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取り戻したいもの
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〈お墓なんていいのに……〉
「テロスで死んだんだ。弔ってやればいい」
リンウッドの事件からちょうど一ヶ月が過ぎた日、イベリスはファーディナンドに連れられて霊園に来ていた。皇族、皇族の親族などが眠る歴史ある霊園。緑豊かで瑞々しい花に囲まれた見晴らしの良い桃源郷のような場所。そこにリンウッドの墓があった。
一ヶ月、喪に服したように静かだったイベリスが区切りをつけるのに必要なものだと判断したファーディナンドが用意した。
【リンウッド・ヘイグ ここに眠る。あなたを忘れない】
墓に刻まれている文字を指でなぞりながらイベリスの頬に涙が伝う。一ヶ月で忘れられるはずがない。あれはイベリスの中にトラウマとして刻まれた。あれだけ外の景色を見るのが好きだったイベリスは窓にも近付かなくなり、テラスにも出ようとしなくなった。
寝る位置も変えた。いつもはイベリスが左、ファーディナンドが右だったのだが、ファーディナンドと話をするとイベリスの視界に窓が入るため交代し、ベッドの位置も変えたことがなかったのだが、窓から離れた位置に移動した。
〈ファーディナンド、ありがとう〉
垂直に立てた右手を左手の甲にトンッと当てて頭を下げる手話はもう覚えた。こちらを見上げるイベリスに手を伸ばして頬に触れる。流れる涙を親指で拭うと目を細める。まだ明るい笑顔は戻らない。
〈ロベリアのお墓にもお花を添える?〉
たくさん持ってきた花を全てリンウッドの前に置いたが、それをひと束掴もうとするイベリスの手を掴んでかぶりを振る。
「今日はリンウッドの墓を見せに来ただけだ。実家で弔っているだろうから飾りでしかないがな」
〈でも魂の拠り所にはなるわ〉
「だといいがな」
遺体は実家に運んだため墓の下に棺はない。こんな物はパフォーマンスでしかないとわかっていても、イベリスの心を少しでも楽にしてやりたかった。
〈彼は最後、私に何を言ったの?〉
穏やかな顔で確かに何か言っていた。だが、わからなかった。
メモ帳に書かれた問いかけにファーディナンドはイベリスではなくリンウッドの墓に目をやり、静かに答えた。
「イベリス、君を心から愛している。それは永遠であり、死んでも変わることはない……と」
イベリスがメモ帳を下ろした。リンウッドらしい言葉だ。
またじわりと浮かぶ涙を深呼吸で鎮めて大きく息を吐き出す。もう泣きたくないのに勝手に涙が出てきてしまう。こんなにも美しい場所にいるのに、涙なんて似合わないのに。
「……俺の胸で泣くか?」
遠慮がちに両手を伸ばすファーディナンドに驚いて涙が引っ込んだ。目を瞬かせるイベリスを見る表情に怒りも嫉妬もない。あるのは善意だけ。
〈あなたらしくない〉
メモ帳に書いて見せて笑うもやはり涙が流れる。それを隠すように腕の中に入って唇を噛み締めるイベリスを抱きしめながらリンウッドの墓を見た。
(全てお前の言うとおりだ。俺はクズで、イベリスを愛する資格さえない者が傷つけていいはずがない。彼女にしようとしたことを考えれば許されることではないが、少しだけでも挽回したいと思っている。ほんの少しでも、あの笑顔を取り戻せるように)
口に出せばイベリスに読まれてしまうため心の中で語りかける。リンウッドは許しはしないだろう。今頃呪いをかけているかもしれない。自分は呪いよりも酷いことをしようとしたのだから。
ロベリアになんと伝えよう。自分が誓ったことに希望を見出していた。だから死ぬのは怖くないと言った。
『あなたが約束を破ったことは一度もないじゃない。また会えるってわかってるから、死ぬのは怖くないのよ』
痩せ細ってはいたが、とても穏やかな表情で息を引き取った。リンウッドと同じように。
『魔女に頼んで必ずお前を生き返らせる。お前がいない世界を生きる意味などないのだから』
手を握り、そう堅く誓った日から四年が過ぎた今、魔女との約束まで残り四ヶ月を切ったというのに約束を破ることとなった。もし、ロベリアがこの状況を見て、心を読んでいたら、絶望しているだろう。これは彼女にとってもはや裏切りも同然。
それでも、ファーディナンドは決めていた。腕の中で泣くこの少女の笑顔を取り戻すと。失墜した信頼を取り戻そうなどと厚かましいことは考えていない。ただ、これまでのようにイベリスが屈託のない笑顔で笑えるようにしたかった。
「イベリス、何か食べたい物はないか?」
身体を離したイベリスがかぶりを振る。
「最近あまり食べていないだろう。好きな物でいいから食べろ。お前まで痩せ細ってどうする」
〈わかってるけど、食べたくないの……〉
霊園の門前で待っている馬車へと向かうイベリスのあとを追いかけながら一つ提案する。
「場所を変えて食べるのはどうだ? いつも食堂だろう。お前の好きな場所……たとえばボートの上」
足を止めて振り向くイベリスに頷く。
「カゴに軽食を詰めてボートの上で食べる。悪くないだろう? 息が詰まったような気になったときに散歩をするように、食べたくないと思うなら少し気分転換してみるのも悪くないのではないか?」
不思議そうにファーディナンドを見るイベリスは数秒間黙り込んだあと、苦笑してかぶりを振った。
〈どうか、もう私に気を遣うのはやめて。あなたが機嫌を取ってくれなくても大丈夫だから〉
離れてしまった心の取り戻し方をファーディナンドは知らない。幼い頃から誰かに好かれた記憶はなく、誰もが次期皇帝として扱い、接してきた。大事なのは人から好かれることではなく好かれる人間になること。ファーディナンドにとってそれはどんな授業よりも難しかった。人の心は目に見えない。一人一人違う人間であり、違う性格であるため、完璧な答えなど存在せず、まるで答えは運であるかのように人によって違った。
はじめはそれに悩んでいた。だが、いつしかそれを煩わしいと感じるようになり、人に好かれようとするのも好かれる人間になろうとするのもやめた。誰も慕わないし、寄りつきもしない。それでも皇帝として正しく生きていればいいと思っていた。だからこそはじめて好意を持った相手が好意を返してくれることに心が躍り、感じたことがない幸せを噛み締めた。
喧嘩はなかった。いや、軽い言い合いぐらいならあった。ファーディナンドが反省すればロベリアはすぐに笑って許してくれたから心を取り戻そうと悩むことがなかった。
今、イベリスは怒っていない。声をかければ反応し、言葉を返してくれる。一定の距離を空けて、線引きをし、心を閉じている。
「……どうすればいい……」
首を傾げるイベリスにファーディナンドがもう一度問う。
「以前のようにお前に笑ってもらうには、どうすればいい……?」
とても情けない顔をしている自覚はあった。それでも、取り繕うことができないほど困惑していた。今更すぎるとわかっていても、諦められない。
「自分勝手な男だと呆れてくれていい。失望してくれていい。蔑んでくれてもいい。事実、俺はそういう人間で、どうしようもないクズだ。お前を何度傷つけたかわからない。今更お前にこんなことを聞いて実践したところでお前は茶番だと笑うかもしれない。何を企んでいると疑うかもしれない」
何が言いたいんだと困惑の表情を浮かべるイベリスと一歩距離を詰めるとその場で片膝をつく。全くもって理解できないその行動に戸惑うばかりのイベリスの手を両手でそっと握り、祈るように額に当てた。
「お前と過ごした時間が、お前がいる当たり前の日々が、俺にはとても心地の良いものだったと気付いたんだ。だから──」
〈居心地の悪さを取り払いたくて必死になってるの?〉
両手を握っているせいでイベリスが言葉を書けず、口を動かすしかできなかったせいでファーディナンドは彼女が何を言ったのかわからなかった。
手を離し、イベリスが手首から下げているペンを渡すとメモ帳に言葉が綴られる。
〈大丈夫。逃げ出したりしないから〉
ファーディナンドの表情が怪訝に歪む。
「どういう意味だ?」
メモ帳にペン先を当てたまま少し考えるように止まっていたペンがゆっくりと走り出し、綴られた言葉に目を見開く。
〈これからあなたの望みどおりになるんだから、私との生活を取り戻そうとする必要はないのよ〉
心臓が大きく跳ねたあと、停止したような感覚に襲われた。
「テロスで死んだんだ。弔ってやればいい」
リンウッドの事件からちょうど一ヶ月が過ぎた日、イベリスはファーディナンドに連れられて霊園に来ていた。皇族、皇族の親族などが眠る歴史ある霊園。緑豊かで瑞々しい花に囲まれた見晴らしの良い桃源郷のような場所。そこにリンウッドの墓があった。
一ヶ月、喪に服したように静かだったイベリスが区切りをつけるのに必要なものだと判断したファーディナンドが用意した。
【リンウッド・ヘイグ ここに眠る。あなたを忘れない】
墓に刻まれている文字を指でなぞりながらイベリスの頬に涙が伝う。一ヶ月で忘れられるはずがない。あれはイベリスの中にトラウマとして刻まれた。あれだけ外の景色を見るのが好きだったイベリスは窓にも近付かなくなり、テラスにも出ようとしなくなった。
寝る位置も変えた。いつもはイベリスが左、ファーディナンドが右だったのだが、ファーディナンドと話をするとイベリスの視界に窓が入るため交代し、ベッドの位置も変えたことがなかったのだが、窓から離れた位置に移動した。
〈ファーディナンド、ありがとう〉
垂直に立てた右手を左手の甲にトンッと当てて頭を下げる手話はもう覚えた。こちらを見上げるイベリスに手を伸ばして頬に触れる。流れる涙を親指で拭うと目を細める。まだ明るい笑顔は戻らない。
〈ロベリアのお墓にもお花を添える?〉
たくさん持ってきた花を全てリンウッドの前に置いたが、それをひと束掴もうとするイベリスの手を掴んでかぶりを振る。
「今日はリンウッドの墓を見せに来ただけだ。実家で弔っているだろうから飾りでしかないがな」
〈でも魂の拠り所にはなるわ〉
「だといいがな」
遺体は実家に運んだため墓の下に棺はない。こんな物はパフォーマンスでしかないとわかっていても、イベリスの心を少しでも楽にしてやりたかった。
〈彼は最後、私に何を言ったの?〉
穏やかな顔で確かに何か言っていた。だが、わからなかった。
メモ帳に書かれた問いかけにファーディナンドはイベリスではなくリンウッドの墓に目をやり、静かに答えた。
「イベリス、君を心から愛している。それは永遠であり、死んでも変わることはない……と」
イベリスがメモ帳を下ろした。リンウッドらしい言葉だ。
またじわりと浮かぶ涙を深呼吸で鎮めて大きく息を吐き出す。もう泣きたくないのに勝手に涙が出てきてしまう。こんなにも美しい場所にいるのに、涙なんて似合わないのに。
「……俺の胸で泣くか?」
遠慮がちに両手を伸ばすファーディナンドに驚いて涙が引っ込んだ。目を瞬かせるイベリスを見る表情に怒りも嫉妬もない。あるのは善意だけ。
〈あなたらしくない〉
メモ帳に書いて見せて笑うもやはり涙が流れる。それを隠すように腕の中に入って唇を噛み締めるイベリスを抱きしめながらリンウッドの墓を見た。
(全てお前の言うとおりだ。俺はクズで、イベリスを愛する資格さえない者が傷つけていいはずがない。彼女にしようとしたことを考えれば許されることではないが、少しだけでも挽回したいと思っている。ほんの少しでも、あの笑顔を取り戻せるように)
口に出せばイベリスに読まれてしまうため心の中で語りかける。リンウッドは許しはしないだろう。今頃呪いをかけているかもしれない。自分は呪いよりも酷いことをしようとしたのだから。
ロベリアになんと伝えよう。自分が誓ったことに希望を見出していた。だから死ぬのは怖くないと言った。
『あなたが約束を破ったことは一度もないじゃない。また会えるってわかってるから、死ぬのは怖くないのよ』
痩せ細ってはいたが、とても穏やかな表情で息を引き取った。リンウッドと同じように。
『魔女に頼んで必ずお前を生き返らせる。お前がいない世界を生きる意味などないのだから』
手を握り、そう堅く誓った日から四年が過ぎた今、魔女との約束まで残り四ヶ月を切ったというのに約束を破ることとなった。もし、ロベリアがこの状況を見て、心を読んでいたら、絶望しているだろう。これは彼女にとってもはや裏切りも同然。
それでも、ファーディナンドは決めていた。腕の中で泣くこの少女の笑顔を取り戻すと。失墜した信頼を取り戻そうなどと厚かましいことは考えていない。ただ、これまでのようにイベリスが屈託のない笑顔で笑えるようにしたかった。
「イベリス、何か食べたい物はないか?」
身体を離したイベリスがかぶりを振る。
「最近あまり食べていないだろう。好きな物でいいから食べろ。お前まで痩せ細ってどうする」
〈わかってるけど、食べたくないの……〉
霊園の門前で待っている馬車へと向かうイベリスのあとを追いかけながら一つ提案する。
「場所を変えて食べるのはどうだ? いつも食堂だろう。お前の好きな場所……たとえばボートの上」
足を止めて振り向くイベリスに頷く。
「カゴに軽食を詰めてボートの上で食べる。悪くないだろう? 息が詰まったような気になったときに散歩をするように、食べたくないと思うなら少し気分転換してみるのも悪くないのではないか?」
不思議そうにファーディナンドを見るイベリスは数秒間黙り込んだあと、苦笑してかぶりを振った。
〈どうか、もう私に気を遣うのはやめて。あなたが機嫌を取ってくれなくても大丈夫だから〉
離れてしまった心の取り戻し方をファーディナンドは知らない。幼い頃から誰かに好かれた記憶はなく、誰もが次期皇帝として扱い、接してきた。大事なのは人から好かれることではなく好かれる人間になること。ファーディナンドにとってそれはどんな授業よりも難しかった。人の心は目に見えない。一人一人違う人間であり、違う性格であるため、完璧な答えなど存在せず、まるで答えは運であるかのように人によって違った。
はじめはそれに悩んでいた。だが、いつしかそれを煩わしいと感じるようになり、人に好かれようとするのも好かれる人間になろうとするのもやめた。誰も慕わないし、寄りつきもしない。それでも皇帝として正しく生きていればいいと思っていた。だからこそはじめて好意を持った相手が好意を返してくれることに心が躍り、感じたことがない幸せを噛み締めた。
喧嘩はなかった。いや、軽い言い合いぐらいならあった。ファーディナンドが反省すればロベリアはすぐに笑って許してくれたから心を取り戻そうと悩むことがなかった。
今、イベリスは怒っていない。声をかければ反応し、言葉を返してくれる。一定の距離を空けて、線引きをし、心を閉じている。
「……どうすればいい……」
首を傾げるイベリスにファーディナンドがもう一度問う。
「以前のようにお前に笑ってもらうには、どうすればいい……?」
とても情けない顔をしている自覚はあった。それでも、取り繕うことができないほど困惑していた。今更すぎるとわかっていても、諦められない。
「自分勝手な男だと呆れてくれていい。失望してくれていい。蔑んでくれてもいい。事実、俺はそういう人間で、どうしようもないクズだ。お前を何度傷つけたかわからない。今更お前にこんなことを聞いて実践したところでお前は茶番だと笑うかもしれない。何を企んでいると疑うかもしれない」
何が言いたいんだと困惑の表情を浮かべるイベリスと一歩距離を詰めるとその場で片膝をつく。全くもって理解できないその行動に戸惑うばかりのイベリスの手を両手でそっと握り、祈るように額に当てた。
「お前と過ごした時間が、お前がいる当たり前の日々が、俺にはとても心地の良いものだったと気付いたんだ。だから──」
〈居心地の悪さを取り払いたくて必死になってるの?〉
両手を握っているせいでイベリスが言葉を書けず、口を動かすしかできなかったせいでファーディナンドは彼女が何を言ったのかわからなかった。
手を離し、イベリスが手首から下げているペンを渡すとメモ帳に言葉が綴られる。
〈大丈夫。逃げ出したりしないから〉
ファーディナンドの表情が怪訝に歪む。
「どういう意味だ?」
メモ帳にペン先を当てたまま少し考えるように止まっていたペンがゆっくりと走り出し、綴られた言葉に目を見開く。
〈これからあなたの望みどおりになるんだから、私との生活を取り戻そうとする必要はないのよ〉
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