ペット?いりません。ウチ、ヒーローいるんで。

ねおきてる

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きっと乙女な移動手段♡ 前編

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~前回までのあらすじ~

急に不審者が行方不明になり、沢山の不審者に関わることになった。以上。

☆★☆
「で、その人、今どこにいるんです?」


芸術的なモンタージュにばれた本名。

おまけに個人情報まで知られたら特定は時間の問題。

きっと、さっきの適当な嘘もその場しのぎでしか無かろう。

もうこれ以上恥部を広げられないため、とっとと、ここからズラかろうと玉座の矢採くんに私は聞いた。

冷たい表情で見下ろす彼は、ぽってりした唇をけだるげに開いた。


「それは知らない。」

「は?」

「分からないのだ、だから。」


何かが頭の中でプツンと切れた。


「は、ハア~?!?!」


さっきまで、何かわかるかもと下手に出てた。

敬語もすこーしばかり使った。

けれど、ここでされた事ときたら!

連れ去り、監禁、モンタージュ、

そして、「るんるん」。

スクッと無言で立ち上がり、つかつか矢採くんに向かって歩き出す。


「おい、ちょ、何をする気だ!」


何かを仕留めるような私の目つきを見て正樹くんが立ち上がった。


「貴様、矢採様に何かしてみろ!この顎が火を噴くから…」


そう言いかけて正樹くんは足元のバケツにつまずいた。


「なッッ!?」


宙に舞う顎とバケツ。

そんなもの見てない事にして私はつかつか矢採くんに近づく。

私が歩く風圧で左右の蝋燭がゆらめいては戻る。

さっきまで沈黙を守った黒服達に一気に緊張感が走った。

そんな中でも矢採三灯は動かない。

冷たく感情も映さない目で玉座から私を見下ろしている。

不意に黒服が顔を見合わせた。

複数の視線は私を飛び越え、ぶつかりあっては言葉にしない意思を送る。

目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。

一言たりとも漏らさない彼らが投げる視線の方がよっぽど鋭くてうるさい。

さて、と。

教室の中央で私は立ち止まった。

四方から向けられる視線が研ぎ澄まされて、一層鋭くなる。

不意に矢採くんから一番近い黒服が私を顎で示した。

さっさと仕留めろとでも言うのだろう。

散らばった彼らが近くを見回し、目線で合図を送るのがわかる。

緊迫した空気、崩れそうな静寂。

背後からガタッと音がした。

続いて複数の足音と机に体をぶつける音が重なる。

あっちは背後から攻める法をとったんだろう。

暗くて足元すら不確かな中、背中の数名は私に近づく。

前方の黒服たちも目配せをした。

もう前から攻めてくるのは時間の問題だろう。

敵意だけが充満する室内で気付かれぬよう肩にかけた鞄を探った。

よし、

固いの直角をなぞって私は確信する。

背後から近づく数名が蝋燭の影になって天井に映る。

微動だにしない私を前に黒字の布は何を思うのだろう。

天井の影から腕が出て私の影に伸びるのが見えた。

きっと後数センチ。

私は、鞄からそれをぬいて天井に振り上げた。
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