12 / 190
妻の変化
しおりを挟む
髪を切った日からイベリスは少し変わった。
「皇妃の態度はまるでロベリア前皇妃が戻ってきたようですね! あれだけ興味がなかった歴史にこんなにも興味を持つだなんて誰が想像できたことでしょう!」
嫌がっていた歴史の授業中に欠伸をすることはなくなり、質問までするようになった。家庭教師のアーシャルは大喜びだが、サーシャは違った。
〈何故急に意欲を持たれたのですか?〉
イベリスが歴史の授業を嫌がっていること誰よりも知っていたサーシャがテーブルの上にティーセットを並べたあとにメモ帳に書いて問いかけるとイベリスはまだ空のティーカップを見つめる。熱い紅茶が入ったティーポットへ手を伸ばすも、サーシャが先に蒸らすためのカバーをかけてしまった。
〈もう少し待ってください〉
イベリスは頬を膨らませるもすぐに笑顔に変わる。
〈アーシャル先生に何か言われた?〉
〈いいえ、アーシャル先生は大喜びでしたよ。あれだけ興味がなかった皇妃がこんなにも真面目になるなんて、と〉
〈アーシャル先生は書いてくれないから何を言ってるかわからなかったけど、そんなことを言ってたのね〉
アーシャルはいつも少し優しさが足りない。耳が聞こえないからと黒板にビッシリと書くくせに皇妃への言葉を書くことはしない。サーシャが三度頼んでみたが、授業にお喋りは必要ないと一蹴されて終わった。
イベリス自身はあまり気にしていないのか、アーシャルが何を言っているのか、何を言ったのか問いかけることはしなかったし、これからもしないだろう。だからサーシャも諦めている。
〈お父様が言ったことを思い出したの。やりたいことは全部やればいい。やってダメなら仕方ないけど、やってもないことを先入観で嫌って遠ざけるのはあまりにも惜しい。やれそうだなって自分が思ったら折れるとこまでやればいい、って〉
イベリスが好奇心旺盛な理由がわかったとサーシャが頷く。
〈私ね、とことんって得意じゃないの。あれもこれも手を出すけど全部中途半端。最初はすごく熱心にするのよ。でも途中で飽きちゃうの。最初は面白かったのになぁって勝手に飽きてるのにまるでそれに面白味がなくなったみたいに思っちゃう。飽きたって言うと両親はダメだったかって笑ってくれて……甘やかしてくれる両親にずーっと甘えてた。だけど、私は両親から離れてテロスの皇妃になった。ただの伯爵令嬢から皇妃になったのに好きだからやる、嫌いだからやらないなんて通用しちゃいけないんじゃないかって考え直したってだけ〉
〈立派です〉
〈悔いのないように生きたいの。結構なんでも楽しいって思える性格だから、人生が終わるときも楽しかったって、最高の人生だったって思えるような生き方をしたいから……大嫌いな歴史もちゃんとやろうって。あんまり入ってないんだけどね〉
ペロッと舌を出して笑うイベリスらしい笑い方にサーシャは安堵した。人が変わったように思う瞬間が何度か合ったから、髪を切って変わってしまう何かがあったのではないかとずっと不穏な推測が回り続けていた。
皇妃になったからと意識を変えるのは良い傾向だと喜びさえ覚える。
指先でペンを回しながら空いている手でサンドイッチを取って頬張るイベリスに合わせてカップに紅茶を注ぐ。フルーツティーの香りに犬のように鼻を鳴らして香りを嗅いでからそーっと飲む。
〈今日は私の大好きな物ばかりね。どうして?〉
〈歴史の授業を真面目に受けられているご褒美です〉
〈ご褒美だ! あと何回受けられるかな?〉
〈頑張り続ける限り何度でもご褒美はありますよ〉
〈じゃあたくさん頑張らないと〉
あとでポットの中の桃を食べたいとソーサーからカップを外して、ここに乗せるようペンでをソーサーを叩いて行儀悪く指示を出す。それではご褒美はあげられないと言うとペンを置いた右手を立て、顔の前で頭と一緒に手を下げた。
それを見て合格を出したサーシャがポットの中から桃を取り出してソーサーに乗せる。小皿があるのだが、イベリスの指示に従った。
〈あったかい桃って意外と美味しいって知らなかった〉
〈リンベルも寒い国なのに知らないとは意外です〉
〈どうして思いつかなかったのかしら?〉
〈果汁が弾けたり滴る感じはなくなってしまいますからね。生のフルーツを使う紅茶には賛否ございます〉
〈生じゃなかったら何を使うの?〉
〈乾燥させた物を使う地域もあるそうですよ〉
〈生のほうが絶対美味しい〉
〈グラキエスも生なので私は賛成です〉
サーシャとは住んでいる国がそう遠くないのもあって話が合う。博識で、話をしているだけで知らない知識をたくさん与えてくれる。だからティータイムは必ずサーシャも一緒にするようにと命じている。軽食はイベリスがサーシャの皿に盛らなければ絶対に食べることはしないため時折イベリスが皿に置く。一緒にティータイムを取り始めた頃は遠慮していたが、イベリスが一緒に食べてくれると嬉しいと言ってからは一緒に食べるようになった。イベリスは今でもこの時間が一番好きだ。
楽しげに笑うイベリスにサーシャが聞いた。
〈髪を切ったのは陛下のためですか?〉
ますますロベリアに似てしまったイベリスに問わずにはいられなかった。
ロベリアのことはなんとも思っていない。会ったこともない死者に嫉妬もしなければ嫌悪もない。笑顔が素敵な人だからきっと良い人だったと思うとまで言っていたが、それでもロベリアにはなりたくないとも言っていた。髪を切れば本当にロベリアになってしまいそうで嫌だと。
そう言っていたイベリスが突然髪を切った理由が小説の中の登場人物に触発されたから、では納得できなかった。
〈似合ってない?〉
図星を突かれた人間というのは話を逸らすか黙り込むか強く否定するかのどれか。イベリスは話を逸らした。
慌てて駆けつけた美容師に髪を整えられる姿をずっと傍で見ていたサーシャはその瞬間のイベリスの表情が忘れられない。覚悟を決めたような、でもどこか諦めたようにも見える表情。鏡越しに目が合えば笑顔になるその複雑な表情は触発されて切った人間の表情ではない気がしている。
〈変わりたかったの〉
〈嫌だと言っていたではありませんか〉
〈でも、こうすることが一番だと思ったから〉
〈あなたは充分に魅力的な女性ですよ。髪を切って陛下の理想どおりにならなくても時間がそれを証明してくれます〉
(時間……)
時間が解決してくれたらどんなにいいだろう。三年後には、五年後には仲良くなって本当の夫婦のように仲睦まじく過ごせていたら、この結婚にも意味があったと思えたのかもしれない。
だけど、時間はもう一年しかない。いや、結婚してから既に一ヶ月経った。もう一年もない。
苦笑がこぼれるイベリスにやはり理由は別にあると確信したサーシャが言った。
〈私は何があろうとイベリス様の味方です。イベリス様とこうしてお話した内容は全て他言無用。誰にも話しません。陛下にさえも〉
〈ありがとう。サーシャって本当に優しいのね。大好きよ〉
〈私もです〉
だが、イベリスが心の内をサーシャに話すことはしなかった。
壁にかかっている肖像画のロベリアも写真立ての中にいるロベリアも、目の前にいる人物ではないはずなのにサーシャでさえロベリアが戻ってきたのではないかと思ってしまうほどよく似ている。あれだけ反抗し続けてきたのに、今になって自ら似せる道を選んだ理由がサーシャは知りたかった。
〈今日も明日も頑張らないとね〉
〈あまりご無理はなさらないようにしてくださいね。勉強はあまり得意ではないようですから〉
〈難しい言葉が苦手なだけよ。もっと簡単に、動物に教えるように説明してくれれば私だってすぐに覚えるはずよ。歴史に難しい言葉は必要ないのに、どうして人間は小難しい言葉ばっかり並べて偉そうに語るのかしら?〉
〈では明日、アーシャル先生にもう少し簡単に話すよう言ってみましょうか〉
〈きっと驚いた顔のあとに呆れを見せるわ。歴史を簡単に話せなど歴史の冒涜も同然!とか言ってね〉
中指でメガネの端を持ち上げながら激昂するアーシャルの真似はとてもよく似ていた。無邪気に笑うイベリスに合わせて笑うサーシャの中には消えない一抹の不安がある。
イベリスのこの無邪気さが、いつか消えてしまうのではないだろうかという漠然とした不安。それはファーディナンドが望むように全てロベリアへと変わってしまう可能性からくるもの。
見た目から入ったイベリスの中にはもはやファーディナンドへの抵抗は見られず、むしろ受け入れようとしているようにさえ見える。だからこそ不安だった。
彼女の良さが全て消え、内外共にロベリアと見間違うほどになってしまったら、と。
イベリスが嫁に来る少し前、サーシャはファーディナンドから言われていた。
『一年だ。一年でロベリアと見間違うほどの皇妃教育を完成させろ』と。
あの圧力をイベリスもかけられたのだとしたら髪を切ったことへの納得もいく。二人で笑顔で過ごしている日もあるが、結局はイベリスにロベリアの面影を重ねているから笑顔になれるだけ。ファーディナンドが見ているのはイベリスではなくロベリア。
あまりにも辛いその現実に、サーシャは笑顔でペンを走らせながら左手は強く拳を握っていた。
「皇妃の態度はまるでロベリア前皇妃が戻ってきたようですね! あれだけ興味がなかった歴史にこんなにも興味を持つだなんて誰が想像できたことでしょう!」
嫌がっていた歴史の授業中に欠伸をすることはなくなり、質問までするようになった。家庭教師のアーシャルは大喜びだが、サーシャは違った。
〈何故急に意欲を持たれたのですか?〉
イベリスが歴史の授業を嫌がっていること誰よりも知っていたサーシャがテーブルの上にティーセットを並べたあとにメモ帳に書いて問いかけるとイベリスはまだ空のティーカップを見つめる。熱い紅茶が入ったティーポットへ手を伸ばすも、サーシャが先に蒸らすためのカバーをかけてしまった。
〈もう少し待ってください〉
イベリスは頬を膨らませるもすぐに笑顔に変わる。
〈アーシャル先生に何か言われた?〉
〈いいえ、アーシャル先生は大喜びでしたよ。あれだけ興味がなかった皇妃がこんなにも真面目になるなんて、と〉
〈アーシャル先生は書いてくれないから何を言ってるかわからなかったけど、そんなことを言ってたのね〉
アーシャルはいつも少し優しさが足りない。耳が聞こえないからと黒板にビッシリと書くくせに皇妃への言葉を書くことはしない。サーシャが三度頼んでみたが、授業にお喋りは必要ないと一蹴されて終わった。
イベリス自身はあまり気にしていないのか、アーシャルが何を言っているのか、何を言ったのか問いかけることはしなかったし、これからもしないだろう。だからサーシャも諦めている。
〈お父様が言ったことを思い出したの。やりたいことは全部やればいい。やってダメなら仕方ないけど、やってもないことを先入観で嫌って遠ざけるのはあまりにも惜しい。やれそうだなって自分が思ったら折れるとこまでやればいい、って〉
イベリスが好奇心旺盛な理由がわかったとサーシャが頷く。
〈私ね、とことんって得意じゃないの。あれもこれも手を出すけど全部中途半端。最初はすごく熱心にするのよ。でも途中で飽きちゃうの。最初は面白かったのになぁって勝手に飽きてるのにまるでそれに面白味がなくなったみたいに思っちゃう。飽きたって言うと両親はダメだったかって笑ってくれて……甘やかしてくれる両親にずーっと甘えてた。だけど、私は両親から離れてテロスの皇妃になった。ただの伯爵令嬢から皇妃になったのに好きだからやる、嫌いだからやらないなんて通用しちゃいけないんじゃないかって考え直したってだけ〉
〈立派です〉
〈悔いのないように生きたいの。結構なんでも楽しいって思える性格だから、人生が終わるときも楽しかったって、最高の人生だったって思えるような生き方をしたいから……大嫌いな歴史もちゃんとやろうって。あんまり入ってないんだけどね〉
ペロッと舌を出して笑うイベリスらしい笑い方にサーシャは安堵した。人が変わったように思う瞬間が何度か合ったから、髪を切って変わってしまう何かがあったのではないかとずっと不穏な推測が回り続けていた。
皇妃になったからと意識を変えるのは良い傾向だと喜びさえ覚える。
指先でペンを回しながら空いている手でサンドイッチを取って頬張るイベリスに合わせてカップに紅茶を注ぐ。フルーツティーの香りに犬のように鼻を鳴らして香りを嗅いでからそーっと飲む。
〈今日は私の大好きな物ばかりね。どうして?〉
〈歴史の授業を真面目に受けられているご褒美です〉
〈ご褒美だ! あと何回受けられるかな?〉
〈頑張り続ける限り何度でもご褒美はありますよ〉
〈じゃあたくさん頑張らないと〉
あとでポットの中の桃を食べたいとソーサーからカップを外して、ここに乗せるようペンでをソーサーを叩いて行儀悪く指示を出す。それではご褒美はあげられないと言うとペンを置いた右手を立て、顔の前で頭と一緒に手を下げた。
それを見て合格を出したサーシャがポットの中から桃を取り出してソーサーに乗せる。小皿があるのだが、イベリスの指示に従った。
〈あったかい桃って意外と美味しいって知らなかった〉
〈リンベルも寒い国なのに知らないとは意外です〉
〈どうして思いつかなかったのかしら?〉
〈果汁が弾けたり滴る感じはなくなってしまいますからね。生のフルーツを使う紅茶には賛否ございます〉
〈生じゃなかったら何を使うの?〉
〈乾燥させた物を使う地域もあるそうですよ〉
〈生のほうが絶対美味しい〉
〈グラキエスも生なので私は賛成です〉
サーシャとは住んでいる国がそう遠くないのもあって話が合う。博識で、話をしているだけで知らない知識をたくさん与えてくれる。だからティータイムは必ずサーシャも一緒にするようにと命じている。軽食はイベリスがサーシャの皿に盛らなければ絶対に食べることはしないため時折イベリスが皿に置く。一緒にティータイムを取り始めた頃は遠慮していたが、イベリスが一緒に食べてくれると嬉しいと言ってからは一緒に食べるようになった。イベリスは今でもこの時間が一番好きだ。
楽しげに笑うイベリスにサーシャが聞いた。
〈髪を切ったのは陛下のためですか?〉
ますますロベリアに似てしまったイベリスに問わずにはいられなかった。
ロベリアのことはなんとも思っていない。会ったこともない死者に嫉妬もしなければ嫌悪もない。笑顔が素敵な人だからきっと良い人だったと思うとまで言っていたが、それでもロベリアにはなりたくないとも言っていた。髪を切れば本当にロベリアになってしまいそうで嫌だと。
そう言っていたイベリスが突然髪を切った理由が小説の中の登場人物に触発されたから、では納得できなかった。
〈似合ってない?〉
図星を突かれた人間というのは話を逸らすか黙り込むか強く否定するかのどれか。イベリスは話を逸らした。
慌てて駆けつけた美容師に髪を整えられる姿をずっと傍で見ていたサーシャはその瞬間のイベリスの表情が忘れられない。覚悟を決めたような、でもどこか諦めたようにも見える表情。鏡越しに目が合えば笑顔になるその複雑な表情は触発されて切った人間の表情ではない気がしている。
〈変わりたかったの〉
〈嫌だと言っていたではありませんか〉
〈でも、こうすることが一番だと思ったから〉
〈あなたは充分に魅力的な女性ですよ。髪を切って陛下の理想どおりにならなくても時間がそれを証明してくれます〉
(時間……)
時間が解決してくれたらどんなにいいだろう。三年後には、五年後には仲良くなって本当の夫婦のように仲睦まじく過ごせていたら、この結婚にも意味があったと思えたのかもしれない。
だけど、時間はもう一年しかない。いや、結婚してから既に一ヶ月経った。もう一年もない。
苦笑がこぼれるイベリスにやはり理由は別にあると確信したサーシャが言った。
〈私は何があろうとイベリス様の味方です。イベリス様とこうしてお話した内容は全て他言無用。誰にも話しません。陛下にさえも〉
〈ありがとう。サーシャって本当に優しいのね。大好きよ〉
〈私もです〉
だが、イベリスが心の内をサーシャに話すことはしなかった。
壁にかかっている肖像画のロベリアも写真立ての中にいるロベリアも、目の前にいる人物ではないはずなのにサーシャでさえロベリアが戻ってきたのではないかと思ってしまうほどよく似ている。あれだけ反抗し続けてきたのに、今になって自ら似せる道を選んだ理由がサーシャは知りたかった。
〈今日も明日も頑張らないとね〉
〈あまりご無理はなさらないようにしてくださいね。勉強はあまり得意ではないようですから〉
〈難しい言葉が苦手なだけよ。もっと簡単に、動物に教えるように説明してくれれば私だってすぐに覚えるはずよ。歴史に難しい言葉は必要ないのに、どうして人間は小難しい言葉ばっかり並べて偉そうに語るのかしら?〉
〈では明日、アーシャル先生にもう少し簡単に話すよう言ってみましょうか〉
〈きっと驚いた顔のあとに呆れを見せるわ。歴史を簡単に話せなど歴史の冒涜も同然!とか言ってね〉
中指でメガネの端を持ち上げながら激昂するアーシャルの真似はとてもよく似ていた。無邪気に笑うイベリスに合わせて笑うサーシャの中には消えない一抹の不安がある。
イベリスのこの無邪気さが、いつか消えてしまうのではないだろうかという漠然とした不安。それはファーディナンドが望むように全てロベリアへと変わってしまう可能性からくるもの。
見た目から入ったイベリスの中にはもはやファーディナンドへの抵抗は見られず、むしろ受け入れようとしているようにさえ見える。だからこそ不安だった。
彼女の良さが全て消え、内外共にロベリアと見間違うほどになってしまったら、と。
イベリスが嫁に来る少し前、サーシャはファーディナンドから言われていた。
『一年だ。一年でロベリアと見間違うほどの皇妃教育を完成させろ』と。
あの圧力をイベリスもかけられたのだとしたら髪を切ったことへの納得もいく。二人で笑顔で過ごしている日もあるが、結局はイベリスにロベリアの面影を重ねているから笑顔になれるだけ。ファーディナンドが見ているのはイベリスではなくロベリア。
あまりにも辛いその現実に、サーシャは笑顔でペンを走らせながら左手は強く拳を握っていた。
139
お気に入りに追加
901
あなたにおすすめの小説
それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~
柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。
大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。
これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。
※他のサイトにも投稿しています
[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜
日向はび
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」
二人は再び手を取り合うことができるのか……。
全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。
window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。
「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。
関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。
「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。
「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。
とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
え?婚約破棄したのに何故貴方の仕事を手伝わなければならないんですか?
水垣するめ
恋愛
主人公、伯爵家のエリカ・オーブリーは伯爵令息のサミエル・ドワーズと婚約していた。
婚約した十歳の頃、サミエルの性格は優しく、それに加えて頭も良かった。
そしてサミエルは学園に入ると伯爵家としては異例の、生徒会役員として王子の側近に加えられることとなった。
しかし側近になった途端、サミエルは豹変した。
「自分は選ばれた人間だ」と自画自賛をし、反対に「お前はノロマだ」とエリカを馬鹿にした。
日に日にサミエルの暴挙はヒートアップしていき、ついには生徒会の仕事を全て主人公に任せるようになった。
当然、エリカは最初は断った。
しかしサミエルの評判が悪くなるとエリカのオーブリー家まで被害を被るので我慢して仕事をするしか無かった。
エリカはずっとサミエルの仕打ちに耐え続けた。
だが、ある日サミエルはエリカに婚約破棄を突きつける。
婚約破棄を突きつけられたエリカは完全にサミエルを見放すことにし、サミエルの仕事も全て手伝わないことにした。
そしえエリカに完全に仕事を任せきっていたサミエルは破滅の道を歩んでいくことになる……。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる