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イベリスという少女
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朝から晩まで机に齧りつく日々。座って、ペンを握って、サインをする。会議に出て、怒声と呆れと失望と賛成を繰り返し、懇願と反感を受けながらそれらを無視して執務室に戻る。
時折、自分は何故生きているのだろうと考える。なんのために生まれ、何が目的で生きているのだろうかと。
快晴、雨天、暴風、雷鳴、熱波、吹雪──どんな天気だろうと仕事はある。毎日毎日同じことを繰り返すだけの日々を生きる意味はなんだ。
凝った肩と首を動かしながら休憩する時間、ふと外を見るとイベリスとマシロが一緒に走っている。マシロは毛が長く、毛がよく抜ける。イベリスのドレスはあっという間に毛だらけになるため濃い色は着れなくなり、白ならわかりにくいからと元々好んでいた白をよく着るようになった。
凍っていた池は水へと戻り、立ち寄って水を飲むマシロをイベリスが引っ張り戻そうとするも動かない。代わりにウォルフを抱き上げて強制的に水飲み場へと運んでいく。
大きな声で吠えるマシロにイベリスは笑顔を向ける。
「うるさい……」
犬を飼うつもりはなかった。動物はもともと好きではないし、服に毛がつくのも舞うのも嫌い。赤ん坊と違って成長すれば泣かなくなるというわけではないし、言葉が通じるようになるわけでもない。寿命も短い。飼うメリットがないと思っていた。
でも今ここにはマシロがいて、イベリスは毎日散歩をさせる。ボールで遊んで、ブラッシングをして、食事も水もイベリスが用意する。悪戯をしたことはない。ダメだと言われれば理解し、大人しくしている。鬱陶しくはない。
それでも時折、マシロの存在が異常に不愉快に感じるときがある。犬より猫が好きだと言い、犬に苦手意識を持っていたロベリアが亡くなった。既に受け入れている。亡くなったのは理解している。亡くなる瞬間も、埋葬した瞬間もこの目で見ていたのだから。だが、イベリスが傍にいるとその悔しさと寂しさが少し和らぐ。中身は別人であれど黙っているとよく似ている。なのに、マシロがいるとロベリアがいないことを強く思い知らされるのだ。ロベリアがいたら絶対に犬は飼わなかった。
マシロが悪いわけではない。自分が取り寄せた犬だ。飼うと決めたのは他でもない自分。苛立つ権利などあるはずもないとわかっているのに、ファーディナンドは時折こうしてどうしようもない感情に歯を食いしばる。
「イベリス様、ボール投げるの上手くなりましたね」
ウォルフの褒め言葉に喜ぶイベリスを上から見る。
耳が聞こえないと承知で結婚した。写真で眺めるだけだったロベリアがそこにいる。存在を感じれるだけでいいと考えて求婚した。少々不便はあれど、言語表示の魔法のおかげで筆談する必要はなくなった。イベリスの言葉も表示されればいいのにとウォルフは言ったが、ファーディナンドはそうは思っていない。
イベリスは口達者だ。あっという間にメモ帳一冊埋まってしまうほどのおしゃべり好き。そんな人間の言葉が表示されて見えるとなれば鬱陶しさに苛立つのは目に見えていた。
話せなくても感情豊か。笑いの沸点が低く、あらゆることに笑う。ウォルフのくだらないジョークにも話にも。
犬の散歩をさせるのが好きで、よく食べ、よく眠る。声はないのに賑やかだと思うほどの明るさを持つ少女をロベリアとして見るのは難しかった。
ロベリアはイベリスと同じでハッキリ物を言う性格だった。明るくもあった。イベリスとの違いは気品にある。皇妃として穏やかに、そして上品に生きていた。笑顔も物腰も柔らかかった。年齢もあったかもしれないが、イベリスのような無邪気さはなかった。
ファーディナンドはうるさい女は嫌いだった。媚びを売る女も。そういった点ではイベリスは媚びず、鬱陶しさはない。
「うわっ! 待った! マシロ待て! 俺が取るから! 待て! なんで待てができないんだ!!」
「イベリス様の命令しか聞かないのよ……最悪……」
イベリスが放ったボールが池に入ってしまった。それを追いかけるマシロにウォルが慌てるのもすっかり見慣れた光景。イベリスとサーシャはこの先どうなるかわかっているため避難し、ウォルフは桟橋で溜息をついた。
スイスイ泳いで器用にボールをくわえて戻ってくる。マシロが陸に上がると長い毛が擦った水が滝のように流れ落ちる。
〈待て!〉
駆け寄ってこようとするマシロにイベリスが手のひらを向けると立ち止まる。クゥンと寂しそうに鳴いたあと、マシロはそのまま桟橋へと向かった。
「待て! 待て待て待て待て! こっちに来るな!」
桟橋から陸に帰る道は一つ。端にいるウォルフが逃げるためには池に落ちるしかない。何故すぐに身体の水を飛ばさなかったと嫌な顔をするウォルフはどうにかしてマシロの横を抜けられないか考えるも自分と同じ巨体であるマシロが真ん中に立つと両端は極端なまでに狭くなる。飛び越えるにしても大きい。
目の前で立ち止まったその一瞬をついて横を抜けたウォルフは勝ち誇った顔をした。
「よっしゃ……あ……」
逃すかと言わんばかりに身体を振って飛び散った水がウォルフの背後を襲った。前から濡れるより背後が濡れたほうが気持ち悪いと顔を歪めるウォルフがその場で崩れ落ちた。そこを狙ったように近付いて再度、身体を振ったことで前も濡れた。全身余すことなく濡れたことで諦めがついたウォルフは側に落とされたボールを持って勢いよく投げた。サーシャとイベリスの近くめがけて。
「死なば諸共! マシロ行け! ダイレクトウォーターアタックだ!」
「バカじゃないの」
さすがにダメだと判断したサーシャは目の前に氷の壁を作ってボールを弾いた。駆け出したことで重く感じた水をなくそうと身体を揺らして飛んできた飛沫も全て氷の壁によって阻まれた。
「それは卑怯だろ!」
「何が卑怯よ。故意にイベリス様濡らしてタダで済むと思わないことね」
「待って! なんだよこれ! マジ待ってくれ!」
氷の壁によって囲まれたことで焦り、必死に壁を叩いて謝罪と懇願を繰り返すウォルフを見てイベリスが笑う。
声で話せる二人と同じぐらいイベリスの笑顔は明るい。耳が聞こえないなんて、話せないなんて嘘だと思わせるほどに屈託のない笑顔を浮かべる。
休憩時間に椅子の上で目を閉じることもせず、こうして彼らを眺める時間が度々存在することにファーディナンドは気付いていない。それによって自分が微笑んでいることにも。
夜、部屋に戻るとイベリスが起きているときがある。本を読んでいることが多いのだが、この日はテラスに出て星を眺めていた。
「まだ起きていたのか」
一度振り返りはしたが、ペンは持たない。隣に立つとイベリスが夜空を指す。
「夫婦星だな」
オレンジと青白い二つの星を見上げて頷く。別に珍しくもない物を何故そんなに見ていられるのかがファーディナンドには理解できない。
「さっさと入れ。風邪をひくぞ」
頷くだけで入ろうとしない。凍えるほどの寒さではないが、羽織物が必要な程度には冷えている。ショールを巻いてはいるが、それでも防寒性はないため冷風を防げはしないだろう。
いつもは本を読んで過ごす夜。気まぐれに思い立って空を見上げることにした。そしたら星を見つけて見惚れたといったところだろうと推測し、少ししたら入ってこいと言って先に中に入った。
ファーディナンドは寝る前に本を読む趣味はない。朝から晩まで文字と向かい合っているため寝る寸前まで字に溺れたくはない。だからベッドに入って目を閉じるのだが、眠れない。
ドアが閉まる音がしないのもイベリスがベッドに入ってこないのも理由の一つではあるが、一番大きな理由は部屋に入ったときに見たイベリスの表情。
時折、イベリスは静かすぎる日がある。いつでも賑やかに感じるのに、怖いほど静かな瞬間を持っている。夜は特にそうだ。目を離せば消えてしまうのではないかと思うような静寂。ロベリアにはなかったものだ。
夜は嫌いだと言っていた。色が消えてしまうからと。そう言いながらも今、彼女は夜に浸っている。自らの足で夜に入り、空を見上げている。いや、消えた色の中で見つけた光を見ている。
音のない世界で生きてきたイベリスにとって夜は色さえも奪ってしまうから嫌いだった。だが、その中に見つけた光はとても美しく見えたのかもしれない。昼間の世界がとても美しいんだと笑ったように。
「星座には詳しいのか?」
ベッドから出て向かうはテラス。羽織っていたローブをイベリスの肩からかけて柵に肘をつく。同じ物を見上げながら問いかけてようやくイベリスがペンを持った。
〈そんなに詳しくない。あれが夫婦星だって事は知ってる〉
「俺は他にも少し知っているぞ」
〈例えば?〉
「あれが──」
必要ないと思っていた教養だが、初めて役に立った。空を彩る星を指差しながら語り部のように口を動かすファーディナンドはイベリスを柵と自分の間に入れて同じ場所で星座を見せる。自分がどれのことを言っているのかわかってほしかったのではない。彼女が、イベリスがここから消えてしまわないようにと守るようにそうしていた。
時折、自分は何故生きているのだろうと考える。なんのために生まれ、何が目的で生きているのだろうかと。
快晴、雨天、暴風、雷鳴、熱波、吹雪──どんな天気だろうと仕事はある。毎日毎日同じことを繰り返すだけの日々を生きる意味はなんだ。
凝った肩と首を動かしながら休憩する時間、ふと外を見るとイベリスとマシロが一緒に走っている。マシロは毛が長く、毛がよく抜ける。イベリスのドレスはあっという間に毛だらけになるため濃い色は着れなくなり、白ならわかりにくいからと元々好んでいた白をよく着るようになった。
凍っていた池は水へと戻り、立ち寄って水を飲むマシロをイベリスが引っ張り戻そうとするも動かない。代わりにウォルフを抱き上げて強制的に水飲み場へと運んでいく。
大きな声で吠えるマシロにイベリスは笑顔を向ける。
「うるさい……」
犬を飼うつもりはなかった。動物はもともと好きではないし、服に毛がつくのも舞うのも嫌い。赤ん坊と違って成長すれば泣かなくなるというわけではないし、言葉が通じるようになるわけでもない。寿命も短い。飼うメリットがないと思っていた。
でも今ここにはマシロがいて、イベリスは毎日散歩をさせる。ボールで遊んで、ブラッシングをして、食事も水もイベリスが用意する。悪戯をしたことはない。ダメだと言われれば理解し、大人しくしている。鬱陶しくはない。
それでも時折、マシロの存在が異常に不愉快に感じるときがある。犬より猫が好きだと言い、犬に苦手意識を持っていたロベリアが亡くなった。既に受け入れている。亡くなったのは理解している。亡くなる瞬間も、埋葬した瞬間もこの目で見ていたのだから。だが、イベリスが傍にいるとその悔しさと寂しさが少し和らぐ。中身は別人であれど黙っているとよく似ている。なのに、マシロがいるとロベリアがいないことを強く思い知らされるのだ。ロベリアがいたら絶対に犬は飼わなかった。
マシロが悪いわけではない。自分が取り寄せた犬だ。飼うと決めたのは他でもない自分。苛立つ権利などあるはずもないとわかっているのに、ファーディナンドは時折こうしてどうしようもない感情に歯を食いしばる。
「イベリス様、ボール投げるの上手くなりましたね」
ウォルフの褒め言葉に喜ぶイベリスを上から見る。
耳が聞こえないと承知で結婚した。写真で眺めるだけだったロベリアがそこにいる。存在を感じれるだけでいいと考えて求婚した。少々不便はあれど、言語表示の魔法のおかげで筆談する必要はなくなった。イベリスの言葉も表示されればいいのにとウォルフは言ったが、ファーディナンドはそうは思っていない。
イベリスは口達者だ。あっという間にメモ帳一冊埋まってしまうほどのおしゃべり好き。そんな人間の言葉が表示されて見えるとなれば鬱陶しさに苛立つのは目に見えていた。
話せなくても感情豊か。笑いの沸点が低く、あらゆることに笑う。ウォルフのくだらないジョークにも話にも。
犬の散歩をさせるのが好きで、よく食べ、よく眠る。声はないのに賑やかだと思うほどの明るさを持つ少女をロベリアとして見るのは難しかった。
ロベリアはイベリスと同じでハッキリ物を言う性格だった。明るくもあった。イベリスとの違いは気品にある。皇妃として穏やかに、そして上品に生きていた。笑顔も物腰も柔らかかった。年齢もあったかもしれないが、イベリスのような無邪気さはなかった。
ファーディナンドはうるさい女は嫌いだった。媚びを売る女も。そういった点ではイベリスは媚びず、鬱陶しさはない。
「うわっ! 待った! マシロ待て! 俺が取るから! 待て! なんで待てができないんだ!!」
「イベリス様の命令しか聞かないのよ……最悪……」
イベリスが放ったボールが池に入ってしまった。それを追いかけるマシロにウォルが慌てるのもすっかり見慣れた光景。イベリスとサーシャはこの先どうなるかわかっているため避難し、ウォルフは桟橋で溜息をついた。
スイスイ泳いで器用にボールをくわえて戻ってくる。マシロが陸に上がると長い毛が擦った水が滝のように流れ落ちる。
〈待て!〉
駆け寄ってこようとするマシロにイベリスが手のひらを向けると立ち止まる。クゥンと寂しそうに鳴いたあと、マシロはそのまま桟橋へと向かった。
「待て! 待て待て待て待て! こっちに来るな!」
桟橋から陸に帰る道は一つ。端にいるウォルフが逃げるためには池に落ちるしかない。何故すぐに身体の水を飛ばさなかったと嫌な顔をするウォルフはどうにかしてマシロの横を抜けられないか考えるも自分と同じ巨体であるマシロが真ん中に立つと両端は極端なまでに狭くなる。飛び越えるにしても大きい。
目の前で立ち止まったその一瞬をついて横を抜けたウォルフは勝ち誇った顔をした。
「よっしゃ……あ……」
逃すかと言わんばかりに身体を振って飛び散った水がウォルフの背後を襲った。前から濡れるより背後が濡れたほうが気持ち悪いと顔を歪めるウォルフがその場で崩れ落ちた。そこを狙ったように近付いて再度、身体を振ったことで前も濡れた。全身余すことなく濡れたことで諦めがついたウォルフは側に落とされたボールを持って勢いよく投げた。サーシャとイベリスの近くめがけて。
「死なば諸共! マシロ行け! ダイレクトウォーターアタックだ!」
「バカじゃないの」
さすがにダメだと判断したサーシャは目の前に氷の壁を作ってボールを弾いた。駆け出したことで重く感じた水をなくそうと身体を揺らして飛んできた飛沫も全て氷の壁によって阻まれた。
「それは卑怯だろ!」
「何が卑怯よ。故意にイベリス様濡らしてタダで済むと思わないことね」
「待って! なんだよこれ! マジ待ってくれ!」
氷の壁によって囲まれたことで焦り、必死に壁を叩いて謝罪と懇願を繰り返すウォルフを見てイベリスが笑う。
声で話せる二人と同じぐらいイベリスの笑顔は明るい。耳が聞こえないなんて、話せないなんて嘘だと思わせるほどに屈託のない笑顔を浮かべる。
休憩時間に椅子の上で目を閉じることもせず、こうして彼らを眺める時間が度々存在することにファーディナンドは気付いていない。それによって自分が微笑んでいることにも。
夜、部屋に戻るとイベリスが起きているときがある。本を読んでいることが多いのだが、この日はテラスに出て星を眺めていた。
「まだ起きていたのか」
一度振り返りはしたが、ペンは持たない。隣に立つとイベリスが夜空を指す。
「夫婦星だな」
オレンジと青白い二つの星を見上げて頷く。別に珍しくもない物を何故そんなに見ていられるのかがファーディナンドには理解できない。
「さっさと入れ。風邪をひくぞ」
頷くだけで入ろうとしない。凍えるほどの寒さではないが、羽織物が必要な程度には冷えている。ショールを巻いてはいるが、それでも防寒性はないため冷風を防げはしないだろう。
いつもは本を読んで過ごす夜。気まぐれに思い立って空を見上げることにした。そしたら星を見つけて見惚れたといったところだろうと推測し、少ししたら入ってこいと言って先に中に入った。
ファーディナンドは寝る前に本を読む趣味はない。朝から晩まで文字と向かい合っているため寝る寸前まで字に溺れたくはない。だからベッドに入って目を閉じるのだが、眠れない。
ドアが閉まる音がしないのもイベリスがベッドに入ってこないのも理由の一つではあるが、一番大きな理由は部屋に入ったときに見たイベリスの表情。
時折、イベリスは静かすぎる日がある。いつでも賑やかに感じるのに、怖いほど静かな瞬間を持っている。夜は特にそうだ。目を離せば消えてしまうのではないかと思うような静寂。ロベリアにはなかったものだ。
夜は嫌いだと言っていた。色が消えてしまうからと。そう言いながらも今、彼女は夜に浸っている。自らの足で夜に入り、空を見上げている。いや、消えた色の中で見つけた光を見ている。
音のない世界で生きてきたイベリスにとって夜は色さえも奪ってしまうから嫌いだった。だが、その中に見つけた光はとても美しく見えたのかもしれない。昼間の世界がとても美しいんだと笑ったように。
「星座には詳しいのか?」
ベッドから出て向かうはテラス。羽織っていたローブをイベリスの肩からかけて柵に肘をつく。同じ物を見上げながら問いかけてようやくイベリスがペンを持った。
〈そんなに詳しくない。あれが夫婦星だって事は知ってる〉
「俺は他にも少し知っているぞ」
〈例えば?〉
「あれが──」
必要ないと思っていた教養だが、初めて役に立った。空を彩る星を指差しながら語り部のように口を動かすファーディナンドはイベリスを柵と自分の間に入れて同じ場所で星座を見せる。自分がどれのことを言っているのかわかってほしかったのではない。彼女が、イベリスがここから消えてしまわないようにと守るようにそうしていた。
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