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心機一転の計画
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「これはなんでしょう?」
「これは……」
近代化が進むハイデンは見る物全てが目新しく、古きを大事にするビバリーよりもずっと観光客は多い。どこを見ても人に溢れていて、快適に歩くのは不可能。自分が行く市場でも人が多いと思っていたのだが、あそこは快適に買い物ができる場所だったのだと日常の買い物状況をありがたくすら思うほど。
店に入っては電子と呼ばれる物に二人で首を傾げる。店主からの説明を受けてもまず森に近しい場所で暮らす二人にとって“電子”と呼ばれる物の知識も情報も入っていないため理解が追いつかず苦笑するばかり。店主は客のそんな様子に慣れているのか大笑いする者ばかり。
「難しいですね」
「そうですね。でも、僕達の理解が追いつかないほどの発達は素晴らしいですよ」
「この国の知恵や知識が世界中に広がれば世界はもっと発展するのでしょうね」
「僕は少し怖いですけど、ね」
怖いという単語が出てくると思っていなかったアーデルが見上げるのは苦笑するラビの表情。
「なぜ怖いのですか?」
便利になるのは良い事だとアーデルは思うが、ラビはそうでもないと考えている。
「人と簡単に連絡が取れるようになるのは怖くないですか?」
「そう、でしょうか? 便利だと思いますよ? 緊急時など手紙を書いても届くのに数日かかりますし、あの“電話”とかいうのがあれば今よりずっと簡単に連絡が取れると言いますし」
ハイデンには既に“電話”と呼ばれる通信機器が開発されていた。火を灯すランプではなく“電気”なるものを発明し、それによって国内での即時連絡を可能としていると。手紙を書かずとも相手の声が聞けるのはとても便利だとアーデルは思った。ラビが戦争に行った際、どこからか電話をしてくれれば声が聞けるのだから。相手が綴った字を読むのも好きだが、やはり声が聞きたくなるから家に電話が引かれたらいいとすら思っていた。
浮かない顔をするラビの手を引いて流れから外れて店先の軒下に寄る。
「何を考えているのですか?」
アーデルの問いにラビが言いづらそうにしながらも口を開いた。
「……もし、誰とでも簡単に連絡が取れるようになったら……ココさんと電話するのではないかと……思って……」
電話が世界中に引かれれば電話ぐらいするのではないかと首を傾げるもアーデルはハッとした。これは俗に言う“嫉妬”という感情なのではないだろうかと。自分がシャンディに嫉妬したように彼もココとの関係に嫉妬しているのではないかと。キュンとしたと言ったら怒られるだろうか。わざわざ言う必要はないだろうが、彼が嫉妬してくれているのだとしたらと考えるとニヤついてしまう。
「ど、どうして笑うのですか?」
「す、すみません。嬉しくて……」
緩む口元を手で隠すよりもラビが見るほうが早かった。申し訳ないと謝りはするが、表情まではすぐには戻せず感情が出たまま。
「う、嬉しい、ですか?」
「嫉妬させるような言動は妻として良くない事なのでしょうが、嫉妬してもらえるのは嬉しいなって思ってしまって……不謹慎ですよね、すみません」
「ぼ、僕が勝手に嫉妬してしまっただけなんです! 僕がシャンディと会っていた時間に比べたらあなたがココさんと会っていた時間なんてほんの僅かなのに僕はそれさえも受け止められない器の小さい男で……」
昨夜、愛していると言ってもらえた。それに続いてそれを証明するような嫉妬というワードがより一層彼への気持ちを加速させる。抱きしめたい。でも往来での行動としてはみっともないと自制して手を両手で握るだけにした。
「私もシャンディさんに嫉妬していましたから同じです」
「あなたがシャンディに? 嫉妬するとこあります?」
「あなたはシャンディさんが相手だととても楽しそうに話すので」
シャンディだけが唯一何でも話せる相手だと言っていただけに彼が心を許している相手だと知ってはいた。結婚したての頃は気にもならなかったが、相手を好きだと自覚してからはどんどん強くなっていく嫌悪感に悩む事もあった。幼馴染なのだから仕方ないと何も言えず我慢するしかなかった。
「何とも思っていないんだと思っていました」
驚いた顔をするラビに苦笑するアーデルがかぶりを振る。
「口にしなかっただけです。あなたが唯一心を許せる相手なのに妻というだけでその関係に制限を持たせていいのかと……。でも結局は持たせてしまいましたけど」
シャンディの事はなるべく考えないようにしていたが、あれからどうしているのだろうと思い出す時間は存在する。自殺未遂をしたばかりの人間にあの仕打ち。使用人は憎んでいるだろう。付きっきりとなり目を離す事もできなくなってしまった状態なのは容易に想像がつく。
どうする事が正しかったのか、今も正解は出ないでいる。自分が出る幕ではなかったのではないか、ラビに決着をつけさせるべきだったのではないか。色々考える。だが、やってしまった以上はこれが最善だと思うしかない。どれだけ丁寧に説明したところでシャンディは絶対に納得しなかっただろうから。
考え込む表情で黙り込んだアーデルの手をキュッとラビが握り返すとアーデルの顔が上がる。
「どこか、カフェにでも入りませんか?」
「あ、はい。お腹空きましたか?」
「少し。昨日食べたケーキは消化してしまいましたから」
「じゃあ今日は大口開けて食べられる物を探しましょうか」
昨日は上品に食べていたラビにとってあの食事は物足りなかっただろう。いつもは大口を開けて食べるラビのために今日はサンドイッチやパスタもいいかもしれないとレストランを探して歩き始める。
旅行先での食事は現地の人におすすめを聞くのが一番だと言うラビはどこかの店ではなく、昨日のケーキ屋に向かった。
「お、昨日の兄ちゃんかい。その子が嫁さんだな」
「き、昨日は本当にありがとうございました! あんなに素敵なケーキを用意していただいて、差額分お支払いします!」
笑顔が呆れた顔に変わるまで一瞬だった。ショーケースに頬杖をついて呆れた様子でラビを見る店主が溜息と共に首を振る。
「あれは俺が勝手にやった事だ。兄ちゃんの熱意と愛情を感じて、俺も久しぶりにケーキ作りに熱が入っちまった。最近じゃあ予約してケーキを買う奴も少なくなっちまってな。貴族は専属のパティシエがいるし、市民は売ってるケーキを買う。誰かのためのケーキって言葉は久しぶりに聞いたんだよ。ハイデンじゃあ機械化が進んで自宅でケーキを焼けるようにもなっちまってな、余計にケーキ屋を頼る人間が減っちまった。寂しいもんよ」
「で、でもあれは……」
「果物は鮮度が命だ。傷んじまうぐらいなら兄ちゃんのケーキに使ってやろうと思ってしただけの事よ。美味かっただろ?」
「す、すごく美味しかったです!二人で無我夢中で食べました」
「はっはっはっはっはっは! そりゃよかった!」
満足げに笑う店主がアーデルを見た。
「最高の誕生日だったか?」
「お腹いっぱいケーキを食べたのは初めてでした。どこを食べても瑞々しい果物の食感があって、クリームよりも果物のほうが甘くて驚きました」
「果物が甘いからクリームの甘さは控えめにしてんだ。クリームまで甘いんじゃあ早々に飽きちまうだろ?」
「はい。だからお腹いっぱい食べる事ができました」
「なら今日も買ってくか? ハイデンにあったあのケーキ屋のケーキは最高だった。また食べたいって思わせるような最高のケーキ作ってやるぜ」
店主の言葉に二人は顔を見合わせて笑う。商売上手だと。そう言われては断るに断れない。だから二人は店主を見て同時に頷いた。
「旅先にハイデンを選んでよかった。だってあんなに美味しいケーキが食べられたからといつまでも思い返せるようなケーキをお願いします」
ショーケースに並んでいるケーキを完売する事すらできない昨今、店主はパティシエという仕事に誇りを持てなくなっていた。丹精込めて作ったケーキは売れ残り、毎日毎日従業員に持って帰れと言うわけにもいかない。今日も持って帰れと言われるのではないかと辟易されては困るから捨てなければならない。
昔は良かった。ハイデンがここまで発展する前は誕生日だ結婚記念日だなんだと大勢の人間がケーキの予約に走った。でも昨今、そんな光景は滅多に見ない。どこのケーキ屋も客を勝ち取る戦争状態。店主はそれに参加するつもりはなかった。競うための安い価格設定も良すぎる食材を使うのも無理を科すことになる。だから今までどおり変わらず作って、ダメなら閉める。そう考えていた。
ラビのおかげで久しぶりに楽しいケーキ作りができたと感謝する店主はアーデルの注文に親指を立てて受注した。
「これは……」
近代化が進むハイデンは見る物全てが目新しく、古きを大事にするビバリーよりもずっと観光客は多い。どこを見ても人に溢れていて、快適に歩くのは不可能。自分が行く市場でも人が多いと思っていたのだが、あそこは快適に買い物ができる場所だったのだと日常の買い物状況をありがたくすら思うほど。
店に入っては電子と呼ばれる物に二人で首を傾げる。店主からの説明を受けてもまず森に近しい場所で暮らす二人にとって“電子”と呼ばれる物の知識も情報も入っていないため理解が追いつかず苦笑するばかり。店主は客のそんな様子に慣れているのか大笑いする者ばかり。
「難しいですね」
「そうですね。でも、僕達の理解が追いつかないほどの発達は素晴らしいですよ」
「この国の知恵や知識が世界中に広がれば世界はもっと発展するのでしょうね」
「僕は少し怖いですけど、ね」
怖いという単語が出てくると思っていなかったアーデルが見上げるのは苦笑するラビの表情。
「なぜ怖いのですか?」
便利になるのは良い事だとアーデルは思うが、ラビはそうでもないと考えている。
「人と簡単に連絡が取れるようになるのは怖くないですか?」
「そう、でしょうか? 便利だと思いますよ? 緊急時など手紙を書いても届くのに数日かかりますし、あの“電話”とかいうのがあれば今よりずっと簡単に連絡が取れると言いますし」
ハイデンには既に“電話”と呼ばれる通信機器が開発されていた。火を灯すランプではなく“電気”なるものを発明し、それによって国内での即時連絡を可能としていると。手紙を書かずとも相手の声が聞けるのはとても便利だとアーデルは思った。ラビが戦争に行った際、どこからか電話をしてくれれば声が聞けるのだから。相手が綴った字を読むのも好きだが、やはり声が聞きたくなるから家に電話が引かれたらいいとすら思っていた。
浮かない顔をするラビの手を引いて流れから外れて店先の軒下に寄る。
「何を考えているのですか?」
アーデルの問いにラビが言いづらそうにしながらも口を開いた。
「……もし、誰とでも簡単に連絡が取れるようになったら……ココさんと電話するのではないかと……思って……」
電話が世界中に引かれれば電話ぐらいするのではないかと首を傾げるもアーデルはハッとした。これは俗に言う“嫉妬”という感情なのではないだろうかと。自分がシャンディに嫉妬したように彼もココとの関係に嫉妬しているのではないかと。キュンとしたと言ったら怒られるだろうか。わざわざ言う必要はないだろうが、彼が嫉妬してくれているのだとしたらと考えるとニヤついてしまう。
「ど、どうして笑うのですか?」
「す、すみません。嬉しくて……」
緩む口元を手で隠すよりもラビが見るほうが早かった。申し訳ないと謝りはするが、表情まではすぐには戻せず感情が出たまま。
「う、嬉しい、ですか?」
「嫉妬させるような言動は妻として良くない事なのでしょうが、嫉妬してもらえるのは嬉しいなって思ってしまって……不謹慎ですよね、すみません」
「ぼ、僕が勝手に嫉妬してしまっただけなんです! 僕がシャンディと会っていた時間に比べたらあなたがココさんと会っていた時間なんてほんの僅かなのに僕はそれさえも受け止められない器の小さい男で……」
昨夜、愛していると言ってもらえた。それに続いてそれを証明するような嫉妬というワードがより一層彼への気持ちを加速させる。抱きしめたい。でも往来での行動としてはみっともないと自制して手を両手で握るだけにした。
「私もシャンディさんに嫉妬していましたから同じです」
「あなたがシャンディに? 嫉妬するとこあります?」
「あなたはシャンディさんが相手だととても楽しそうに話すので」
シャンディだけが唯一何でも話せる相手だと言っていただけに彼が心を許している相手だと知ってはいた。結婚したての頃は気にもならなかったが、相手を好きだと自覚してからはどんどん強くなっていく嫌悪感に悩む事もあった。幼馴染なのだから仕方ないと何も言えず我慢するしかなかった。
「何とも思っていないんだと思っていました」
驚いた顔をするラビに苦笑するアーデルがかぶりを振る。
「口にしなかっただけです。あなたが唯一心を許せる相手なのに妻というだけでその関係に制限を持たせていいのかと……。でも結局は持たせてしまいましたけど」
シャンディの事はなるべく考えないようにしていたが、あれからどうしているのだろうと思い出す時間は存在する。自殺未遂をしたばかりの人間にあの仕打ち。使用人は憎んでいるだろう。付きっきりとなり目を離す事もできなくなってしまった状態なのは容易に想像がつく。
どうする事が正しかったのか、今も正解は出ないでいる。自分が出る幕ではなかったのではないか、ラビに決着をつけさせるべきだったのではないか。色々考える。だが、やってしまった以上はこれが最善だと思うしかない。どれだけ丁寧に説明したところでシャンディは絶対に納得しなかっただろうから。
考え込む表情で黙り込んだアーデルの手をキュッとラビが握り返すとアーデルの顔が上がる。
「どこか、カフェにでも入りませんか?」
「あ、はい。お腹空きましたか?」
「少し。昨日食べたケーキは消化してしまいましたから」
「じゃあ今日は大口開けて食べられる物を探しましょうか」
昨日は上品に食べていたラビにとってあの食事は物足りなかっただろう。いつもは大口を開けて食べるラビのために今日はサンドイッチやパスタもいいかもしれないとレストランを探して歩き始める。
旅行先での食事は現地の人におすすめを聞くのが一番だと言うラビはどこかの店ではなく、昨日のケーキ屋に向かった。
「お、昨日の兄ちゃんかい。その子が嫁さんだな」
「き、昨日は本当にありがとうございました! あんなに素敵なケーキを用意していただいて、差額分お支払いします!」
笑顔が呆れた顔に変わるまで一瞬だった。ショーケースに頬杖をついて呆れた様子でラビを見る店主が溜息と共に首を振る。
「あれは俺が勝手にやった事だ。兄ちゃんの熱意と愛情を感じて、俺も久しぶりにケーキ作りに熱が入っちまった。最近じゃあ予約してケーキを買う奴も少なくなっちまってな。貴族は専属のパティシエがいるし、市民は売ってるケーキを買う。誰かのためのケーキって言葉は久しぶりに聞いたんだよ。ハイデンじゃあ機械化が進んで自宅でケーキを焼けるようにもなっちまってな、余計にケーキ屋を頼る人間が減っちまった。寂しいもんよ」
「で、でもあれは……」
「果物は鮮度が命だ。傷んじまうぐらいなら兄ちゃんのケーキに使ってやろうと思ってしただけの事よ。美味かっただろ?」
「す、すごく美味しかったです!二人で無我夢中で食べました」
「はっはっはっはっはっは! そりゃよかった!」
満足げに笑う店主がアーデルを見た。
「最高の誕生日だったか?」
「お腹いっぱいケーキを食べたのは初めてでした。どこを食べても瑞々しい果物の食感があって、クリームよりも果物のほうが甘くて驚きました」
「果物が甘いからクリームの甘さは控えめにしてんだ。クリームまで甘いんじゃあ早々に飽きちまうだろ?」
「はい。だからお腹いっぱい食べる事ができました」
「なら今日も買ってくか? ハイデンにあったあのケーキ屋のケーキは最高だった。また食べたいって思わせるような最高のケーキ作ってやるぜ」
店主の言葉に二人は顔を見合わせて笑う。商売上手だと。そう言われては断るに断れない。だから二人は店主を見て同時に頷いた。
「旅先にハイデンを選んでよかった。だってあんなに美味しいケーキが食べられたからといつまでも思い返せるようなケーキをお願いします」
ショーケースに並んでいるケーキを完売する事すらできない昨今、店主はパティシエという仕事に誇りを持てなくなっていた。丹精込めて作ったケーキは売れ残り、毎日毎日従業員に持って帰れと言うわけにもいかない。今日も持って帰れと言われるのではないかと辟易されては困るから捨てなければならない。
昔は良かった。ハイデンがここまで発展する前は誕生日だ結婚記念日だなんだと大勢の人間がケーキの予約に走った。でも昨今、そんな光景は滅多に見ない。どこのケーキ屋も客を勝ち取る戦争状態。店主はそれに参加するつもりはなかった。競うための安い価格設定も良すぎる食材を使うのも無理を科すことになる。だから今までどおり変わらず作って、ダメなら閉める。そう考えていた。
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