません。」
そう言ってペンタクールは槍を地面にドンとたてる。
「えー、一週間は安静にって言われてたでしょ?」
「軽い運動ぐらいならセーフなのでは?」
実際、蘇生時の血の気のなさとは裏腹にペンタクールは血色も良く、元気を持て余している…という感じだった。
私は特に反論することもなくいつもの練習場所へペンタクールを連れて行った。
さて、私の魔法はどうなっているのだろうか。私の魔力が火の性質を帯び始めた。逆に言えば今まで使えた魔法に支障をきたすかもしれない。
導火は仄かに暖かい光になったが…
私は杖に魔力を通す。思い浮かべる魔力回路は閃光のそれだ。
「さて、どうなることやら!閃光!!」
それは眩い白い光…ではなくほんのり赤いギラついた光が射出された。
「眩し!!うわぁ、痛、ってお嬢様!魔法撃つ時は事前に言ってください!」
原っぱをランニングしていたペンタクールから非難が飛んでくる。どうやら目が眩んで転んだようだ。
「ご、ごめん!次はいうから」
目をくらませる、といった効能には影響はなさそうで安心した。
「次は風起こすからねー」
一応言っておく、一応。
頭に思い浮かべるは旋風、杖に力を浸透させ風を作り出す。
「風の渦」
杖の先から風が吹き出し、巨大な旋風を創る!
ってあれ?なんだか風の渦が小さいような。
それになんだか暖かい、温風が吹き荒れる。
「え、嘘でしょ!?」
「お嬢様…これは…心地いいですね。なんて魔法ですか?」
「風の渦だけど…」
「ふむ、にしては威力がちょっと弱い気が…」
そう、私の魔力が火の特性をもったおかげか仕業か、私の唯一の攻撃魔法が温風製造機になってしまった。
ま、まじか。
これが色々な属性に手を出すことの危険性だ。今まで使えていた魔法が全く違うものになる可能性がある。
「もう一度!!風の渦」
今回は注ぎ込めるだけ魔力を注ぎ込んでみる。
っと本来の風の渦ができた。攻撃力は大丈夫…ただ…
消費魔力がデカすぎる。熱気に魔力のリソースを割かれてるんだ。
こうなると魔力回路をいじるぐらいしか解決策がない…が、それは非常に高度だしよりおかしくなるリスクもある。しばらくはコストの重い魔法だと捉えておくしかないかぁ。
さて、本命のあの魔法やってみますか。
杖に魔力を貯める。あの複雑な魔力回路を思い浮かべ、教本に載っている詠唱を口にする。
「起こりの火、始まりの炎。神より盗みしこの力。悠久の時を経てここに顕さん。」
周りを流れる魔力が変わった。古びた、物悲しい色だ。
杖の先にどんどん魔力が集まっていき……
雰囲気が変わった!いける!!
私は杖の先を遠くの岩に向けて魔法を放とうとする
「ふぎゃぁ!?」
杖の先端で小さな爆発を起こし私は後ろに倒れた。
その拍子に頭をぶつける。
し、失敗だ。
「なんなのよー!!!」
頭を抑えながら酷く嘆くナタリアであった。
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