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聖女8
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「ウォルフ?」
驚きに思わず名前を呼んだのは隣に立っていたサーシャだった。
ウォルフのこんな声も口調も表情もサーシャは知らない。
「くせェんだよなァ、このチーズ」
イベリスへと歩み寄り、皿を持ってまたゆっくりと移動する。チーズを持参した男のもとへとゆっくりと。
「な、なんなんだ!? このチーズに臭みはないはずだ! 熟成されていないんだから臭いなど……!」
「だよなァ。だから俺もずっと不思議だった。なんで熟成されてないチーズからこんな臭いがすんだってな」
「ウォルフ、下がれ」
雰囲気がおかしいウォルフをファーディナンドが止めようとするもチラッと一瞬だけ向けた視線が合うだけで足も口も止まらない。
男の後ろで足を止めたウォルフが手に持っていた皿を男の目の前に置いてある皿の上にガシャンッ!と乱暴に落とした。
「な、何様のつもりだ! わ、私が誰かわかっての愚行か!? たかが騎士の分際で陛下の前でよくもこんな──」
「俺の愚行は毒入りチーズを皇妃に食わせようとしたことよりはずっと軽いもんだと思うがなァ?」
「な──何を言うんだッ! 毒入りだと!? 何故私がそんなことを! 理由がな──ッ!?」
乱暴に置いた皿に男の顔を勢いよく押し付ける。また大きな音が鳴り、焦った男が周囲の皿やカトラリーを床へと撒き散らしながら暴れるも力で敵うはずもない。そのまま背を曲げて体重を乗せながら顔を寄せたウォルフが男の顔を覗き込む。
瞬きしない瞳と目が合うと男の呼吸が乱れ始める。
「理由がない。仕込んでない。イベリス皇妃を心から思い遣っての贈答品なら食えるよなァ? イベリス皇妃の目の前で、大口開けて、このチーズはどこのチーズよりも美味い物だって証明できるよなァ?」
声を荒げることなく、むしろ闇に吸われるが如く静かに消えていく。
できると言わない男が滲ませる汗が増えている。合わせた目は不自然なほど動き回り、手をバタつかせる。
「へ、陛下! と、止めてください!! この男を貴族侮辱罪で処分してください!! わ、私は絶対に毒など入れておりませんッ! 私は本当に心からイベリス皇妃のことを案じて、このチーズを取り寄せました!! この国の希望を産んでくださる皇妃に少しでも栄養をと考えてのことで──」
この騎士はイカれていると骨の軋む音み焦りながら雇い主であるファーディナンドに懇願するも味方にはならなかった。
「食してみせろ」
誰も庇いはしない。お待ちくださいの一言もなく、皆が少しずつ、音を立てないようにゆっくりと動きながら距離を取り始めていた。
「へい──……」
「毒を仕込んでいないのなら食せるだろう。無害で、美味なだけのチーズだとそなたが証明してみせろ」
「陛下まで……! わ、私がどれほどこの国のために多額の税金を支払ってきたかご存知ですよね!?」
「言っただろう。証明しろと。信用しているからこそ食して無実を証明しろと言ってるんだ。もし無実ならこの場でウォルフを罰する」
イベリスの視線を感じるも今は目を合わさないことにした。だが、メモ帳を取ってペンを走らせている。良い言葉は書かれていないだろう。容易に想像ができる。トントンと遠慮がちに腕を叩かれると見るしかなくなり、メモ帳に視線を這わせた。
〈ウォルフを罰するのですか?〉
書いてある言葉はそうだが、ファーディナンドには〈また私から大事なものを奪うの?〉と書いてあるように見えた。ウォルフたちを見てからファーディナンドはイベリスの手からペンを取って返事をメモ帳に書いた。
〈もし冤罪だったら、の話だ。お前も貴族だったなら侮辱罪の重さは知っているだろう〉
〈ウォルフは獣人族です。人間が無臭だって言うものにだって匂いを感じるって言っていました〉
〈俺も味方をするつもりはない。もし毒入りでないのならすぐに食し、罵詈雑言を浴びせるだろう。それもせずに焦っている時点で自ら暴露しているようなものだ。これ以上、お前を悲しませるようなことはしない。信じろと言ったところで不可能ではあるだろうが〉
書き終えるとすぐにペンを返し、もう一度、男を見る。
「さっさと食せ」
「へ、陛下! お待ちください! もしこれに万が一にでも毒が入っていたとしても、それが私の仕業かどうかわからないではありませんか!」
「食せないのか?」
「も、もし入っていたら、の話です! どの程度の毒かわからないじゃないですか!」
「お前が入れていなければ誰が入れたと言うんだ?」
「使用人かシェフでしょう!」
「なんの得がある」
「そ、それを言うなら私も同じはず! 私だってイベリス皇妃に毒を盛る理由などありませんぞ!?」
ならその汗はなんだと指摘はしなかった。ウォルフに視線を移すと彼は親指で喉元を掻き切るような動きを見せた。今のウォルフは冷静ではない。耳が聞こえずとも目は見えているイベリスの前でそんな動きをする精神状態がまともであるはずがない。
〈ウォルフ、おいで〉
ウォルフに向かってイベリスが手招きをするもウォルフはかぶりを振る。
「コイツがチーズを食って血反吐をぶち吐くまで離しません」
〈おいで〉
手招きをやめないイベリスに渋々の表情で男を解放したウォルフがテーブルに手をついて身軽に反対側へと飛び越え、イベリスの傍に立った。
〈しゃがんで〉
その場に片膝をつくと頭を撫でられる。するとウォルフの表情が少し解けていく。
「どうした? さっさと食せと言ってるだろう」
「ッ! クソッ!」
「キャアアアアッ!」
身体を起こした男は聖女を人質に取るように首に腕を回して近くのフォークを手に取った。
「なんのつもりだ?」
聖女の目元にフォークを突きつける男の行動に呆れながら足を組むとその上で頬杖をつく。
「わ、私が悪いんじゃない! 私じゃない! 私は悪くない! わ、わわ私は高額納税者だぞ!! 私はこの国に必要な人間だ! この世に必要なのは役に立つ人間だけだ! 金や地位や名誉を持っている人間だけが生きていればいい! この国に必要なのはイベリス皇妃ではなく聖女だ! 耳も聞こえない女がこの国の皇妃など笑わせ──」
言葉が止まると同時に、男は動きも停止した。分厚い氷で覆われた男は目を見開いたひどい顔をしている。
「サーシャ、正しい判断だ」
「ありがとうございます」
足元から伸びていた氷に誰も気付いていなかった。ファーディナンドの指示ではなくサーシャの独断での行動だったが、本人はこれで咎められることがあっても構わないと思って行動した。
椅子から立ち上がったファーディナンドが男に近寄り、聖女の手を取って引っ張り出した。その際、凍った男の腕が折れ、床に落ちて割れた。
「皇族の命を狙えば結果の有無は関係ない。企みがバレた時点で死罪だからな。腕があろうがなかろうが今更だ……っと、大丈夫か?」
「すみません。突然のことで、怖くて……」
「ムリもない」
極度の緊張から足に力が入らず、引っ張り出された勢いでよろけた聖女がファーディナンドの胸に寄りかかる。子供をあやすように背中をトントンと叩くファーディナンドに少し安堵した笑みを向ける聖女との二人の雰囲気を見ながらウォルフは「だから嫌いなんだよ」と呟いた。目の前に表示される言葉にイベリスが彼のほうを向いて小さく微笑みながらシーッと唇の前で指を立てる。
「この中に奴の計画を知っていた者がいるとは思っていないが、もし、知っていた者がいたら今ここで名乗り出ろ」
誰も手は上げなかった。だが、ウォルフは見逃さなかった。
「お前と、お前と、お前。知ってたな?」
横並びで座っている三人を指すと男たちが一斉に立ち上がる。
「な、何を根拠に決めつけているんだ!?」
「どこにそんな証拠がある!?」
「事実無根だ! 訴えるぞ!! うちには優秀な弁護士がついてるんだ!!」
「事実無根じゃなかったら死刑な」
ヒュッと喉が鳴ったのが証拠も同然。事実無根であれば怯える必要はない。顔を青へと変える男たちを見たファーディナンドは使用人にラルドを呼ぶよう言った。
五分もしないうちに駆けつけた団長は使用人から話を聞いてたため何も言わず、男たちを連れて行く。
「すまないが、今日の食事会は中止だ。また後日、連絡させてもらう」
使用人が促すままに残りの貴族たちが出ていく。その際、氷漬けになった片腕を失った男を自分たちは無関係の人間であるかのように視界から排除していた。
「イベリス、部屋に戻れ」
立ち上がろうとしたイベリスにウォルフが待ったをかける。首を傾げると同時にボンッと音を立てて獣の姿へと変わったウォルフがその場で伏せた。
〈乗ってください〉
「ウォル──……」
注意しようとしたファーディナンドの目に映ったのは数日ぶりに見るイベリスの微笑み。ウォルフの毛を触って頬を寄せている。
椅子から立ち上がってウォルフの背に乗ると表情は氷が溶けたようにどんどん柔らかくなっていく。何度も恋しく思った笑顔だ。ふわふわの毛に顔を埋めながら自室へと運ばれていく姿を見ながらファーディナンドは無意識に拳を握っていた。
驚きに思わず名前を呼んだのは隣に立っていたサーシャだった。
ウォルフのこんな声も口調も表情もサーシャは知らない。
「くせェんだよなァ、このチーズ」
イベリスへと歩み寄り、皿を持ってまたゆっくりと移動する。チーズを持参した男のもとへとゆっくりと。
「な、なんなんだ!? このチーズに臭みはないはずだ! 熟成されていないんだから臭いなど……!」
「だよなァ。だから俺もずっと不思議だった。なんで熟成されてないチーズからこんな臭いがすんだってな」
「ウォルフ、下がれ」
雰囲気がおかしいウォルフをファーディナンドが止めようとするもチラッと一瞬だけ向けた視線が合うだけで足も口も止まらない。
男の後ろで足を止めたウォルフが手に持っていた皿を男の目の前に置いてある皿の上にガシャンッ!と乱暴に落とした。
「な、何様のつもりだ! わ、私が誰かわかっての愚行か!? たかが騎士の分際で陛下の前でよくもこんな──」
「俺の愚行は毒入りチーズを皇妃に食わせようとしたことよりはずっと軽いもんだと思うがなァ?」
「な──何を言うんだッ! 毒入りだと!? 何故私がそんなことを! 理由がな──ッ!?」
乱暴に置いた皿に男の顔を勢いよく押し付ける。また大きな音が鳴り、焦った男が周囲の皿やカトラリーを床へと撒き散らしながら暴れるも力で敵うはずもない。そのまま背を曲げて体重を乗せながら顔を寄せたウォルフが男の顔を覗き込む。
瞬きしない瞳と目が合うと男の呼吸が乱れ始める。
「理由がない。仕込んでない。イベリス皇妃を心から思い遣っての贈答品なら食えるよなァ? イベリス皇妃の目の前で、大口開けて、このチーズはどこのチーズよりも美味い物だって証明できるよなァ?」
声を荒げることなく、むしろ闇に吸われるが如く静かに消えていく。
できると言わない男が滲ませる汗が増えている。合わせた目は不自然なほど動き回り、手をバタつかせる。
「へ、陛下! と、止めてください!! この男を貴族侮辱罪で処分してください!! わ、私は絶対に毒など入れておりませんッ! 私は本当に心からイベリス皇妃のことを案じて、このチーズを取り寄せました!! この国の希望を産んでくださる皇妃に少しでも栄養をと考えてのことで──」
この騎士はイカれていると骨の軋む音み焦りながら雇い主であるファーディナンドに懇願するも味方にはならなかった。
「食してみせろ」
誰も庇いはしない。お待ちくださいの一言もなく、皆が少しずつ、音を立てないようにゆっくりと動きながら距離を取り始めていた。
「へい──……」
「毒を仕込んでいないのなら食せるだろう。無害で、美味なだけのチーズだとそなたが証明してみせろ」
「陛下まで……! わ、私がどれほどこの国のために多額の税金を支払ってきたかご存知ですよね!?」
「言っただろう。証明しろと。信用しているからこそ食して無実を証明しろと言ってるんだ。もし無実ならこの場でウォルフを罰する」
イベリスの視線を感じるも今は目を合わさないことにした。だが、メモ帳を取ってペンを走らせている。良い言葉は書かれていないだろう。容易に想像ができる。トントンと遠慮がちに腕を叩かれると見るしかなくなり、メモ帳に視線を這わせた。
〈ウォルフを罰するのですか?〉
書いてある言葉はそうだが、ファーディナンドには〈また私から大事なものを奪うの?〉と書いてあるように見えた。ウォルフたちを見てからファーディナンドはイベリスの手からペンを取って返事をメモ帳に書いた。
〈もし冤罪だったら、の話だ。お前も貴族だったなら侮辱罪の重さは知っているだろう〉
〈ウォルフは獣人族です。人間が無臭だって言うものにだって匂いを感じるって言っていました〉
〈俺も味方をするつもりはない。もし毒入りでないのならすぐに食し、罵詈雑言を浴びせるだろう。それもせずに焦っている時点で自ら暴露しているようなものだ。これ以上、お前を悲しませるようなことはしない。信じろと言ったところで不可能ではあるだろうが〉
書き終えるとすぐにペンを返し、もう一度、男を見る。
「さっさと食せ」
「へ、陛下! お待ちください! もしこれに万が一にでも毒が入っていたとしても、それが私の仕業かどうかわからないではありませんか!」
「食せないのか?」
「も、もし入っていたら、の話です! どの程度の毒かわからないじゃないですか!」
「お前が入れていなければ誰が入れたと言うんだ?」
「使用人かシェフでしょう!」
「なんの得がある」
「そ、それを言うなら私も同じはず! 私だってイベリス皇妃に毒を盛る理由などありませんぞ!?」
ならその汗はなんだと指摘はしなかった。ウォルフに視線を移すと彼は親指で喉元を掻き切るような動きを見せた。今のウォルフは冷静ではない。耳が聞こえずとも目は見えているイベリスの前でそんな動きをする精神状態がまともであるはずがない。
〈ウォルフ、おいで〉
ウォルフに向かってイベリスが手招きをするもウォルフはかぶりを振る。
「コイツがチーズを食って血反吐をぶち吐くまで離しません」
〈おいで〉
手招きをやめないイベリスに渋々の表情で男を解放したウォルフがテーブルに手をついて身軽に反対側へと飛び越え、イベリスの傍に立った。
〈しゃがんで〉
その場に片膝をつくと頭を撫でられる。するとウォルフの表情が少し解けていく。
「どうした? さっさと食せと言ってるだろう」
「ッ! クソッ!」
「キャアアアアッ!」
身体を起こした男は聖女を人質に取るように首に腕を回して近くのフォークを手に取った。
「なんのつもりだ?」
聖女の目元にフォークを突きつける男の行動に呆れながら足を組むとその上で頬杖をつく。
「わ、私が悪いんじゃない! 私じゃない! 私は悪くない! わ、わわ私は高額納税者だぞ!! 私はこの国に必要な人間だ! この世に必要なのは役に立つ人間だけだ! 金や地位や名誉を持っている人間だけが生きていればいい! この国に必要なのはイベリス皇妃ではなく聖女だ! 耳も聞こえない女がこの国の皇妃など笑わせ──」
言葉が止まると同時に、男は動きも停止した。分厚い氷で覆われた男は目を見開いたひどい顔をしている。
「サーシャ、正しい判断だ」
「ありがとうございます」
足元から伸びていた氷に誰も気付いていなかった。ファーディナンドの指示ではなくサーシャの独断での行動だったが、本人はこれで咎められることがあっても構わないと思って行動した。
椅子から立ち上がったファーディナンドが男に近寄り、聖女の手を取って引っ張り出した。その際、凍った男の腕が折れ、床に落ちて割れた。
「皇族の命を狙えば結果の有無は関係ない。企みがバレた時点で死罪だからな。腕があろうがなかろうが今更だ……っと、大丈夫か?」
「すみません。突然のことで、怖くて……」
「ムリもない」
極度の緊張から足に力が入らず、引っ張り出された勢いでよろけた聖女がファーディナンドの胸に寄りかかる。子供をあやすように背中をトントンと叩くファーディナンドに少し安堵した笑みを向ける聖女との二人の雰囲気を見ながらウォルフは「だから嫌いなんだよ」と呟いた。目の前に表示される言葉にイベリスが彼のほうを向いて小さく微笑みながらシーッと唇の前で指を立てる。
「この中に奴の計画を知っていた者がいるとは思っていないが、もし、知っていた者がいたら今ここで名乗り出ろ」
誰も手は上げなかった。だが、ウォルフは見逃さなかった。
「お前と、お前と、お前。知ってたな?」
横並びで座っている三人を指すと男たちが一斉に立ち上がる。
「な、何を根拠に決めつけているんだ!?」
「どこにそんな証拠がある!?」
「事実無根だ! 訴えるぞ!! うちには優秀な弁護士がついてるんだ!!」
「事実無根じゃなかったら死刑な」
ヒュッと喉が鳴ったのが証拠も同然。事実無根であれば怯える必要はない。顔を青へと変える男たちを見たファーディナンドは使用人にラルドを呼ぶよう言った。
五分もしないうちに駆けつけた団長は使用人から話を聞いてたため何も言わず、男たちを連れて行く。
「すまないが、今日の食事会は中止だ。また後日、連絡させてもらう」
使用人が促すままに残りの貴族たちが出ていく。その際、氷漬けになった片腕を失った男を自分たちは無関係の人間であるかのように視界から排除していた。
「イベリス、部屋に戻れ」
立ち上がろうとしたイベリスにウォルフが待ったをかける。首を傾げると同時にボンッと音を立てて獣の姿へと変わったウォルフがその場で伏せた。
〈乗ってください〉
「ウォル──……」
注意しようとしたファーディナンドの目に映ったのは数日ぶりに見るイベリスの微笑み。ウォルフの毛を触って頬を寄せている。
椅子から立ち上がってウォルフの背に乗ると表情は氷が溶けたようにどんどん柔らかくなっていく。何度も恋しく思った笑顔だ。ふわふわの毛に顔を埋めながら自室へと運ばれていく姿を見ながらファーディナンドは無意識に拳を握っていた。
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