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番外編
アイザック・フォン・ランベリーローズ2
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「ノーラが妊娠したんだ!」
「そう、よかったわね」
あの言い合いから一年、エレノアはアイザックに会わないようにしていた。
アイザックは母親が会いに来ないことを何も気にしてはいなかったし、むしろ口うるさい者がいなくなって解放感に満たされていた。
久しぶりに顔を見せたアイザックからの報告はノーラの妊娠。
それこそ久しぶりに見たアイザックの嬉々とした笑顔。
エレノアも少し嬉しかった。
「名前はもう決めてある。フランだ」
「可愛い名前ね」
「イヌサフランから名付けた。ノーラとの子供だからきっと美人な子に育つに決まってる」
由来を聞いたとき、エレノアは少し不安だった。
イヌサフランの花言葉は華やかな美しさと言われているが、それと相対するように危険な美しさというのもあった。
イヌサフランの花言葉にあまり良い印象はない。もっと幸せな花言葉を持つ花はたくさんあるのに、アイザックはなぜそれを選んだのかが不思議だった。
「父親として頑張らなきゃな」
「娘に誇れるような父親になりなさい」
「俺はもうじゅうぶん誇れる人間だ。娘もきっと俺を誇りに思うさ」
慢心的で傲慢さが際立つ人間のどこに誇れる部分があるのだろうかと不思議に思ったが、エレノアは息子に言えない隠し事があるため余計なことは言わないでいた。
だが、バレるときはあっという間にやってくる。
「なんだよその腹は……」
大きくなっていく腹部を隠すことは不可能で、エレノアが妊娠しているという情報を手に入れたアイザックは急いで部屋に駆けつけた。
慌てて背を向けるエレノアだが、アイザックの目には確かにエレノアの腹部が膨らんでいるのが見えた。
それから開き直ったように話す母親に激怒し、追い出すまでの四ヶ月間、アイザックはずっと怒っていた。
ノーラが何度母体に良くないからと言っても怒りが鎮まることはなく、結局その怒りは母親がフローラリアから消えるまで続いた。
「ミュゲット、あなたはいい子ね。夜泣きもほとんどしないし、ミルクもたくさん飲んでくれる。はなまるよ」
エレノアが産んだ子供にミュゲットと名付けたのはエレノアの頼みだったから。
母親を思い出すからその名前は嫌だと言うアイザックをノーラ『赤ん坊に罪はない。恨まないで』と言ってミュゲットと名付けた。
アイザックはミュゲットの前では良い父親を演じた。母親との約束を守るように差別はしなかった。いや、しないよう気をつけていた。
「ミュゲットは本が大好きだな」
「すごくおもしろいの」
「外で遊ばないのか?」
「本が好き」
「そうか、本のほうが好きか。じゃあ、パパが読んであげようか?」
「うん!」
血縁では娘ではなく妹。愛する妻が生んだのではなく母親が産んだ妹。
それを自分の娘と同じように扱わなければならないのは精神的に苦しいものがあっただろう。
国民には双子ということにしてミュゲットを姉、フランを妹として育てた。
フランはフローラリアの娘らしく褐色肌で元気の良い女の子だったが、ミュゲットは母親に似て色白で大人しい子だった。
全く正反対の姉妹を見ているとアイザックは時折、髪を掻き乱したくなるほど嫌な気持ちになった。
それでも子供に罪はない。この子は何も知らないんだと自分に言い聞かせて親子として接するアイザックをノーラはとても評価していた。
だが、それも彼女たちの成長と共に変わってしまう。
ミュゲットが五歳を迎えた頃、フローラリアに一台の馬車がやってきた。
見たこともないほど美しい豪華な馬車。白馬と黒馬が引く馬車に皆が興味津々だった。
「デイミアン皇帝陛下、園路はるばるようこそお越しくださいました。本来であれば私のほうからお伺いするべきだったのですが──」
「かまわん。フローラリアは久しぶりだからな。直々に足を運びたくなったのだ」
アイザックが出迎えると降りてきた人物に皆が散り散りになった。
その顔が恐怖に怯えているのをアイザックもハッキリ見ていたが、そんなことは気にもしない。
グラキエスの皇帝は先代から関わりがある金になる相手だと下心満載で連絡を取った。
「御子息様の素晴らしい活躍もフローラリアまで届いております」
「戦鬼などと呼ばれているらしいが、まだまだひよっこ。まあ、相手を殺すことに躊躇がないことだけは認めているがな。こやつは十二で初陣し、三人も殺している。幼くして立派な人殺しとなった男だ」
「素晴らしい戦績ですね!」
「感情を持たん無愛想な男だ。媚びることを知らん。生意気でどうしようもないガキだが、いつかお前の役に立つかもしれん。媚びを売っておけ」
「そうします」
なぜ十七歳の子供に自分が媚びを売らなければならないんだと不満が込み上げるもアイザックは笑みを崩さなかった。
「アルフローレンス皇子もご健在で何よりです。フローラリアは初めてですか?」
「お前の相手は余ではないだろう。顔色を伺うな、気持ち悪い」
「ッ……ハハッ、これは手厳しい。しっかりしておられますな。十七歳とは思えない風貌です」
「お前のところには娘がいたな?」
「はい。まだ五歳ですが、将来性のある美人です」
「おい、娘をもらってやったらどうだ」
「黙って進め」
「可愛げのないガキだ。一度叩き潰してやらねぇとわからんらしい」
「男の子は大変ですね」
可愛げがないことは伝わってくる。
愛想一つ見せずに年上、それも一国の王をお前呼ばわりするような男。
自分を神かなにかと勘違いしているのかと悪態を吐いてやりたくなったが、相手は十七歳でも皇子であり、父親は悪魔と呼ばれるデイミアン。
無礼など許されるはずがない。
ニコニコと笑っていることさえも彼らは馬鹿にしているのだろうと想像しながらも全ては利用するためだと言い聞かせて笑顔を絶やさなかった。
「相変わらず美しいな」
「お褒めいただきありがとうございます」
商談の場についてすぐ、デイミアンは向かいに座るノーラの手を取って甲に口付けた。
その瞳はさっきまでとは違う優しいもの。
二人は知り合いかとノーラを見るとアイザックは目を見開いた。
今まで一度だって頬を染めたことなどないノーラが頬を染めてはにかんでいる。
「皇帝陛下、商品の話をしてもよろし──」
「お前の嫁を貸せ」
「…………は?」
「二度も同じことを言わせるつもりか?」
「い、いえ……とんでもない……」
デイミアンは二度同じことを言うのが嫌いだと有名。
どんな状況でも二度同じことを言わせた者には必ず首を刎ねられる。
アイザックもそれを知っているから拒否できなかった。
グラキエスは巨大な国で、この大陸で一番権力を持つ国。
中には恐れ知らずにもグラキエスに戦争を仕掛ける国もあるが、アイザックにはそんな勇気はない。
フローラリアは小さな国だ。少しでも彼の機嫌を損ねれば一日で陥落するだろう。
十八歳で愛した妻をこんな傲慢で横暴な男に抱かせるのかと拳が震えるも、ここで拒めば計画は全て泡となる。
「こ、皇帝陛下……その、妻は身体が弱いほうでして、その……乱暴にだけは……」
「お前に言われずとも知っている。さっさと失せろ」
デイミアンの言葉に耳を疑ったが、ここで聞き返すことは許されない雰囲気だったため手に持っていた書類を握りしめながら部屋から出ていった。
「お前もさっさと出ていけ。それとも参加するか?」
「さっさと終わらせろ。余は忙しい」
「ママのおっぱいが恋しいか?」
「舌を切り取られたくなければそのよく回る口を閉じろ」
「お前は口の利き方に気をつけろ。叩き直さねぇとわからんか?」
「弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ」
十七歳にして戦鬼と呼ばれるのには理由がある。
たかが十七歳の子供に歴戦の兵士たちが恐れをなして逃げるほどアルフローレンスの脅威は年々増している。
それはデイミアンでさえそうだ。
首元に突きつけられた氷刃を指で挟んで折ることができなかった。昔はそれが簡単にできていたのに今ではアルフローレンスがいつ出したのかさえ目に留めることができない。
悔しげに表情を歪めても意味はない。
「さっさと失せろ」
「雑魚が余に命令するな」
舌打ちをするデイミアンの手をノーラが包み込むと途端にデイミアンの表情が優しさをまとった。
「お前に会うためにわざわざ南の果てまで来たんだ。存分にもてなせ」
勝手知ったるように部屋の奥の扉を開けてアイザックとノーラが毎夜共に眠る寝室に入っていく。
外まで漏れるベッドの軋む音と聞いたことがないほど大きな妻の嬌声にアイザックは拳を震わせながら強く唇を噛み締めていた。
「そう、よかったわね」
あの言い合いから一年、エレノアはアイザックに会わないようにしていた。
アイザックは母親が会いに来ないことを何も気にしてはいなかったし、むしろ口うるさい者がいなくなって解放感に満たされていた。
久しぶりに顔を見せたアイザックからの報告はノーラの妊娠。
それこそ久しぶりに見たアイザックの嬉々とした笑顔。
エレノアも少し嬉しかった。
「名前はもう決めてある。フランだ」
「可愛い名前ね」
「イヌサフランから名付けた。ノーラとの子供だからきっと美人な子に育つに決まってる」
由来を聞いたとき、エレノアは少し不安だった。
イヌサフランの花言葉は華やかな美しさと言われているが、それと相対するように危険な美しさというのもあった。
イヌサフランの花言葉にあまり良い印象はない。もっと幸せな花言葉を持つ花はたくさんあるのに、アイザックはなぜそれを選んだのかが不思議だった。
「父親として頑張らなきゃな」
「娘に誇れるような父親になりなさい」
「俺はもうじゅうぶん誇れる人間だ。娘もきっと俺を誇りに思うさ」
慢心的で傲慢さが際立つ人間のどこに誇れる部分があるのだろうかと不思議に思ったが、エレノアは息子に言えない隠し事があるため余計なことは言わないでいた。
だが、バレるときはあっという間にやってくる。
「なんだよその腹は……」
大きくなっていく腹部を隠すことは不可能で、エレノアが妊娠しているという情報を手に入れたアイザックは急いで部屋に駆けつけた。
慌てて背を向けるエレノアだが、アイザックの目には確かにエレノアの腹部が膨らんでいるのが見えた。
それから開き直ったように話す母親に激怒し、追い出すまでの四ヶ月間、アイザックはずっと怒っていた。
ノーラが何度母体に良くないからと言っても怒りが鎮まることはなく、結局その怒りは母親がフローラリアから消えるまで続いた。
「ミュゲット、あなたはいい子ね。夜泣きもほとんどしないし、ミルクもたくさん飲んでくれる。はなまるよ」
エレノアが産んだ子供にミュゲットと名付けたのはエレノアの頼みだったから。
母親を思い出すからその名前は嫌だと言うアイザックをノーラ『赤ん坊に罪はない。恨まないで』と言ってミュゲットと名付けた。
アイザックはミュゲットの前では良い父親を演じた。母親との約束を守るように差別はしなかった。いや、しないよう気をつけていた。
「ミュゲットは本が大好きだな」
「すごくおもしろいの」
「外で遊ばないのか?」
「本が好き」
「そうか、本のほうが好きか。じゃあ、パパが読んであげようか?」
「うん!」
血縁では娘ではなく妹。愛する妻が生んだのではなく母親が産んだ妹。
それを自分の娘と同じように扱わなければならないのは精神的に苦しいものがあっただろう。
国民には双子ということにしてミュゲットを姉、フランを妹として育てた。
フランはフローラリアの娘らしく褐色肌で元気の良い女の子だったが、ミュゲットは母親に似て色白で大人しい子だった。
全く正反対の姉妹を見ているとアイザックは時折、髪を掻き乱したくなるほど嫌な気持ちになった。
それでも子供に罪はない。この子は何も知らないんだと自分に言い聞かせて親子として接するアイザックをノーラはとても評価していた。
だが、それも彼女たちの成長と共に変わってしまう。
ミュゲットが五歳を迎えた頃、フローラリアに一台の馬車がやってきた。
見たこともないほど美しい豪華な馬車。白馬と黒馬が引く馬車に皆が興味津々だった。
「デイミアン皇帝陛下、園路はるばるようこそお越しくださいました。本来であれば私のほうからお伺いするべきだったのですが──」
「かまわん。フローラリアは久しぶりだからな。直々に足を運びたくなったのだ」
アイザックが出迎えると降りてきた人物に皆が散り散りになった。
その顔が恐怖に怯えているのをアイザックもハッキリ見ていたが、そんなことは気にもしない。
グラキエスの皇帝は先代から関わりがある金になる相手だと下心満載で連絡を取った。
「御子息様の素晴らしい活躍もフローラリアまで届いております」
「戦鬼などと呼ばれているらしいが、まだまだひよっこ。まあ、相手を殺すことに躊躇がないことだけは認めているがな。こやつは十二で初陣し、三人も殺している。幼くして立派な人殺しとなった男だ」
「素晴らしい戦績ですね!」
「感情を持たん無愛想な男だ。媚びることを知らん。生意気でどうしようもないガキだが、いつかお前の役に立つかもしれん。媚びを売っておけ」
「そうします」
なぜ十七歳の子供に自分が媚びを売らなければならないんだと不満が込み上げるもアイザックは笑みを崩さなかった。
「アルフローレンス皇子もご健在で何よりです。フローラリアは初めてですか?」
「お前の相手は余ではないだろう。顔色を伺うな、気持ち悪い」
「ッ……ハハッ、これは手厳しい。しっかりしておられますな。十七歳とは思えない風貌です」
「お前のところには娘がいたな?」
「はい。まだ五歳ですが、将来性のある美人です」
「おい、娘をもらってやったらどうだ」
「黙って進め」
「可愛げのないガキだ。一度叩き潰してやらねぇとわからんらしい」
「男の子は大変ですね」
可愛げがないことは伝わってくる。
愛想一つ見せずに年上、それも一国の王をお前呼ばわりするような男。
自分を神かなにかと勘違いしているのかと悪態を吐いてやりたくなったが、相手は十七歳でも皇子であり、父親は悪魔と呼ばれるデイミアン。
無礼など許されるはずがない。
ニコニコと笑っていることさえも彼らは馬鹿にしているのだろうと想像しながらも全ては利用するためだと言い聞かせて笑顔を絶やさなかった。
「相変わらず美しいな」
「お褒めいただきありがとうございます」
商談の場についてすぐ、デイミアンは向かいに座るノーラの手を取って甲に口付けた。
その瞳はさっきまでとは違う優しいもの。
二人は知り合いかとノーラを見るとアイザックは目を見開いた。
今まで一度だって頬を染めたことなどないノーラが頬を染めてはにかんでいる。
「皇帝陛下、商品の話をしてもよろし──」
「お前の嫁を貸せ」
「…………は?」
「二度も同じことを言わせるつもりか?」
「い、いえ……とんでもない……」
デイミアンは二度同じことを言うのが嫌いだと有名。
どんな状況でも二度同じことを言わせた者には必ず首を刎ねられる。
アイザックもそれを知っているから拒否できなかった。
グラキエスは巨大な国で、この大陸で一番権力を持つ国。
中には恐れ知らずにもグラキエスに戦争を仕掛ける国もあるが、アイザックにはそんな勇気はない。
フローラリアは小さな国だ。少しでも彼の機嫌を損ねれば一日で陥落するだろう。
十八歳で愛した妻をこんな傲慢で横暴な男に抱かせるのかと拳が震えるも、ここで拒めば計画は全て泡となる。
「こ、皇帝陛下……その、妻は身体が弱いほうでして、その……乱暴にだけは……」
「お前に言われずとも知っている。さっさと失せろ」
デイミアンの言葉に耳を疑ったが、ここで聞き返すことは許されない雰囲気だったため手に持っていた書類を握りしめながら部屋から出ていった。
「お前もさっさと出ていけ。それとも参加するか?」
「さっさと終わらせろ。余は忙しい」
「ママのおっぱいが恋しいか?」
「舌を切り取られたくなければそのよく回る口を閉じろ」
「お前は口の利き方に気をつけろ。叩き直さねぇとわからんか?」
「弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ」
十七歳にして戦鬼と呼ばれるのには理由がある。
たかが十七歳の子供に歴戦の兵士たちが恐れをなして逃げるほどアルフローレンスの脅威は年々増している。
それはデイミアンでさえそうだ。
首元に突きつけられた氷刃を指で挟んで折ることができなかった。昔はそれが簡単にできていたのに今ではアルフローレンスがいつ出したのかさえ目に留めることができない。
悔しげに表情を歪めても意味はない。
「さっさと失せろ」
「雑魚が余に命令するな」
舌打ちをするデイミアンの手をノーラが包み込むと途端にデイミアンの表情が優しさをまとった。
「お前に会うためにわざわざ南の果てまで来たんだ。存分にもてなせ」
勝手知ったるように部屋の奥の扉を開けてアイザックとノーラが毎夜共に眠る寝室に入っていく。
外まで漏れるベッドの軋む音と聞いたことがないほど大きな妻の嬌声にアイザックは拳を震わせながら強く唇を噛み締めていた。
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