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第一章 夢の続き
⑤かつてない恐怖と、もう一度見る夢
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いやだ。
いやだ。
隣のおじさんから送られてきた住所を頼りに、俺は夜の街を立ち漕ぎで急いでいた。
母さんが倒れただって?
母さんが、目を覚まさないだって?
未だかつて感じたことのない恐怖が、全身を駆け巡る。
キーッ!
出会い頭、交差点から飛び出してきた自転車とぶつかりそうになる。
「すいません!」
俺は慌てて停止して相手に謝罪するなり、スマホでナビを再びチェックした。あと、十分もあれば着く。
母さん。
母さん。
俺は念じるように、頭の中で何度もそう唱えた。
助かるに決まってる。大丈夫に決まってる。父さんに続いて母さんまで……そんなこと!母さんが、いなくなるわけがない。死んでしまうわけなんてない。
ただそれだけを信じて、ひたすらに自転車を漕ぎ続けた。
我ながら、素晴らしい速さで病院に辿り着く。正面玄関は閉まっていたので、裏手の夜間通用口まで回る。通用口横の警備員室に明かりが灯っているのを見つけると、俺はそこへ自転車で滑り込みながら叫んだ。
「あの!さっき、この病院に母親が運び込まれたそうなんです!通してください!」
唐突な呼びかけに、驚いた表情で警備員が小窓から顔を出す。
「ああ、はいはい。今開けますから」腰につけた鍵をジャラジャラ鳴らしながら、部屋から出てくる。「入ってすぐ右奥に待合室があります。今、看護師さんに連絡を取るので、お名前を……」
「沢渡です。沢渡、圭子です」
「……サワタリケイコさん。わかりました。じゃあ、中でお待ちください」
警備員はそう言って夜間通用口を開けた。
「ありがとうございます」
俺は礼を言って、すぐさま中に入った。入るなり、病院特有の清潔な匂いというか、薬品のような匂いがして、不安感がますます煽られる気がした。
「颯くん!」
看護師に連れられて病室前までやってきた俺を、おじさんは立ち上がって迎えた。
「おじさん! 母さんは……母さんの意識は……」
「ちょうど電話を切った後すぐに目を覚まして、この病室に移動したところだよ。神経調節性失神、という一過性のものらしい。……きっと疲れてたんだろう、沢渡さん。倒れた時に軽く頭を打ったようだから、念のため明日、他の精密検査も行うそうだ」
俺はそれを聞いて肩で息をしながら、すぐに膝から崩れ落ちた。
「……よかった。無事、なんですね……」
生きた心地がしないとはこの事だった。とにかく母さんの意識が戻ったと聞いて、俺はようやく安堵する事ができた。
「颯にいちゃん」
おじさんの隣で座っていた麻耶ちゃんが、心配そうに駆け寄ってきて顔を覗き込んでくる。
「麻耶が、階段で倒れる音を聞いたんだ」
おじさんは麻耶ちゃんの肩に手を触れながら言った。
「そう、だったんですか。……麻耶ちゃん、ありがとう」
麻耶ちゃんが目に涙を溜めて首を振る。
「ううん。おばさん、目を覚まして本当に良かった」
俺はゆっくりと立ち上がるなり、おじさんに深々と頭を下げた。
「本当に、助かりました。ありがとうございます」
「いやいや、とんでもないよ。普段お世話になっているから、こういう形とは言えお役に立てて本望さ」おじさんはそう言って、病室を一瞥した。「さぁ、颯くん。手前の左側のベッドだ」
俺は頷くと、ゴクリと生唾を飲み込んでから病室の引き戸を開いた。
病室には四つのベッドがあり、それぞれカーテンで間仕切られている。
俺はおじさんに言われた通り、入ってすぐ左のカーテンの向こうへ声をかけた。
「……母さん」
すぐに、返事が帰ってくる。
「颯?」
俺はカーテンを少し開けて、中を覗き込んんだ。
「母さん、心配したよ!」
「……まぁまぁ。なんて顔してるの」
母さんは布団の中で俺の顔を見つけるなり、いつもの調子で明るく言って上体を起こそうとした。
「いいよ、寝てて。電話もらってびっくりしたよ。……介護の仕事、無理しすぎたんじゃないの?」
母さんは俺の制止に従って、そのまま再び横になった。
「そんなこと。ちょっと、疲れが溜まってただけよ」母さんはそう言うと視線を俺から天井に移した。「父さんが死んでから、ずっと働き詰めだったからね。もう、四年以上も経つのに」
俺は黙って母さんの言葉を聞きながら、ベッド脇の折りたたみ椅子に腰をかけた。
「金銭的に余裕が無いわけじゃなかったわ。ただ、考えたり悩んだりする暇が欲しくなかっただけ。だから、必死に働いたのよ」母さんは、まるで独り言のように呟いた。「……今でも、ふとした瞬間に思うの。あの人が、ひょっこり帰ってくるんじゃないか、って。ただいま、って、あの住み慣れたアパートの玄関のドアを開けて、いつか帰ってくるんじゃないか、って。それで、私はいつも通り言うのよ。おかえり。随分遅かったじゃない、ってね」
弱音なんて吐いたことのなかった母さん。いつも、笑顔で明るく笑っていた母さん。それは、初めて耳にする母さんの本音だった。
父さんの死後、小五だった俺は何日も何日も泣き続けていた。母さんはそんな俺を何日も何日も励まし続けた。日常の中で父さんを思い出す何かに触れるたび、幼な子のようにぐずって母さんを困らせた。
……そんな中、俺が母さんを守らなきゃいけないんだ、とようやく気付く事ができたのは、ある日の夜中に目を覚ました時、隣の布団の中で一人、むせび泣く母さんの姿を見てからだった。
「颯」
つい物思いにふけっていると、母さんがまたこちらを見て言った。
「……ん? 何?」
「柔道……また、始めなさい」
俺は、母さんの突然の言葉に驚いた。
「な、なんだよ急に」
「父さん、言ってたの。いつか必ず、颯が柔道につまづく時が来るって。そうなっても、決して手を貸すな、って。颯が自分で立ち上がろうとした時にだけ、背中を押してやってくれ、って。……だけどね。最近のあなたを見てると、辛くなるのよ。バイトまで始めて、無理にでも柔道を忘れようとして、私を助けようとしてくれる、その姿が」
「俺は、別に……」
母さんの瞳の光が強くなる。
「あんな事があったんだから、あなたの気持ちもわかるわ。でも、それを乗り越えるのもあなたの柔道の道なんじゃないの?それを背負ってまた進んでいくのが、あなたの柔道の道なんじゃないの?父さんと約束した、オリンピックで金メダルを獲るための、神様がくれた試練なんじゃないの?颯」
「……母、さん」
自分でも、振り絞って出した声が震えているのがわかった。
「母さんね。今日倒れて、目を覚ましてまず最初に思ったの。また、颯に柔道をやってもらいたい、って。それを伝えるまでは死ねない、ってね。……だから大丈夫。もう絶対、無理はしないわ。約束する。父さんも、きっとあなたが柔道続ける事を望んでるに決まってるんだから」
母さんの言葉で、心の中でほとんど消えかけていたはずの情熱の火種が、ボウッと一瞬だけ小さく燃え上がった気がした。
「お金の事は本当に大丈夫。父さんの遺してくれた蓄えと私の稼ぎを合わせれば、あなたを大学まで卒業させるには十分よ。……あなたの背負い投げ、もう一度母さんと父さんに見せてちょうだい。お願いよ、颯」
布団から手を出して、そう言いながら母さんが俺の手を強く握った。
掌から、母さんの命の温もりが伝わる。腕を通って、心臓にまで伝わって、そこから、全身にエナジーが行き渡っていくのを感じる。そこにはきっと、いなくなった父さんの想いも込められている。なぜだか、そんな風に思えた。
しばしの沈黙の後、ようやく口を開く。
「……明日、バイト先に辞める事伝えてくる」
俺は、母さんの手を強く握り返しつつ静かに言った。燃え上がった気がした情熱の炎を、今度ははっきりと自分の中に捉えながら。
……ずっと見失っていた、心の中の滑走路。それをもう一度見つけ出し、再び自分の両足でしっかりと立つ事を、堅く、堅く、決意した夜だった。
「おいおいマジかよ! 入部すんのか、沢渡!」
次の日の月曜日。朝の教室で俺の言葉を聞いて、源田がいつもの「マジかよ」を枕詞につけて驚いた。
「ああ。今日バイト先に辞めるの伝えて、明日、入部届け出しに行く」
俺はリュックから、学校前のコンビニで買った紙パックのバナナオレを取り出しながら答えた。
「もちろんそりゃ歓迎はするけどよ。どういう風の吹き回しだ、伊吹野が県大会行きを決めたからか?」
「それもなくはないけど、別の理由さ」
源田は、あっけにとられた表情を隠さないまま、さらに聞いた。
「まさか、団体戦レギュラーになる気か? うちの部が大会前には必ずメンバー決定戦やるって知ってて、お前……」
「もちろんだ。伊吹野は年功序列じゃなく、実力主義。だろう?」
俺はバナナオレにストローを突き刺すと、チュウチュウと勢いよく吸い上げた。
「確か、一年以上ブランクあるって言ってたよな。……数は少ないけど、うちの先輩方は滅茶苦茶強いぜ」
「わかってるさ。地区優勝するぐらいなんだからな。大丈夫。柔道は辞めてたけど、ずっと鍛えてたから」
「だからって、凄い自信だな。廣瀬から散々お前の実力については聞かされてたけど」
「……源田、知ってるか? 本気で好きな事からは、離れる時期も必要なんだ」
俺は玉井さんの言葉を思い出しながら、悟ったように言う。
その言葉を聞いたきり、源田はもう黙りこくってしまった。
「そんなこと、急に言われてもねぇ。もう来週いっぱいまでのシフトも決まってるし……」
放課後、俺は学校から地元に戻ると早速バイト先のコンビニへ向かい、バックヤードにいた店長に事情を話していた。
「どうしても穴があいてしまうところには、出勤します。その分のバイト代も要りません。勝手なこと言ってるのはわかってますが、お願いします!」
俺はまくし立てるように言って頭を下げた。
「そういう問題じゃ……もっと事前に言ってもらわなきゃ、新しい求人も出さないといけないんだよ」
「はい……でも、なんとかなりませんか」
県大会まで一ヶ月。一日でも多く、稽古に回したかった。
「あんまりにも勝手すぎるよ、沢渡くん。せめてひと月前に言ってもらわなきゃ」
……やっぱり、無茶だったか……。俺がそう思いかけた時だった。
「俺がいけるとこは全部代わりに入りますって。お袋さんが倒れたんですよ、店長。そんな言い方はあんまりっすよ」
勤務中だった玉井さんが、いつものようにひょっこりバックヤードに顔を出して助け船を出してくれたのだ。
「まぁ、ねぇ。事情が事情だからねぇ。だからって、辞める事はないんじゃないの?」
「それは……」
「まぁいいじゃないですか店長。電話じゃなくて直接言いに来てる沢渡に免じて、了解してやって下さいよ。なんとかなるでしょう、他にもバイトはいるんだし。……あ、いらっしゃいませー!」
玉井さんはそう言い残すと、客が来たらしいレジに向かった。
「ふーむ。……仕方ないなぁ。わかったよ。君はよくやってくれてたから、いなくなるのは困るけどねぇ。でも、本当に来週いっぱいまでは代わりに人が入れない日は来てくれるかい?」
俺は店長の言葉に、歓喜して声を上げた。
「は、はい! もちろんです。ありがとうございます、店長!」
「まったく、若い子はこれだから……。じゃあ、また連絡するから」
店長は頭をポリポリとかきながら、呆れたように言った。
「わかりました。本当に、ありがとうございます。……じゃあ、失礼します」
俺はもう一度頭を下げると、内心は本当に申し訳ない気持ちを抱えながらバックヤードを出た。
「ありがとうございましたーっ」
ちょうど、玉井さんがレジを終えて客が帰るところだった。
「……玉井さん、さっきはありがとうございました。めっちゃ、助かりました」
「おう。いいってことよ。少年よ、大志を抱け! ってやつだ」玉井さんは茶色くて長い髪をかき上げながら笑った。「柔道、またやるんだろ? でかい試合の時は呼べよ、見に行くから」
それを聞いて、俺はなんだか目頭が熱くなるような気がした。
「はい……。ありがとうございます。俺も、玉井さんのライブ、必ず見に行きますから」
「ああ。まぁ、これからもライブは続けるから、都合つけばでいいさ。……お袋さんに、よろしくな」
「ええ、伝えときます。失礼します!」
店長に下げた頭より深い角度でお辞儀すると、俺は意気揚々とコンビニを後にした。
停めていた自転車にまたがり、ゆっくりと漕ぎだす。なぜか、踏みしめるペダルが、いつもよりも何倍も軽くなったように感じた。
「行ってきます」
そして、火曜日の朝。頬張ったマーマレードトーストを牛乳で流し込むと、俺は誰もいないキッチンにそう告げてアウトマリンの青いリュックを背負い、颯爽と玄関を出た。
アパートの階段を駆け下り、大きく息を吸い込んでから自転車にまたがる。俺は駐輪スペースをそそくさと後にし、光り輝く朝日を一身に浴びながら坂道をくだった。
カーブミラーに目をやって安全を確認すると、勢いそのままに交差点を左に曲がる。作りたての豆腐屋の匂いと、焼きたてのパン屋の匂いが、生あたたかい初夏の風に混じって鼻先をかすめた。俺は感じた事がないほど清々しい気持ちで胸をいっぱいにさせながら、通り慣れた商店街を一気に突っ切り、駅へと急いだ。
いつもの通勤、通学ラッシュに揺られながらスマホのディスプレイを覗くと、インコードが一件の通知を知らせていた。
(おはよ。おかげでブラストのランクマ調子いいよ。次のバイト休みの日、教えてよ。久しぶりにフレンドマッチしない?)
窓から差し込む日差しに目を細めながら、俺はメッセージを送り返した。
(ごめん。バイトは今日で辞めるんだけど、別でやらなきゃいけない事ができたんだ)
いつも通り、すぐに返信が来る。
(なんだそりゃ。えらく急だね。やらなきゃいけない事って?)
(柔道)
(柔道!? ちょっと待って、理解が追いつかない)
(今度詳しく話すよ。また一週間、お互い学校頑張ろうな)
俺はインコードを閉じると、サラリーマンとOLの頭の間から窓の外を眺めた。ちょうど、伊吹野橋に差し掛かるところだった。普段通り、堤防と堤防の間の伊吹野河から朝日が昇っている。水面をキラキラと輝かせる見慣れたはずのプリズムが、今まで見てきたどんなそれよりも、遥かに美しく見えた気がした。
その日、授業を全て受け終えた俺は、書き終えたばかりの入部届けを手に、柔道部の顧問を尋ねて職員室へと向かった。が、扉の前に「職員会議中」、とプレートが掲示されている。
「……仕方ない、柔剣道場で待つか」
俺は校舎を出て、渡り廊下から体育館横の柔剣道場へ向かった。
不思議と、妙に落ち着いていた。何か見えない力、それでいて絶対的な力に導かれて、ここへやってきたような気すらしていた。
深く深呼吸をしてから、柔剣道場の引き戸を開く。
「失礼します!」
出来るだけ明るく、そして力いっぱいに大きな声で言った。懐かしい畳の匂いが、鼻腔の奥に充満する。
「……なんだ?」
「……」
「見ねぇ顔だな。一年か?」
俺の声に振り返った生徒達の姿が、視界に飛び込んでくる。三人はブレザー姿のままで、あぐらをかいて円陣を組んでいた。
大吾に負けないほど大柄な生徒と、少し劣るが同じく大柄な生徒、そして源田と同じくらいひときわ小柄な生徒。恐らく、三年生の柔道部員だ。
一礼してから柔剣道場に足を踏み入れ、俺が三人に改めて挨拶をしようとした時、脇から突然声をかけられた。
「待ってたわ」
見ると、久しぶりに顔を合わす須恵村先輩が、引き戸側の壁にもたれながら腕組みをしていた。
「……押忍。これから、お世話になります」
俺はすぐに、目の前の先輩に挨拶をする。
するとちょうどその時、柔道着姿の源田と大吾が更衣室から姿を現した。
「おー!来たか、沢渡」
「颯!俺はきっと入部してくれるって、信じてたぜぇ」
声をかけてきた二人に向かってうなずく俺に、須恵村先輩は軽く首をかしげて高めの位置のポニーテールを揺らし、ニコリと笑って言った。
「ようこそ、県大会優勝を狙う我が柔道部へ。期待してるわよ……沢渡颯くん」
ーー「第二章 伊吹野学園柔道部」へ続く
いやだ。
隣のおじさんから送られてきた住所を頼りに、俺は夜の街を立ち漕ぎで急いでいた。
母さんが倒れただって?
母さんが、目を覚まさないだって?
未だかつて感じたことのない恐怖が、全身を駆け巡る。
キーッ!
出会い頭、交差点から飛び出してきた自転車とぶつかりそうになる。
「すいません!」
俺は慌てて停止して相手に謝罪するなり、スマホでナビを再びチェックした。あと、十分もあれば着く。
母さん。
母さん。
俺は念じるように、頭の中で何度もそう唱えた。
助かるに決まってる。大丈夫に決まってる。父さんに続いて母さんまで……そんなこと!母さんが、いなくなるわけがない。死んでしまうわけなんてない。
ただそれだけを信じて、ひたすらに自転車を漕ぎ続けた。
我ながら、素晴らしい速さで病院に辿り着く。正面玄関は閉まっていたので、裏手の夜間通用口まで回る。通用口横の警備員室に明かりが灯っているのを見つけると、俺はそこへ自転車で滑り込みながら叫んだ。
「あの!さっき、この病院に母親が運び込まれたそうなんです!通してください!」
唐突な呼びかけに、驚いた表情で警備員が小窓から顔を出す。
「ああ、はいはい。今開けますから」腰につけた鍵をジャラジャラ鳴らしながら、部屋から出てくる。「入ってすぐ右奥に待合室があります。今、看護師さんに連絡を取るので、お名前を……」
「沢渡です。沢渡、圭子です」
「……サワタリケイコさん。わかりました。じゃあ、中でお待ちください」
警備員はそう言って夜間通用口を開けた。
「ありがとうございます」
俺は礼を言って、すぐさま中に入った。入るなり、病院特有の清潔な匂いというか、薬品のような匂いがして、不安感がますます煽られる気がした。
「颯くん!」
看護師に連れられて病室前までやってきた俺を、おじさんは立ち上がって迎えた。
「おじさん! 母さんは……母さんの意識は……」
「ちょうど電話を切った後すぐに目を覚まして、この病室に移動したところだよ。神経調節性失神、という一過性のものらしい。……きっと疲れてたんだろう、沢渡さん。倒れた時に軽く頭を打ったようだから、念のため明日、他の精密検査も行うそうだ」
俺はそれを聞いて肩で息をしながら、すぐに膝から崩れ落ちた。
「……よかった。無事、なんですね……」
生きた心地がしないとはこの事だった。とにかく母さんの意識が戻ったと聞いて、俺はようやく安堵する事ができた。
「颯にいちゃん」
おじさんの隣で座っていた麻耶ちゃんが、心配そうに駆け寄ってきて顔を覗き込んでくる。
「麻耶が、階段で倒れる音を聞いたんだ」
おじさんは麻耶ちゃんの肩に手を触れながら言った。
「そう、だったんですか。……麻耶ちゃん、ありがとう」
麻耶ちゃんが目に涙を溜めて首を振る。
「ううん。おばさん、目を覚まして本当に良かった」
俺はゆっくりと立ち上がるなり、おじさんに深々と頭を下げた。
「本当に、助かりました。ありがとうございます」
「いやいや、とんでもないよ。普段お世話になっているから、こういう形とは言えお役に立てて本望さ」おじさんはそう言って、病室を一瞥した。「さぁ、颯くん。手前の左側のベッドだ」
俺は頷くと、ゴクリと生唾を飲み込んでから病室の引き戸を開いた。
病室には四つのベッドがあり、それぞれカーテンで間仕切られている。
俺はおじさんに言われた通り、入ってすぐ左のカーテンの向こうへ声をかけた。
「……母さん」
すぐに、返事が帰ってくる。
「颯?」
俺はカーテンを少し開けて、中を覗き込んんだ。
「母さん、心配したよ!」
「……まぁまぁ。なんて顔してるの」
母さんは布団の中で俺の顔を見つけるなり、いつもの調子で明るく言って上体を起こそうとした。
「いいよ、寝てて。電話もらってびっくりしたよ。……介護の仕事、無理しすぎたんじゃないの?」
母さんは俺の制止に従って、そのまま再び横になった。
「そんなこと。ちょっと、疲れが溜まってただけよ」母さんはそう言うと視線を俺から天井に移した。「父さんが死んでから、ずっと働き詰めだったからね。もう、四年以上も経つのに」
俺は黙って母さんの言葉を聞きながら、ベッド脇の折りたたみ椅子に腰をかけた。
「金銭的に余裕が無いわけじゃなかったわ。ただ、考えたり悩んだりする暇が欲しくなかっただけ。だから、必死に働いたのよ」母さんは、まるで独り言のように呟いた。「……今でも、ふとした瞬間に思うの。あの人が、ひょっこり帰ってくるんじゃないか、って。ただいま、って、あの住み慣れたアパートの玄関のドアを開けて、いつか帰ってくるんじゃないか、って。それで、私はいつも通り言うのよ。おかえり。随分遅かったじゃない、ってね」
弱音なんて吐いたことのなかった母さん。いつも、笑顔で明るく笑っていた母さん。それは、初めて耳にする母さんの本音だった。
父さんの死後、小五だった俺は何日も何日も泣き続けていた。母さんはそんな俺を何日も何日も励まし続けた。日常の中で父さんを思い出す何かに触れるたび、幼な子のようにぐずって母さんを困らせた。
……そんな中、俺が母さんを守らなきゃいけないんだ、とようやく気付く事ができたのは、ある日の夜中に目を覚ました時、隣の布団の中で一人、むせび泣く母さんの姿を見てからだった。
「颯」
つい物思いにふけっていると、母さんがまたこちらを見て言った。
「……ん? 何?」
「柔道……また、始めなさい」
俺は、母さんの突然の言葉に驚いた。
「な、なんだよ急に」
「父さん、言ってたの。いつか必ず、颯が柔道につまづく時が来るって。そうなっても、決して手を貸すな、って。颯が自分で立ち上がろうとした時にだけ、背中を押してやってくれ、って。……だけどね。最近のあなたを見てると、辛くなるのよ。バイトまで始めて、無理にでも柔道を忘れようとして、私を助けようとしてくれる、その姿が」
「俺は、別に……」
母さんの瞳の光が強くなる。
「あんな事があったんだから、あなたの気持ちもわかるわ。でも、それを乗り越えるのもあなたの柔道の道なんじゃないの?それを背負ってまた進んでいくのが、あなたの柔道の道なんじゃないの?父さんと約束した、オリンピックで金メダルを獲るための、神様がくれた試練なんじゃないの?颯」
「……母、さん」
自分でも、振り絞って出した声が震えているのがわかった。
「母さんね。今日倒れて、目を覚ましてまず最初に思ったの。また、颯に柔道をやってもらいたい、って。それを伝えるまでは死ねない、ってね。……だから大丈夫。もう絶対、無理はしないわ。約束する。父さんも、きっとあなたが柔道続ける事を望んでるに決まってるんだから」
母さんの言葉で、心の中でほとんど消えかけていたはずの情熱の火種が、ボウッと一瞬だけ小さく燃え上がった気がした。
「お金の事は本当に大丈夫。父さんの遺してくれた蓄えと私の稼ぎを合わせれば、あなたを大学まで卒業させるには十分よ。……あなたの背負い投げ、もう一度母さんと父さんに見せてちょうだい。お願いよ、颯」
布団から手を出して、そう言いながら母さんが俺の手を強く握った。
掌から、母さんの命の温もりが伝わる。腕を通って、心臓にまで伝わって、そこから、全身にエナジーが行き渡っていくのを感じる。そこにはきっと、いなくなった父さんの想いも込められている。なぜだか、そんな風に思えた。
しばしの沈黙の後、ようやく口を開く。
「……明日、バイト先に辞める事伝えてくる」
俺は、母さんの手を強く握り返しつつ静かに言った。燃え上がった気がした情熱の炎を、今度ははっきりと自分の中に捉えながら。
……ずっと見失っていた、心の中の滑走路。それをもう一度見つけ出し、再び自分の両足でしっかりと立つ事を、堅く、堅く、決意した夜だった。
「おいおいマジかよ! 入部すんのか、沢渡!」
次の日の月曜日。朝の教室で俺の言葉を聞いて、源田がいつもの「マジかよ」を枕詞につけて驚いた。
「ああ。今日バイト先に辞めるの伝えて、明日、入部届け出しに行く」
俺はリュックから、学校前のコンビニで買った紙パックのバナナオレを取り出しながら答えた。
「もちろんそりゃ歓迎はするけどよ。どういう風の吹き回しだ、伊吹野が県大会行きを決めたからか?」
「それもなくはないけど、別の理由さ」
源田は、あっけにとられた表情を隠さないまま、さらに聞いた。
「まさか、団体戦レギュラーになる気か? うちの部が大会前には必ずメンバー決定戦やるって知ってて、お前……」
「もちろんだ。伊吹野は年功序列じゃなく、実力主義。だろう?」
俺はバナナオレにストローを突き刺すと、チュウチュウと勢いよく吸い上げた。
「確か、一年以上ブランクあるって言ってたよな。……数は少ないけど、うちの先輩方は滅茶苦茶強いぜ」
「わかってるさ。地区優勝するぐらいなんだからな。大丈夫。柔道は辞めてたけど、ずっと鍛えてたから」
「だからって、凄い自信だな。廣瀬から散々お前の実力については聞かされてたけど」
「……源田、知ってるか? 本気で好きな事からは、離れる時期も必要なんだ」
俺は玉井さんの言葉を思い出しながら、悟ったように言う。
その言葉を聞いたきり、源田はもう黙りこくってしまった。
「そんなこと、急に言われてもねぇ。もう来週いっぱいまでのシフトも決まってるし……」
放課後、俺は学校から地元に戻ると早速バイト先のコンビニへ向かい、バックヤードにいた店長に事情を話していた。
「どうしても穴があいてしまうところには、出勤します。その分のバイト代も要りません。勝手なこと言ってるのはわかってますが、お願いします!」
俺はまくし立てるように言って頭を下げた。
「そういう問題じゃ……もっと事前に言ってもらわなきゃ、新しい求人も出さないといけないんだよ」
「はい……でも、なんとかなりませんか」
県大会まで一ヶ月。一日でも多く、稽古に回したかった。
「あんまりにも勝手すぎるよ、沢渡くん。せめてひと月前に言ってもらわなきゃ」
……やっぱり、無茶だったか……。俺がそう思いかけた時だった。
「俺がいけるとこは全部代わりに入りますって。お袋さんが倒れたんですよ、店長。そんな言い方はあんまりっすよ」
勤務中だった玉井さんが、いつものようにひょっこりバックヤードに顔を出して助け船を出してくれたのだ。
「まぁ、ねぇ。事情が事情だからねぇ。だからって、辞める事はないんじゃないの?」
「それは……」
「まぁいいじゃないですか店長。電話じゃなくて直接言いに来てる沢渡に免じて、了解してやって下さいよ。なんとかなるでしょう、他にもバイトはいるんだし。……あ、いらっしゃいませー!」
玉井さんはそう言い残すと、客が来たらしいレジに向かった。
「ふーむ。……仕方ないなぁ。わかったよ。君はよくやってくれてたから、いなくなるのは困るけどねぇ。でも、本当に来週いっぱいまでは代わりに人が入れない日は来てくれるかい?」
俺は店長の言葉に、歓喜して声を上げた。
「は、はい! もちろんです。ありがとうございます、店長!」
「まったく、若い子はこれだから……。じゃあ、また連絡するから」
店長は頭をポリポリとかきながら、呆れたように言った。
「わかりました。本当に、ありがとうございます。……じゃあ、失礼します」
俺はもう一度頭を下げると、内心は本当に申し訳ない気持ちを抱えながらバックヤードを出た。
「ありがとうございましたーっ」
ちょうど、玉井さんがレジを終えて客が帰るところだった。
「……玉井さん、さっきはありがとうございました。めっちゃ、助かりました」
「おう。いいってことよ。少年よ、大志を抱け! ってやつだ」玉井さんは茶色くて長い髪をかき上げながら笑った。「柔道、またやるんだろ? でかい試合の時は呼べよ、見に行くから」
それを聞いて、俺はなんだか目頭が熱くなるような気がした。
「はい……。ありがとうございます。俺も、玉井さんのライブ、必ず見に行きますから」
「ああ。まぁ、これからもライブは続けるから、都合つけばでいいさ。……お袋さんに、よろしくな」
「ええ、伝えときます。失礼します!」
店長に下げた頭より深い角度でお辞儀すると、俺は意気揚々とコンビニを後にした。
停めていた自転車にまたがり、ゆっくりと漕ぎだす。なぜか、踏みしめるペダルが、いつもよりも何倍も軽くなったように感じた。
「行ってきます」
そして、火曜日の朝。頬張ったマーマレードトーストを牛乳で流し込むと、俺は誰もいないキッチンにそう告げてアウトマリンの青いリュックを背負い、颯爽と玄関を出た。
アパートの階段を駆け下り、大きく息を吸い込んでから自転車にまたがる。俺は駐輪スペースをそそくさと後にし、光り輝く朝日を一身に浴びながら坂道をくだった。
カーブミラーに目をやって安全を確認すると、勢いそのままに交差点を左に曲がる。作りたての豆腐屋の匂いと、焼きたてのパン屋の匂いが、生あたたかい初夏の風に混じって鼻先をかすめた。俺は感じた事がないほど清々しい気持ちで胸をいっぱいにさせながら、通り慣れた商店街を一気に突っ切り、駅へと急いだ。
いつもの通勤、通学ラッシュに揺られながらスマホのディスプレイを覗くと、インコードが一件の通知を知らせていた。
(おはよ。おかげでブラストのランクマ調子いいよ。次のバイト休みの日、教えてよ。久しぶりにフレンドマッチしない?)
窓から差し込む日差しに目を細めながら、俺はメッセージを送り返した。
(ごめん。バイトは今日で辞めるんだけど、別でやらなきゃいけない事ができたんだ)
いつも通り、すぐに返信が来る。
(なんだそりゃ。えらく急だね。やらなきゃいけない事って?)
(柔道)
(柔道!? ちょっと待って、理解が追いつかない)
(今度詳しく話すよ。また一週間、お互い学校頑張ろうな)
俺はインコードを閉じると、サラリーマンとOLの頭の間から窓の外を眺めた。ちょうど、伊吹野橋に差し掛かるところだった。普段通り、堤防と堤防の間の伊吹野河から朝日が昇っている。水面をキラキラと輝かせる見慣れたはずのプリズムが、今まで見てきたどんなそれよりも、遥かに美しく見えた気がした。
その日、授業を全て受け終えた俺は、書き終えたばかりの入部届けを手に、柔道部の顧問を尋ねて職員室へと向かった。が、扉の前に「職員会議中」、とプレートが掲示されている。
「……仕方ない、柔剣道場で待つか」
俺は校舎を出て、渡り廊下から体育館横の柔剣道場へ向かった。
不思議と、妙に落ち着いていた。何か見えない力、それでいて絶対的な力に導かれて、ここへやってきたような気すらしていた。
深く深呼吸をしてから、柔剣道場の引き戸を開く。
「失礼します!」
出来るだけ明るく、そして力いっぱいに大きな声で言った。懐かしい畳の匂いが、鼻腔の奥に充満する。
「……なんだ?」
「……」
「見ねぇ顔だな。一年か?」
俺の声に振り返った生徒達の姿が、視界に飛び込んでくる。三人はブレザー姿のままで、あぐらをかいて円陣を組んでいた。
大吾に負けないほど大柄な生徒と、少し劣るが同じく大柄な生徒、そして源田と同じくらいひときわ小柄な生徒。恐らく、三年生の柔道部員だ。
一礼してから柔剣道場に足を踏み入れ、俺が三人に改めて挨拶をしようとした時、脇から突然声をかけられた。
「待ってたわ」
見ると、久しぶりに顔を合わす須恵村先輩が、引き戸側の壁にもたれながら腕組みをしていた。
「……押忍。これから、お世話になります」
俺はすぐに、目の前の先輩に挨拶をする。
するとちょうどその時、柔道着姿の源田と大吾が更衣室から姿を現した。
「おー!来たか、沢渡」
「颯!俺はきっと入部してくれるって、信じてたぜぇ」
声をかけてきた二人に向かってうなずく俺に、須恵村先輩は軽く首をかしげて高めの位置のポニーテールを揺らし、ニコリと笑って言った。
「ようこそ、県大会優勝を狙う我が柔道部へ。期待してるわよ……沢渡颯くん」
ーー「第二章 伊吹野学園柔道部」へ続く
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