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番外編
二度目の恋2
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「わ、私も遠慮しておきます」
チェスター王女がそう答えたことで、顔合わせは早々に切り上げられた。
「では、次は結婚式で」
早ければ一年後、予定どおりであれば二年後、遅ければ三年後だろう。ベンジャミンはいつでもよかった。一年後でも三年後でも五年後でも。彼女が自分の妻になることに変わりはないのだからいつでもいい。
「ベンジャミン、お前は少し人への気遣いが足りないな」
チェスター王女を見送ったあと、早々に呼び出され、説教が始まった。
配慮。笑顔。言葉。全てが足りないと延々と説教を受けたが、頭の中で素数を数えていたこともあって半分も聞いていなかった。
「父上、彼女は僕の結婚相手です。あまり口を出していただかなくても平気です」
「お前が頼りないから言ってるんだ。なんだあの物言いは。あれではチェスター王女があんまりではないか」
「彼女は僕と話したくないと思っていました」
「お前にわかるのか?」
「はい」
わかるはずがない。そう言いたげな父親の顔を見るベンジャミンの表情には確かに自信があった。人の気持ちなど微塵も考えられない配慮できない我が子を何度恥じたかわからない。だが、イベリスが来るときはそうじゃなかった。あれこれ自分で指示を出して出迎えから送迎まで、どれも他人任せにする瞬間はなかった。息子は彼女が好きなんだとすぐに理解した。ああ、好きな相手のためならこんなにも尽くせるのだと誇らしく思えた。
しかし、好きではない相手にはこのざまだ。親が決めた結婚に不満はあるかもしれない。拒みはしなかった。受け入れた。それだけでも親として安堵し、感謝すべきだと思う気持ちはあれど、目の前であれを見てしまっては口出ししたくもなる。
「お前は男だ。男は女性に優しく接しなくてはならない」
「心得ています」
「心得ていてあの態度か?」
「僕は彼女のことを何も知りません。そんな状態で二人きりで話したところで互いに気まずいだけです」
「それを知るための時間を作ったんだ」
「それならこれから彼女と文を通して彼女のことを知り、結婚生活での会話に役立てます」
「お前は男だ。会話も何もかもリードしなければならない」
「気取ることでリードができるのであればそうしています。でも僕にはできない。僕はその旨も含めて彼女に手紙を書くつもりです」
しっかりしているのかなんなのか。息子がよくわからない父親はどう反応していいのかわからず、机の上で額を押さえて溜息をついた。
「失礼のないようにな」
「心得ています」
頭を下げて部屋を出たベンジャミンの表情は機嫌の悪さを正しく表している。不満顔。親に叱られて不満を顔に出すところはまだまだ子供であると執事は小さく笑う。感情的に反抗しなくなっただけでも成長しているのだから自分から提言することはない。
ベンジャミンは部屋に戻ってすぐ、チェスター王女に手紙を書いた。イベリスからの手紙に出す返信用の便箋とは違う一般的な白い便箋を選んで丁寧に言葉を綴る。
彼が誰かに手紙を書くなんて想像もできなかった。口を開けば嫌味ばかりで、自分の欠点も間違いも認められないわがまま王子。誰からも好かれず、嫌われてばかり。それでも意地になってパーティーに出席し続けていた甘ったれが今では親に真っ向から意見し、自ら道を決めて進んでいる。これが成長でなければなんなのか。
「結婚の覚悟はできておりますか?」
「話が上がったときからできている」
「イベリス様はまだ結婚されておりませんよ」
クルッと振り返ったベンジャミンの表情を見て失言だったと目を閉じる。父親の部屋を出たときよりもずっと機嫌が悪そうに見えた。
「だからなんだ? イベリスが結婚していないのと僕の結婚とどう関係ある?」
「それは──」
「ああ、そうか。お前はこう思っているのか。嫌がっていた結婚を僕が決めたのはイベリスが婚約者を連れて挨拶に来たことによって諦めがついたからで、この結婚は親が決めたものだし渋々従っている。今後もイベリスが最優先になるし、妻を愛することもない。結局はイベリスが手に入らなかった惨めな人生を少しでも埋めるために結婚するのだろう哀れな王子はこの結婚にどこまで覚悟を持っているのか一応聞いておくか、と」
被害妄想も甚だしいが、彼のこの勢いは頭にきているときのもの。やってしまったと後悔したところでもう遅い。
「イベリスは結婚していないのだから結婚を急がずとも、文通をしていればもしかするとイベリスが婚約者と別れたという話が聞けるかもしれない。そのときにそっと手を差し伸べて自分の妻とする人生もあるかもしれないではないか。まだイベリスを忘れられていないのだからチェスター王女と結婚するのはもはや当てつけにも近いのでは? 大した覚悟もできていないのに結婚をするのはイベリスへの当てつけになるのではないか?」
「王子、私はそのようなことは──」
「ない! 断じてない! イベリスは奴と結婚する! 絶対にだ! 何故かって? イベリスは奴を愛しているし、奴もイベリスを愛しているからだ! イベリスを愛して不幸にしようとする奴がこの世にいると思うか!? いるはずがない! 僕だって彼女を不幸にはしない! 彼女を不幸にするぐらいなら僕が地獄に落ちてやるさ! だからこれから先、何十年と待っていようが結果は変わらない! イベリスは毎日幸せだと笑って奴と過ごしているし、僕は相変わらずこうしてここに座ってイベリスに手紙を書き続ける! これでいいんだ! 何も変わらない!」
「わかりました。王子、私の失言でし──」
バンバンバンッと机が激しく叩かれる。
「僕が結婚するのはイベリスへの当てつけなんかじゃない! 王子としての責任を果たすために結婚するんだ! そりゃ確かにイベリスが婚約者を連れてくるまでは結婚を渋っていた! 好きな人がいるから結婚しないと言ってな! イベリスと結婚できるありもしない未来を夢見て断っていたんだ! 王子の責任よりも自分の幸せを優先していたんだ! 仕方ないだろう! 愛していたんだから! 初恋だぞ! 初めて人を好きになったんだ! 初めて人を愛したんだ! 夢見るぐらいいいじゃないか!」
ベンジャミンの想いは誰よりもわかっている。彼女を想うベンジャミンを執事は恋する乙女のようだった。手紙を書くとき、プレゼントを考えるとき、手紙を待つとき、読むときも。
恋をしてそれほど純粋に相手を想える人間はこの世界にどれほどいるのだろうと羨ましくなるほどだった。だからこそ覚悟を聞いたのだ。結婚すればもう逃げられない。チェスターを愛さずイベリスを想い続けることなど彼にはできないだろうから。
イベリスへの気持ちを封印して彼女を愛していく。それも含めて責任なのだ。
「この結婚はヤケになってするわけじゃない」
途端に静かに言葉を発したベンジャミンを見る。
「区切りがついたから結婚するだけだ。イベリスがリーダスに来てくれて、もてなしを喜んでくれて、幸せそうに婚約報告をしてくれたから……ああ、彼女の人生の中で隣に立って歩くのは僕じゃないんだってわかったから、僕は僕の道を歩こうと思った。チェスター王女と結婚し、彼女と歩く未来が僕の道なんだ」
それでいいのか、と問いかけたところで意味はない。ベンジャミンはあの日、イベリスを迎えて見送った日に気持ちの整理がついていたのだ。愚問だった。
深々と頭を下げる執事に「どういう意味だ」と笑いながら聞かれるも執事は暫く頭を下げ続けた。
「彼女はきっと口下手だ。僕は口下手ではないが、女性を楽しませられるような話題が詰まった引き出しは持っていない。自分が上手く話せないからだと彼女に思わせたくなかった。まあ、あの言い方では不安にさせしまっただろうが」
「王子からのお手紙を読めばきっと安心なさいますよ」
「そうだといいがな。結婚までに彼女のことをたくさん知れると嬉しい」
「王子のことも、ですね」
「そうだな」
ベンジャミンの笑顔は晴れやかで、執事は父親ほど彼を心配してはいなかった。彼は大丈夫。ちゃんと相手を気遣えるようになっている。まだ少し不器用なところがあって、相手に伝わりにくいが、結婚まで最低でも一年はある。その間のやり取りで信頼を得ていくことだろう。ベンジャミンは手紙を書くのが上手い。言葉を綴るのが上手いのだ。冷静な頭で書けるからかもしれない。イベリスから『あなたの手紙からはあなたの優しさが感じ取れる』と書かれていたときは床の上にスライムのように溶けていた。人と交わす言葉は声ではなく字が多かったイベリスから言われたから余計に嬉しかったのだろう。それからずっと、丁寧に手紙を書くことを心がけている。
チェスター王女にも彼の優しさが伝わることを願っていた。
チェスター王女がそう答えたことで、顔合わせは早々に切り上げられた。
「では、次は結婚式で」
早ければ一年後、予定どおりであれば二年後、遅ければ三年後だろう。ベンジャミンはいつでもよかった。一年後でも三年後でも五年後でも。彼女が自分の妻になることに変わりはないのだからいつでもいい。
「ベンジャミン、お前は少し人への気遣いが足りないな」
チェスター王女を見送ったあと、早々に呼び出され、説教が始まった。
配慮。笑顔。言葉。全てが足りないと延々と説教を受けたが、頭の中で素数を数えていたこともあって半分も聞いていなかった。
「父上、彼女は僕の結婚相手です。あまり口を出していただかなくても平気です」
「お前が頼りないから言ってるんだ。なんだあの物言いは。あれではチェスター王女があんまりではないか」
「彼女は僕と話したくないと思っていました」
「お前にわかるのか?」
「はい」
わかるはずがない。そう言いたげな父親の顔を見るベンジャミンの表情には確かに自信があった。人の気持ちなど微塵も考えられない配慮できない我が子を何度恥じたかわからない。だが、イベリスが来るときはそうじゃなかった。あれこれ自分で指示を出して出迎えから送迎まで、どれも他人任せにする瞬間はなかった。息子は彼女が好きなんだとすぐに理解した。ああ、好きな相手のためならこんなにも尽くせるのだと誇らしく思えた。
しかし、好きではない相手にはこのざまだ。親が決めた結婚に不満はあるかもしれない。拒みはしなかった。受け入れた。それだけでも親として安堵し、感謝すべきだと思う気持ちはあれど、目の前であれを見てしまっては口出ししたくもなる。
「お前は男だ。男は女性に優しく接しなくてはならない」
「心得ています」
「心得ていてあの態度か?」
「僕は彼女のことを何も知りません。そんな状態で二人きりで話したところで互いに気まずいだけです」
「それを知るための時間を作ったんだ」
「それならこれから彼女と文を通して彼女のことを知り、結婚生活での会話に役立てます」
「お前は男だ。会話も何もかもリードしなければならない」
「気取ることでリードができるのであればそうしています。でも僕にはできない。僕はその旨も含めて彼女に手紙を書くつもりです」
しっかりしているのかなんなのか。息子がよくわからない父親はどう反応していいのかわからず、机の上で額を押さえて溜息をついた。
「失礼のないようにな」
「心得ています」
頭を下げて部屋を出たベンジャミンの表情は機嫌の悪さを正しく表している。不満顔。親に叱られて不満を顔に出すところはまだまだ子供であると執事は小さく笑う。感情的に反抗しなくなっただけでも成長しているのだから自分から提言することはない。
ベンジャミンは部屋に戻ってすぐ、チェスター王女に手紙を書いた。イベリスからの手紙に出す返信用の便箋とは違う一般的な白い便箋を選んで丁寧に言葉を綴る。
彼が誰かに手紙を書くなんて想像もできなかった。口を開けば嫌味ばかりで、自分の欠点も間違いも認められないわがまま王子。誰からも好かれず、嫌われてばかり。それでも意地になってパーティーに出席し続けていた甘ったれが今では親に真っ向から意見し、自ら道を決めて進んでいる。これが成長でなければなんなのか。
「結婚の覚悟はできておりますか?」
「話が上がったときからできている」
「イベリス様はまだ結婚されておりませんよ」
クルッと振り返ったベンジャミンの表情を見て失言だったと目を閉じる。父親の部屋を出たときよりもずっと機嫌が悪そうに見えた。
「だからなんだ? イベリスが結婚していないのと僕の結婚とどう関係ある?」
「それは──」
「ああ、そうか。お前はこう思っているのか。嫌がっていた結婚を僕が決めたのはイベリスが婚約者を連れて挨拶に来たことによって諦めがついたからで、この結婚は親が決めたものだし渋々従っている。今後もイベリスが最優先になるし、妻を愛することもない。結局はイベリスが手に入らなかった惨めな人生を少しでも埋めるために結婚するのだろう哀れな王子はこの結婚にどこまで覚悟を持っているのか一応聞いておくか、と」
被害妄想も甚だしいが、彼のこの勢いは頭にきているときのもの。やってしまったと後悔したところでもう遅い。
「イベリスは結婚していないのだから結婚を急がずとも、文通をしていればもしかするとイベリスが婚約者と別れたという話が聞けるかもしれない。そのときにそっと手を差し伸べて自分の妻とする人生もあるかもしれないではないか。まだイベリスを忘れられていないのだからチェスター王女と結婚するのはもはや当てつけにも近いのでは? 大した覚悟もできていないのに結婚をするのはイベリスへの当てつけになるのではないか?」
「王子、私はそのようなことは──」
「ない! 断じてない! イベリスは奴と結婚する! 絶対にだ! 何故かって? イベリスは奴を愛しているし、奴もイベリスを愛しているからだ! イベリスを愛して不幸にしようとする奴がこの世にいると思うか!? いるはずがない! 僕だって彼女を不幸にはしない! 彼女を不幸にするぐらいなら僕が地獄に落ちてやるさ! だからこれから先、何十年と待っていようが結果は変わらない! イベリスは毎日幸せだと笑って奴と過ごしているし、僕は相変わらずこうしてここに座ってイベリスに手紙を書き続ける! これでいいんだ! 何も変わらない!」
「わかりました。王子、私の失言でし──」
バンバンバンッと机が激しく叩かれる。
「僕が結婚するのはイベリスへの当てつけなんかじゃない! 王子としての責任を果たすために結婚するんだ! そりゃ確かにイベリスが婚約者を連れてくるまでは結婚を渋っていた! 好きな人がいるから結婚しないと言ってな! イベリスと結婚できるありもしない未来を夢見て断っていたんだ! 王子の責任よりも自分の幸せを優先していたんだ! 仕方ないだろう! 愛していたんだから! 初恋だぞ! 初めて人を好きになったんだ! 初めて人を愛したんだ! 夢見るぐらいいいじゃないか!」
ベンジャミンの想いは誰よりもわかっている。彼女を想うベンジャミンを執事は恋する乙女のようだった。手紙を書くとき、プレゼントを考えるとき、手紙を待つとき、読むときも。
恋をしてそれほど純粋に相手を想える人間はこの世界にどれほどいるのだろうと羨ましくなるほどだった。だからこそ覚悟を聞いたのだ。結婚すればもう逃げられない。チェスターを愛さずイベリスを想い続けることなど彼にはできないだろうから。
イベリスへの気持ちを封印して彼女を愛していく。それも含めて責任なのだ。
「この結婚はヤケになってするわけじゃない」
途端に静かに言葉を発したベンジャミンを見る。
「区切りがついたから結婚するだけだ。イベリスがリーダスに来てくれて、もてなしを喜んでくれて、幸せそうに婚約報告をしてくれたから……ああ、彼女の人生の中で隣に立って歩くのは僕じゃないんだってわかったから、僕は僕の道を歩こうと思った。チェスター王女と結婚し、彼女と歩く未来が僕の道なんだ」
それでいいのか、と問いかけたところで意味はない。ベンジャミンはあの日、イベリスを迎えて見送った日に気持ちの整理がついていたのだ。愚問だった。
深々と頭を下げる執事に「どういう意味だ」と笑いながら聞かれるも執事は暫く頭を下げ続けた。
「彼女はきっと口下手だ。僕は口下手ではないが、女性を楽しませられるような話題が詰まった引き出しは持っていない。自分が上手く話せないからだと彼女に思わせたくなかった。まあ、あの言い方では不安にさせしまっただろうが」
「王子からのお手紙を読めばきっと安心なさいますよ」
「そうだといいがな。結婚までに彼女のことをたくさん知れると嬉しい」
「王子のことも、ですね」
「そうだな」
ベンジャミンの笑顔は晴れやかで、執事は父親ほど彼を心配してはいなかった。彼は大丈夫。ちゃんと相手を気遣えるようになっている。まだ少し不器用なところがあって、相手に伝わりにくいが、結婚まで最低でも一年はある。その間のやり取りで信頼を得ていくことだろう。ベンジャミンは手紙を書くのが上手い。言葉を綴るのが上手いのだ。冷静な頭で書けるからかもしれない。イベリスから『あなたの手紙からはあなたの優しさが感じ取れる』と書かれていたときは床の上にスライムのように溶けていた。人と交わす言葉は声ではなく字が多かったイベリスから言われたから余計に嬉しかったのだろう。それからずっと、丁寧に手紙を書くことを心がけている。
チェスター王女にも彼の優しさが伝わることを願っていた。
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