12 / 17
きっと乙女な移動手段♡ 前編
しおりを挟む
~前回までのあらすじ~
急に不審者が行方不明になり、沢山の不審者に関わることになった。以上。
☆★☆
「で、その人、今どこにいるんです?」
芸術的なモンタージュにばれた本名。
おまけに個人情報まで知られたら特定は時間の問題。
きっと、さっきの適当な嘘もその場しのぎでしか無かろう。
もうこれ以上恥部を広げられないため、とっとと、ここからズラかろうと玉座の矢採くんに私は聞いた。
冷たい表情で見下ろす彼は、ぽってりした唇をけだるげに開いた。
「それは知らない。」
「は?」
「分からないのだ、だから。」
何かが頭の中でプツンと切れた。
「は、ハア~?!?!」
さっきまで、何かわかるかもと下手に出てた。
敬語もすこーしばかり使った。
けれど、ここでされた事ときたら!
連れ去り、監禁、モンタージュ、
そして、「るんるん」。
スクッと無言で立ち上がり、つかつか矢採くんに向かって歩き出す。
「おい、ちょ、何をする気だ!」
何かを仕留めるような私の目つきを見て正樹くんが立ち上がった。
「貴様、矢採様に何かしてみろ!この顎が火を噴くから…」
そう言いかけて正樹くんは足元のバケツにつまずいた。
「なッッ!?」
宙に舞う顎とバケツ。
そんなもの見てない事にして私はつかつか矢採くんに近づく。
私が歩く風圧で左右の蝋燭がゆらめいては戻る。
さっきまで沈黙を守った黒服達に一気に緊張感が走った。
そんな中でも矢採三灯は動かない。
冷たく感情も映さない目で玉座から私を見下ろしている。
不意に黒服が顔を見合わせた。
複数の視線は私を飛び越え、ぶつかりあっては言葉にしない意思を送る。
目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。
一言たりとも漏らさない彼らが投げる視線の方がよっぽど鋭くてうるさい。
さて、と。
教室の中央で私は立ち止まった。
四方から向けられる視線が研ぎ澄まされて、一層鋭くなる。
不意に矢採くんから一番近い黒服が私を顎で示した。
さっさと仕留めろとでも言うのだろう。
散らばった彼らが近くを見回し、目線で合図を送るのがわかる。
緊迫した空気、崩れそうな静寂。
背後からガタッと音がした。
続いて複数の足音と机に体をぶつける音が重なる。
あっちは背後から攻める法をとったんだろう。
暗くて足元すら不確かな中、背中の数名は私に近づく。
前方の黒服たちも目配せをした。
もう前から攻めてくるのは時間の問題だろう。
敵意だけが充満する室内で気付かれぬよう肩にかけた鞄を探った。
よし、ある。
固いそれの直角をなぞって私は確信する。
背後から近づく数名が蝋燭の影になって天井に映る。
微動だにしない私を前に黒字の布は何を思うのだろう。
天井の影から腕が出て私の影に伸びるのが見えた。
きっと後数センチ。
私は、鞄からそれそれをぬいて天井に振り上げた。
急に不審者が行方不明になり、沢山の不審者に関わることになった。以上。
☆★☆
「で、その人、今どこにいるんです?」
芸術的なモンタージュにばれた本名。
おまけに個人情報まで知られたら特定は時間の問題。
きっと、さっきの適当な嘘もその場しのぎでしか無かろう。
もうこれ以上恥部を広げられないため、とっとと、ここからズラかろうと玉座の矢採くんに私は聞いた。
冷たい表情で見下ろす彼は、ぽってりした唇をけだるげに開いた。
「それは知らない。」
「は?」
「分からないのだ、だから。」
何かが頭の中でプツンと切れた。
「は、ハア~?!?!」
さっきまで、何かわかるかもと下手に出てた。
敬語もすこーしばかり使った。
けれど、ここでされた事ときたら!
連れ去り、監禁、モンタージュ、
そして、「るんるん」。
スクッと無言で立ち上がり、つかつか矢採くんに向かって歩き出す。
「おい、ちょ、何をする気だ!」
何かを仕留めるような私の目つきを見て正樹くんが立ち上がった。
「貴様、矢採様に何かしてみろ!この顎が火を噴くから…」
そう言いかけて正樹くんは足元のバケツにつまずいた。
「なッッ!?」
宙に舞う顎とバケツ。
そんなもの見てない事にして私はつかつか矢採くんに近づく。
私が歩く風圧で左右の蝋燭がゆらめいては戻る。
さっきまで沈黙を守った黒服達に一気に緊張感が走った。
そんな中でも矢採三灯は動かない。
冷たく感情も映さない目で玉座から私を見下ろしている。
不意に黒服が顔を見合わせた。
複数の視線は私を飛び越え、ぶつかりあっては言葉にしない意思を送る。
目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。
一言たりとも漏らさない彼らが投げる視線の方がよっぽど鋭くてうるさい。
さて、と。
教室の中央で私は立ち止まった。
四方から向けられる視線が研ぎ澄まされて、一層鋭くなる。
不意に矢採くんから一番近い黒服が私を顎で示した。
さっさと仕留めろとでも言うのだろう。
散らばった彼らが近くを見回し、目線で合図を送るのがわかる。
緊迫した空気、崩れそうな静寂。
背後からガタッと音がした。
続いて複数の足音と机に体をぶつける音が重なる。
あっちは背後から攻める法をとったんだろう。
暗くて足元すら不確かな中、背中の数名は私に近づく。
前方の黒服たちも目配せをした。
もう前から攻めてくるのは時間の問題だろう。
敵意だけが充満する室内で気付かれぬよう肩にかけた鞄を探った。
よし、ある。
固いそれの直角をなぞって私は確信する。
背後から近づく数名が蝋燭の影になって天井に映る。
微動だにしない私を前に黒字の布は何を思うのだろう。
天井の影から腕が出て私の影に伸びるのが見えた。
きっと後数センチ。
私は、鞄からそれそれをぬいて天井に振り上げた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺は彼女に養われたい
のあはむら
恋愛
働かずに楽して生きる――それが主人公・桐崎霧の昔からの夢。幼い頃から貧しい家庭で育った霧は、「将来はお金持ちの女性と結婚してヒモになる」という不純極まりない目標を胸に抱いていた。だが、その夢を実現するためには、まず金持ちの女性と出会わなければならない。
そこで霧が目をつけたのは、大金持ちしか通えない超名門校「桜華院学園」。家庭の経済状況では到底通えないはずだったが、死に物狂いで勉強を重ね、特待生として入学を勝ち取った。
ところが、いざ入学してみるとそこはセレブだらけの異世界。性格のクセが強く一筋縄ではいかない相手ばかりだ。おまけに霧を敵視する女子も出現し、霧の前途は波乱だらけ!
「ヒモになるのも楽じゃない……!」
果たして桐崎はお金持ち女子と付き合い、夢のヒモライフを手に入れられるのか?
※他のサイトでも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる