スノウ・ホワイト

ねおきてる

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17.

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光は一軒の小屋でした。


屋根も壁もすべてが木で作られて、玄関の前には壊れかけた古いゆり椅子がありました。


「ごめんください。」


2、3度ドアを叩き中にそう呼びかけても、応える声はありません。


すりガラスから漏れる光はとても温かく、転んで滑って雑巾のようにズタボロになったわたくしは、自身との落差にぶるり体を震わせました。


「ごめんください。」


再びそう呼びかけても中から声はありません。


屋根には煙突が取り付けられてポッポと煙を吐き出します。


思わずそっとドアを開けると、中から包み込むような光が盛大にもれました。


小さな小さな椅子やテーブル、飾りのついたかわいい戸棚、食器は行儀よく並べられ、ふわり食事のにおいがしました。


どうやら主は留守なようでした。


暖炉はとろとろ薪が燃え、食卓や玄関のかわいいランプが温かく部屋を照らします。


何だか今まで感じたことが無い優しい家庭のにおいがしました。


フラフラ吸い寄せられるようにわたくしは中に入りました。


歩き疲れた体を優しく温かい空気が包みます。


一歩一歩進んでいくと奥に寝室がありました。


寝具はふかふか雲のようで、思わず疲れたわたくしは顔をうずめました。


ふわり優しい太陽のにおいは何だか懐かしい気持ちになって、ふと幼い頃、陽だまりの中、父の側近と花畑を歩いたあの日を一人思い返しました。


いつしかのテノールが私に優しく語りかけます。


優しい思い出にいざなわれ、わたくしは眠りの世界へとゆっくり落ちて行きました。
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