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元婚約者の変化2
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ウォルフが誤算だったのはイベリスが自分たちを部屋から出したこと。
部屋に居させてくれたのはサーシャが食事と紅茶を運んでくるまで。それが終わるとイベリスは二人に「リンウッドが帰るときに呼ぶから、二人はそれまで自由に過ごして」と言われた。
サーシャは抵抗したが、お願いと言われると頑固にそれを跳ね除けることはできず、渋々ながらに従った。
廊下に出たサーシャがとびきり大きな音で舌打ちする。
「豪快だな」
「部屋に二人だけにするのは危険よ」
「まさかリンウッドがイベリス様を殺すとでも?」
「病んでるのは確かよ」
「そうだな」
誰が見ても正常ではない表情をしている。目が虚ろで、頬は痩け、何か危険薬物にでも手を出しているのではないかと疑いたくなるほどの見た目をしている。イベリスでさえ驚いていたのだからリンベルで一緒だった頃はあんな姿ではなかったのだろう。
『後悔してるんだ!』
あの叫びを聞いていたウォルフもサーシャと同じ考えだが、イベリスの頼みを心配だからと断ることは二人にはできなかった。そんな権限を持っていない。心配ではあるが、ドアの前に立って盗み聞きしているわけにもいかず、二人は移動を始めた。
〈食事にしましょう。食べられるだけでいいから食べてね。そんなに痩せたままいちゃダメよ。ハンサムが台無し〉
朝食を食べたイベリスの前には好物のパンケーキ。リンウッドの前にはミートソースのパスタが置いてある。真ん中にはサラダとパンと果物。それにティーポット。酒はイベリスが飲めないこともあり、用意されなかった。
〈僕はハンサムなんかじゃない。君がいたから身なりに気を遣ったんだ。君に嫌悪されないように、君に少しでも褒めてもらえるようにって努力してただけだから〉
〈その努力はもうあなたのものよ。ちゃんとしなきゃ〉
〈君がいないのに努力する意味なんてない〉
苦笑しながらフォークを持つイベリスがパンケーキにシロップをかけながら何を話そうか考えているとリンウッドが隣に移動してきた。
〈リンウッド?〉
どうしたのかと首を傾げていると微笑まれる。本来はとても魅力的な笑顔を持つ彼の今の笑顔は病的で、どこか不気味に感じる。
〈この七ヶ月、どう過ごしていたの?〉
〈イベリスのことを考えながら生きてた〉
〈何をしてたの?〉
〈何も。ただ……死を待ってた〉
目を見開くイベリスに向ける笑みは深まり、手を握られる。手話をするのに必要な手を塞がれると会話ができない。それがわかっているリンウッドは滅多に手を握らない。
目の前の食事に手をつけず隣に座って手を握るリンウッドをイベリスは怖いと感じていた。死という言葉を口にする彼の雰囲気がそれを冗談ではないと信じさせる。
「君を追いかけ続ける人生だったらよかった。幼い頃に君に一目惚れをした僕は一生君を追いかけるつもりだった。それでもいいと思っていたんだ。君の隣を歩いて、僕だけが君と秘密の会話ができる。それが何よりも幸せだったから。だけど君は僕の熱意に応えてくれた。僕のものになってくれたんだ。舞い上がるほど嬉しくて、踊り出すほど興奮した。鏡の前で何度も自分の顔を叩いて現実かと確認した。君が僕の婚約者で、いずれ君はイベリス・リングデールからイベリス・ヘイグに姓が変わる。正真正銘、僕のものとなる日はすぐそこまで来ていたのに、僕は愚かにも君を手放してしまった。僕のものになった君を失うのが怖くなったからだ。誰かに取られてしまうのではないかと、不安は日に日に増すばかりで、君はそんな女性じゃないと何万回言い聞かせても不安は消えなかった。親、友人、教師にさえ様子がおかしいと心配され、君が心配していると言われるたびに怒りが込み上げるようになった。君が誰かと話すだけで頭の中がぐちゃぐちゃになるんだ。その紙に書かれているのは僕の悪口じゃないか。誰かへの好意じゃないかと疑うのをやめられなくなって、君を束縛するようになった。君は困った顔をするだけで嫌だとは言わなかったよね。君は天使より女神より心優しい女性だから当然だ。こんな異常な僕を受け入れてくれた君がいなくなってしまう可能性を考えるだけで自分の感情が抑えられないようになっていった。周りに当たり散らして、君にも当たった。あの日、僕は君を手放そうと決めたんだ。君に手を上げたら僕は自分を許せない。君に手を上げる前に離れなければと決断しての別れだったけど……間違ってた」
瞳孔が開いているように見える目でジッと見つめたまま早口で何か話しているリンウッドに待ってと首を振るも止まらない。
握っていたフォークを置いてメモ帳を引き寄せ、ペンを取った。
〈リンウッド、手話で話して。あなたが何を言ってるかわからない〉
メモ帳を持ち上げて見せるもリンウッドの目はイベリスの目を見たまま一瞬でも逸れることはない。
「僕が君に手を上げるはずがない。だって君に手を上げる前に自分を殴るだろう。君に優しく触れる以外に使おうとしたら僕は自分の手を切り落とすよ。そしたら君に手を上げることはできない」
〈リンウッド、これを読んで〉
「それじゃあ手話ができなくなるって? 心配ないよ。言ってるだろう? 僕が魔法士を呼んで言語表示の魔法をかけてもらう。君が手話をしてくれれば僕は言葉で君に伝える。それでよかったんだ。恐れる必要はなかったのに、君も知ってのとおり、僕は心配性だから余計な心配で君に別れを告げるなどという愚かな行為に走ってしまった。だけど、もうその心配はない。怖いのは君を傷つけるかもしれないことでも、自分の頭がおかしくなりそうなことでもない。僕の歩く道に君がいないことだよ。君が僕の人生にいないのは死ぬより辛いことだと気付いたんだ。もう二度と君を手放したりしないから、どうか戻ってきてほしい」
〈リンウッド! こっちを見て!〉
メモ帳を顔に押し付けるもリンウッドはそれを強く払い落としてイベリスの目を見つめ続ける。優しい微笑みのはずなのに、血走った目が彼は一体誰なんだとイベリスを混乱させる。
彼は自分が知っているリンウッド・ヘイグではないと拒絶したくなる。
「ここに来るまでに何度驚いたかわからない。君の真似をした女の肖像画がたくさん飾ってあった。僕をここまで案内した男はあれを君だと言い張ったんだよ。似ても似つかないあの醜悪な顔をした女を君だなんて言ったんだ。刺し殺したくなったね。君の肖像画が一枚もないなんて、やっぱりあの噂は本当だったんだ。テロスの皇帝ファーディナンド・キルヒシュは前皇妃ロベリア・キルヒシュと瓜二つの少女と再婚した。忘れられぬ妻を求めた目も当てられぬ愚行。新聞にそう書いてあったよ。君の両親もとても悲しんでいた。君は子供よりも純粋だから嘘で固めらてた求婚に希望を見出してしまったんだろう。この七ヶ月、不幸だったはずだ。本当の君なんて見ようともしないあの男からの愛を待つ必要はない。君も本当はわかってるんだろ?」
〈何を言ってるかわからない! 手を離してちゃんと伝えて!〉
足で引き寄せたメモ帳を拾って殴り書くもやはりリンウッドがそれを見ることはない。
「君を本当に心から愛しているのは僕だけだ。僕だけが君の良さを知っている。君の優しさ、君の美しさ、君の愛らしさ、君の脆さ──僕だけが理解しているんだよ。僕だけが、君を愛しているんだから」
近付いてくる顔にイベリスは距離を取ろうと下がるもそうするとリンウッドが詰めてくる。
サーシャとウォルフを部屋から追い出したのは失敗だった。ドアの外で待っててくれるよう伝えていれば皿を落とすだけで飛び込んできてくれたはず。
〈離して!〉
手を払おうと腕を振るも離れない。握るリンウッドの手を押すも離れない。
「もう二度と君を手放したりしない。君は僕のもので、僕は君のものだ。君がいれば僕は幸せで、君がいないと不幸なんだ。死ぬより辛い苦しみを味わうことになる。君が手に入らないなら……」
途端に口を動かすのをやめたリンウッドがイベリスの手からペンを取って紙に言葉を書いた。
「君が僕のもとに戻ってきてくれないなら僕は死ぬしかない」
まるで脅迫めいた言葉にイベリスの抵抗が止まる。
リンウッドは何もかも変わってしまった。自分の気持ちを抑え込んででも涙ながらに別れを告げる優しい人だったのに、今はこちらの訴えを聞いてもくれない。
この姿は彼が苦しんだ結果。このまま突き放したら本当に死んでしまうのではないかと透けて見えるような未来にイベリスは怯えていた。
「イベリス、心から君を愛しているんだ。決して君を傷つけたりはしない。君が僕のもとへ戻ってきてくれるなら僕はなんでもしよう。だからこのままリンベルに一緒に帰って、結婚式を挙げて、新居で暮らそう。君は何もしなくていい。僕の隣で微笑んでくれているだけでいいんだよ」
頭がおかしくなりそうだと涙ながらに別れたはずなのに、別れてからのほうがおかしくなってしまっている。握られている手が震えはじめたイベリスに「寒いのかい?」と問いかけ、掴んでいた腕を引かれ、抱きしめられた瞬間、ゾッとした。
(誰か助けて!!)
全身で感じる恐怖に呼吸を乱しながら掴んだパンケーキが乗った皿を壁に向かって思いきり投げた。この音で誰か気付いて。イベリスはそう願うことしかできなかった。
部屋に居させてくれたのはサーシャが食事と紅茶を運んでくるまで。それが終わるとイベリスは二人に「リンウッドが帰るときに呼ぶから、二人はそれまで自由に過ごして」と言われた。
サーシャは抵抗したが、お願いと言われると頑固にそれを跳ね除けることはできず、渋々ながらに従った。
廊下に出たサーシャがとびきり大きな音で舌打ちする。
「豪快だな」
「部屋に二人だけにするのは危険よ」
「まさかリンウッドがイベリス様を殺すとでも?」
「病んでるのは確かよ」
「そうだな」
誰が見ても正常ではない表情をしている。目が虚ろで、頬は痩け、何か危険薬物にでも手を出しているのではないかと疑いたくなるほどの見た目をしている。イベリスでさえ驚いていたのだからリンベルで一緒だった頃はあんな姿ではなかったのだろう。
『後悔してるんだ!』
あの叫びを聞いていたウォルフもサーシャと同じ考えだが、イベリスの頼みを心配だからと断ることは二人にはできなかった。そんな権限を持っていない。心配ではあるが、ドアの前に立って盗み聞きしているわけにもいかず、二人は移動を始めた。
〈食事にしましょう。食べられるだけでいいから食べてね。そんなに痩せたままいちゃダメよ。ハンサムが台無し〉
朝食を食べたイベリスの前には好物のパンケーキ。リンウッドの前にはミートソースのパスタが置いてある。真ん中にはサラダとパンと果物。それにティーポット。酒はイベリスが飲めないこともあり、用意されなかった。
〈僕はハンサムなんかじゃない。君がいたから身なりに気を遣ったんだ。君に嫌悪されないように、君に少しでも褒めてもらえるようにって努力してただけだから〉
〈その努力はもうあなたのものよ。ちゃんとしなきゃ〉
〈君がいないのに努力する意味なんてない〉
苦笑しながらフォークを持つイベリスがパンケーキにシロップをかけながら何を話そうか考えているとリンウッドが隣に移動してきた。
〈リンウッド?〉
どうしたのかと首を傾げていると微笑まれる。本来はとても魅力的な笑顔を持つ彼の今の笑顔は病的で、どこか不気味に感じる。
〈この七ヶ月、どう過ごしていたの?〉
〈イベリスのことを考えながら生きてた〉
〈何をしてたの?〉
〈何も。ただ……死を待ってた〉
目を見開くイベリスに向ける笑みは深まり、手を握られる。手話をするのに必要な手を塞がれると会話ができない。それがわかっているリンウッドは滅多に手を握らない。
目の前の食事に手をつけず隣に座って手を握るリンウッドをイベリスは怖いと感じていた。死という言葉を口にする彼の雰囲気がそれを冗談ではないと信じさせる。
「君を追いかけ続ける人生だったらよかった。幼い頃に君に一目惚れをした僕は一生君を追いかけるつもりだった。それでもいいと思っていたんだ。君の隣を歩いて、僕だけが君と秘密の会話ができる。それが何よりも幸せだったから。だけど君は僕の熱意に応えてくれた。僕のものになってくれたんだ。舞い上がるほど嬉しくて、踊り出すほど興奮した。鏡の前で何度も自分の顔を叩いて現実かと確認した。君が僕の婚約者で、いずれ君はイベリス・リングデールからイベリス・ヘイグに姓が変わる。正真正銘、僕のものとなる日はすぐそこまで来ていたのに、僕は愚かにも君を手放してしまった。僕のものになった君を失うのが怖くなったからだ。誰かに取られてしまうのではないかと、不安は日に日に増すばかりで、君はそんな女性じゃないと何万回言い聞かせても不安は消えなかった。親、友人、教師にさえ様子がおかしいと心配され、君が心配していると言われるたびに怒りが込み上げるようになった。君が誰かと話すだけで頭の中がぐちゃぐちゃになるんだ。その紙に書かれているのは僕の悪口じゃないか。誰かへの好意じゃないかと疑うのをやめられなくなって、君を束縛するようになった。君は困った顔をするだけで嫌だとは言わなかったよね。君は天使より女神より心優しい女性だから当然だ。こんな異常な僕を受け入れてくれた君がいなくなってしまう可能性を考えるだけで自分の感情が抑えられないようになっていった。周りに当たり散らして、君にも当たった。あの日、僕は君を手放そうと決めたんだ。君に手を上げたら僕は自分を許せない。君に手を上げる前に離れなければと決断しての別れだったけど……間違ってた」
瞳孔が開いているように見える目でジッと見つめたまま早口で何か話しているリンウッドに待ってと首を振るも止まらない。
握っていたフォークを置いてメモ帳を引き寄せ、ペンを取った。
〈リンウッド、手話で話して。あなたが何を言ってるかわからない〉
メモ帳を持ち上げて見せるもリンウッドの目はイベリスの目を見たまま一瞬でも逸れることはない。
「僕が君に手を上げるはずがない。だって君に手を上げる前に自分を殴るだろう。君に優しく触れる以外に使おうとしたら僕は自分の手を切り落とすよ。そしたら君に手を上げることはできない」
〈リンウッド、これを読んで〉
「それじゃあ手話ができなくなるって? 心配ないよ。言ってるだろう? 僕が魔法士を呼んで言語表示の魔法をかけてもらう。君が手話をしてくれれば僕は言葉で君に伝える。それでよかったんだ。恐れる必要はなかったのに、君も知ってのとおり、僕は心配性だから余計な心配で君に別れを告げるなどという愚かな行為に走ってしまった。だけど、もうその心配はない。怖いのは君を傷つけるかもしれないことでも、自分の頭がおかしくなりそうなことでもない。僕の歩く道に君がいないことだよ。君が僕の人生にいないのは死ぬより辛いことだと気付いたんだ。もう二度と君を手放したりしないから、どうか戻ってきてほしい」
〈リンウッド! こっちを見て!〉
メモ帳を顔に押し付けるもリンウッドはそれを強く払い落としてイベリスの目を見つめ続ける。優しい微笑みのはずなのに、血走った目が彼は一体誰なんだとイベリスを混乱させる。
彼は自分が知っているリンウッド・ヘイグではないと拒絶したくなる。
「ここに来るまでに何度驚いたかわからない。君の真似をした女の肖像画がたくさん飾ってあった。僕をここまで案内した男はあれを君だと言い張ったんだよ。似ても似つかないあの醜悪な顔をした女を君だなんて言ったんだ。刺し殺したくなったね。君の肖像画が一枚もないなんて、やっぱりあの噂は本当だったんだ。テロスの皇帝ファーディナンド・キルヒシュは前皇妃ロベリア・キルヒシュと瓜二つの少女と再婚した。忘れられぬ妻を求めた目も当てられぬ愚行。新聞にそう書いてあったよ。君の両親もとても悲しんでいた。君は子供よりも純粋だから嘘で固めらてた求婚に希望を見出してしまったんだろう。この七ヶ月、不幸だったはずだ。本当の君なんて見ようともしないあの男からの愛を待つ必要はない。君も本当はわかってるんだろ?」
〈何を言ってるかわからない! 手を離してちゃんと伝えて!〉
足で引き寄せたメモ帳を拾って殴り書くもやはりリンウッドがそれを見ることはない。
「君を本当に心から愛しているのは僕だけだ。僕だけが君の良さを知っている。君の優しさ、君の美しさ、君の愛らしさ、君の脆さ──僕だけが理解しているんだよ。僕だけが、君を愛しているんだから」
近付いてくる顔にイベリスは距離を取ろうと下がるもそうするとリンウッドが詰めてくる。
サーシャとウォルフを部屋から追い出したのは失敗だった。ドアの外で待っててくれるよう伝えていれば皿を落とすだけで飛び込んできてくれたはず。
〈離して!〉
手を払おうと腕を振るも離れない。握るリンウッドの手を押すも離れない。
「もう二度と君を手放したりしない。君は僕のもので、僕は君のものだ。君がいれば僕は幸せで、君がいないと不幸なんだ。死ぬより辛い苦しみを味わうことになる。君が手に入らないなら……」
途端に口を動かすのをやめたリンウッドがイベリスの手からペンを取って紙に言葉を書いた。
「君が僕のもとに戻ってきてくれないなら僕は死ぬしかない」
まるで脅迫めいた言葉にイベリスの抵抗が止まる。
リンウッドは何もかも変わってしまった。自分の気持ちを抑え込んででも涙ながらに別れを告げる優しい人だったのに、今はこちらの訴えを聞いてもくれない。
この姿は彼が苦しんだ結果。このまま突き放したら本当に死んでしまうのではないかと透けて見えるような未来にイベリスは怯えていた。
「イベリス、心から君を愛しているんだ。決して君を傷つけたりはしない。君が僕のもとへ戻ってきてくれるなら僕はなんでもしよう。だからこのままリンベルに一緒に帰って、結婚式を挙げて、新居で暮らそう。君は何もしなくていい。僕の隣で微笑んでくれているだけでいいんだよ」
頭がおかしくなりそうだと涙ながらに別れたはずなのに、別れてからのほうがおかしくなってしまっている。握られている手が震えはじめたイベリスに「寒いのかい?」と問いかけ、掴んでいた腕を引かれ、抱きしめられた瞬間、ゾッとした。
(誰か助けて!!)
全身で感じる恐怖に呼吸を乱しながら掴んだパンケーキが乗った皿を壁に向かって思いきり投げた。この音で誰か気付いて。イベリスはそう願うことしかできなかった。
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