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怖いこと
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「祖母が亡くなってからレッスン量が増えて……」
「お前は従うだけの人形と化したわけか」
子供には親しかいない。親からの期待を感じると応えなければと思ってしまう。応えることができれば親は喜んでくれることを知っていたから。
嫌だと拒んだところで怒られ、手を叩かれる子供に拒否権も選択権もない。あるのは従順一択。
「あの日から全て変わったわ。アイスクリームもジュースも禁止されて、祖母としてたこと全部できなくなった。何を言ってもダメの連続」
「父親はお前に甘かったんじゃなかったか?」
「甘いのは父親の意に添うお願いをしたときだけよ。一枚でいいから毎日食べたいと言っても食べさせてはもらえないし、馬車から降りないから街を見てみたいと言っても門にさえ近寄らせてはもらえないんだから」
「勝手だな。あと五年で捨てるくせにな」
「耳がいいのも問題ね」
いつ何を報告しようともエイベルは全て知っている。だから隠し事はできないし、嘘もつけない。でも報告のしがいがないと思わないのは、知っていながらもちゃんと最後まで話を聞いてくれるから。
「あなたってもうそれ以上は老けないの?」
「そうだな」
「ダークエルフに老人はいないの?」
「老け方にも個人差があるからな、いないわけではないが少ないな」
老いることがない相手が羨ましいと言葉にはしないが、エイベルはクラリッサの顔を見ていれば何を思っているかわかった。
「老いることが怖いか?」
直球な問いかけにクラリッサが苦笑する。
「老いることが必ずしも悪いとは言わないって祖母は言ってたわ。老いていくことで得る美しさもあると。でも私は……」
「永遠の美しさを求められている、か?」
「そう……」
求められているのは完璧な美。一寸の歪みもない完璧な姿なのだ。鑑賞して楽しめる美しさを皆が求めている。そこに老いは許されないものとして存在している。だから歳を重ねるのが恐怖として存在していた。
「人間にとって老いは自然の摂理だろう」
「そうよ。自然なことよね。でも私がそれを自然なことだと言っても、きっと誰もそれを受け入れてはくれない。私は老いることが許されないのよ」
歳を重ねる度に想像する最悪の光景。それに何度震えて涙したかわからない。ただの想像なのに、まるでそれが予知であるかのように現実的に襲ってくる。人の感情も己の感情も全て。
「だから老いるのが怖い」
「お前とて人間だ。老いも仕方ないと受け入れるさ」
エイベルの言葉どおりならどんなにいいだろう。クラリッサには容易に想像できてしまうのだ。今、熱心にパーティーに通って貢ぎ物を嬉々として披露する彼らが冷めた顔で老いた鑑賞用王女を見るのが。
あくまでも想像。でも想像だけでも耐えられない。
「私が老いたら誰も私を見なくなるわ。だって彼らが好きなのは若くて美しい人形のような私なんだもの」
「飽きられればお前はもう人形として生きる必要はなくなるんだぞ。何を恐れる必要がある?」
「そのあとに待ってるのは何? 鑑賞用として生きてきた女にその価値がなくなる。嫁ぎ先で愛してもらえるとは限らない。価値のなくなった女を誰が愛してくれるの?」
必死な形相に彼女の恐れを感じる。言葉にするよりもずっと明確で、自分につけられている価値を理解しているのだと胸が痛くなった。
怯える姿さえも可憐だと思うエイベルは容易に言葉を発することはしない。この感情は向けるべきではないと思ったから。自分は薄汚い人間とは違うと思っていながらもクラリッサに老いを感じたとき、今までと変わらず鑑賞用として眺められるだろうかと疑問が浮かんだ。
老いる恐怖は老いを知らないエルフにはわからない感情。同情も慰めもできない。
「一番美しい娘が老いたとしても結局は美しいままだ」
あと五年もすればクラリッサは間違いなく今より老いたと言われるだろう。老いているのだから当然だが、そんな当然のことが許せない人間がいる。父親を筆頭に、クラリッサを鑑賞用として眺める人間たちだ。そして悲しいかな、クラリッサ本人も。
なぜ老いてなお美しいと信じてやらないのかが、エイベルにはわからない。自分が若い頃のままではないことなど鏡を見ずともわかるはずなのに、なぜ不可能なことを期待するのかがわからなかった。
それも全て人間が愚かだという証拠でしかなく、エイベルはそれにさえ嫌悪する。
「一番……」
クラリッサが呟く。
「一番って言葉は大嫌い」
短い言葉に込められた心からの感情をこぼす様を黙って見つめる。
「一番美しいとか、お前が一番だとか……一番一番一番一番……それを言われる度に息が詰まりそうになる。二番になることは許さないって言われてるようで……怖くなるの」
恐怖の中で戦いながら生きていることを知っている人間はどれだけいるのだろうか。家族でさえ知らないだろうことをこの場で吐露することは信頼されているようで嬉しいが、今この場で喜びを表現することはできない。
「一番じゃない私に価値はないって……きっと言われるんだわ」
恐怖は膨れ上がれば被害妄想が始まる。クラリッサは自分の価値を定めるために鑑賞用王女を演じ続けている。今日も明日も明後日もクラリッサは家族に不安だと吐き出すことはせず、完璧な笑顔で生きていく。それはまるで止まるのを待つ時計のよう。動いている物はいつか止まる。生きていれば必ず老ける。当たり前のことを当たり前として受け入れない人間にあと何年苦しめられるのだろうと、エイベルはたまらずクラリッサを強く抱きしめた。
「お前が嫁に行きたくないと言うのなら森に来ればいい」
「あなたがお嫁にもらってくれるの?」
「この森で暮らせばいいだけだ。そうすればもう鑑賞用である必要はないのだからな」
出会ったときから何度も言ってくれる言葉だが、クラリッサはそれにイエスとは答えられない。今は特に。
ダークエルフに家族の概念はない。だから夫も妻も子供もない。家族という形を取ってない以上は自分が森に入ってエイベルと暮らしたところで森の中で異端者になるだけで、あの気の強い女たちが黙っているとは思えなかった。自分がそれに耐えられるとも。
「そうやって逃げ道を作ってくれるなんて優しいのね」
「頭の片隅に置いておけ。本気で逃げ出したくなったら手伝ってやる」
「ええ、ありがとう」
エイベルも無理強いするつもりはなかった。ただ、既に情が移っている相手が苦しんで涙するのは見ていられない。涙する姿は美しくともエイベルが見たいのは喜びの涙。逃げ出したときに開放感でその涙が見られればと思っている。
「今はまだ大丈夫。おばあさまの言葉が私を救ってくれてるから。いつか王子様が現れるって信じてる。ふふっ、リズの気持ちが少しわかるの。大好きな人のお姫様になりたいって。もうそんな歳じゃないけどね」
「人間の中には老嬢というのがいるんだろう?」
「ええ」
未婚の老人の令嬢をそう呼ぶことは以前、兄から聞いたことがある。顔にいくつものシワが刻まれていようともまだ結婚を諦めず、パーティーに出席して結婚相手を探しているのだと。
父親がパーティーを開催することによって、そういう人にもチャンスが増えればと思ったこともあったと思い出して苦笑混じりではあるが、クラリッサの表情が柔らかくなる。
「夢を見るのに年齢など関係ないんじゃないか?」
「……じゃあ、あなたはまだ夢を持ってる?」
不老不死のエルフが夢を持っているのかと問いかけるクラリッサのどこか冷めたような声色にエイベルは目を逸らさなかった。心のどこかでエルフに何がわかるんだと思っているのではないかと感じさせるような声だ。しかし、エイベルはそれを不愉快には思わない。さっきの言葉は慰めるための言葉に過ぎない。エイベルは夢など持ってはいない。これから終わりの見えない人生を歩んでいく中で夢をもつだけ無駄だと思っているから。夢を持つ者を見下しさえしてきたのだ。
「夢……というと、少し違うかもしれないが……」
「聞かせて」
縋るような目と言い方にクラリッサの背中を赤子をあやすように軽く叩くと彼女の頬が肩に乗った。
「自由を得ることだ」
驚いた顔をするクラリッサにエイベルが珍しく苦笑を見せる。
「自由じゃないの?」
「森の中では自由だが、外を自由に闊歩はできん」
嫌われているから?とは失礼すぎて聞けなかった。
「そういう契約だからだ」
クラリッサの心を読んだような答えにクラリッサの思考が停止する。
契約で自由を奪われるようなことがあるのだろうかと思うが、自分も父親との約束で自由に外を闊歩することができない。したことがない。だが、エイベルはダークエルフの長で、誰にも縛られることなどないはず。その長が自由を得て外を闊歩したいと言う理由がわからなかった。
「誰と契約を結んだの?」
「俺の先祖が人間と交わした契約だ」
「外に出るなって?」
「要約すればそうだな」
ダークエルフの森は小さくはないが、大国とも呼べないモレノスにあるのでは巨大とも言えない広さ。その森に何人のダークエルフが住んでいるのかは知らないが、ダークエルフの森がそこにあるのに庭に出ても一度もダークエルフを見たことがなかった理由はそれかと納得すると共にキリがない驚きに眉を寄せた。
「どうしてそんな契約を?」
ダークエルフと人間は昔、今と違って契約の話が持ち上がるほどの交流があったということ。なぜ今、彼らは憎み合っているのか。誰に聞いても教えてくれなかった理由がそこにあると顔を上げてエイベルに問いかけると返ってきた表情は恐ろしいほど冷めたもので
「戦争のせいだ」
そう言い放つ声も恐ろしいほど冷たいものだった。
「お前は従うだけの人形と化したわけか」
子供には親しかいない。親からの期待を感じると応えなければと思ってしまう。応えることができれば親は喜んでくれることを知っていたから。
嫌だと拒んだところで怒られ、手を叩かれる子供に拒否権も選択権もない。あるのは従順一択。
「あの日から全て変わったわ。アイスクリームもジュースも禁止されて、祖母としてたこと全部できなくなった。何を言ってもダメの連続」
「父親はお前に甘かったんじゃなかったか?」
「甘いのは父親の意に添うお願いをしたときだけよ。一枚でいいから毎日食べたいと言っても食べさせてはもらえないし、馬車から降りないから街を見てみたいと言っても門にさえ近寄らせてはもらえないんだから」
「勝手だな。あと五年で捨てるくせにな」
「耳がいいのも問題ね」
いつ何を報告しようともエイベルは全て知っている。だから隠し事はできないし、嘘もつけない。でも報告のしがいがないと思わないのは、知っていながらもちゃんと最後まで話を聞いてくれるから。
「あなたってもうそれ以上は老けないの?」
「そうだな」
「ダークエルフに老人はいないの?」
「老け方にも個人差があるからな、いないわけではないが少ないな」
老いることがない相手が羨ましいと言葉にはしないが、エイベルはクラリッサの顔を見ていれば何を思っているかわかった。
「老いることが怖いか?」
直球な問いかけにクラリッサが苦笑する。
「老いることが必ずしも悪いとは言わないって祖母は言ってたわ。老いていくことで得る美しさもあると。でも私は……」
「永遠の美しさを求められている、か?」
「そう……」
求められているのは完璧な美。一寸の歪みもない完璧な姿なのだ。鑑賞して楽しめる美しさを皆が求めている。そこに老いは許されないものとして存在している。だから歳を重ねるのが恐怖として存在していた。
「人間にとって老いは自然の摂理だろう」
「そうよ。自然なことよね。でも私がそれを自然なことだと言っても、きっと誰もそれを受け入れてはくれない。私は老いることが許されないのよ」
歳を重ねる度に想像する最悪の光景。それに何度震えて涙したかわからない。ただの想像なのに、まるでそれが予知であるかのように現実的に襲ってくる。人の感情も己の感情も全て。
「だから老いるのが怖い」
「お前とて人間だ。老いも仕方ないと受け入れるさ」
エイベルの言葉どおりならどんなにいいだろう。クラリッサには容易に想像できてしまうのだ。今、熱心にパーティーに通って貢ぎ物を嬉々として披露する彼らが冷めた顔で老いた鑑賞用王女を見るのが。
あくまでも想像。でも想像だけでも耐えられない。
「私が老いたら誰も私を見なくなるわ。だって彼らが好きなのは若くて美しい人形のような私なんだもの」
「飽きられればお前はもう人形として生きる必要はなくなるんだぞ。何を恐れる必要がある?」
「そのあとに待ってるのは何? 鑑賞用として生きてきた女にその価値がなくなる。嫁ぎ先で愛してもらえるとは限らない。価値のなくなった女を誰が愛してくれるの?」
必死な形相に彼女の恐れを感じる。言葉にするよりもずっと明確で、自分につけられている価値を理解しているのだと胸が痛くなった。
怯える姿さえも可憐だと思うエイベルは容易に言葉を発することはしない。この感情は向けるべきではないと思ったから。自分は薄汚い人間とは違うと思っていながらもクラリッサに老いを感じたとき、今までと変わらず鑑賞用として眺められるだろうかと疑問が浮かんだ。
老いる恐怖は老いを知らないエルフにはわからない感情。同情も慰めもできない。
「一番美しい娘が老いたとしても結局は美しいままだ」
あと五年もすればクラリッサは間違いなく今より老いたと言われるだろう。老いているのだから当然だが、そんな当然のことが許せない人間がいる。父親を筆頭に、クラリッサを鑑賞用として眺める人間たちだ。そして悲しいかな、クラリッサ本人も。
なぜ老いてなお美しいと信じてやらないのかが、エイベルにはわからない。自分が若い頃のままではないことなど鏡を見ずともわかるはずなのに、なぜ不可能なことを期待するのかがわからなかった。
それも全て人間が愚かだという証拠でしかなく、エイベルはそれにさえ嫌悪する。
「一番……」
クラリッサが呟く。
「一番って言葉は大嫌い」
短い言葉に込められた心からの感情をこぼす様を黙って見つめる。
「一番美しいとか、お前が一番だとか……一番一番一番一番……それを言われる度に息が詰まりそうになる。二番になることは許さないって言われてるようで……怖くなるの」
恐怖の中で戦いながら生きていることを知っている人間はどれだけいるのだろうか。家族でさえ知らないだろうことをこの場で吐露することは信頼されているようで嬉しいが、今この場で喜びを表現することはできない。
「一番じゃない私に価値はないって……きっと言われるんだわ」
恐怖は膨れ上がれば被害妄想が始まる。クラリッサは自分の価値を定めるために鑑賞用王女を演じ続けている。今日も明日も明後日もクラリッサは家族に不安だと吐き出すことはせず、完璧な笑顔で生きていく。それはまるで止まるのを待つ時計のよう。動いている物はいつか止まる。生きていれば必ず老ける。当たり前のことを当たり前として受け入れない人間にあと何年苦しめられるのだろうと、エイベルはたまらずクラリッサを強く抱きしめた。
「お前が嫁に行きたくないと言うのなら森に来ればいい」
「あなたがお嫁にもらってくれるの?」
「この森で暮らせばいいだけだ。そうすればもう鑑賞用である必要はないのだからな」
出会ったときから何度も言ってくれる言葉だが、クラリッサはそれにイエスとは答えられない。今は特に。
ダークエルフに家族の概念はない。だから夫も妻も子供もない。家族という形を取ってない以上は自分が森に入ってエイベルと暮らしたところで森の中で異端者になるだけで、あの気の強い女たちが黙っているとは思えなかった。自分がそれに耐えられるとも。
「そうやって逃げ道を作ってくれるなんて優しいのね」
「頭の片隅に置いておけ。本気で逃げ出したくなったら手伝ってやる」
「ええ、ありがとう」
エイベルも無理強いするつもりはなかった。ただ、既に情が移っている相手が苦しんで涙するのは見ていられない。涙する姿は美しくともエイベルが見たいのは喜びの涙。逃げ出したときに開放感でその涙が見られればと思っている。
「今はまだ大丈夫。おばあさまの言葉が私を救ってくれてるから。いつか王子様が現れるって信じてる。ふふっ、リズの気持ちが少しわかるの。大好きな人のお姫様になりたいって。もうそんな歳じゃないけどね」
「人間の中には老嬢というのがいるんだろう?」
「ええ」
未婚の老人の令嬢をそう呼ぶことは以前、兄から聞いたことがある。顔にいくつものシワが刻まれていようともまだ結婚を諦めず、パーティーに出席して結婚相手を探しているのだと。
父親がパーティーを開催することによって、そういう人にもチャンスが増えればと思ったこともあったと思い出して苦笑混じりではあるが、クラリッサの表情が柔らかくなる。
「夢を見るのに年齢など関係ないんじゃないか?」
「……じゃあ、あなたはまだ夢を持ってる?」
不老不死のエルフが夢を持っているのかと問いかけるクラリッサのどこか冷めたような声色にエイベルは目を逸らさなかった。心のどこかでエルフに何がわかるんだと思っているのではないかと感じさせるような声だ。しかし、エイベルはそれを不愉快には思わない。さっきの言葉は慰めるための言葉に過ぎない。エイベルは夢など持ってはいない。これから終わりの見えない人生を歩んでいく中で夢をもつだけ無駄だと思っているから。夢を持つ者を見下しさえしてきたのだ。
「夢……というと、少し違うかもしれないが……」
「聞かせて」
縋るような目と言い方にクラリッサの背中を赤子をあやすように軽く叩くと彼女の頬が肩に乗った。
「自由を得ることだ」
驚いた顔をするクラリッサにエイベルが珍しく苦笑を見せる。
「自由じゃないの?」
「森の中では自由だが、外を自由に闊歩はできん」
嫌われているから?とは失礼すぎて聞けなかった。
「そういう契約だからだ」
クラリッサの心を読んだような答えにクラリッサの思考が停止する。
契約で自由を奪われるようなことがあるのだろうかと思うが、自分も父親との約束で自由に外を闊歩することができない。したことがない。だが、エイベルはダークエルフの長で、誰にも縛られることなどないはず。その長が自由を得て外を闊歩したいと言う理由がわからなかった。
「誰と契約を結んだの?」
「俺の先祖が人間と交わした契約だ」
「外に出るなって?」
「要約すればそうだな」
ダークエルフの森は小さくはないが、大国とも呼べないモレノスにあるのでは巨大とも言えない広さ。その森に何人のダークエルフが住んでいるのかは知らないが、ダークエルフの森がそこにあるのに庭に出ても一度もダークエルフを見たことがなかった理由はそれかと納得すると共にキリがない驚きに眉を寄せた。
「どうしてそんな契約を?」
ダークエルフと人間は昔、今と違って契約の話が持ち上がるほどの交流があったということ。なぜ今、彼らは憎み合っているのか。誰に聞いても教えてくれなかった理由がそこにあると顔を上げてエイベルに問いかけると返ってきた表情は恐ろしいほど冷めたもので
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