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リアーヌ劇場

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「リリー様ぁ!」
「ご、ごきげんよう皆様。どうなさいました?」
「ずっと心配しておりました!」
「ご心配をおかけして申し訳ありません」

 リリーの姿を見て駆け寄って来てくれる女子生徒の泣きつきに驚きが隠せず困った顔でいたリリーを何者かが急に腕を引っ張ってどこかへ連れて行く。

「ちょっとおいでなさい!」
「リアーヌ様⁉」

 誰だと確認するまでもなくリアーヌだった。
何事だとリリー同様驚いている周りの目など気にすることなく引っ張り続けていたが、急に足が止まった。

「リリー・アルマリア・ブリエンヌ」

 唐突に呼ばれた名前にリリーは怪訝な顔つきで前を覗き込むとゲッと言葉を漏らしながら更に顔を歪めた。

「フランソワ様。あのパーティー以来ですわね」
「ごきげんよう、リリー様」
「ええ、ごきげんよう。今度はフランソワ様に取り入る事に成功しましたのね。さすが。媚びるのが得意な下民は違いますわね」

 フランソワの少し後ろに隠れて挨拶をするエステル。
フランソワの前ではあるが、久しぶりに口にする人を見下す言葉を吐く瞬間の悪役令嬢っぽさに震えそうになった。

「媚び公爵と名高い父親を持つ貴女が言えたことではないと思うけど?」
「わたくしとお父様は何も関係ありませんもの。お父様がどうであれわたくしはわたくしの思いのままに発言しているだけですわ」
「……何か、性格が……変わられ、ました……? 以前お会いした時とは別人のような……」

 戸惑うフランソワに笑顔だけ返す。

 ———でしょうね。

「エステルに聞きましたけれど、彼女を貧民だと差別しているそうですわね?」
「エステル?」

 フランソワの呼び方に引っ掛かりを覚えたのはフランソワがエステルを呼び捨てにしたから。呼び捨てにするなどまるで使用人を呼んでいるようでリリーは眉を寄せた。

「わたくしたち、お友達になりましたのよ。ねえ、エステル」
「はい、フランソワ様!」
「……お友達、ね」

 表情を見るからにして友達とは縁遠い関係だとわかる。上下関係は作る前から出来ているのだ。
 プライドの塊で人を見下す事で自尊心を満たすような人間が救済枠の人間を〝友達〟という枠に入れてやるはずがない。何より、フランソワは『エステル』と呼び捨てにするのにエステルはフランソワを『フランソワ様』と呼ぶ。
身分が違うのだから当然かもしれないが〝友達〟と呼ぶには違和感しかなかった。

「これからはわたくしの友人に対して敬意を払ってくださる? それからわたくしの友人への無礼を今ここで謝罪していただけませんこと?」
「……ふふふっ」
「何がおかしいんですの?」

 フランソワの言葉に目を瞬かせていたリリーが突如笑い始めた。

「敬意なんて言葉を知っていらしたとは驚きですわね」
「何ですって?」

 フランソワの声が一段低くなり不機嫌を滲ませる。

「失礼ですけど、わたくしは公爵家の娘。あなたはその下の侯爵家の娘。それなのにわたくしはあなたに敬意を払っていただいた事がないものですから、てっきり敬意というものを知らない方なのだとばかり思っていましたの。だから言葉だけでも知っていたことに驚いていますわ」
「なっ!」

 嘲笑うような表情と共に放つ嫌味にフランソワの顔は火がついたように赤くなった。
周りにはまだ人がいる。
リリーが戻ってきたというだけでも注目されているのに、リリーと対峙しているのがあのプライドの塊で有名なフランソワ・ウィールズとあっては皆、足を止めて野次馬根性で集まり始めていた。

「こ、媚び公爵の娘に何故敬意を払わなければいけませんの?」
「もうお忘れのようですからもう一度言ってさしあげますけど、お父様が媚び公爵と呼ばれているからといって、それはわたくしには何の関係もないこと。それに、媚び公爵であろうと公爵の爵位に違いありませんわ。あなたがどんなに気位の高さを見せようとわたくしより上になれないのと同じ」
「~~~~~ッ!」

 父親が媚び公爵だからその娘には敬意を払わなくてもいいという理由は通用しない。爵位は絶対であり重んじるべきルールだ。それを父親がアレだからと見下して娘にまで敬意を払わないのは違う。だからリリーも打って出る。フランソワがそのつもりならこっちも同じような対応をするまで。
笑顔で受け入れるのは悪役令嬢のすることではないと自分に言い聞かせた。

「ノーブレス・オブリージュというものをお忘れのようですわね」

 顔は真っ赤なままだが、態度だけ落ち着かせて挑発のような言い方で問いかけてきた。

「もちろん知っていますわ」

 ノーブレス・オブリージュ———高貴な者には社会・道義的な義務が伴うという意味で、リリーはそれを幼い頃、クロヴィスから教わった。

「もちろん? ハッ、よくもまあそんな嘘を堂々と!」

 フランソワお得意の嘲笑。向けられたのは初めてだが、パーティーで数えきれないほどその様は視界に入ってきていた。

 ———確かにムカつく。

「最近の貴女の行動は貴族、それも公爵の爵位を持つ身としてはあまりに恥のないものだと聞いていますわ。貧しい出でありながらも自分の人生を変えようと必死に努力して救済枠を勝ち取ったエステルの方が貴族に相応しいのではなくて? 彼女の努力を認めたくない貴女は出身ばかり責めてみっともない。わたくしたち貴族には余裕があるでしょう。お金も時間も生活も、その余裕があるからこそ人に優しくなれるはずですのに貴女は違いますのね。わたくしたちが手本とすべき方がおっしゃられていたでしょう? 貴族として、持てるものは与えなくては。お金も、優しさも。ジュラルド王とオレリア王妃のお言葉ですわ」
「……」
「あら、ありがとう皆さん」

 まるで演説のように声高らかに話すフランソワは学園という舞台の上で見事に侯爵の地位を持つ者として善人を演じきった。中には拍手をする者もいて本当の女優のように笑顔で手を振っていた。

「お言葉ですけど———」
「オーッホッホッホッホッホッホ!」

 リリーがまたツッコミどころ満載の言葉に嫌味で返そうと口を開いた時、拍手を飲み込むほどの大きな笑い声が響き渡った。

「な、何を笑ってるのよ!」
「素晴らしい偽善者っぷりに笑いが止まりませんわ。ホンット、あなたって口ばっかりの頭の悪いクソ女」

 リアーヌの言葉に場が凍り付いた。悪役令嬢仲間と言っても過言ではないほどそれらしい性格をしているリアーヌだが、彼女も貴族。そのリアーヌの口から飛び出した『クソ女』という暴言。拍手は止み、皆が合わせたように同じ顔をしていた。

「余裕があるからこそ人に優しくなれるですって? それが本当ならフランソワ・ウィールズはあまりにも余裕がない人間という事になるわね」
「何ですって⁉」
「だってそうでしょう? 優しさなんてこれっぽっちも持ち合わせてないじゃない。ああ、ごめんなさい。訂正するわ。自分にだけ優しく出来るのよね。自分にだけ甘いフランソワ・ウィールズ」
「黙りなさいよ! 今はあなたと話をしているわけじゃないのよ!」
「持てるものは与えなくては? お金も時間も? あはははははははっ! これが一番傑作! 自分のためにしかお金を使わない、人のためにお金も時間も使った事なんてないくせに笑わせないでよ!」

 リアーヌの発言にフランソワはまた顔を赤くして怒っていた。リリーに向けたような貴族令嬢気取りではなく、どこにでもいる少女のような口調でリアーヌにかかっていった。
 勢いのある足音、それに合わせて振り上げられる手。リアーヌもリリーもそれが何をするためなのかすぐにわかった。だがリアーヌは目を瞑ることも構えることもせず強い眼光をフランソワに向けている。何をしているんだと焦っているのはリリーだけで、慌ててリアーヌの前に飛び出すも目を閉じたリリーが痛みを感じる事はなかった。

「……フレデリック!」
「あ、ああっ……」

 フランソワの手はフレデリック・オリオールの手によって止められていた。
 傍にはクロヴィス・ギー・モンフォール、セドリック・オリオールも一緒だった。

「女同士のいざこざに男が割って入るのはルール違反かもしれないが、暴力は認められない」

 静かな声で淡々と言葉を述べる護衛時のフレデリックにリリーはホッとしていたが、フランソワは明らかに焦っていた。

「ち、違うんですのよ……! こ、これはただの口喧嘩で!」
「口喧嘩と言う割には手を振り下ろそうとしているように見えたが?」
「こっこれは! わ、わたくし違いますの! こんなことするような女じゃありませんの! げ、幻滅しないでくださいませ!」

 ———ん? これは……

 フランソワの反応にリリーはリアーヌに感じた時の違和感に固まった。

「フレデリック様!」
「おっと……リアーヌ嬢、怪我はないか?」
「フレデリック様が助けてくださいましたから」

 リアーヌが動いたと思ったらフレデリックの腕の中に飛び込んでいた。それを受け止めたフレデリックがポンポンと軽く背中を叩いて無事を確認するもリアーヌは離れない。
 リアーヌはフレデリックに好意があって、リリーはそれを応援するつもりだった。しかし、自分の応援などなくても積極的に身体を寄せる事が出来る便乗力があるのであれば問題ないと言葉も出なかった。

「でも……とても怖かったんです。彼女がリリー様を貴族としての心得も知らない恥知らずと責め立てるのでわたくし我慢できなくて言い返してしまったんです。わたくしの言い方が悪かったのは事実ですが……手を上げようとするなんてっ」

 ———さすがすぎる……

 何より驚いたのはフランソワがリリーを責めた事、そして自分はそれに腹を立てて我慢できずに口汚く言い返した非を認めた事、そしてその最後にちゃっかりフランソワはそれに対して口ではなく手を上げようとしたと流れを作ったこと。
 目も逸らさなかったリアーヌの口から『怖かった』という言葉が出るとは思ってもいなかった。
 ましてこの展開、相手を悔しがらせるためにか弱い女を演じて身を寄せるという王道の悪役令嬢。

真似できないと思った。

「リリー嬢も怪我はないか?」
「ええ、フレデリック様が止めてくださったおかげで」
「……」

 リリーの傍によって声をかけたクロヴィスは返事に不思議そうな顔を浮かべる。

「何か?」
「その喋り方はどうした?」

 ———やっぱり無理。

「王子への敬意の表れだとお考えください」

 今まで何度もこの話し方をして、何度か指摘もしただろうにそれを忘れているクロヴィスに浮上もしていない心がスッと更に深い場所まで落ちていくのを感じていた。

「クロヴィス様」

 ———出た、ヒロイン(仮)め……

「フランソワ様は私のために言ってくださっただけなんです」

 悪者にされそうな友人を庇う正統派を見せつけるエステルを観察するリリーは瞬きをしない。

「何故自分で言わないんだ?」
「な、悩みを相談したらフランソワ様が言ってくださるとおっしゃられて……」
「自分の問題は自分で解決すべきではないのか?」

 クロヴィスの意見は尤もで、フレデリックの腕の中でリアーヌも頷いていた。

「わ、私が何か言おうとするとリリー様はいつも酷い事をおっしゃるんです。貧民と差別を口にされて、そしていつも私を見下すんです……ッ」
「エステルがどれほど傷ついているか、王子はご存じないでしょう? 彼女は繊細で傷つきやすく壊れやすい。誰かが守ってあげなければ生きていけませんのよ!」

 反王族派のフランソワらしい行動。フレデリックに背を向けてクロヴィスの前に立てば自分を大きく見せようと胸を張って大きな声を出す。エステルをこれでもかというほど持ち上げては背中を押してクロヴィスに押し付ける。それに逆らわず胸に身を寄せるエステルは喜びに似た小さな笑みを浮かべていた。辛いんだと泣きながら訴えるようなか弱い乙女には見えなかった。

「リリーは確かにいつの間にか差別を口にするようになったが、それでも話せばわかる人間だ」

 ———庇わなくていいからっ!

「クロヴィス様はご存じないのです! リリー様はクロヴィス様の前では良い顔をされますが、クロヴィス様のお姿が見えなくなると途端に人が変わられたように酷い事ばかり……」

 大きな瞳に溢れる光る涙。あれをリリーが真似しようとしても到底無理な話。

「ちょっと、わたくしがいつクロヴィス様の前で良い顔をしたと? 作り話も大概にしてくださらない? ホント、その小さな口からよくそれだけ大きな嘘が出てきますわね。あなたにとって嘘は呼吸と同じなのかしら?」

 嘘をついて誰かを貶めようとする女も、自動高笑い機能を備え付けられた女も、典型的な貴族令嬢も悪役令嬢としての言動に不自然さがない。何故なりたい自分よりも何もしていない周りの方がずっと悪役令嬢っぽいのかと焦ったリリーは声を大にしながら嫌味を口にする。口元に手を当てれば後は高笑いをするだけなのに高笑いが出てこない。

「……ひどい! 私、嘘なんてついてません!」
「あなたがそれなりの爵位の貴族にばかり声をかけていると耳にしていますわよ」

 リアーヌの言葉にエステルの肩が一瞬微動した。

「仲良くしようと声をかけてくださった方がそういうお方だというだけで、そんな方ばかりというのは心外です……!」

 もう少し寄っていたい欲を抑えて身体を離したリアーヌがエステルの前に行っては無礼にも王子の胸を押してエステルを引き剥がした。

「では先日のサロンでの出来事はどう説明なさるおつもり?」
「あれは……」
「サロン?」

 まずいという顔を見せるエステルにリリーは自分の知らない間に何が起こったのかとリアーヌを見た。

「先日、ここのサロンで開かれたお茶会に彼女も出席したんですの。このフランソワ・ウィールズに連れて来られたという言い訳をぶら下げてね。貴族だけのお茶会のはずだったのに。まあ、そこは彼女達も淑女ですから何も言いはしませんでしたけど、快くは思っていなかったはずですわ。そんな中でもコレット様はエステル嬢にお声をかけて差し上げたのです。彼女はとても優しい方ですから」
「あれは違うんです!」
「お茶会は初めて?と気遣ってくれた相手に彼女はどうしたと思います? なんとビックリ。『ええ』とだけ返事を返して他の方に声をかけたんですの。それも伯爵の娘にばかり。もう驚いてしまって驚いてしまって。さすがフランソワ・ウィールズなんかと手を組むだけはありますわよね」

 エステルの言い訳の言葉も聞かずにリアーヌが続けた言葉の中身にヒソヒソと話していた周囲も思わず口を閉じた。
 驚いているのだ。

「コレット嬢が男爵家の娘だからあのような態度を取られたのでしょう?」
「違います! そんなことあるわけないじゃないですか! コレット様はシャイな方だと聞いていたので私なんかに気を遣わせてはと思っただけです!」

 エステルの必死の釈明は場をザワつかせた。

「そのシャイな方がわざわざ貴女に話しかけてくださったのに『ええ』という返事しかしなかったあなたは彼女に恥をかかせた自覚がないようですわね」
「そんなつもりは…!」
「男爵は戦力として弱いからかしら?」
「男爵、子爵の人間には声をかけず、伯爵と侯爵の人間にだけ声をかけていたのは偶然だとでも? だとしたらすごい鼻ですわね。うちの犬より鼻が利くのではなくって?」

 たたみかけるような勢いで間を開けずに話すリアーヌにエステルは黙り込んだ。顔を赤くしながら小さく震え、公衆の面前で女だけの世界の内情を暴露された事に対して怒りを感じているように見えた。

「フランソワ様! フランソワ様からも説明してください!」
「……わたくし、覚えていませんわ。他の方と話していましたもの」
「そんな———」

 また場がザワついた。
 フランソワが逃げたのは内情を知らない者にでもわかっただろう。暫く黙り込んでいる間にエステルを庇って自分にとって得になるかどうかを考えたのだろう。
 そして庇わない事を決めた。だが、非難もしなかった。
 一番汚いやり方だとリリーは顔をしかめる。

「コレット嬢は確かにあの中では爵位の低い方ではありましたけど、誰よりも心優しく皆が尊敬している方ですわ。それをあなたはそこの恥知らずの女と一緒にいることで自分まで侯爵の地位を手に入れた気にでもなっているのではなくて?」
「違います……」
「それほどまでに権力を持った味方が欲しいのであれば馬鹿な男達を手玉に取って結婚でもしてはいかが? そうすれば夫人と呼ばれますわよ。男爵、いえ、準男爵夫人。あなたにはもったいない響きでしょうけど、爵位は手に入りますわよ」

 リアーヌを舞台に立たせると誰も他に立つことが出来ない。共演者でさえ観客のように眺めているしか出来なくなるのだ。何とか自分が悪役令嬢の役をと思っていたリリーでさえ黙って観客となって拍手を送る準備しか出来なかった。

「私はそんな人間じゃありません! クロヴィス様信じてください!」
「……もしお前にそんなつもりがなかったとしても、その返事に彼女は傷ついただろうな」
「わ、私は……」
「謝罪の手紙を送るといい」

 縋りつくエステルの肩を掴んで離すと直接会って、ではなく手紙という判断をしたクロヴィスにリリーは頷いた。

「ああ、それから」
「ッ」

 まだあるのかとエステルが肩を跳ねさせる。

「コレット嬢はシャイなのではなく、控えめなだけですわ。あなたと違ってね」
「———ッ!」
「オーッホッホッホッホッホッホ!」

 逃げ出すように走り去ったエステルに聞かせるように大声で完璧な高笑いを披露したリアーヌに男達は苦笑を浮かべるしか出来なかった。


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