29 / 95
思ったより
しおりを挟む
ルーチェと交際して三ヶ月が経った頃、ディルは疲労を自覚することが増えた。
「どうした? 朝までコースだったのか?」
大きな溜息をついたディルにオージがからかい混じりで問いかけるも苦笑しながらの首振りが返ってくるだけ。言葉なき否定は疲れの証拠。
「お前は俺らよりずっと若いだろ」
「オレはオージたちよりずっと体力ないみたい」
ディルの人生で朝までコースなのは別に珍しいことではない。よくある話だ。
最近は朝帰りするのを妹たちも何も言わなくなった。少し前までは『引っ越しのお金のためにムリするのはやめて』と言っていたが、最近はもう何も言わなくなった。
薄々、気付いてはいるのだろうとディルは思っている。ここで働いていて香水の移り香など発生するはずがない。となると追加した仕事でついている。汗臭い体力系でも心配だが、香水やシャンプーの匂いでも心配をさせることになる。
申し訳ないとは思っている。妹たちは毎日風呂に入れるわけじゃないのに自分は匂いと汚れを消すために部屋に備え付けられた風呂に入っている。
母親がどういう仕事をしていたのか知っているだけに兄が同じ仕事に身を落としていてもわざわざ聞くことはしない。十歳でそういう判断がもうできるのだ。それがありがたくも申し訳ない。気持ち悪いと蔑むことなく接してくれるのだから。
「若いからってムリすると俺らみたいになっちまうぞ」
オージ太刀みたいになりたい。歳を取っても仕事を楽しんで、人生を楽しんで、苦労さえも笑い飛ばして走っていく。歳なんて関係ないと生き様で表している背中はディルの憧れだ。
「あのお嬢ちゃんはどうだ? 好きになれそうか?」
苦笑したくなる問い方に何も答えない。答えられなかった。
ジルヴァへの恋心を消すための恋愛。ジルヴァと正反対の女の子を選んだが、反対すぎていつも比べてしまう。
「ジルヴァと似た人のほうがいいのかなぁ……」
ポツリとこぼした言葉に全員が大笑いする。
「あんな奴が何人もいてたまるかよ」
「それはそうだけど……」
「たとえいたとしてもお前はジルヴァを追っちまう。お前の想いはお前を縛りつける呪いのようなもんだ。自分よりもアイツを優先して突っ走る。それはすげぇ幸せなことでありながらすげぇ苦しいことでもある。見返りなんざ望んでねぇと思ってても返ってこない気持ちに苦しめられちまう。辛くて逃げたいのに逃げたらもっと辛くなる」
「うん……」
否定できないほど当たっている言葉にディルがテーブルの上で顔を伏せる。
「お嬢ちゃんと付き合ってその呪いが断ち切れるなら頑張りゃいい。相手を好きになる速度ってのは人それぞれだからな。でも断ち切れねぇってわかったらさっさと終わらせな。それはお前のためじゃなくお嬢ちゃんのためだ」
テーブルに向かって小さく息を吐いたあと、小さく頷いた。
ルーチェから告白されたとき、自分はなんて言った? ルーチェが望んだのはきっと喜んだディルだろうが、実際は『いいよ』とどこか上からの返事だった。それでもルーチェは喜んでくれた。一生懸命尽くしてもくれる。感謝すべきだ。こんな自分を好きだと言ってくれて笑顔で愛を囁いてくれる可愛い女の子。大事にしなければならない。頭ではわかっているのだが……
「ディル、お客さんだぞ」
顔を上げると通りに立っているルーチェがバスケットを持って手を振っていた。
きっとここで喜んで手を振り返すのが正解なのだろうが、ディルは咄嗟にそれができなかった。ジルヴァが呼べば犬のように尻尾を振って駆けていくのに。
立ち上がってドアに向かうとルーチェも移動する。鍵を開けてドアを押して通りに出た。
「ランチタイム終わったよ。どうしたの?」
手にバスケットを持っていると知っていながらそう問いかける自分は意地の悪い男だと思う。それでもルーチェは笑顔でバスケットを持ち上げて「お弁当持ってきたの!」と言う。愛らしい声だ。きっとバスケットの中身はサンドイッチだろう。手軽に食べられるサンドイッチは嫌いじゃないが、今日は最悪なタイミング。何せ今日の賄いはジルヴァが担当だった。ジルヴァの賄いのおかわりは早いもの勝ちになるほど人気で、他のシェフが作ったときのように『おかわりいる奴いるか?』とは聞いてくれない。だからジルヴァが担当のときは誰もが無言で一回目の賄いを食べておかわりのために厨房に走る。
皆それなりに体力があるシェフばかりだが、内臓までは鍛えられないらしくディルの食べるスピードには勝てない。だから一番のおかわりに行って大盛りにする。ジルヴァの賄いを食べ逃したことは一度だってない。ディルは今回も食べ損ねたくなかった。
でもせっかく恋人が持ってきてくれた物を食べないわけにもいかない。「食ってやれよ、彼氏だろ」と頭の中で囁く声が聞こえ、ディルの脳が勝手にジルヴァの声に変換する。顔には出さないものの複雑な気持ちで受け取った。
「裏に回ってくれる? 少し行ったところにベンチがあるからそこで食べよう」
「お店の中を通っちゃダメなのぉ?」
「決まりだから」
「はあい」
聞き分けは良い。裏へと小走りで向かう小さな背中を見送りながらなぜか感じる疲労。合っていないだろうのとなんとなくわかっていてもまだ切り出せていない。この三ヶ月、オージの言葉が頭の中で何度も繰り返されたが、別れまでは辿りつかない。まだだ。まだだ。そう自分に言い聞かせている間に三ヶ月も経ってしまった。
自分は店の中へと入ったディルは既に中に入っているジルヴァと目が合った。
「賄い、置いといてほしい……」
ダメ元で頼んでみた。だが……
「早い者勝ちだって言ってんだろ」
ディルが持っているバスケットに視線をやってから目を細めるジルヴァのその顔が優しくて好きだった。ジルヴァはいつもそうだ。バスケットを持っている人間に向かって「食わねぇのか?」とは聞かない。言いたいことは全て本人に言わせる。気を遣っていってくれることはない。
「今日のは特に自信作だが、食えねぇなんて残念だな」
「なんでそういう意地悪なこと言うかなー!」
「ジルヴァ、恋人に作ってもらったもん以上に美味い飯なんかあるかよ」
「そりゃそうか」
ディルに恋人ができたことなどジルヴァは気にもしていない。賄いを食べるために厨房へと向かったジルヴァを横目で見送ってからディルは裏口から出ていく。ドアを開けると忠犬のようにそこで待っていたルーチェにおまたせを言ってから一緒に向かう。
「サンドイッチおいしー?」
「美味しいよ。サンドイッチ好きなんだ」
「よかったぁ! 今日のは自信作なんだぁ」
タイミング悪くジルヴァの賄いも自信作だった。
「いつも店の賄いはシェフたちがローテーションで作るんだけど、今日はジルヴァが担当だったんだ。ジルヴァの賄いって本当に美味しくてさ、もう皆で取り合いだよ。普段はさ、ダラダラ喋っておかわりなんてしない人たちもジルヴァの賄いの日はがっついておかわりにい行くぐらい大人気でオレも結構おかわりしちゃう。ジルヴァは本当に天才なんだ。一時期この店に住み込みで手伝いさせてもらってたんだけど、メニューだけじゃなく材料とも真剣に向き合うジルヴァは見てて飽きないぐらいかっこよかったな」
恋人が作ったサンドイッチを頬張りながらジルヴァとの思い出に浸るディルをルーチェは笑顔で黙って見ている。笑顔で話を聞いてくれる優しい恋人。ディルは鈍感にもそう思っていた。
ルーチェは「そんな話しないで」「つまらない」とは言わない。ただ静かに笑顔で頷きながらディルの話を聞いてくれた。いつもはディルが聞き役でルーチェが話す役。ディルがこれほど饒舌に話すことは珍しいため止めなかった。
「美味しかった。ごちそうさま」
「また作ってくるね!」
ジルヴァの賄いの日ではありませんように、と願いながらお礼を言って手を振った。
「どうした? 朝までコースだったのか?」
大きな溜息をついたディルにオージがからかい混じりで問いかけるも苦笑しながらの首振りが返ってくるだけ。言葉なき否定は疲れの証拠。
「お前は俺らよりずっと若いだろ」
「オレはオージたちよりずっと体力ないみたい」
ディルの人生で朝までコースなのは別に珍しいことではない。よくある話だ。
最近は朝帰りするのを妹たちも何も言わなくなった。少し前までは『引っ越しのお金のためにムリするのはやめて』と言っていたが、最近はもう何も言わなくなった。
薄々、気付いてはいるのだろうとディルは思っている。ここで働いていて香水の移り香など発生するはずがない。となると追加した仕事でついている。汗臭い体力系でも心配だが、香水やシャンプーの匂いでも心配をさせることになる。
申し訳ないとは思っている。妹たちは毎日風呂に入れるわけじゃないのに自分は匂いと汚れを消すために部屋に備え付けられた風呂に入っている。
母親がどういう仕事をしていたのか知っているだけに兄が同じ仕事に身を落としていてもわざわざ聞くことはしない。十歳でそういう判断がもうできるのだ。それがありがたくも申し訳ない。気持ち悪いと蔑むことなく接してくれるのだから。
「若いからってムリすると俺らみたいになっちまうぞ」
オージ太刀みたいになりたい。歳を取っても仕事を楽しんで、人生を楽しんで、苦労さえも笑い飛ばして走っていく。歳なんて関係ないと生き様で表している背中はディルの憧れだ。
「あのお嬢ちゃんはどうだ? 好きになれそうか?」
苦笑したくなる問い方に何も答えない。答えられなかった。
ジルヴァへの恋心を消すための恋愛。ジルヴァと正反対の女の子を選んだが、反対すぎていつも比べてしまう。
「ジルヴァと似た人のほうがいいのかなぁ……」
ポツリとこぼした言葉に全員が大笑いする。
「あんな奴が何人もいてたまるかよ」
「それはそうだけど……」
「たとえいたとしてもお前はジルヴァを追っちまう。お前の想いはお前を縛りつける呪いのようなもんだ。自分よりもアイツを優先して突っ走る。それはすげぇ幸せなことでありながらすげぇ苦しいことでもある。見返りなんざ望んでねぇと思ってても返ってこない気持ちに苦しめられちまう。辛くて逃げたいのに逃げたらもっと辛くなる」
「うん……」
否定できないほど当たっている言葉にディルがテーブルの上で顔を伏せる。
「お嬢ちゃんと付き合ってその呪いが断ち切れるなら頑張りゃいい。相手を好きになる速度ってのは人それぞれだからな。でも断ち切れねぇってわかったらさっさと終わらせな。それはお前のためじゃなくお嬢ちゃんのためだ」
テーブルに向かって小さく息を吐いたあと、小さく頷いた。
ルーチェから告白されたとき、自分はなんて言った? ルーチェが望んだのはきっと喜んだディルだろうが、実際は『いいよ』とどこか上からの返事だった。それでもルーチェは喜んでくれた。一生懸命尽くしてもくれる。感謝すべきだ。こんな自分を好きだと言ってくれて笑顔で愛を囁いてくれる可愛い女の子。大事にしなければならない。頭ではわかっているのだが……
「ディル、お客さんだぞ」
顔を上げると通りに立っているルーチェがバスケットを持って手を振っていた。
きっとここで喜んで手を振り返すのが正解なのだろうが、ディルは咄嗟にそれができなかった。ジルヴァが呼べば犬のように尻尾を振って駆けていくのに。
立ち上がってドアに向かうとルーチェも移動する。鍵を開けてドアを押して通りに出た。
「ランチタイム終わったよ。どうしたの?」
手にバスケットを持っていると知っていながらそう問いかける自分は意地の悪い男だと思う。それでもルーチェは笑顔でバスケットを持ち上げて「お弁当持ってきたの!」と言う。愛らしい声だ。きっとバスケットの中身はサンドイッチだろう。手軽に食べられるサンドイッチは嫌いじゃないが、今日は最悪なタイミング。何せ今日の賄いはジルヴァが担当だった。ジルヴァの賄いのおかわりは早いもの勝ちになるほど人気で、他のシェフが作ったときのように『おかわりいる奴いるか?』とは聞いてくれない。だからジルヴァが担当のときは誰もが無言で一回目の賄いを食べておかわりのために厨房に走る。
皆それなりに体力があるシェフばかりだが、内臓までは鍛えられないらしくディルの食べるスピードには勝てない。だから一番のおかわりに行って大盛りにする。ジルヴァの賄いを食べ逃したことは一度だってない。ディルは今回も食べ損ねたくなかった。
でもせっかく恋人が持ってきてくれた物を食べないわけにもいかない。「食ってやれよ、彼氏だろ」と頭の中で囁く声が聞こえ、ディルの脳が勝手にジルヴァの声に変換する。顔には出さないものの複雑な気持ちで受け取った。
「裏に回ってくれる? 少し行ったところにベンチがあるからそこで食べよう」
「お店の中を通っちゃダメなのぉ?」
「決まりだから」
「はあい」
聞き分けは良い。裏へと小走りで向かう小さな背中を見送りながらなぜか感じる疲労。合っていないだろうのとなんとなくわかっていてもまだ切り出せていない。この三ヶ月、オージの言葉が頭の中で何度も繰り返されたが、別れまでは辿りつかない。まだだ。まだだ。そう自分に言い聞かせている間に三ヶ月も経ってしまった。
自分は店の中へと入ったディルは既に中に入っているジルヴァと目が合った。
「賄い、置いといてほしい……」
ダメ元で頼んでみた。だが……
「早い者勝ちだって言ってんだろ」
ディルが持っているバスケットに視線をやってから目を細めるジルヴァのその顔が優しくて好きだった。ジルヴァはいつもそうだ。バスケットを持っている人間に向かって「食わねぇのか?」とは聞かない。言いたいことは全て本人に言わせる。気を遣っていってくれることはない。
「今日のは特に自信作だが、食えねぇなんて残念だな」
「なんでそういう意地悪なこと言うかなー!」
「ジルヴァ、恋人に作ってもらったもん以上に美味い飯なんかあるかよ」
「そりゃそうか」
ディルに恋人ができたことなどジルヴァは気にもしていない。賄いを食べるために厨房へと向かったジルヴァを横目で見送ってからディルは裏口から出ていく。ドアを開けると忠犬のようにそこで待っていたルーチェにおまたせを言ってから一緒に向かう。
「サンドイッチおいしー?」
「美味しいよ。サンドイッチ好きなんだ」
「よかったぁ! 今日のは自信作なんだぁ」
タイミング悪くジルヴァの賄いも自信作だった。
「いつも店の賄いはシェフたちがローテーションで作るんだけど、今日はジルヴァが担当だったんだ。ジルヴァの賄いって本当に美味しくてさ、もう皆で取り合いだよ。普段はさ、ダラダラ喋っておかわりなんてしない人たちもジルヴァの賄いの日はがっついておかわりにい行くぐらい大人気でオレも結構おかわりしちゃう。ジルヴァは本当に天才なんだ。一時期この店に住み込みで手伝いさせてもらってたんだけど、メニューだけじゃなく材料とも真剣に向き合うジルヴァは見てて飽きないぐらいかっこよかったな」
恋人が作ったサンドイッチを頬張りながらジルヴァとの思い出に浸るディルをルーチェは笑顔で黙って見ている。笑顔で話を聞いてくれる優しい恋人。ディルは鈍感にもそう思っていた。
ルーチェは「そんな話しないで」「つまらない」とは言わない。ただ静かに笑顔で頷きながらディルの話を聞いてくれた。いつもはディルが聞き役でルーチェが話す役。ディルがこれほど饒舌に話すことは珍しいため止めなかった。
「美味しかった。ごちそうさま」
「また作ってくるね!」
ジルヴァの賄いの日ではありませんように、と願いながらお礼を言って手を振った。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる