ペット？いりません。ウチ、ヒーローいるんで。

きっと乙女な移動手段♡後編

「そうだな、無駄のないそろばん使い、あれは本当に見事だった。」


「•••。」


「ひらり軽い動き、それはまさしく蝶のよう。乙女の戦士、ここでその捌きさばきを見れたこと、光栄に思うぞ。」

「…。」

「それに…。」

「いや、もういいです」

ぐるぐる巻きに縛られて、私は思わずそう言った。

こんな惨めな格好で、同情からの褒め言葉。

もはや、もう罵ってほしい。

「そうですよ、矢採様！」

黒服の女は言った。

「招かれざる客の上、貴方様にあの狼藉ろうぜき！！こんな奴に同情なんて、御人が良すぎるのでは！？」

黒い布で隠されて、目こそ見えないが、露わにしたパーツから、美人であることは見て取れる。

「そうだ！そうだ！」

陰から、頼りない声がした。

こいつは、顔を見なくても誰が言ったかすぐ分かる。

「一匹乗り込んで、この始末！
矢彩様に一人で勝とうとは、片腹痛いわ！」

ギッと闇に浮かぶ顎を睨む。

案の定、ヤツはビクッとして、机の陰に身を潜めた。

「あー、そうでしょうよ！」

ヤケクソになって、そう叫ぶ。
手足は縛られ、身は不自由。
けれど、私の口はえらく達者に動く。　

「良いですよね、あんたはさ！
一人ふんぞりかえってたら、ぬくぬく人に守られて！」

矢彩は、玉座に座ったまま、冷たい視線をこちらに向ける。