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イベリス復活編
憧れた愛(終)
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翌日、アルフローレンスとミュゲットが共に部屋を訪ねてきた。狭い部屋だと文句を言うアルフローレンスをドアの前で立たせ、ミュゲットは三人に感謝の意を述べた。昨日、あれから幾度となく話し合ったことを説明し、これからのことを決めると言うため三人も参加することにした。
フローラリアの人間がほぼ全員ビーチに集まり、ミュゲットが今までのことを謝罪することから始まった。不満や不安の声を一つずつ拾い、できる限り答えていく。
自立している彼らなら上手くやってくれるはずだと思っていたのはあまりにも浅慮であったことを後悔していた。
やはり誰かが率いてくれなければ不安だという声が多かったため、ミュゲットは王ではなく相談役を決めることにした。
昨日、王を決めるべきだとアルフローレンスに訴えたが、『王が独立を宣言をし、親交国としての裏切りが発覚した場合、余はフローラリアを沈めねばならん。それは覚悟の上か?』と問われた。王になれば様々な権限が手に入る。就任直後は国のためにと気合を入れていたはずが、慣れてしまえば欲が出る。それは避けるべきだと彼は言った。生まれながらにして皇族。若くして皇帝となった彼は権力を持つ者の醜さを痛感しているだけに、この平和な国に波を立てたくなかった。
疑っているわけじゃない。可能性というのはいつだってゼロとは言い切れない。避けたいだけだと頭を下げるミュゲットに不満の声は聞こえたが、ちらほら程度だった。
それから相談役がどういう役目を持っているのか。一人ではなく十人決めようと国民が話し合い、相応しい者を選出するのも彼らに任せることにした。国民たちが暮らしていくのだから何も知らない者が指名するのはおかしいからと、ミュゲットは彼らに決めてもらうことにしたのだが、正解だった。
「なんでアタシ!? ムリだよ!」
「ムリじゃないよ! アンタならやれるって! アンタに全部任せるんじゃないんだし、人の先に立つの好きだろ?」
「好きだけどぉ」
「お前もやれよ!」
「お、俺!? 俺に相談したところで返せるのはマヌケな一言だけだぞ!」
「いやいや、お前はいざというとき真面目になれるんだからお前がやるべきだって」
「じゃあ一緒にやろうぜ!」
「んー……よし、やるか!」
この小さな島国では皆が家族や兄妹のようなものだから性格を知り尽くしている彼らにはこの選出は難しいことではなかった。
「なあ、今日からフローラリアに増えた家族のこと、忘れてないか? これからのフローラリアに絶対に欠かせない美女だぞ」
「そうだそうだ! アンタはグラキエス出身なんだし、相談役にはもってこいだ!」
早速の指名に戸惑うサーシャの腕を引いてリオが強制的に話し合いに参加させる。
「大丈夫そうね」
「そうですね」
サーシャはリオと一緒に会議に参加し、意見を交わし合っているのを見て、イベリスはウォルフと二人で静かにその場を離れた。
「夜は久しぶりにミュゲット様が踊るそうです。フローラリアの妖精が見られますよ」
「ホント!? とてもキレイなんでしょうね。楽しみだわ!」
ミュゲットはフローラリアの妖精と言われると困った顔をするが、イベリスもその姿を楽しみにしている。
「あ、待ってください」
真っ白な砂の上に直接腰掛けようとしたイベリスに待ったをかけ、Tシャツを脱いで砂の上に敷いた。
「ありがとう」
砂なんて払えばいいだけなのにとは思えど、相手が気遣ってしてくれたことを遠慮で傷つけたくなくて笑顔で受け取った。久しぶりに見る無駄のない筋肉質な身体。つい見てしまう自分にかぶりを振って夕陽に顔を戻す。
「サーシャ、張り切ってた」
「オアシスとか氷の彫刻とか、全部アイツ一人でやれるんですかね?」
「サーシャは優秀よ。フローラリアのためになることをするに決まってる。それに、一人じゃない。一番の理解者のリオが一緒だし、周りにはあんなに良い人たちがいるんだもの。心配ないわ」
「テロスのためには動かなかった奴ですよ?」
「愛する人がいる国よ。守りたいって思うのは当然でしょ?」
「まー、わからなくはないですけどね。愛する人はいつでも自分の手で守りたいって思うし」
ウォルフを見ると目が合う。微笑むと微笑み返してくれる。いつもどおりなのに久しぶりの二人きりに心臓が跳ね、脈が速くなっていく。もうずっと一緒にいるのに、まだ少し慣れない瞬間がある。昨日、ここでリオとサーシャがキスをしたのを見てしまったからだろうか。妙に意識してしまう。
従者ではなく恋人である彼を見るとドキドキする。それがなんだか妙に恥ずかしくてすぐに顔を逸らした。
「よっこいしょ」
「ッ!?」
立ち上がったと思えばすぐに座ったウォルフの位置はイベリスの後ろ。イベリスの身体の両脇で膝を立てて、身体の前に腕を回す。従者では絶対にできなかった行為だ。
本当はもっと恋人らしいことをたくさんしたい。もっと親密に、もっと深く、できれば過激に。でもイベリスのペースに合わせたい気持ちのほうが強くて、ゆっくり行動する。
逸る気持ちを抑えてじわじわ進んでいくのも悪くないと思い始めていた。
「ね、イベリス様、次はどこへ行きましょうか?」
「ウォルフとだったらどこでも楽しそうだけど……いっそ砂漠とか?」
「……暑いの苦手……」
茹だるような暑さはもう御免だと顔に出すウォルフに振り返りながら笑う。
「ふふっ、そうね」
「でも、いつか行ってみるのもいいかもしれませんね。砂漠の砂はもっとサラサラらしいですし、気にいるかもしれませんよ。あーでも、そしたらイベリス様の真っ白な肌が焼けるか」
「日焼けしてみたい」
「日焼けするとめちゃくちゃ痛いですよ?」
「日焼けイベリス見てみたくない?」
想像する必要もなく、すぐに親指を立てた。悪くない。褐色肌に白い髪はよく映えるだろう。そこからモワモワと妄想が膨らんでいき、身体がじわりと熱を感じ始めたところでかぶりを振って妄想を消し去る。
「夕陽って昨日も一昨日もずっとあったはずなのに、キレイだって思わなかったですね」
「そうね」
見惚れるほど美しい景色がある。じんわりと汗ばむ少し高めの気温が気持ちいい。穏やかで幸せな時間が流れる小さな島国が人気な理由がよくわかる。ここに住んでもいいぐらいだと思う気持ちはあれど、ここに騎士は必要ないとアルフローレンスは言った。他国の人間が指揮をとるべきではなく、ここで生まれ育った人間がこの国のために考え、動き、作っていくべきだと。だからウォルフも必要ない。
ウォルフはやはり寒い気候のほうが落ち着くらしく、四季がある国がいいと思っている。巡りゆく季節の中でイベリスを見ていたいと。
「ジャン!」
「あ、砂時計」
グラキエスで買った砂時計をポケットから出したウォルフが縦ではなく横にする。砂は当然落ちることはなく、止まっている。
「俺ね、砂時計好きなんですよ。過去と現在と未来だって知ってから余計に。これを見てるといろんなことがあったなーっていつも思い出に浸ってしまうんですけど、いつも最後は幸せな気持ちで終わるんです」
「素敵」
「あなたのおかげです。あなたと出会えたからそう思えるんです。あなたを好きになれたから幸せなんです。あなたがこうして傍にいてくれるから未来を信じられる」
「私との未来はどんな感じ?」
「聞きたいですか?」
「ええ」
ゴホンッと咳払いをして砂時計を立てる。サラサラと流れていく砂時計を見ながら「えー」と言ってから言葉を紡ぐ。
「子供が五人いて」
「わあ、五人もいるの?」
「そうです。で、全部男なんです。俺が息子とイベリス様を取り合って、家中毛だらけになって、イベリス様に怒られて全員で掃除をする未来が見えます」
「ふふふっ、すごい未来ね」
「嫌ですか?」
「五人も産めるかなぁ」
「そこはただの妄想なので実現しなくてもいいんです。神のみぞ知る、ですし」
男は子供を産めない。だから頑張ろうとかできるとか無責任な言葉を口にしてはならない。自分は種を蒔くだけ。それを受け入れるのも育てていくのも女で、その過程にある苦しみも辛さも女だけが経験するもの。イベリスが子供を増やしていくのに賛成だと言ってくれれば増やす。ムリだと言えば増やさない。それだけ。
ウォルフが嬉しかったのは嫌そうな顔も驚いた顔も見せずに五人の子供がいる未来を笑って受け入れてくれること。運命の相手が彼女でよかったと心から思った。
「立ち止まったことすら過去になる」
「ん?」
砂が落ち切る前にクルッと反転させたイベリスの言葉に首を傾げる。
「辛くて、辛くて……悲しくて、痛くて……しんどくて……。だけど、それにのみこまれたら終わりだって何十回も言い聞かせた。一人じゃなかったし、楽しいこともあったから。サーシャが侍女になって、あなたが専属の騎士になって、マシロが来て、私は少しずつ幸せになっていった」
「辛いことのほうが多かったでしょう」
「んー……かなぁ? わかんない。覚悟はあった。いつもグラグラして、覚悟らしい覚悟ってちゃんと持ってなかったのかもしれないけど、恐怖は少なかったかな」
なかったわけじゃない。過呼吸になるほど怖くて、不安で、辛かった。賑やかなはずの世界に自分だけが音を感じられず、周りが何故笑っているのか、怒っているのかすらわからない。物心ついた頃からそうだったから慣れていたはずなのに、久しぶりに感じた居心地の悪さに涙することもあった。
「だけど、やっぱり幸せのほうが多かったかな。ファーディナンドといるのも悪いことばかりじゃなかったのよ。彼といて楽しいこともあった」
「えー、ないと思いますけど」
あんな男と一緒にいて楽しかった思い出なんて必要ないと拗ねたように言うウォルフが肩に乗せてくる顎の感触がくすぐったくて笑ってしまう。髪を撫でると擦り寄ってくる。その可愛さに表情が緩む。
「私は彼を愛せなかったけど、彼はちゃんとした人に愛されるべきよ。愛が何かを教えてくれる素晴らしい人と出会って、テロスを今よりずっと豊かにする義務がある」
(あんなこと考えた人間に幸せになる資格はないと思うけど)
「偽善者っぽい?」
「んー……ってわけじゃないですけど、自分にひどいことしようとしてた人間の幸せなんて祈らなくていいのになって思います」
「祈ってるわけじゃないのよ? ファーディナンドのために祈ったりはしない」
「あ、え、そうなんですか?」
「私はそこまで良い人間じゃないもの。関わった人間としてそう思っただけ。まだ幸せにならなくていいぐらいには思ってるのよ」
舌を出して笑うイベリスにキョトンとしたあと、すぐに声を上げて笑いながらそのまま砂の上に背中から倒れ込んだ。
彼は一生幸せにはなれない。それは呪いであり、自業自得でもある。その真実はウォルフの口からイベリスに伝わることは一生ない。
「だけど……おばあさんになった頃ぐらいに……手紙ぐらい出してもいいかなって思ってたりするの」
「そろそろお迎えが来ますねって?」
「ふふっ、違う。本当は生きてたんだよってこと」
「必要ないと思いますけどね」
「彼はこれから長い年月をかけて罪を償っていくの。おじいさんになるまで何十年も。だから……あ、ほら、来世も人間に生まれたいから徳を積んでおかなきゃね」
イベリスは犠牲者だ。異常性を醸し出す幼馴染からの婚約破棄の直後、一目惚れをしたという嘘を信じて聞いたこともない国の皇帝と結婚した。それが嘘だと分かってからの一年、辛くて苦しかったはず。許せないはずなのに許そうとするイベリスになんとも言えない気持ちを抱くが、彼女も戦っているのだと感じる。許せない相手だが、悪いところばかりではなかったからその思いが彼を許そうとする。まだ遠い遠い未来の話だが、ウォルフにはまだ理解できない。
「イベリス様、来てください」
寝転んだまま手を伸ばすも来てくれない。
「どうしました?」
ジッとこちらを見るだけのイベリスに首を傾げると相手も同じように首を傾げる。
「思ってたんだけど、いつまで私を様付けで呼んで敬語なの?」
「あー……いや、いつかは、とは思ってるんですけど、恋人になったからって急に呼び捨てにするのは生意気かなって……」
「ベンジャミンの前では呼んでくれたじゃない」
「あれは婚約者であることを疑われたくなかったから」
「ベンジャミンはそんな人じゃないわ」
「どうかなー」
「私たち、同い年なのよ?」
同い年と自分で言いながらおかしくなってしまう。相手はどこからどう見ても二十代半ば。とても十代には見えない。でも彼も十七歳。これからも同じ年齢を重ねていくのだ。
サーシャと違ってもう従者ではない。彼女ももう本当に従者ではなくなった。彼女にも様付けはやめてもらおうとイベリスの中で決定した。
「あ、でも、強制するつもりはないのよ? ウォルフがイベリスって呼びたくなったらでいい──」
「イベリス」
言葉を遮ってまで名前を呼ばれたことに一秒程度停止したあと、ブワッと赤くなった。自分から言い出したことだが、声色が変わったこともあってか、イベリスの中で大きな緊張が走る。恋人なのに彼を変に意識している自分がいる。それがまた自分を辱める。
「イベリス」
いつだってそう呼びたかった。頭の中では何度も呼んでいた。彼女を好きだと思った瞬間から、何度も何度も呼び続けた。冗談でもそう呼ばなかったことを褒めてやりたいぐらいには呼び続けていた。ファーディナンドよりもずっと多く。
「イベリス、おいで」
伸ばした手に小さな手が乗る。しっかり掴んで軽く引き寄せるとそのまま胸の上に倒れてくる。至近距離まで近付く顔に照れているのはイベリスのほう。見慣れているはずの整った顔立ちに今更になって見惚れそうになる。
「愛してる」
見つめたまま囁かれる愛に呼吸が止まりそうになる。きっとこれが憧れていた愛なのだと実感する。助けに来てくれたヒーロー。いつでも味方だったヒーロー。決して手を離さなかったヒーロー。ありったけの愛をくれる最愛の人。
夕陽の中で見る涙は宝石のように輝いて見え、その美しさに目を細める。頬を伝い落ちるイベリスの涙を指先で拭うウォルフの顔が近付き、唇が重なる。ゆっくりと啄み、吐息が溢れる。イベリスの指はウォルフの髪を絡め、ウォルフの手はイベリスの背中に触れる。
何度も繰り返す口付け。二人は何も考えず、ただ互いの想いを感じていた。
「ホテルに戻りたいって言ったら怒る?」
唇を離して額を合わせたウォルフの甘えた言い方になんのお誘いかわかった。心臓がもたないと困った顔で笑うイベリスの返事を聞く前に抱き上げた。
「ウォルフ、ミュゲットが舞う舞台の設置を手伝え」
背後からかけられた無神経な言葉に信じられないと思いきり眉を寄せてから振り向くも氷帝に見せるのは笑顔。
「今から夫婦の時間なのでムリです。初夜なんです」
「結婚してもない者が初夜とは笑わせる。それにお前の事情など余には関係ない」
「俺もミュゲット様の舞台の設置なんてどうでも──……いー……くはないかな」
「さっさと来い」
本当に妻のこと以外どうでもいい人間だと呆れながらイベリスを降ろしてついていく。
ウォルフには申し訳ないが、イベリスは助かったと思った。心の準備ができていない。でもあのまま部屋に帰ればきっと受け入れていた。焦らすつもりはないが、流されるままでいいのかとも考える。一番最悪なのは自分よりも相手があの船の中での最悪の記憶がフラッシュバックしてしまわないかということ。彼は確かにひどい姿を見ただろうから。
ちゃんと事前に話しておきたいと思っていた。
「イベリス、おいで。行こう」
動かないイベリスに声をかけるウォルフに駆け寄って伸ばされた手をしっかり握る。
「ウォルフ、耳貸して」
「ん?」
身体を屈めて耳を寄せたウォルフの耳に唇を寄せて囁いた。
「愛してる」
言われるばかりだった想いを自らも伝えたイベリスが恥ずかしさから走って逃げようとするのを掴まえて腕を引っ張り、舞台となる場所の近くでキスをした。舞台設置に関わる人間たちが集まる真ん中での勢いある大胆なキスに指笛と祝福の声が鳴り響いていた。
フローラリアの人間がほぼ全員ビーチに集まり、ミュゲットが今までのことを謝罪することから始まった。不満や不安の声を一つずつ拾い、できる限り答えていく。
自立している彼らなら上手くやってくれるはずだと思っていたのはあまりにも浅慮であったことを後悔していた。
やはり誰かが率いてくれなければ不安だという声が多かったため、ミュゲットは王ではなく相談役を決めることにした。
昨日、王を決めるべきだとアルフローレンスに訴えたが、『王が独立を宣言をし、親交国としての裏切りが発覚した場合、余はフローラリアを沈めねばならん。それは覚悟の上か?』と問われた。王になれば様々な権限が手に入る。就任直後は国のためにと気合を入れていたはずが、慣れてしまえば欲が出る。それは避けるべきだと彼は言った。生まれながらにして皇族。若くして皇帝となった彼は権力を持つ者の醜さを痛感しているだけに、この平和な国に波を立てたくなかった。
疑っているわけじゃない。可能性というのはいつだってゼロとは言い切れない。避けたいだけだと頭を下げるミュゲットに不満の声は聞こえたが、ちらほら程度だった。
それから相談役がどういう役目を持っているのか。一人ではなく十人決めようと国民が話し合い、相応しい者を選出するのも彼らに任せることにした。国民たちが暮らしていくのだから何も知らない者が指名するのはおかしいからと、ミュゲットは彼らに決めてもらうことにしたのだが、正解だった。
「なんでアタシ!? ムリだよ!」
「ムリじゃないよ! アンタならやれるって! アンタに全部任せるんじゃないんだし、人の先に立つの好きだろ?」
「好きだけどぉ」
「お前もやれよ!」
「お、俺!? 俺に相談したところで返せるのはマヌケな一言だけだぞ!」
「いやいや、お前はいざというとき真面目になれるんだからお前がやるべきだって」
「じゃあ一緒にやろうぜ!」
「んー……よし、やるか!」
この小さな島国では皆が家族や兄妹のようなものだから性格を知り尽くしている彼らにはこの選出は難しいことではなかった。
「なあ、今日からフローラリアに増えた家族のこと、忘れてないか? これからのフローラリアに絶対に欠かせない美女だぞ」
「そうだそうだ! アンタはグラキエス出身なんだし、相談役にはもってこいだ!」
早速の指名に戸惑うサーシャの腕を引いてリオが強制的に話し合いに参加させる。
「大丈夫そうね」
「そうですね」
サーシャはリオと一緒に会議に参加し、意見を交わし合っているのを見て、イベリスはウォルフと二人で静かにその場を離れた。
「夜は久しぶりにミュゲット様が踊るそうです。フローラリアの妖精が見られますよ」
「ホント!? とてもキレイなんでしょうね。楽しみだわ!」
ミュゲットはフローラリアの妖精と言われると困った顔をするが、イベリスもその姿を楽しみにしている。
「あ、待ってください」
真っ白な砂の上に直接腰掛けようとしたイベリスに待ったをかけ、Tシャツを脱いで砂の上に敷いた。
「ありがとう」
砂なんて払えばいいだけなのにとは思えど、相手が気遣ってしてくれたことを遠慮で傷つけたくなくて笑顔で受け取った。久しぶりに見る無駄のない筋肉質な身体。つい見てしまう自分にかぶりを振って夕陽に顔を戻す。
「サーシャ、張り切ってた」
「オアシスとか氷の彫刻とか、全部アイツ一人でやれるんですかね?」
「サーシャは優秀よ。フローラリアのためになることをするに決まってる。それに、一人じゃない。一番の理解者のリオが一緒だし、周りにはあんなに良い人たちがいるんだもの。心配ないわ」
「テロスのためには動かなかった奴ですよ?」
「愛する人がいる国よ。守りたいって思うのは当然でしょ?」
「まー、わからなくはないですけどね。愛する人はいつでも自分の手で守りたいって思うし」
ウォルフを見ると目が合う。微笑むと微笑み返してくれる。いつもどおりなのに久しぶりの二人きりに心臓が跳ね、脈が速くなっていく。もうずっと一緒にいるのに、まだ少し慣れない瞬間がある。昨日、ここでリオとサーシャがキスをしたのを見てしまったからだろうか。妙に意識してしまう。
従者ではなく恋人である彼を見るとドキドキする。それがなんだか妙に恥ずかしくてすぐに顔を逸らした。
「よっこいしょ」
「ッ!?」
立ち上がったと思えばすぐに座ったウォルフの位置はイベリスの後ろ。イベリスの身体の両脇で膝を立てて、身体の前に腕を回す。従者では絶対にできなかった行為だ。
本当はもっと恋人らしいことをたくさんしたい。もっと親密に、もっと深く、できれば過激に。でもイベリスのペースに合わせたい気持ちのほうが強くて、ゆっくり行動する。
逸る気持ちを抑えてじわじわ進んでいくのも悪くないと思い始めていた。
「ね、イベリス様、次はどこへ行きましょうか?」
「ウォルフとだったらどこでも楽しそうだけど……いっそ砂漠とか?」
「……暑いの苦手……」
茹だるような暑さはもう御免だと顔に出すウォルフに振り返りながら笑う。
「ふふっ、そうね」
「でも、いつか行ってみるのもいいかもしれませんね。砂漠の砂はもっとサラサラらしいですし、気にいるかもしれませんよ。あーでも、そしたらイベリス様の真っ白な肌が焼けるか」
「日焼けしてみたい」
「日焼けするとめちゃくちゃ痛いですよ?」
「日焼けイベリス見てみたくない?」
想像する必要もなく、すぐに親指を立てた。悪くない。褐色肌に白い髪はよく映えるだろう。そこからモワモワと妄想が膨らんでいき、身体がじわりと熱を感じ始めたところでかぶりを振って妄想を消し去る。
「夕陽って昨日も一昨日もずっとあったはずなのに、キレイだって思わなかったですね」
「そうね」
見惚れるほど美しい景色がある。じんわりと汗ばむ少し高めの気温が気持ちいい。穏やかで幸せな時間が流れる小さな島国が人気な理由がよくわかる。ここに住んでもいいぐらいだと思う気持ちはあれど、ここに騎士は必要ないとアルフローレンスは言った。他国の人間が指揮をとるべきではなく、ここで生まれ育った人間がこの国のために考え、動き、作っていくべきだと。だからウォルフも必要ない。
ウォルフはやはり寒い気候のほうが落ち着くらしく、四季がある国がいいと思っている。巡りゆく季節の中でイベリスを見ていたいと。
「ジャン!」
「あ、砂時計」
グラキエスで買った砂時計をポケットから出したウォルフが縦ではなく横にする。砂は当然落ちることはなく、止まっている。
「俺ね、砂時計好きなんですよ。過去と現在と未来だって知ってから余計に。これを見てるといろんなことがあったなーっていつも思い出に浸ってしまうんですけど、いつも最後は幸せな気持ちで終わるんです」
「素敵」
「あなたのおかげです。あなたと出会えたからそう思えるんです。あなたを好きになれたから幸せなんです。あなたがこうして傍にいてくれるから未来を信じられる」
「私との未来はどんな感じ?」
「聞きたいですか?」
「ええ」
ゴホンッと咳払いをして砂時計を立てる。サラサラと流れていく砂時計を見ながら「えー」と言ってから言葉を紡ぐ。
「子供が五人いて」
「わあ、五人もいるの?」
「そうです。で、全部男なんです。俺が息子とイベリス様を取り合って、家中毛だらけになって、イベリス様に怒られて全員で掃除をする未来が見えます」
「ふふふっ、すごい未来ね」
「嫌ですか?」
「五人も産めるかなぁ」
「そこはただの妄想なので実現しなくてもいいんです。神のみぞ知る、ですし」
男は子供を産めない。だから頑張ろうとかできるとか無責任な言葉を口にしてはならない。自分は種を蒔くだけ。それを受け入れるのも育てていくのも女で、その過程にある苦しみも辛さも女だけが経験するもの。イベリスが子供を増やしていくのに賛成だと言ってくれれば増やす。ムリだと言えば増やさない。それだけ。
ウォルフが嬉しかったのは嫌そうな顔も驚いた顔も見せずに五人の子供がいる未来を笑って受け入れてくれること。運命の相手が彼女でよかったと心から思った。
「立ち止まったことすら過去になる」
「ん?」
砂が落ち切る前にクルッと反転させたイベリスの言葉に首を傾げる。
「辛くて、辛くて……悲しくて、痛くて……しんどくて……。だけど、それにのみこまれたら終わりだって何十回も言い聞かせた。一人じゃなかったし、楽しいこともあったから。サーシャが侍女になって、あなたが専属の騎士になって、マシロが来て、私は少しずつ幸せになっていった」
「辛いことのほうが多かったでしょう」
「んー……かなぁ? わかんない。覚悟はあった。いつもグラグラして、覚悟らしい覚悟ってちゃんと持ってなかったのかもしれないけど、恐怖は少なかったかな」
なかったわけじゃない。過呼吸になるほど怖くて、不安で、辛かった。賑やかなはずの世界に自分だけが音を感じられず、周りが何故笑っているのか、怒っているのかすらわからない。物心ついた頃からそうだったから慣れていたはずなのに、久しぶりに感じた居心地の悪さに涙することもあった。
「だけど、やっぱり幸せのほうが多かったかな。ファーディナンドといるのも悪いことばかりじゃなかったのよ。彼といて楽しいこともあった」
「えー、ないと思いますけど」
あんな男と一緒にいて楽しかった思い出なんて必要ないと拗ねたように言うウォルフが肩に乗せてくる顎の感触がくすぐったくて笑ってしまう。髪を撫でると擦り寄ってくる。その可愛さに表情が緩む。
「私は彼を愛せなかったけど、彼はちゃんとした人に愛されるべきよ。愛が何かを教えてくれる素晴らしい人と出会って、テロスを今よりずっと豊かにする義務がある」
(あんなこと考えた人間に幸せになる資格はないと思うけど)
「偽善者っぽい?」
「んー……ってわけじゃないですけど、自分にひどいことしようとしてた人間の幸せなんて祈らなくていいのになって思います」
「祈ってるわけじゃないのよ? ファーディナンドのために祈ったりはしない」
「あ、え、そうなんですか?」
「私はそこまで良い人間じゃないもの。関わった人間としてそう思っただけ。まだ幸せにならなくていいぐらいには思ってるのよ」
舌を出して笑うイベリスにキョトンとしたあと、すぐに声を上げて笑いながらそのまま砂の上に背中から倒れ込んだ。
彼は一生幸せにはなれない。それは呪いであり、自業自得でもある。その真実はウォルフの口からイベリスに伝わることは一生ない。
「だけど……おばあさんになった頃ぐらいに……手紙ぐらい出してもいいかなって思ってたりするの」
「そろそろお迎えが来ますねって?」
「ふふっ、違う。本当は生きてたんだよってこと」
「必要ないと思いますけどね」
「彼はこれから長い年月をかけて罪を償っていくの。おじいさんになるまで何十年も。だから……あ、ほら、来世も人間に生まれたいから徳を積んでおかなきゃね」
イベリスは犠牲者だ。異常性を醸し出す幼馴染からの婚約破棄の直後、一目惚れをしたという嘘を信じて聞いたこともない国の皇帝と結婚した。それが嘘だと分かってからの一年、辛くて苦しかったはず。許せないはずなのに許そうとするイベリスになんとも言えない気持ちを抱くが、彼女も戦っているのだと感じる。許せない相手だが、悪いところばかりではなかったからその思いが彼を許そうとする。まだ遠い遠い未来の話だが、ウォルフにはまだ理解できない。
「イベリス様、来てください」
寝転んだまま手を伸ばすも来てくれない。
「どうしました?」
ジッとこちらを見るだけのイベリスに首を傾げると相手も同じように首を傾げる。
「思ってたんだけど、いつまで私を様付けで呼んで敬語なの?」
「あー……いや、いつかは、とは思ってるんですけど、恋人になったからって急に呼び捨てにするのは生意気かなって……」
「ベンジャミンの前では呼んでくれたじゃない」
「あれは婚約者であることを疑われたくなかったから」
「ベンジャミンはそんな人じゃないわ」
「どうかなー」
「私たち、同い年なのよ?」
同い年と自分で言いながらおかしくなってしまう。相手はどこからどう見ても二十代半ば。とても十代には見えない。でも彼も十七歳。これからも同じ年齢を重ねていくのだ。
サーシャと違ってもう従者ではない。彼女ももう本当に従者ではなくなった。彼女にも様付けはやめてもらおうとイベリスの中で決定した。
「あ、でも、強制するつもりはないのよ? ウォルフがイベリスって呼びたくなったらでいい──」
「イベリス」
言葉を遮ってまで名前を呼ばれたことに一秒程度停止したあと、ブワッと赤くなった。自分から言い出したことだが、声色が変わったこともあってか、イベリスの中で大きな緊張が走る。恋人なのに彼を変に意識している自分がいる。それがまた自分を辱める。
「イベリス」
いつだってそう呼びたかった。頭の中では何度も呼んでいた。彼女を好きだと思った瞬間から、何度も何度も呼び続けた。冗談でもそう呼ばなかったことを褒めてやりたいぐらいには呼び続けていた。ファーディナンドよりもずっと多く。
「イベリス、おいで」
伸ばした手に小さな手が乗る。しっかり掴んで軽く引き寄せるとそのまま胸の上に倒れてくる。至近距離まで近付く顔に照れているのはイベリスのほう。見慣れているはずの整った顔立ちに今更になって見惚れそうになる。
「愛してる」
見つめたまま囁かれる愛に呼吸が止まりそうになる。きっとこれが憧れていた愛なのだと実感する。助けに来てくれたヒーロー。いつでも味方だったヒーロー。決して手を離さなかったヒーロー。ありったけの愛をくれる最愛の人。
夕陽の中で見る涙は宝石のように輝いて見え、その美しさに目を細める。頬を伝い落ちるイベリスの涙を指先で拭うウォルフの顔が近付き、唇が重なる。ゆっくりと啄み、吐息が溢れる。イベリスの指はウォルフの髪を絡め、ウォルフの手はイベリスの背中に触れる。
何度も繰り返す口付け。二人は何も考えず、ただ互いの想いを感じていた。
「ホテルに戻りたいって言ったら怒る?」
唇を離して額を合わせたウォルフの甘えた言い方になんのお誘いかわかった。心臓がもたないと困った顔で笑うイベリスの返事を聞く前に抱き上げた。
「ウォルフ、ミュゲットが舞う舞台の設置を手伝え」
背後からかけられた無神経な言葉に信じられないと思いきり眉を寄せてから振り向くも氷帝に見せるのは笑顔。
「今から夫婦の時間なのでムリです。初夜なんです」
「結婚してもない者が初夜とは笑わせる。それにお前の事情など余には関係ない」
「俺もミュゲット様の舞台の設置なんてどうでも──……いー……くはないかな」
「さっさと来い」
本当に妻のこと以外どうでもいい人間だと呆れながらイベリスを降ろしてついていく。
ウォルフには申し訳ないが、イベリスは助かったと思った。心の準備ができていない。でもあのまま部屋に帰ればきっと受け入れていた。焦らすつもりはないが、流されるままでいいのかとも考える。一番最悪なのは自分よりも相手があの船の中での最悪の記憶がフラッシュバックしてしまわないかということ。彼は確かにひどい姿を見ただろうから。
ちゃんと事前に話しておきたいと思っていた。
「イベリス、おいで。行こう」
動かないイベリスに声をかけるウォルフに駆け寄って伸ばされた手をしっかり握る。
「ウォルフ、耳貸して」
「ん?」
身体を屈めて耳を寄せたウォルフの耳に唇を寄せて囁いた。
「愛してる」
言われるばかりだった想いを自らも伝えたイベリスが恥ずかしさから走って逃げようとするのを掴まえて腕を引っ張り、舞台となる場所の近くでキスをした。舞台設置に関わる人間たちが集まる真ん中での勢いある大胆なキスに指笛と祝福の声が鳴り響いていた。
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