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第1章 迷宮案内人ローラン
戦闘
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先に言っておくが俺は戦闘が特別得意なわけでは無い。
魔法は使えるが魔力が少ないため継戦能力は皆無、剣の腕には自信があるが弓は不得意。
と自分が生きていくだけで精一杯のスペックである。
そもそも魔物の生態を調べて、レッサーバットのように対処すれば戦闘自体が発生しないため戦闘を避ける方向で生きてきたのだ。
「コイツはちょっと…厳しいか?」
悲鳴の方向へ走っていくにつれてバサバサと言うコウモリの羽音が増えていく。
どうやら湖に生息するレッサーバットの大半に追いかけられているようだ。
それに先ほど聞こえた女の悲鳴も聞こえなくなっている。
もう食われている可能性も考慮しないといけない。
肉体の損傷が激しいと神官の蘇生魔法も通らない。
「頼むから死んでくれるなよ…」
二つほど横穴を抜けると事態の全容が見えてきた。
そこは大きな竪穴。円形の広間の上を見ると20mほどの高さがある。
中央には濃い桃色の長髪で髪を結っている、杖を持った若い女が立っていた。女の足、肩、腕など数箇所に咬み傷が見られる。
女の杖の先には魔力が込められていて、上空を飛んでいる20~30匹のレッサーバットたちはその魔法を警戒しているようだ
思ったよりも数が少ない上に女が魔法を使える状態で生きている。
これはまだ勝機があるな。
俺は女の方を向き声をかける。
「状況はッ!!」
「ッ!!!!えっとえぇっと、仲間がコウモリの大群を引き連れて奥に!私ッ…は、魔法数回分の魔力があります!」
女はかなり混乱状態かつ消耗しきっているようだが正気は保っている様子だ。
俺は剣を抜いて女の近くに駆け寄る。 匂いをカモフラージュしたおかげで近くまで敵意を持たれず近づくことができた。
上空にいた2匹のレッサーバットが体当たりをしてきたので1匹を切り落とし、もう1匹を拳でいなす。いなしたレッサーバットは勢い余って女の足元に落ちた。
「うわっ!」
「君がどんな種類の魔法が使えるか教えてくれ!」
「えっと…風魔法と閃光が使えます!」
足元に来たレッサーバットを避けつつ女が答えた。
「風魔法の威力は?」
「強めの 飆ぐらいです!」
女の言葉を聞いて俺は思案する。
閃光は文字通りとてつもない明るさの光を生み出し相手の視界を奪う魔術だ。一見レッサーバットに効きそうだがあいつらは目が悪いのであまり効果がない。
…となると風魔法か。風であいつらを巻き込んで撃ち落とせば…嫌、飆程度なら数秒で逃げ出されてしまうな。
うーん困ったな、このままだとジリ貧で負けることになる。
現在はレッサーバットと睨み合いをしている状況だ。
「うおっ!」
6体のレッサーバットが一斉に襲いかかってきた!
俺は剣を横に薙ぎ払う。体重の乗った刃はレッサーバット3体の体を横に切り裂いた。が、残りの3体は上下に分かれて俺に体当たりを仕掛けてきた。
「ちっ」
躱すと後ろの女が被害を受けるので受けるしかないか…
「光よ!閃光!!!」
瞬間、俺の背後から真っ白の燦々と輝く光が差し込む。
いくら目が悪いといっても至近距離で大量の光を喰らえば効果は出る。
俺の頭に噛みつこうとした2体、足を噛もうとした1体のレッサーバットは光爆弾を受け失神したようだ。
「君…いい判断だ」
「い、いえ」
俺は懐から短剣を抜き足元のコウモリにトドメをさす。
残りのレッサーバットは20体ほど、先ほどの閃光を受け少し警戒して上を旋回している。
レッサーバットの弱点を思い出せ…!まず1番に思いつくのは羽を無効化できる雷魔法か氷魔法だ。が、俺の魔法のレパートリーにそんなものはない。後ろの彼女も同様だろう。 次に思いつくのは火だ。大抵の魔物は炎を嫌う習性がある。というか人間含め大抵の生物は火に耐性がない。
炎はランタンの火がある。あと手元の油を使えば…
いやレッサーバットは上空を飛んでいるんだ。どうやって火を届ける。
いや、待てよ、あれを使えば………
「君、魔法の準備を。俺が合図出したら飆を起こして。」
俺は持っていた油を地面にぶちまけ油の水溜りを作る。
「ダメ押しだ、鉱石の神よ、我が魔力を依代に我ら醜き人の子らに豊穣を授けたまえ。油の生成」
黒いドロドロとしたオイルが地面に生成され水溜まりが大きくなった。
俺は急いでランタンから火を取り出し投げ入れる。
黒い液体はたちまち燃え上がり、腰ぐらいまでの高さの火柱を作った。
「今だ、風魔法を使って上へ炎を届けろ!!!」
俺は後ろを向き女の青い目を見る。
「は、はい!風の渦!」
炎の柱を中心に風が徐々に巻き起こって炎が風に乗る。
炎は渦巻きながら大きくなりやがてレッサーバットの大群を飲み込んだ。
ゴウゴウと燃え盛る中に肉の焼ける匂い。
やがて風の渦が解かれた頃には焦げ落ちたレッサーバットの死体が散乱していた。
俺は炎の難を逃れた数匹のレッサーバットに向かって短剣を投げ仕留める。
あたりに静寂が立ち込めた。
聞こえるのは女の肩で息をする音のみ。
まずは一難、乗り越えたようだ。
魔法は使えるが魔力が少ないため継戦能力は皆無、剣の腕には自信があるが弓は不得意。
と自分が生きていくだけで精一杯のスペックである。
そもそも魔物の生態を調べて、レッサーバットのように対処すれば戦闘自体が発生しないため戦闘を避ける方向で生きてきたのだ。
「コイツはちょっと…厳しいか?」
悲鳴の方向へ走っていくにつれてバサバサと言うコウモリの羽音が増えていく。
どうやら湖に生息するレッサーバットの大半に追いかけられているようだ。
それに先ほど聞こえた女の悲鳴も聞こえなくなっている。
もう食われている可能性も考慮しないといけない。
肉体の損傷が激しいと神官の蘇生魔法も通らない。
「頼むから死んでくれるなよ…」
二つほど横穴を抜けると事態の全容が見えてきた。
そこは大きな竪穴。円形の広間の上を見ると20mほどの高さがある。
中央には濃い桃色の長髪で髪を結っている、杖を持った若い女が立っていた。女の足、肩、腕など数箇所に咬み傷が見られる。
女の杖の先には魔力が込められていて、上空を飛んでいる20~30匹のレッサーバットたちはその魔法を警戒しているようだ
思ったよりも数が少ない上に女が魔法を使える状態で生きている。
これはまだ勝機があるな。
俺は女の方を向き声をかける。
「状況はッ!!」
「ッ!!!!えっとえぇっと、仲間がコウモリの大群を引き連れて奥に!私ッ…は、魔法数回分の魔力があります!」
女はかなり混乱状態かつ消耗しきっているようだが正気は保っている様子だ。
俺は剣を抜いて女の近くに駆け寄る。 匂いをカモフラージュしたおかげで近くまで敵意を持たれず近づくことができた。
上空にいた2匹のレッサーバットが体当たりをしてきたので1匹を切り落とし、もう1匹を拳でいなす。いなしたレッサーバットは勢い余って女の足元に落ちた。
「うわっ!」
「君がどんな種類の魔法が使えるか教えてくれ!」
「えっと…風魔法と閃光が使えます!」
足元に来たレッサーバットを避けつつ女が答えた。
「風魔法の威力は?」
「強めの 飆ぐらいです!」
女の言葉を聞いて俺は思案する。
閃光は文字通りとてつもない明るさの光を生み出し相手の視界を奪う魔術だ。一見レッサーバットに効きそうだがあいつらは目が悪いのであまり効果がない。
…となると風魔法か。風であいつらを巻き込んで撃ち落とせば…嫌、飆程度なら数秒で逃げ出されてしまうな。
うーん困ったな、このままだとジリ貧で負けることになる。
現在はレッサーバットと睨み合いをしている状況だ。
「うおっ!」
6体のレッサーバットが一斉に襲いかかってきた!
俺は剣を横に薙ぎ払う。体重の乗った刃はレッサーバット3体の体を横に切り裂いた。が、残りの3体は上下に分かれて俺に体当たりを仕掛けてきた。
「ちっ」
躱すと後ろの女が被害を受けるので受けるしかないか…
「光よ!閃光!!!」
瞬間、俺の背後から真っ白の燦々と輝く光が差し込む。
いくら目が悪いといっても至近距離で大量の光を喰らえば効果は出る。
俺の頭に噛みつこうとした2体、足を噛もうとした1体のレッサーバットは光爆弾を受け失神したようだ。
「君…いい判断だ」
「い、いえ」
俺は懐から短剣を抜き足元のコウモリにトドメをさす。
残りのレッサーバットは20体ほど、先ほどの閃光を受け少し警戒して上を旋回している。
レッサーバットの弱点を思い出せ…!まず1番に思いつくのは羽を無効化できる雷魔法か氷魔法だ。が、俺の魔法のレパートリーにそんなものはない。後ろの彼女も同様だろう。 次に思いつくのは火だ。大抵の魔物は炎を嫌う習性がある。というか人間含め大抵の生物は火に耐性がない。
炎はランタンの火がある。あと手元の油を使えば…
いやレッサーバットは上空を飛んでいるんだ。どうやって火を届ける。
いや、待てよ、あれを使えば………
「君、魔法の準備を。俺が合図出したら飆を起こして。」
俺は持っていた油を地面にぶちまけ油の水溜りを作る。
「ダメ押しだ、鉱石の神よ、我が魔力を依代に我ら醜き人の子らに豊穣を授けたまえ。油の生成」
黒いドロドロとしたオイルが地面に生成され水溜まりが大きくなった。
俺は急いでランタンから火を取り出し投げ入れる。
黒い液体はたちまち燃え上がり、腰ぐらいまでの高さの火柱を作った。
「今だ、風魔法を使って上へ炎を届けろ!!!」
俺は後ろを向き女の青い目を見る。
「は、はい!風の渦!」
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炎は渦巻きながら大きくなりやがてレッサーバットの大群を飲み込んだ。
ゴウゴウと燃え盛る中に肉の焼ける匂い。
やがて風の渦が解かれた頃には焦げ落ちたレッサーバットの死体が散乱していた。
俺は炎の難を逃れた数匹のレッサーバットに向かって短剣を投げ仕留める。
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