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8話 銃撃でお仕事

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 リン、と電話の音が聞こえた。
 ハデスめ。いい気分の時に……。しかも、こんな朝っぱらに!
 だが、出ないわけにもいかない。またここに来られては余計面倒だ。
 仕方ない、仕事モードに切り替えるか……。
 10回目のベルで、ようやく私はワインの瓶の中から黒電話を引き上げ、受話器を取った。

「おはようございます、ハデス」

『おはよう、キル・リ・エルデ。昨晩、標的の魂を届け忘れなかった? この後来られそう?』

 相変わらず意地の悪い……。湧き上がる怒りを飲み込んで、えほんと咳ばらいをした。

「本日も誠心誠意努めてまいります。必ずお届けしますので、お待ちください」

『毎日頑張るね。それでも狩れないのには、何か理由があるのかな?』

「特にありません。しばしお待ちください」

 受話器を置こうとして、はたとした。

「……一つお伺いしたいのですが。死神を見ることができる人間の存在に、前例はありましたか」

『西洋でも東洋でも聞いたことがないよ。そんな存在がいたら大問題だ。一秒でも早く魂を狩らないと』

「分かりました、ありがとうございます」

 今度こそ受話器を置いて、私はため息をついた。

 ウィルスに罹った皇の元へ行ったとき、皇は、本来目にできるはずのない死神姿の私を見つめた。
 本当に見えていたのか? 見えていたとしたら、なぜ?
 それを知れば、資料にあった「死神の姿で遠距離から仕掛けた攻撃も回避した」という理由も分かるだろう。
 皇が学校に来次第、調べてみるか。
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