17 / 31
17.
しおりを挟む
光は一軒の小屋でした。
屋根も壁もすべてが木で作られて、玄関の前には壊れかけた古いゆり椅子がありました。
「ごめんください。」
2、3度ドアを叩き中にそう呼びかけても、応える声はありません。
すりガラスから漏れる光はとても温かく、転んで滑って雑巾のようにズタボロになったわたくしは、自身との落差にぶるり体を震わせました。
「ごめんください。」
再びそう呼びかけても中から声はありません。
屋根には煙突が取り付けられてポッポと煙を吐き出します。
思わずそっとドアを開けると、中から包み込むような光が盛大にもれました。
小さな小さな椅子やテーブル、飾りのついたかわいい戸棚、食器は行儀よく並べられ、ふわり食事のにおいがしました。
どうやら主は留守なようでした。
暖炉はとろとろ薪が燃え、食卓や玄関のかわいいランプが温かく部屋を照らします。
何だか今まで感じたことが無い優しい家庭のにおいがしました。
フラフラ吸い寄せられるようにわたくしは中に入りました。
歩き疲れた体を優しく温かい空気が包みます。
一歩一歩進んでいくと奥に寝室がありました。
寝具はふかふか雲のようで、思わず疲れたわたくしは顔をうずめました。
ふわり優しい太陽のにおいは何だか懐かしい気持ちになって、ふと幼い頃、陽だまりの中、父の側近と花畑を歩いたあの日を一人思い返しました。
いつしかのテノールが私に優しく語りかけます。
優しい思い出にいざなわれ、わたくしは眠りの世界へとゆっくり落ちて行きました。
屋根も壁もすべてが木で作られて、玄関の前には壊れかけた古いゆり椅子がありました。
「ごめんください。」
2、3度ドアを叩き中にそう呼びかけても、応える声はありません。
すりガラスから漏れる光はとても温かく、転んで滑って雑巾のようにズタボロになったわたくしは、自身との落差にぶるり体を震わせました。
「ごめんください。」
再びそう呼びかけても中から声はありません。
屋根には煙突が取り付けられてポッポと煙を吐き出します。
思わずそっとドアを開けると、中から包み込むような光が盛大にもれました。
小さな小さな椅子やテーブル、飾りのついたかわいい戸棚、食器は行儀よく並べられ、ふわり食事のにおいがしました。
どうやら主は留守なようでした。
暖炉はとろとろ薪が燃え、食卓や玄関のかわいいランプが温かく部屋を照らします。
何だか今まで感じたことが無い優しい家庭のにおいがしました。
フラフラ吸い寄せられるようにわたくしは中に入りました。
歩き疲れた体を優しく温かい空気が包みます。
一歩一歩進んでいくと奥に寝室がありました。
寝具はふかふか雲のようで、思わず疲れたわたくしは顔をうずめました。
ふわり優しい太陽のにおいは何だか懐かしい気持ちになって、ふと幼い頃、陽だまりの中、父の側近と花畑を歩いたあの日を一人思い返しました。
いつしかのテノールが私に優しく語りかけます。
優しい思い出にいざなわれ、わたくしは眠りの世界へとゆっくり落ちて行きました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
ことみとライ
雨宮大智
児童書・童話
十才の少女「ことみ」はある日、夢の中で「ライ」というペガサスに会う。ライはことみを「天空の城」へと、連れて行く。天空の城には「創造の泉」があり、ことみのような物語の書き手を待っていたのだった。夢と現実を行き来する「ことみ」の前に、天空の城の女王「エビナス」が現れた⎯⎯。ペガサスのライに導かれて、ことみの冒険が、いま始まる。
【旧筆名:多梨枝伸時代の作品】
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
亀さんののんびりお散歩旅
しんしん
児童書・童話
これは亀のようにゆっくりでも着々と進んでいく。そんな姿をみて、自分も頑張ろう!ゆっくりでも時間をかけていこう。
そんな気持ちになってほしいです。
あとはほのぼの見てあげてください笑笑
目的 カミール海岸へ行くこと
出発地 サミール海岸
プラネタリウムのめざす空
詩海猫
児童書・童話
タイトル通り、プラネタリウムが空を目指して歩く物語です。
普段はタイトル最後なのですが唐突にタイトルと漠然とした内容だけ浮かんで書いてみました。
短い童話なので最初から最後までフワッとしています。が、細かい突っ込みはナシでお願いします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる