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ただいま

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ティファニーが家に戻ってきたのは一ヵ月が経った後だった。
まだ後遺症続くティファニーは車椅子生活から脱せず、家族が出迎える玄関までクリストファーに押されていた。

「ただいま戻りましたわ」
「おかえりティフィー!」
「おかえりなさい」

 アビゲイルが泣きそうに顔を歪めながら抱きしめる。その温もりに目を細めながら抱きしめ返すティファニーの視界に入ったのは既に号泣しているアーロンの姿。

「アーロン、ただいま」
「おがえり~!」
「汚い顔してないで拭きなさい」
「ごめん~!」

 ポケットからハンカチを取り出して泣きじゃくるアーロンに手を伸ばすと強すぎる力で握られる。
 この一か月半、アーロンは毎日手紙をくれていた。心配の言葉。帰ってきたらやること。思い出と毎日便せん十枚にびっしり書かれていた。
 よくこれだけ書くことがあるなと感心するほどで、ティファニーは書く返事に毎日困っていた。

「クリストファー王子、この度は娘ティファニーの治療に尽力いただき何とお礼を申し上げていいか……」
「僕がしたくてした事です。伯爵への連絡が後回しになってしまいましたこと、お詫び申し上げます」
「頭を上げてください。王子に頭を下げられては私は地に頭をつけなければならなくなってしまいます」

 アルバートなら土下座もやりかねないと苦笑しながら頭を上げるクリストファーはそのままアーロンに近付いた。

「僕がいない間、君に彼女のお世話を頼んでもいいかな?」
「人をペットか何かのようにおっしゃるのはやめていただけませんこと?」

 ティファニーの文句に笑いながらアーロンを見つめると驚いた顔をしていた。

「もちろんです」

 ティファニーへの気持ちを知りながらも何も疑わずに任せてくれるクリストファーにアーロンは叶わないと思った。
 コンラッドに話せば「お前の気持ちを知りながら任せるのは牽制も含まれてるはずだ」と言うだろうがアーロンはそうは感じなかった。
 嫌味な人間であればティファニーが身を任せるはずがないのだ。
 分け隔てなく優しい男。アーロンもそう感じていた。コンラッドだけが『怪しい男』と言い続けている。

「ワガママ言わないで良い子にしてるんだよ?」
「ぶっ飛ばしますわよ」
「また会いに来るから」
「ええ」

 ティファニーの暴言を笑顔で流して額に口付けると家族に頭を下げてそのまま帰っていった。

「おかえりティフィー。心配してたのよ」
「ごめんなさい。でももう大丈夫ですわ」
「クリストファー王子にお礼をしなければならないな」
「伯爵家が王族に出来るお礼ってなんですの?」

 不気味なほどニヤついた笑みを向けてくる父親に嫌な予感しかせず、聞いたことを後悔しつつあった。

「クリストファー王子が求めるお前を差し出すことだ」
「娘をお礼に差し出すなんて時代錯誤なことあちらが喜ばれると思ってますの?」
「少なくとも王子は喜んでくれるだろう」

 適当な事を言うなと言いたいものの事実、クリストファーは結婚を望んでいる。それはティファニーも同じで、彼と結婚したいと思っている。
 この一ヵ月でその思いはずっと強くなった。

「今そんな話はやめてよ。今はティファニーの身体が元気になるのが先よ」
「また歩けるようになるの?」
「ええ。今も歩けないわけではありませんのよ? ただ少し麻痺が残っているので大袈裟に車椅子に乗ってるだけですの。彼、意外と口うるさくて」
「独占欲が強い男は口うるさいものよ。ね、アーロン?」
「ぼ、僕は口うるさくないよ!」
「どうかしら?」

 久しぶりに感じる家族の雰囲気は以前よりずっと明るくなった気がして嬉しかった。
 からかうアビゲイル、焦るアーロン、それを静かに笑うパトリシア、寄り添う両親。
 マレニスに居て不自由を感じる事は一切なかった。いつだってクリストファーが気遣ってくれていたおかげで寂しさも感じずに済んでいた。だが、こうして家族を目の前にすると家族が恋しかったのだと実感する。

「明日から学校に戻りますわ」
「もう少しゆっくりしたら? コンラッド王子が留年の心配はしなくていいと言ってくれたのよ」
「もうジッとしてるのは飽き飽きですの。アーロンに迷惑かける事にはなるけど、学校へ行きたいの」
「僕はいいよ! 任せて!」

 
アーロンが車椅子を押すことになるため自分だけの判断で強行するのは、と躊躇もあったが、コンラッドにお礼を言わなければならないというのもあって学校へ行く事を決めた。

「クリストファー王子が心配するわよ」
「彼にはもう言ってありますの」
「止められなかった?」
「傍に居られないのに君を止める資格はないとおっしゃっていましたわ」

 実にクリストファーらしい言葉だと皆が頷く。
 遠く離れているだけに心配はアーロン以上だろうが、傍にいる事も出来ないのに束縛だけするような男ではないと皆納得して同じタイミングで頷いていた。

「パティお姉様、少しお話してもよろしくて?」
「ええ、もちろんよ」

 ずっと気になっていたパトリシアに声をかけるとパトリシアが車椅子を押してくれる。アーロンに手を振って別れ、玄関ホールに入って驚いた。

「こ、れは……?」
「車椅子のまま上まで上がれるのよ。あなたのためにってお父様がね」
「わ、わたくしのために……?」
「ええ」

 マレニスの病院で見た車椅子のまま階段を上がる装置が家の階段にも設置されていた。何故これがと問う前にパトリシアが説明してくれたものの信じられなかった。あのケチな父親が自分のために何かしてくれるなど幼い頃から想像したこともなかっただけに驚きが隠せず父親を見るとどこか照れたような面持ちでゴホンと咳払いをした。

「クリストファー王子に必要だと言われたからな。それだけだ」

 そうではないと直感するのは父親の癖があるから。父親は照れた時にいつも頬を掻く。それも妻に対してだけ見せるもので、ティファニーは直接見たことはない。ただ、母親がいつも嬉しそうにそう話してくれたから今がそうなのだと気付いた。

「ありがとうございます、お父様」
「使ってみて使ってみて!」

 アビゲイルが車椅子を押して階段の前まで行くとティファニーは不慣れな形で車椅子を動かしながら機械に背を向けると背もたれについている何かに機械が自動でドッキングし、そのままゆっくりと上に上がり始める。
 病院で初めて経験した時は怖かったが、今はすっかり慣れたもの。見慣れた光景で味わうのは変な感じだが、それでも周りの手を煩わせることなく一階と二階を移動できるのは嬉しかった。

「すごーい! ハイテク!」

 一番喜んでいるのはアビゲイルで、その姿はまるで無垢な少女のように見えた。

「行きましょうか」

 階段を上がってきたパトリシアがもう一度車椅子を押して部屋へと連れて行く。何を話すのか、大体の予想はついているのだろう。一度振り返って見たパトリシアの表情は少し固かった。

「アシェル先生とはその後なにか進展はありましたの?」

 部屋に入ってすぐ直球をぶつけたティファニーにパトリシアは苦笑する。

「いきなりね」
「ずっと気になっていましたの。わたくしは手紙を渡しただけですもの。嬉しそうにしていたアシェル先生が頭から離れませんわ」
「罵倒が書かれてるかもしれないのに嬉しそうにするなんて……」

 ティファニーもそれは思ったが、パトリシアをまだ愛している証拠だろうとも思った。でなければあんな嬉しそうな顔はしない。手紙を開けて絶望の可能性も考えず、パトリシアからの手紙というだけで嬉しかったのだ。
 ティファニーがパトリシアをよく知っているように、リーヌス・アシェルもまたパトリシアを知っている。それこそティファニーが知らないパトリシアのことも知っているのだから手紙で文句を伝えるような女ではないと嬉しくなったのだ。

「返事はありましたの?」

 言葉に詰まるパトリシアにティファニーは手を伸ばす。

「わたくしに遠慮しているのならやめて」

 パトリシアが何を考えているのかティファニーにはお見通しだった。毒を飲んで危険な状態に陥った妹がいるのに自分だけ幸せを手に入れるわけにはいかないと断り続けていたのだろう。それがいかに愚かなことであるかパトリシアに知ってほしかった。

「お姉様は今もアシェル先生を愛しているのでしょう?」

 小さく頷くパトリシアにティファニーは破顔する。

「じゃあ伝えましょう、その想い」
「で、でも……」
「でも、だってはナシですわ。お姉様が結婚していないの妹のわたくしが一番に結婚だなんてありえませんのよ。お姉様が結婚してくださらなければわたくしの結婚もないままですわ」
「そんな。そんなルールないんだから結婚すればいいのよ」
「いいえ。ヘザリントン家のルールですわ」

 父親は既に諦めているためそんなルールを口にする人間はいなくなったが、昔はそんなルールがあった。父親からすれば誰が先でも構わないと思っているだろう。それなりの地位を持った人間の所に嫁いでくれるのであれば。
 そういう点ではパトリシアの結婚が一番難しいとは思う。しかし、それもアビゲイルとティファニーで猛抗議すれば何とかなりそうで、今の状況から考えればティファニー一人でも認めさせることが出来るかもしれないと自信があった。

「パティお姉様はアビーお姉様と違ってあちこち行ける方ではないのですから」
「あちこち行けるお姉様がお茶を持ってきてあげたわよ」
「ッ!」

 ギクッと肩を跳ねさせて振り返ると満面の笑みを浮かべたアビゲイルが立っていた。

「ち、違いますのよ? 悪口のつもりで言ったわけではありませんの。アビーお姉様はあちこちに男性がいるでしょう? でもパティお姉様はアシェル先生をまだ愛していますの。その気持ちに決着をつけずに他の男性に行くというのは無理だという話をしていただけで……そ、その……」

 紅茶をテーブルに並べるアビゲイルに言い訳のようにつらつら言葉を吐き出すティファニーに向かって仁王立ちのように腕を組むとティファニーの唇がへの字に曲がる。

「ご、ごめんなさい……」

 泣き出しそうなティファニーに噴き出したアビゲイルがしゃがんで抱きしめると『冗談よ』と優しい声で囁き、髪に口付ける。

「奔放な姉でごめんね」
「それがアビーお姉様の魅力ですわ」
「ふふっ、そうね」

 伯爵家の娘としては到底認められる行いではないが、パトリシアやティファニーにとってアビゲイルはそういう人間と理解しているため批判や軽蔑はない。むしろそれをやめた時は病気になった時だと思っているため奔放でいてくれる方が安心だった。

「パティ、前に進むためには船に繋いだロープを切らなきゃならない。いつまでもロープを繋いでいては船は進まないのよ。一人で乗るか、二人で乗るか。決めるのはあなたよ」
「私は……」

 結果は見えている。心は繋がっているのだ。たった一つの障害さえクリア出来れば二人は幸せになれるのだ。

〝父親が教師を娘の結婚相手として認める〟ということ。

 パトリシアもそこを心配しているため戸惑っている。
 臆病なリーヌス・アシェルが伯爵からの批判に怯えてパトリシアを拒むのならティファニーは二度とリーヌスと口を利かないと決めていた。姉の事を聞く事さえ許さないと。

「駆け落ちでもしちゃえば?」
「え……?」
「正直に言えば私もあの教師は気に入らない。臆病で保身に走る傾向にあるから。でも、今もフリーってことは理由がある。そこにアンタが関わってないとは思えないのよね」
「わ、わたくしもですわ! 気に入りませんけど、でも、アシェル先生のあの顔を見れば、わかりますもの」

 臆病が故に一度逃げたのであれば二度目はない事ぐらいリーヌスもわかっているはず。それをわからずもう一度繰り返すのであればそれで全ておしまいになるだけ。
 姉には幸せになってほしい。いつまでも想い続けて内に籠るのではなく、アビゲイルが言うようにもし二人が想い合っているのであれば駆け落ちでもすればいいと賛成の意を見せた。

「……話してみる」
「私がついてってあげようか?」
「アビーが来るとあの人が怖がるわ」
「そういうとこが情けないのよね」

 アビゲイルの威圧的な態度はリーヌスでなくとも怯えると苦笑を浮かべて言葉は飲み込んだ。

「ねえ、ティファニー」
「はい」
「アーロン貰ってもいい?」
「はえっ!?」

 唐突すぎる言葉に上擦った声が出たティファニーは本気で口から心臓が飛び出しそうだった。
 ありえない事だと言いきれるだけに何故そんな事を言うのか聞きたいのに驚きのあまり言葉が出てこない。

「だってあの子可愛いんだもの」
「え……っと……」

 イエスともノーとも言えずに戸惑うティファニーは思わず視線を逸らして口を横一線に引っ張る。
 アーロンはクリストファーとの仲を認めてくれている。故に相応しい男になりたいとか、そういう事は言わなくなった。
ティファニーしか見えていなかったアーロンに魔の手が伸びているとパトリシアはティファニーを見て小さく首を振る。

「な、何故アーロンなんですの?」
「いつの間にかイケメンになってるし、一途だし、何よりあの子はよく出来たイイ男よ」

 ティファニーもそれはわかっている。いつだって損得考えずに人を優先できるイイ男だ。それをティファニーが友人にしか見られなかっただけで誰からも好かれる男に育っていた。
 男が途絶えるどころか増え続けているアビゲイルが大勢いる男達の中からアーロンを欲しがってくれたのは嬉しかった。しかし……

「それは出来ませんわ」
「アーロン一人に絞ると言っても?」

 ティファニーの考えを読んだかのように追加で聞こえた言葉はまたティファニーを驚かせた。
 多夫一妻制になるまで結婚はしないと豪語していたアビゲイル・ヘザリントンが男を一人に絞ると言い出すのはもはや病気としか思えず、ティファニーは慌ててパトリシアを見た。パトリシアも同じで、アビゲイルに化けた他の誰かなのではないかと疑っていた。

「アーロンは純粋なのよ?」
「私が汚れてるとでも言いたいの?」
「清くはない」
「女は何度抱かれてもキレイなの。見てよ、この美しさ。汚れてる?」
「上手く隠せてる」
「ちょっと!」

 珍しく毒舌なパトリシアにティファニーが笑えば二人に眉を寄せるアビゲイル。

「わたくしのものではないのでわたくしが決める事ではありませんわ。もし、お姉様が本気でアーロンを好きだと思っているのならアーロンに伝えるべきですわ」
「伝えたのよ?」
「え? も、もう?」
「ええ。でも断られちゃった。自分の幸せはティファニーの幸せを見終わってから考えたいからって」

 バカと言いたくなるほど真っ直ぐな男にティファニーは首を振る。
いつ幸せになったっていい。いつだって自分の幸せを考えればいいのにアーロンはそうしない。愚かなほどティファニーを愛しているのだ。
それに答えられない申し訳なさに眉を下げながらゆっくり息を吐き出す。

「じゃあやっぱりパティお姉様に早く結婚していただくしかありませんわね」
「急かさないで」
「私の結婚もかかってるんだからね」

 今まで一番望みがないと思われていたパトリシアにかけられた重圧に眉を寄せながら背中を向ける姿にアビゲイルが後ろから抱きしめた。

「皆で幸せになるの」
「でもお父様が反対しないティファニーから先にすればいいと思う」
「ティファニーは相手が相手だから準備に時間がかかるわ。壮大な結婚式になるんだものね、ティフィー……あら?」

 座ったまま眠ってしまっているティファニーの姿に微笑むアビゲイルとパトリシアは互いに人差し指を立て合い、そっとベッドまで運んだ。
 幾度となく見ていたはずのティファニーがベッドに眠る姿を懐かしいと思うほどこの一か月半という月日は二人にとって長く寂しいものだった。
 ようやくいつも通りに近い日常が戻ってきた事に安堵した二人は左右の頬にそれぞれキスを落として愛しい妹の傍に暫く寝転んでいた。

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