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思いどおりにいかないこと
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国王の怒りは頂点に達していた。腑が煮え繰り返るほどの怒りを抱える父親が余計なことをしでかさないために必死に宥めても怒りは収まらず、自らの足で騎士団を訪ねていた。
「なぜ国王である私がわざわざ足を運んできたかわかるか!?」
「依頼人の方には足を運んでいただくことになっていますので」
国王直属の騎士団ではなく、自立した騎士団は王族のためだけに仕事をするのではなく市民たちのためにも仕事をする。国王に媚びて手を擦り合わせるような真似はしないと決めているため、国王が足を運んできたところで仰々しい挨拶はしない。
優男に見える整った顔立ちの男がこの団をまとめる長であり、世界にも名を轟かせている有名な騎士。そんな男がこの国にいることは他国に国王にとって自慢できる一つではあったが、今はその悠々たる態度が気に入らなかった。
「私の娘を護衛している騎士のことで来た!」
「アーテルとニヴェウスですね」
「二人をクビにしろ!」
二人から現状について報告を受けているため、そう命じてくるのも遠くはない話だと思っていただけに驚きはなかった。
「解雇の理由をお聞かせ願います」
「あの二人はうちの娘を誑かした悪魔だ! リズはな、上二人の姉と違って親に反抗するような娘じゃなかったんだ! それが急に反抗するようになった。あの二人に誑かされたとしか思えん!」
「彼らはリズ王女の護衛に就いてもう十四年になります。今更誑かす理由などないと思いますが」
アーテルとニヴェウスから話は聞いているが、団長はあえてその話はしなかった。それは国王が言う誑かすには入っておらず、個人問題であり二十歳を超えた娘の感情を揺さぶるものではなかったから。
知らない人間だけが哀れに見える。それは間違いない。
「とにかくクビにしろ! 別の奴を寄越せ!」
「別の騎士、ですか」
「女だ、女がいい。女騎士はいないのか?」
「もちろん在団しております」
「そいつを寄越せ。あの二人と交代だ」
もうリズしか残されていない状況でこれ以上の男関係は無用だと女騎士に変える要望を出した。女騎士なら誑かさることもなく安心だと。
「我が騎士団で最も優秀な二人を言いがかりによる一方的な解雇は遺憾ですが、まあ、国王様のご要望ですので受け入れましょう」
問題なく了承されたことに安堵した国王の顔に安堵の笑みが浮かぶが
「今日中だぞ。今日中に交代を──」
国王が話している最中に人差し指を立てて言葉を遮る無礼を団長が見せる笑顔にどこか迫力を感じ、無礼だぞと怒りはせず、思わず口を閉じた。
「ただし……」
次ぐ言葉があることに嫌な予感がする。
「アーテルとニヴェウスを解雇されるとおっしゃる場合、交代ではなく、派遣している騎士全員を撤収させていただきます」
「なんだと!? どういうつもりだ!」
目を見開いて驚く国王が団長のテーブルを両手で叩くも開いている報告書が破られないように叩く前に引き、国王の手が離れてからトントンと書類を机の上で叩いて整える。
「どういうつもりも。先ほども言いましたが、彼らは我が団で最も優秀な騎士。それを難癖つけて解雇するような不義理な場所で大事な騎士たちを働かせておきたくはないのです」
「なんッ……!」
「彼らは至極真面目に己の使命を果たして働いています。こちらに確かな問題があったのであれば甘んじて受け入れ謝罪もし、彼らを即刻処分致しますが、そちらの言いがかりでの解雇は容認できません」
「さっき受け入れると言ったではないか!!」
話が違うと怒鳴ろうと団長の笑みは変わらない。
「ええ、ですから受け入れましょう。ただし、こちらからも条件があると申し上げているだけです」
「卑怯だぞ!! 我が城にいる騎士は全員ここから雇っているんだぞ!」
「ええ、ですから彼らを解雇とするなら新しく雇っていただくこととなります。警備兵を募集されてはいかがでしょう? 大勢の応募があると思いますよ」
「ふ、ふざけるな! 高い金を払って雇っているんだぞ! 雇い主の命令が聞けないのか! 私は国王だぞ!! 私がその気になればこんな騎士団、あっという間に潰せ──ッ!」
団長が向ける眼光の鋭さに国王は首に冷たいナイフを当てられている感覚に陥った。汗が伝う首を触ってもナイフはない。それなのに吹き出す汗が止まらない。
「なぜ命令を聞かないんだ! 私の命令は絶対だ!」
「それが国のためになるのであれば我ら騎士団一同、喜んで手を貸しましょう」
「王女の未来がかかっているんだ! これは国の一大事だろう!」
「騎士団は親子喧嘩には入りません」
「ッ!!」
はっきり告げられた親子喧嘩という言葉に国王が悔しげに歯を食いしばる。なぜ国王である自分にここまで強気な態度でいられるのかがわからないと睨みつけるが、団長の笑みは対面したときから変わらない。
「妻子がいない私に口出しできることではありませんが、リズ王女の心の声に耳を傾けられてはいかがでしょう?」
「貴様のアドバイスなど聞かん! 私は国王だぞ!」
「それはそれは失礼しました」
国王の権力があれば騎士団を国から追い出すことはできるが、追い出して他の国にやるのはあまりにも愚行。手放したくなければ折れるしかないことに拳を握りしめながら出口へと向かう。
「護衛は続行ということでよろしいでしょうか?」
丸い背中に問いかけるも国王は返事もせずに帰っていった。
この世で生き残れるのは賢者だけ。知恵があれば王をも喰い殺せることを団長は知っている。だからどこにも属さず、パン屋や服屋と同じように企業として騎士団を経営している。国やり方には従うが、媚びへつらうことはしない。それこそ強き者が世のために生きられるやり方だと信じている。
「リズ王女も二十一歳か……早いな」
王女の護衛を派遣するにあたって最も優秀な騎士をと要望があり、まずアーテルを派遣した。だがすぐにアーテルから連絡があり『ニヴェウスを派遣してほしい』と要望があった。リズのお転婆さに一人では対応しきれないと判断してのことと書いてあり、一人ではムリだと言うのは騎士としてのプライドもあっただろうが、そこを曲げて要望してきたことで団長は詳しい話は聞かずにニヴェウスを派遣する旨を国王に話した。リズに目をかけていた国王はそれを拒むことなく受け入れ、今に至るわけだが、十四年という年月は嘘でも短いとは言えない。彼らは立派にやってきたと太鼓判を押しているからこそ国王の命に従うつもりはなかった。
「命令に背いて良かったのですか?」
団長補佐の言葉に団長が小さな笑みを浮かべる。
「良いか悪いかで言えば悪いのだろうが、我らは国王のわがままに従うためにいるわけじゃない。娘が言うことを聞かないのは護衛騎士のせいだ、などと愚言を発する男に下げる頭は持っていないのだよ、私は」
「アーテルとニヴェウスが誑かすなんてとんでもない話ですよ」
「デイジー王女の問題よりも重大な問題となったクラリッサ王女を修正するのは絶望的と判断した結果、リズ王女に期待の全てを押し付けるつもりだろうが、アーテルでさえ手を焼く娘が今更親の言うとおりに生きるはずがない。育て方を間違えたと反省すべきところを他者のせいしている時点でこの国の終わりはもう見えているんだ」
「エヴァン王子が王になれば変わるでしょうか?」
「ムリだろうな。蛙の子は蛙でしかない」
エヴァン王子の評判は有能と無能と判断している者が二分しており、国民の期待度はそれほど高くはない。次男のウォレン王子に関しては判断材料すらない。誰も期待はしていない。
「でも騎士の称号が剥奪されなくてよかったですね」
「だからこの国を選んだんだ」
「どういうことですか?」
疑問符を頭上に浮かべる補佐に笑顔を向けるだけで答えはしなかった。
娘がいくら美しいからといえど“鑑賞用”などと不名誉な称号を父親が受け入れることは異常としか言いようがない。娘を商品として扱い、自分の努力ではないことで鼻を空まで届きそうなほど高く伸ばす人間は何一つ誇るものがない自分を偽り、虚栄心を満たすために行動することに命をかける。そんな王だから自分たち騎士が商品として雑に扱われない国で騎士団を運営することにした。自分の価値をわかっているからこそ上手く利用し、自分を慕ってくれる彼らの価値を無碍にしない方法を取る。クラリッサがやるべきだったことだ。
「でも、デイジー王女が一般市民になって、クラリッサ王女がダークエルフと繋がってた問題が浮上して、リズ王女まで問題起こしたってなったらどうするんでしょう?」
「怒り狂って廃人になるんじゃないか?」
「国王が変わっても雇ってもらえますかね?」
支払いに問題はない。滞ったことは一度もない。だが、次の世代もそうだとは限らない。息子は現国王より賢く見えてそうじゃないことは世界中で語られる話。エヴァンもまだ判断はできない。
だが、団長は一つだけ確信があった。
「騎士の時代も長くは続かんさ」
何事にも全て終わりはやってくる。それは騎士の時代も例外ではない。だから自分たちは必要とされている間は必死に生きなければならないのだと。
「アーテルたちに何もないといいですけどね」
「彼らは愚者ではない。常に最善の策を瞬時に判断できる能力がある。いつだってな」
細かな報告は受けてはいないが、報告書から何をしようとしているのかは伝わってきたため何が起きるか楽しみにしている団長は報告書の隅に“可”と書いて丸をつけた。
「なぜ国王である私がわざわざ足を運んできたかわかるか!?」
「依頼人の方には足を運んでいただくことになっていますので」
国王直属の騎士団ではなく、自立した騎士団は王族のためだけに仕事をするのではなく市民たちのためにも仕事をする。国王に媚びて手を擦り合わせるような真似はしないと決めているため、国王が足を運んできたところで仰々しい挨拶はしない。
優男に見える整った顔立ちの男がこの団をまとめる長であり、世界にも名を轟かせている有名な騎士。そんな男がこの国にいることは他国に国王にとって自慢できる一つではあったが、今はその悠々たる態度が気に入らなかった。
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「アーテルとニヴェウスですね」
「二人をクビにしろ!」
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「彼らはリズ王女の護衛に就いてもう十四年になります。今更誑かす理由などないと思いますが」
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知らない人間だけが哀れに見える。それは間違いない。
「とにかくクビにしろ! 別の奴を寄越せ!」
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「女だ、女がいい。女騎士はいないのか?」
「もちろん在団しております」
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もうリズしか残されていない状況でこれ以上の男関係は無用だと女騎士に変える要望を出した。女騎士なら誑かさることもなく安心だと。
「我が騎士団で最も優秀な二人を言いがかりによる一方的な解雇は遺憾ですが、まあ、国王様のご要望ですので受け入れましょう」
問題なく了承されたことに安堵した国王の顔に安堵の笑みが浮かぶが
「今日中だぞ。今日中に交代を──」
国王が話している最中に人差し指を立てて言葉を遮る無礼を団長が見せる笑顔にどこか迫力を感じ、無礼だぞと怒りはせず、思わず口を閉じた。
「ただし……」
次ぐ言葉があることに嫌な予感がする。
「アーテルとニヴェウスを解雇されるとおっしゃる場合、交代ではなく、派遣している騎士全員を撤収させていただきます」
「なんだと!? どういうつもりだ!」
目を見開いて驚く国王が団長のテーブルを両手で叩くも開いている報告書が破られないように叩く前に引き、国王の手が離れてからトントンと書類を机の上で叩いて整える。
「どういうつもりも。先ほども言いましたが、彼らは我が団で最も優秀な騎士。それを難癖つけて解雇するような不義理な場所で大事な騎士たちを働かせておきたくはないのです」
「なんッ……!」
「彼らは至極真面目に己の使命を果たして働いています。こちらに確かな問題があったのであれば甘んじて受け入れ謝罪もし、彼らを即刻処分致しますが、そちらの言いがかりでの解雇は容認できません」
「さっき受け入れると言ったではないか!!」
話が違うと怒鳴ろうと団長の笑みは変わらない。
「ええ、ですから受け入れましょう。ただし、こちらからも条件があると申し上げているだけです」
「卑怯だぞ!! 我が城にいる騎士は全員ここから雇っているんだぞ!」
「ええ、ですから彼らを解雇とするなら新しく雇っていただくこととなります。警備兵を募集されてはいかがでしょう? 大勢の応募があると思いますよ」
「ふ、ふざけるな! 高い金を払って雇っているんだぞ! 雇い主の命令が聞けないのか! 私は国王だぞ!! 私がその気になればこんな騎士団、あっという間に潰せ──ッ!」
団長が向ける眼光の鋭さに国王は首に冷たいナイフを当てられている感覚に陥った。汗が伝う首を触ってもナイフはない。それなのに吹き出す汗が止まらない。
「なぜ命令を聞かないんだ! 私の命令は絶対だ!」
「それが国のためになるのであれば我ら騎士団一同、喜んで手を貸しましょう」
「王女の未来がかかっているんだ! これは国の一大事だろう!」
「騎士団は親子喧嘩には入りません」
「ッ!!」
はっきり告げられた親子喧嘩という言葉に国王が悔しげに歯を食いしばる。なぜ国王である自分にここまで強気な態度でいられるのかがわからないと睨みつけるが、団長の笑みは対面したときから変わらない。
「妻子がいない私に口出しできることではありませんが、リズ王女の心の声に耳を傾けられてはいかがでしょう?」
「貴様のアドバイスなど聞かん! 私は国王だぞ!」
「それはそれは失礼しました」
国王の権力があれば騎士団を国から追い出すことはできるが、追い出して他の国にやるのはあまりにも愚行。手放したくなければ折れるしかないことに拳を握りしめながら出口へと向かう。
「護衛は続行ということでよろしいでしょうか?」
丸い背中に問いかけるも国王は返事もせずに帰っていった。
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団長補佐の言葉に団長が小さな笑みを浮かべる。
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「ムリだろうな。蛙の子は蛙でしかない」
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「でも、デイジー王女が一般市民になって、クラリッサ王女がダークエルフと繋がってた問題が浮上して、リズ王女まで問題起こしたってなったらどうするんでしょう?」
「怒り狂って廃人になるんじゃないか?」
「国王が変わっても雇ってもらえますかね?」
支払いに問題はない。滞ったことは一度もない。だが、次の世代もそうだとは限らない。息子は現国王より賢く見えてそうじゃないことは世界中で語られる話。エヴァンもまだ判断はできない。
だが、団長は一つだけ確信があった。
「騎士の時代も長くは続かんさ」
何事にも全て終わりはやってくる。それは騎士の時代も例外ではない。だから自分たちは必要とされている間は必死に生きなければならないのだと。
「アーテルたちに何もないといいですけどね」
「彼らは愚者ではない。常に最善の策を瞬時に判断できる能力がある。いつだってな」
細かな報告は受けてはいないが、報告書から何をしようとしているのかは伝わってきたため何が起きるか楽しみにしている団長は報告書の隅に“可”と書いて丸をつけた。
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