愛だ恋だと変化を望まない公爵令嬢がその手を取るまで

永江寧々

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幸か不幸か

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「ホンット最悪ッ! 最低ッ! 信じられない! バカじゃないの!? 逃げてるのに振り返るバカいる!? 自分が小人かなんかだと思ってるわけ!? その無駄にデカい身体で勢いよくぶつかれば死者が出るかもしれないって考えたことないの!? 王子が聞いて呆れるね!」
 
 翌日のランチタイム、セシルの怒号に反論しないヴィンセルはアリスが到着してからずっとアリスに頭を下げ続け、昨日の出来事を聞いたセシルは烈火の如く怒り続けている。
 
「もう、どうか頭を上げてください! 本当に大したことではないんです!」
 
 王子に頭を下げられるなど自分の人生にあっていいはずがないと頭を上げさせようにも触れられず、なんとか見える場所に手を出して、頭を上げてほしいとジェスチャーを送る。
 
「捻挫だよ!? ね・ん・ざ! 大したことないわけない! 僕のランチどうするの!?」
「セシル、それはないよ~。アリスちゃんをシェフ扱いなんて罰が当たるよ? 女の子は蝶よ花よと愛でないと」
「さすが、食中花は言うことが違うな」
「ちょっとカイル! それはさすがに酷くない!? さすがの俺も泣くよ!?」
 
 カイルの機嫌は昨日から最悪で、口元には笑みがあり、声は穏やかだが目は笑っていない。
 いつも通りの雰囲気を取り戻そうとするアルフレッドもさすがに限界があるのか、苦笑しながらアリスを見て首を振った。
 
「ヴィンセル、昨日も言ったが今日も言っておく。暫くアリスの召使をしろ。どこぞのバカが前方不注意でうちの天使に体当たりしたせいでうちの可愛いアリスの細腕が折れることとなった。大事に大事に育ててきたのに傷物にしやがって。本来なら秘密裏に死刑だぞ」
「折れてません、捻挫です」
「すまない。反省している」

 
 王子を秘密裏に処刑などすれば翌日にはカイルが処刑されているだろう。バレないわけがない。
 半分本気半分冗談のカイルの言葉を真剣に受け止めるヴィンセルはまだ頭を下げ続けていた。
 それでもカイルは怒りが収まらず、バンッと両手でテーブルを叩いてヴィンセルの顔を覗き込み
 
「反省の言葉はもう聞き飽きた。王子たるもの行動で示せ。わかるよな?」
「ああ、彼女の腕が治るまで責任を持って召使をする」
 
 二人の間で勝手に交わされる契約に慌てているのはアリスだけ。王子に強く当たるのも召使扱いもダメだと昨日喉が枯れそうになるほど言ったのにカイルはそれを無視して契約させようとしている。
 いつの間に作ったのか、どこから取り出したのか一枚の紙に王子のサインと拇印が押され契約完了。
 
「お兄様、昨日も言いましたけれど私は大丈夫ですから王子を召使にされるなどおやめください」
「アリス、兄様は本気だ。相手が王子だろうと国王だろうと責任は取らせる」
 
 目が本気だとアリスは思わず口を閉じた。
 昔、幼い頃に一度だけこの目を見たことがある。
 アリスがまだ五歳の時に幼馴染の男の子に突き飛ばされて階段から転げ落ちたときのこと。皆が悲鳴を上げる中、カイルだけは逃げるその子を捕まえて階段の一番上まで引きずり強制的に立たせると、そのまま思いきり蹴飛ばして同じ目に遭わせたのだ。教師の言うことも聞かず殴り続けた兄の目をアリスは今でも鮮明に覚えている。
 今はその時と同じ目をしていた。
 
「この怪我のせいでお前は大好きなピアノもお菓子作りもできないんだぞ。コイツが不注意でお前の人生の時間を潰したんだ。召使で許されることに感謝こそすれ不満はないはずだ。なあ、ヴィンセル?」
「もちろんだ。アリス、どうか受け入れてほしい。そうでもしなければ俺の気が済まない」
 
(私の気がおかしくなるんですけど!?)
 
 一緒に過ごすという妄想が現実になってしまったとき、何をどう考えても妄想の中のように「うふふ」「あはは」と笑い合って過ごせるとは思えず、アリスは今にも履きそうなのを堪えて笑顔にならない弱すぎる笑顔を浮かべて一度だけ小さく頷いた。
 
「じゃあ僕のランチはヴィンセルが運んでね」
「なぜ俺がセシルのランチを運ぶ必要があるんだ?」
「アリスは僕のランチ係なんだよ」
「伯爵令息が公爵令嬢をランチ係にするとは無礼千万だぞ」
「無礼千万ついでに言うけど、ヴィンセルのせいでアリスとのランチ会なくなったんだから反省しろよ」
「……すまない」
 
 あれだけの足音が響いていれば誰もが気付くはず。皆が避けてくれるから誰もいないはず。そんな思い込みで振り返ったことで前方不注意となった自分に責任があるのは間違いないとヴィンセルは言い訳はしない。
 包帯の痛々しさもそうだが、その前に男としてレディに怪我をさせてしまったことへの償いはちゃんとしなければならないとアリスの怪我が治るまで渋々ながらセシルのランチも運ぼうと受け入れた。
 
「アリスのとこのシェフには僕からお願いしておくよ。リクエストが結構あるんだよね」
「お前、意外と図々しいな」
「美味しい物は自分からは寄ってこない。まあ、アリスのパンは僕から行かなくても寄ってきてくれたけど」
 
 セシルが声を荒げたのはアリスのためか自分の食事のためかどっちなんだろうと首を傾げたくなったヴィンセルだが、一言えば三になって返ってくる口達者は相手にするだけ面倒だとわかっているため問いかけるのはやめた。
 
「これはアリスに言うべきかヴィンセルに言うべきかわからないけど、今回のことで絶対にティーナ・ベルフォルンがちょっかいをかけてくるのは間違いないと思う。ヴィンセルにはどう出るかわからないけどアリスには強気でいくだろうね。何か対策を考えておいたほうがいいよ」
 
 セシルはティーナの噂を知っていたし、会ったこともある。だが付き合いでいえばアリスのほうが当たり前に長く、よく知っている。それなのにセシルはアリス同様にティーナを知っているかのように指摘する。それはアリスが想像していたことと全く同じことで、ティーナがそういう人間であることがバレているという証拠。
 
「だが、彼女はアリスの親友だろう。対策と言っても……」
「じゃあいつまでも絡んでくるベルフォルンを相手してカイルを怒らせたらいんじゃない?」
 
 セシルの指を追ってカイルを見れば笑顔で頷く姿が目に入った。
 ヴィンセルが妹を呼び捨てにしていることも気に食わなければ怪我をさせたことにほぼキレている状態のカイルをこれ以上怒らせれば何をしでかすかわからない。
 自分の人生を賭けて殴りかかってくるかもしれないし、階段から突き飛ばして大怪我を負わせるかもしれない。カイル・ベンフィールドという男はそれを想像させてしまうだけのイカれたところがあった。
 
「無視しろと言うのか?」
「ヴィンセルの得意な言い訳が使えるじゃん」
「言い訳? 何のことだ?」
「急いでるからってやつ」
 
 追っかけの令嬢たちから逃げ惑うときに口にする言葉を“言い訳”と言われるのは心外だが、実際何も急いではないし、用事もないのに使う言葉を他に何と言うのかわからず言い返せなかった。
 
「ヴィンセル様、本当にそのようなことしていただかなくて結構ですから。ティーナに絡まれると厄介なので本当にどうか気にしないでください」
 
 送迎などしようものならティーナは毎日アリスの家に来ては登下校を共にするだろう。『心配だから』という言葉でアリスと行動を共にし、ヴィンセルに近付くはず。
 レディを無下に扱えないヴィンセルには辛い状況になるだろう。王子にそんな思いをさせるぐらいなら不自由でも一人のほうがいいと思った。
 あの様子から見るにティーナはヴィンセルが嫌がっていたとしても積極的に打って出る。相手が嫌がっているのは最初だけで、自分のことを知ればきっと好きになると確証のない自信があるのだ。だから相手の拒否は受け入れず、まず自分を押し出す。それがティーナ・ベルフォルンのやり方。
 子供の頃から何度も見てきたため、アリスはそのやり方を熟知している。
 
「アリス、昨日のことは本当に俺が悪いんだ。前方不注意で君にこんな怪我をさせてしまった。何と詫びればいいのかわからない」
「大袈裟です。捻挫なんて大した怪我じゃないんですから、すぐに治ります」
「全治一ヵ月の捻挫は大した怪我だよ」
「セシル、あのお医者様は大袈裟なだけです。本当に平気なんです」
「じゃあパン焼いてきてよ」
 
 わかっていながらそう言うセシルに『わかりました』とは返せない。
 右手でペンを握るのも痛いぐらいなのだ。パンなどこねられるはずがない。もし明日アリスが焼いてきたと言ってパンを差し出せばセシルはアリスを見限るだろう。
 
「アリスー! いるんでしょー?」
「ティーナ」
 
 今度は大騒ぎせず外から呼びかける作戦に出たティーナにアリスは立ち上がってヴィンセルを見た。
 
「ヴィンセル様、今からティーナがパンを渡しにきます」
「パン……」
「アリス、彼女は中には入れない」
「お兄様、一度だけでいいのです」
「ダメだ。ヴィンセルを出せ」
 
 中に入れなければティーナはまた騒ぐだろう。それはカイルにも容易に想像がつくことだ。だからこそ騒げば中に入れると思われるのは困ると世界で一番可愛い妹の頼みでもハッキリ拒否を示した。
 ヴィンセルを見て一緒に行けと顎で促す。 

「アリスー」
 
 友人を呼ぶというよりは殺人鬼が獲物を探しているような不気味さを感じさせる呼び方に皆の表情が歪んでいく。
 苦笑を浮かべながら頭を下げて出ていくアリスをヴィンセルも追いかけ外に出た。
 
「アリス探したよ! 手首やっちゃったんだって?」
「う、うん。こんなの大袈裟なだけ。何の心配もないから」
「そっ。ヴィンセント王子に渡す物があるって伝えてくれた?」
「伝えたよ」
「じゃあ待っとこ!」
 
 ティーナの中でアリスの心配よりヴィンセルにパンを渡す方が優先度が高いのだと暴露するような発言にアリスの中でどんどん考えが固まっていく。
 
「ティーナ、あのね、これから一ヵ月の間———」
「あ、ヴィンセル様!」
 
 アリスが話し始めたのには気付いたはずなのにティーナはヴィンセルが出てきたことでそれを無視して駆け寄った。
 
「ヴィンセル様! 今日はちゃんとビニールに入れて持ってきましたよ! 受け取ってください!」
「あ……ああ……」
「お口に合えばいいんですけど。お口に合ったらまた焼いてきますから!」
 
 いつの間に変えたのか、茶色だった紙袋は可愛いラッピングバッグになっていた。
 先日、アリスが持っていったパンは茶色の紙袋に入っていた。それと同じではバレてしまうと思ったのか袋だけ新しいのを持ってきていたのだ。
 ベンフィールド家のシェフに事情を話して作ってもらったパンだ。 同情するような顔をしていたが、それでも『大変ですね』と言うだけで文句を言わずに作ってくれた。

「受け取ってくれた! すっごく嬉しい! 頑張って焼いた甲斐があった~! 何十回も練習して作ったんです! 素手では一度も触ってませんから安心して食べてくださいね!」
 
 満面の笑みでその場で飛び跳ねる無邪気な姿にアリスはどういう顔をしていいのかわからない。
 ヴィンセルはきっと受け取ることだけでも苦痛だろう。
 ここにいるのはアリスとティーナだけではなく、せめて同じ空気をと考える令嬢たちがいる。
 人が焼いたパンを受け取ったと衝撃を受けるファンの中にはショックで失神する者もいた。
 これはアリスが最も望んでいなかったこと。
 誰かから一度でも受け取ってしまえば誰からも受け取らないことにしているという理由は使えなくなる。
 今この瞬間、ヴィンセルはその理由を失った。
 
「ベルフォルン男爵令嬢」
「やだもうヴィンセル様ったらそんな他人行儀な呼び方しないでくださいよぉ! ティーナって呼んでください!」

 厚かましいお願いにヴィンセルは答えない。

「本日から一ヵ月の間、アリス・ベンフィールドに付き添うことになった。二人の時間の邪魔をしてしまうがどうか許してほしい」
 
 信じられないと顔に書いて表情を作るティーナはヴィンセルが頭を下げている間、ニヤついた表情を隠さなかった。
 
「そんなの全然いいんですよぅ! だって王子がいれば華やかだしぃ、私ずっと王子と喋りたかったんです! だからすっごく嬉しい!」 

 顔を上げると同時に笑顔を作る早業に仮面でも用意しているのだろうかと思ってしまうほど表情の切り替えが上手いティーナの横でアリスは俯いたまま顔を上げられないでいる。
 
「じゃあ今日も一緒に帰ってもらえるんですか?」
「送迎も予定に入っている」
「でもお忙しいんじゃないですか?」
「アリスを怪我させたのは私だ。私には彼女が不自由な生活を送らないようにする責任がある」
「やっぱりヴィンセル様って優しくて素敵なイケてる王子様ですね」
 
 キャッキャとハシャぐティーナの顔をヴィンセルは直視しないようにしていた。少しずれた目の下に視線を落としながら話すも、ティーナは感情に合わせて角度を変えるため目が合う前にアリスへ顔を向ける。
 
「アリス、放課後は教室まで迎えに行く。待っていてほしい」
「あ……えっと…」
「はあい! お待ちしてますねぇ!」
 
 アリスの前に立って手を振るティーナを横目にそのまま庭園へと戻っていくヴィンセルが見えなくなるまでティーナは手を振り続けた。
 
「やったじゃんアリス! 怪我してラッキーだよ!」
「ラッキーって……」
「ラッキーに決まってるじゃん! あーあ、私が怪我したかったよ。手首の捻挫ぐらいで一ヵ月も王子といられるなんて最高だもん。送迎とかランチとかも一緒なんて夢みたい! アリスってそういう運だけはいいよね。ほら、リオのときもそうだったし……ズルいんだよねぇ」
「リオはそんなんじゃないよ……」
 
 心の中でどんどん固まっていくティーナとの縁を解く決意。
 大丈夫?の一言でもあればまた違っていたのだろうが、まだ一度も大丈夫と心配の言葉はない。それなのに『ズルい』や『ラッキー』と言うだけではなく『捻挫ぐらいで』と怪我を軽んじる発言に心が冷えていくのを感じていた。
 
「ティーナ、あんまり騒ぐとヴィンセル王子の迷惑になっちゃうから静かにね?」
「えー? ヴィンセル様いないじゃん。いない時ぐらい別に良くない?」
 
 いたときから騒がしかったと指摘したところで普通の音量で喋っていたと言い返されるのは目に見えているため早々に口を閉じた。
 今まで何百回と疑問を持ってきた親友という関係。なんでも考えすぎる性格だからだと思っていたが、実際は心が限界だと叫んでいたのだとようやく気付いた。
 いつまでもこんな感情を抱えた状態で親友は続けてはいられない。これは親友ではなく〝ごっこ〟なのだと気付いた今、変わらなければならないのは相手ではなく自分なのだと改めて思った。
 
「ヴィンセル様と同じ馬車とかサイコー! 怪我してくれてありがとアリス! 今日から一緒の馬車で帰るからね!」
 
 アリスは返事をしなかった。
 もうティーナを喜ばせるために自分の心を傷つけるのはやめると決めたのだ。
 ただ笑顔で今日を乗り切り、鏡に向き合ってハッキリ誓う。
 アリスの中で一つの覚悟が決まった。 
 
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