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失ってでも
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マダムとの生活は信じられないほど豪華で贅沢なものだった。
毎日「今日は何を食べよう」と考えずとも時間になれば出てくる食事。真っ白なシーツ。四人乗っても狭くないベッド。広すぎるお風呂。美しい景色。ゴミ一つない床。ピカピカに磨かれた窓。それらが当たり前になってしまうのがディルは怖かった。
あのボロ小屋に残してきた妹たちは風が吹くだけでガタガタと音を立てる窓を怖がる。ベッドなんて物は見たこともないだろう狭く汚い場所に今も住んでいる。
成人までもう少し。成人になれば誰の手も借りずに家を借りられる。いや、今の財産なら買うことだってできる。あとは成人を待って妹たちを説得するだけ。
「食事中に考え事?」
マダムの声にハッとして顔を上げると嫌な笑顔が向けられていた。今日は朝からマダムの機嫌があまり良くない。ジョージとティニー曰くディルのせいらしいが、ディルには心当たりがなかった。
「すみません」
「楽しかった昨日のことを思い出していたのかしら?」
「え……」
昨日は帰ってから何も言っていない。それなのになぜ昨日のことを『楽しかった』と断定したのか。
昨日はミーナを泣かしはしたが、すぐに笑ってくれた。ちゃんと頭を下げて謝って、それから他愛のない話で盛り上がった。久しぶりに心から笑えたあの時間は十歳の頃に戻ったようで帰るのが惜しいとさえ思ったほど。
でもそれをなぜマダムが知っている? マダムは確かに家にいた。帰るとマダムはガウン姿でおかえりなさいと笑顔で言ってくれたのだからあの光景をマダムが知るはずがない。
「ママはあなたのことならなんでも知ってるわ。可愛い可愛い息子のことは全てちゃあんと把握しておかなきゃね」
朝から肉汁滴るステーキを大口で頬張る姿に笑みのない苦い顔を浮かべそうになるのを堪えて笑顔を浮かべながら「さすがマダム」とだけ言った。
マダムはどこかで監視させている。それは間違いない。ジョージやティニーのように家にいれば使用人がたくさんいるこの家では監視者を付けずともいつも誰かに見られているが、ディルはそうじゃない。監視者を置かなければ外で何をしているか把握できないのだからそれも当然かと理解はするが、気色の悪い人間だと心から軽蔑する。
「そういうわけでは──」
「仕事辞めなさい」
突然の言葉にディルの身体と思考が同時に停止する。
「は……?」
震える喉から搾り出した言葉は権利を握っている相手に向けるものではなかったが、あまりの馬鹿馬鹿しい言葉にそれしか出てこなかった。
「仕事、辞めなさいって言ったの。あなたには充分なお金を払ったでしょう? 契約金もそうだし、ジョージたちと違ってあなたはレンタルだからこれからも毎月お金を払うわ。働く必要なんてないじゃない。一ヶ月で私があなたに払うお金はあなたがあんな小汚い店で必死に働いた一年分に値するのよ」
給料まで把握しているのかと呆れるが、それよりもディルが持つ感情は怒りのほうが強かった。大好きな店を、大事な店を『小汚い』と吐き捨てるように言ったマダムを睨みはしないが今の状況に相応しくない笑顔を見せた。
「絶対に辞めません」
これで今日は“悪い子”であることが決定した。朝からそれが決定してもその日が仕事であればまだ救いがあるが、最悪にも今日は休み。それでもディルは言葉を続けた。
「仕事を続けることはマダムから依頼があると聞いたときにジンに出した最低条件です。マダムもそれを理解してくださったからオレをレンタルすることにしたんでしょう? なのに仕事を辞めろと言うのは契約違反なのでは?」
「私は強要しているわけではないの。あなたに自主的に辞めるよう促しているだけ。あくまでもこれはママからの提案だから強制力はないわ。でもここにいる子はみーんなお利口さんだからママのお願いには必ずイエスと答えてくれるのよ。あなたもそうでしょ? ママの可愛い可愛い子犬ちゃん」
吐き気がするほどの嫌悪に襲われたのはいつぶりだろう。人を金で買い、人権すら奪うようなことをしておいて強制力がないなどとどの口が言うのかと嘲笑すら浮かびそうになる。
ジョージとティニーは自主的にここで暮らすことを決めたが、ディルはそうじゃない。
ジンから直接言われたわけではないが、マダムを怒らせれば妹たちを守ってはくれなくなるかもしれない危機感はある。またあの通りが酔っ払いの変態まみれになってしまうかもしれない。それでもイエスと答えるわけにはいかなかった。あの店で働くことを辞めれば絶望から這い上がることができなくなってしまうのは目に見えていたから。
きっと今日も涙が枯れるほどの“お仕置き”を受ける。それでも這い上がれるのはあの場所があるから。それを自分が金を払っているからと全てを奪うような真似をしようとするマダムに従うことはできなかった。
「辞めません」
ハッキリと伝えたディルの言葉に固まるマダム。ジョージやティニーをこの場所で囲っているのも逃げ出さない事情を持っているからだろうと二人から風呂場で話を聞いたときに思っていた。
逃げ回るジョージを助けたのも偶然ではないだろう。きっと前々から狙いをつけてチャンスを待っていたはず。そしてあの日、逃げ場のない道の上で必死に逃げ道を探していたジョージを偶然を装って車のドアを開けた。そこにまんまと獲物が乗ってきただけのこと。
ディルがマダムの性根を確信したのはティニーの話を聞いたとき。娼館で働く人間に事情がないはずがない。病気になるリスクが高いのに賃金は安い。そこらを歩いて客を取る娼婦よりも安全性が高いというだけで店に持っていかれる額を考えると危険と隣合わせでも店を介さず客を取ったほうが儲かるだろう。でも安全性を優先してティニーはそこで働き続けていた。それをマダムが引き抜いた。
ここを世界で一番安全な場所だと語るティニーの顔はいつも幸せそうで、そう語る以上は逃げ出すつもりがないことはディルでもわかる。ジョージもそう。
マダムは彼らが外に出たくない事情さえ持っていれば何をしようと金と権力で支配できると思っているのだ。ディルも事情を持っている。ジンの所で働かなければならないだけの事情を。だから「提案」と言って強制しようとする。失いたくないだろうと訴える細められた目を見てディルはもう一度言った。
「あそこに通うことはオレがレンタルされることを承諾するにあたって出した最低条件です。汗水垂らして働いた給料がどんなに安かろうとオレが大事にしているのはそこじゃないんで辞めるつもりはありません」
マダムは笑顔を見せてはいるが、目の奥が笑っていない。
「……ああ、そう。そうだったの。あなたはシェフになりたいのね? じゃあうちで働きなさい。うちのシェフは世界から呼び寄せた──」
「あの店が好きなんです。オレはあの店に来るお客様の笑顔が見たくて働いてるんです。来店するお客様にはそれぞれ事情がある。一ヶ月に一度の給料日に給料袋を握りしめて来る人。デートは必ずこの店だと決めて来る人。結婚記念日の祝いで来る人。そういう大事な日に行くと決められる店ってすごくないですか? そういう店で働けてることがオレの誇りだからオレは絶対にあの店を辞めることはしません」
笑顔で語れば語るほどマダムの笑顔が薄くなり、しないと告げた瞬間、笑顔が消えた。
「ディルはママの言うことが聞けない悪い子なのね」
「約束を破る人のほうが悪い子だと思いますけどね」
「ディル、もうそれ以上反抗するな」
「今すぐママに謝ったほうがいいよ」
ティニー曰くお仕置き大好きなジョージでさえ顔を青くしている。金のために生きてきたジョージなら一度ぐらいは生意気を言ってマダムシンディの恐怖を経験したことがあるのかもしれない。いつもは自ら“悪い子”になろうとするジョージを見ていれば今日がまた最悪の日になるのは容易に想像がつくが、店を辞めるという最悪の選択をするぐらいならその身に、記憶に刻まれるだけの最悪の日を過ごすだけほうが良いに決まってる。
「立ちなさい、ディル。誰がご主人様か教えてあげる」
ママではなくなったわけかと笑いそうになってしまいながら立ち上がる。ジョージとティニーも同行するよう命令を受け、その日、ディルは“ママ”を失った代わりに“ご主人様”ができた。
毎日「今日は何を食べよう」と考えずとも時間になれば出てくる食事。真っ白なシーツ。四人乗っても狭くないベッド。広すぎるお風呂。美しい景色。ゴミ一つない床。ピカピカに磨かれた窓。それらが当たり前になってしまうのがディルは怖かった。
あのボロ小屋に残してきた妹たちは風が吹くだけでガタガタと音を立てる窓を怖がる。ベッドなんて物は見たこともないだろう狭く汚い場所に今も住んでいる。
成人までもう少し。成人になれば誰の手も借りずに家を借りられる。いや、今の財産なら買うことだってできる。あとは成人を待って妹たちを説得するだけ。
「食事中に考え事?」
マダムの声にハッとして顔を上げると嫌な笑顔が向けられていた。今日は朝からマダムの機嫌があまり良くない。ジョージとティニー曰くディルのせいらしいが、ディルには心当たりがなかった。
「すみません」
「楽しかった昨日のことを思い出していたのかしら?」
「え……」
昨日は帰ってから何も言っていない。それなのになぜ昨日のことを『楽しかった』と断定したのか。
昨日はミーナを泣かしはしたが、すぐに笑ってくれた。ちゃんと頭を下げて謝って、それから他愛のない話で盛り上がった。久しぶりに心から笑えたあの時間は十歳の頃に戻ったようで帰るのが惜しいとさえ思ったほど。
でもそれをなぜマダムが知っている? マダムは確かに家にいた。帰るとマダムはガウン姿でおかえりなさいと笑顔で言ってくれたのだからあの光景をマダムが知るはずがない。
「ママはあなたのことならなんでも知ってるわ。可愛い可愛い息子のことは全てちゃあんと把握しておかなきゃね」
朝から肉汁滴るステーキを大口で頬張る姿に笑みのない苦い顔を浮かべそうになるのを堪えて笑顔を浮かべながら「さすがマダム」とだけ言った。
マダムはどこかで監視させている。それは間違いない。ジョージやティニーのように家にいれば使用人がたくさんいるこの家では監視者を付けずともいつも誰かに見られているが、ディルはそうじゃない。監視者を置かなければ外で何をしているか把握できないのだからそれも当然かと理解はするが、気色の悪い人間だと心から軽蔑する。
「そういうわけでは──」
「仕事辞めなさい」
突然の言葉にディルの身体と思考が同時に停止する。
「は……?」
震える喉から搾り出した言葉は権利を握っている相手に向けるものではなかったが、あまりの馬鹿馬鹿しい言葉にそれしか出てこなかった。
「仕事、辞めなさいって言ったの。あなたには充分なお金を払ったでしょう? 契約金もそうだし、ジョージたちと違ってあなたはレンタルだからこれからも毎月お金を払うわ。働く必要なんてないじゃない。一ヶ月で私があなたに払うお金はあなたがあんな小汚い店で必死に働いた一年分に値するのよ」
給料まで把握しているのかと呆れるが、それよりもディルが持つ感情は怒りのほうが強かった。大好きな店を、大事な店を『小汚い』と吐き捨てるように言ったマダムを睨みはしないが今の状況に相応しくない笑顔を見せた。
「絶対に辞めません」
これで今日は“悪い子”であることが決定した。朝からそれが決定してもその日が仕事であればまだ救いがあるが、最悪にも今日は休み。それでもディルは言葉を続けた。
「仕事を続けることはマダムから依頼があると聞いたときにジンに出した最低条件です。マダムもそれを理解してくださったからオレをレンタルすることにしたんでしょう? なのに仕事を辞めろと言うのは契約違反なのでは?」
「私は強要しているわけではないの。あなたに自主的に辞めるよう促しているだけ。あくまでもこれはママからの提案だから強制力はないわ。でもここにいる子はみーんなお利口さんだからママのお願いには必ずイエスと答えてくれるのよ。あなたもそうでしょ? ママの可愛い可愛い子犬ちゃん」
吐き気がするほどの嫌悪に襲われたのはいつぶりだろう。人を金で買い、人権すら奪うようなことをしておいて強制力がないなどとどの口が言うのかと嘲笑すら浮かびそうになる。
ジョージとティニーは自主的にここで暮らすことを決めたが、ディルはそうじゃない。
ジンから直接言われたわけではないが、マダムを怒らせれば妹たちを守ってはくれなくなるかもしれない危機感はある。またあの通りが酔っ払いの変態まみれになってしまうかもしれない。それでもイエスと答えるわけにはいかなかった。あの店で働くことを辞めれば絶望から這い上がることができなくなってしまうのは目に見えていたから。
きっと今日も涙が枯れるほどの“お仕置き”を受ける。それでも這い上がれるのはあの場所があるから。それを自分が金を払っているからと全てを奪うような真似をしようとするマダムに従うことはできなかった。
「辞めません」
ハッキリと伝えたディルの言葉に固まるマダム。ジョージやティニーをこの場所で囲っているのも逃げ出さない事情を持っているからだろうと二人から風呂場で話を聞いたときに思っていた。
逃げ回るジョージを助けたのも偶然ではないだろう。きっと前々から狙いをつけてチャンスを待っていたはず。そしてあの日、逃げ場のない道の上で必死に逃げ道を探していたジョージを偶然を装って車のドアを開けた。そこにまんまと獲物が乗ってきただけのこと。
ディルがマダムの性根を確信したのはティニーの話を聞いたとき。娼館で働く人間に事情がないはずがない。病気になるリスクが高いのに賃金は安い。そこらを歩いて客を取る娼婦よりも安全性が高いというだけで店に持っていかれる額を考えると危険と隣合わせでも店を介さず客を取ったほうが儲かるだろう。でも安全性を優先してティニーはそこで働き続けていた。それをマダムが引き抜いた。
ここを世界で一番安全な場所だと語るティニーの顔はいつも幸せそうで、そう語る以上は逃げ出すつもりがないことはディルでもわかる。ジョージもそう。
マダムは彼らが外に出たくない事情さえ持っていれば何をしようと金と権力で支配できると思っているのだ。ディルも事情を持っている。ジンの所で働かなければならないだけの事情を。だから「提案」と言って強制しようとする。失いたくないだろうと訴える細められた目を見てディルはもう一度言った。
「あそこに通うことはオレがレンタルされることを承諾するにあたって出した最低条件です。汗水垂らして働いた給料がどんなに安かろうとオレが大事にしているのはそこじゃないんで辞めるつもりはありません」
マダムは笑顔を見せてはいるが、目の奥が笑っていない。
「……ああ、そう。そうだったの。あなたはシェフになりたいのね? じゃあうちで働きなさい。うちのシェフは世界から呼び寄せた──」
「あの店が好きなんです。オレはあの店に来るお客様の笑顔が見たくて働いてるんです。来店するお客様にはそれぞれ事情がある。一ヶ月に一度の給料日に給料袋を握りしめて来る人。デートは必ずこの店だと決めて来る人。結婚記念日の祝いで来る人。そういう大事な日に行くと決められる店ってすごくないですか? そういう店で働けてることがオレの誇りだからオレは絶対にあの店を辞めることはしません」
笑顔で語れば語るほどマダムの笑顔が薄くなり、しないと告げた瞬間、笑顔が消えた。
「ディルはママの言うことが聞けない悪い子なのね」
「約束を破る人のほうが悪い子だと思いますけどね」
「ディル、もうそれ以上反抗するな」
「今すぐママに謝ったほうがいいよ」
ティニー曰くお仕置き大好きなジョージでさえ顔を青くしている。金のために生きてきたジョージなら一度ぐらいは生意気を言ってマダムシンディの恐怖を経験したことがあるのかもしれない。いつもは自ら“悪い子”になろうとするジョージを見ていれば今日がまた最悪の日になるのは容易に想像がつくが、店を辞めるという最悪の選択をするぐらいならその身に、記憶に刻まれるだけの最悪の日を過ごすだけほうが良いに決まってる。
「立ちなさい、ディル。誰がご主人様か教えてあげる」
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