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15話 恋愛証明でお仕事
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…………恋、人…………?
…………え………………?
「最後に、僕と恋人になるべき理由をお話しします」
画面が切り替わる。
『《皇 秀英と恋人になるべき理由》
一.キルコさんが僕に望むことがなんでもできるようになる。
二.将来的にもキルコさんの満足する生活をおくることができる。
三.普遍的な関係性の保障により大きな安心感を抱くことができる』
「一つ目は、現在キルコさんが僕に望んでいることより多くのことを僕が叶えられるようになる、ということです。恋人でなければできないことも可能になりますから」
ごくっ……。今より……! み、魅力的……!
「二つ目については、まだ正確な進路は決まっていませんが、僕は必ず研究者になります。実家もあるので、必ず就職できます。お望みなら実家の株も相談していくらかお渡ししますし、経済面でキルコさんを不安にさせることはありません」
え? 仕事、辞めていい?
「最後ですが……」
皇は、小さな咳払いをした。
そして、今までになく真剣なまなざしで、私をまっすぐに見た。
「――僕は、キルコさんを永遠に愛することを誓います。僕の気持ちは、絶対に変わりません。恋人になったら、その関係は、死ぬまで解消しません。
以上を踏まえて、キルコさんの僕への感情と、僕との関係について、検討をお願いします」
…………。
…………私は、何を聞かされたのだろう。
皇が、私を…………?
いや、というか……私と皇が、恋人……?
そもそも――私が皇を、恋愛的感情で好き……?
違う。
私の皇への感情が、恋愛感情なわけがない。
たしかに皇が言ったことは正しいと思うところもある。緋王様への感情とは違う――推しの定義からはみ出す気持ちもたくさんある。
それでも私は、皇を推している。この感情は推しへの愛だ。
でも、恋人にならないと言ったらどうなるのだろう。
私と皇の関係は? 距離は?
ここまで築いてきたものが崩れるかもしれない。仕事に支障をきたすかもしれない。恐れが胸に広がる。
だとしたら、恋人になるのが正しいのでは?
よりいっそう近い距離で、油断をさせて、皇の魂を狩ることができるかもしれない。
……だけど。
だけど、私は。
私の、気持ちは…………。
「――……私の気持ちは、恋愛感情では、ありません。
私にとって、皇さんは、推しです。
だから、これからも、この関係でありたい。それでは、だめでしょうか」
顔を、上げられなかった。皇の顔を見ることができなかった。
皇の手が、視界の端に映っていた。開いていた大きな手がゆっくり閉じていく。血管が浮き出るほど、強く、こぶしを握りしめている。なにかに耐えるように。
ただ、それを見ているだけなのに、胸が痛い。目が熱い。
どうしてだろう。
きゅっと唇を噛む。
「…………分かり、ました。
検討いただき、ありがとうございました」
今にも消えそうな皇の声に、息ができなくなった。
私も、いつのまにかこぶしを握っていた。
…………え………………?
「最後に、僕と恋人になるべき理由をお話しします」
画面が切り替わる。
『《皇 秀英と恋人になるべき理由》
一.キルコさんが僕に望むことがなんでもできるようになる。
二.将来的にもキルコさんの満足する生活をおくることができる。
三.普遍的な関係性の保障により大きな安心感を抱くことができる』
「一つ目は、現在キルコさんが僕に望んでいることより多くのことを僕が叶えられるようになる、ということです。恋人でなければできないことも可能になりますから」
ごくっ……。今より……! み、魅力的……!
「二つ目については、まだ正確な進路は決まっていませんが、僕は必ず研究者になります。実家もあるので、必ず就職できます。お望みなら実家の株も相談していくらかお渡ししますし、経済面でキルコさんを不安にさせることはありません」
え? 仕事、辞めていい?
「最後ですが……」
皇は、小さな咳払いをした。
そして、今までになく真剣なまなざしで、私をまっすぐに見た。
「――僕は、キルコさんを永遠に愛することを誓います。僕の気持ちは、絶対に変わりません。恋人になったら、その関係は、死ぬまで解消しません。
以上を踏まえて、キルコさんの僕への感情と、僕との関係について、検討をお願いします」
…………。
…………私は、何を聞かされたのだろう。
皇が、私を…………?
いや、というか……私と皇が、恋人……?
そもそも――私が皇を、恋愛的感情で好き……?
違う。
私の皇への感情が、恋愛感情なわけがない。
たしかに皇が言ったことは正しいと思うところもある。緋王様への感情とは違う――推しの定義からはみ出す気持ちもたくさんある。
それでも私は、皇を推している。この感情は推しへの愛だ。
でも、恋人にならないと言ったらどうなるのだろう。
私と皇の関係は? 距離は?
ここまで築いてきたものが崩れるかもしれない。仕事に支障をきたすかもしれない。恐れが胸に広がる。
だとしたら、恋人になるのが正しいのでは?
よりいっそう近い距離で、油断をさせて、皇の魂を狩ることができるかもしれない。
……だけど。
だけど、私は。
私の、気持ちは…………。
「――……私の気持ちは、恋愛感情では、ありません。
私にとって、皇さんは、推しです。
だから、これからも、この関係でありたい。それでは、だめでしょうか」
顔を、上げられなかった。皇の顔を見ることができなかった。
皇の手が、視界の端に映っていた。開いていた大きな手がゆっくり閉じていく。血管が浮き出るほど、強く、こぶしを握りしめている。なにかに耐えるように。
ただ、それを見ているだけなのに、胸が痛い。目が熱い。
どうしてだろう。
きゅっと唇を噛む。
「…………分かり、ました。
検討いただき、ありがとうございました」
今にも消えそうな皇の声に、息ができなくなった。
私も、いつのまにかこぶしを握っていた。
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