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失踪者の探し方
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「失踪者の探し方」
ここから読み始めた方、心配しないで頂きたい。
JCが授業中、隠れてこんな事ノートに書いたら何事かと思うだろう。
けれど、あくまで本作はコメディ。
後の内容を見てほしい。
「 「失踪者の探し方」
1、ダウンジング(もったいないからストローで)
2、ヒーローがいそうなところを探す
(どこだろう)
3、変態がいそうなところを探す
(紛れないか心配)」
お分かりいただけただろうか。
もう、最後は親族ということを忘れていた。
迷い犬を探す方が高尚な方法をとるだろう。
けれど、警察も頼った今為すべき方法は限られている。
もう、正攻法は無理か、とため息をついた時だった。
視界の端で何かがめくれた。
ふと、斜め後ろを盗み見れば、黒いカードが机一面を覆うのが見えた。
木蓮を思わせる白い手が、凄まじいスピードでカードをめくり手の動きに色とりどりに机は彩られていく。
カードをめくる横顔は儚くて、長い睫毛が光を浴びて羽ばたいている。
矢採 三灯
まごう事なき美少年。
アシメトリーな前髪で片目は隠れているものの露わになった灰色の目は冬の海のように静かで形のいい鼻が添えられている。
絵の具で垂らしたような唇も真っ白な肌に映え美しくたゆたう。
けれど、忘れてはいけない。
この小説の美形のお約束。
彼もどこかおかしいのだ。
そのまま、服に目を向けよう。
リボン付きフリルブラウス。
コ○ンくんのような半ズボン。
カメオのカフス。
どこの全寮制お金持ち学校かとお思いだろうが、安心して下さい。
彼だけですよ。
周りは冴えない白シャツ、ズボンで登校している。
こんなのまだマシな方だ。
入学当時からこの美貌で脚光を浴びるも、勢いはすぐ終息した。
ある日、どこも痛くないのに眼帯をつけてきた。
これまで、懸命に話しかけ無視された女子も、妬み喧嘩をふっかけ無視された男子も全てを理解した。
彼は、違う国の王子様だった。
眼帯は注意されても、やめることなく、学年主任も巻き込む騒動となったため絶滅したが、ブラウスとズボンであればよしという校則をくぐり彼のご趣味は未だ続く。
たまに、痛むのか疼くのか右手を懸命に抑えている時もある。
それからというものの厨二の王子様はうちのクラスでよく言えば孤高な存在として扱われているのだ。
不意に彼が顔を上げた。
灰色の目がばっちり合う。
思わず吸い込まれそうな綺麗な目。
何だか、ぼうっと見とれてしまって、すぐにはたと正気に戻った。
こんなに意味もなく見つめられたら、あっちも気味が悪いだろう。
ヤバイ、と前を向こうとした時、彼が、カードの一枚を取り自分の手の甲に乗せた。
パチリと指を鳴らし、カードが宙を舞う。
風もないのに、ひらりと私の机の上にそれは着地した。
驚いてカードに目をやる。
目をつぶり手を広げる美しい天使。
振り返ると、彼は、私にカードをめくれとジェスチャーで伝えた。
素直に、裏を見る。
「今日、放課後視聴覚室に来られたし。」
時計の音が大きく響いた。
舞い散るチャイム。
6時間目、今日の授業はこれで終わり。
彼は、私の全てを見通し、これを投げたのか、はたまた偶然か。
息をのみ、また振り返る。
が、彼はまた、右手が疼くのか懸命に手を押さえつけ歯を食いしばっていた。
どうか、そのまま、つってしまえ。
ムードを壊され、私はひっそりそう願った。
ここから読み始めた方、心配しないで頂きたい。
JCが授業中、隠れてこんな事ノートに書いたら何事かと思うだろう。
けれど、あくまで本作はコメディ。
後の内容を見てほしい。
「 「失踪者の探し方」
1、ダウンジング(もったいないからストローで)
2、ヒーローがいそうなところを探す
(どこだろう)
3、変態がいそうなところを探す
(紛れないか心配)」
お分かりいただけただろうか。
もう、最後は親族ということを忘れていた。
迷い犬を探す方が高尚な方法をとるだろう。
けれど、警察も頼った今為すべき方法は限られている。
もう、正攻法は無理か、とため息をついた時だった。
視界の端で何かがめくれた。
ふと、斜め後ろを盗み見れば、黒いカードが机一面を覆うのが見えた。
木蓮を思わせる白い手が、凄まじいスピードでカードをめくり手の動きに色とりどりに机は彩られていく。
カードをめくる横顔は儚くて、長い睫毛が光を浴びて羽ばたいている。
矢採 三灯
まごう事なき美少年。
アシメトリーな前髪で片目は隠れているものの露わになった灰色の目は冬の海のように静かで形のいい鼻が添えられている。
絵の具で垂らしたような唇も真っ白な肌に映え美しくたゆたう。
けれど、忘れてはいけない。
この小説の美形のお約束。
彼もどこかおかしいのだ。
そのまま、服に目を向けよう。
リボン付きフリルブラウス。
コ○ンくんのような半ズボン。
カメオのカフス。
どこの全寮制お金持ち学校かとお思いだろうが、安心して下さい。
彼だけですよ。
周りは冴えない白シャツ、ズボンで登校している。
こんなのまだマシな方だ。
入学当時からこの美貌で脚光を浴びるも、勢いはすぐ終息した。
ある日、どこも痛くないのに眼帯をつけてきた。
これまで、懸命に話しかけ無視された女子も、妬み喧嘩をふっかけ無視された男子も全てを理解した。
彼は、違う国の王子様だった。
眼帯は注意されても、やめることなく、学年主任も巻き込む騒動となったため絶滅したが、ブラウスとズボンであればよしという校則をくぐり彼のご趣味は未だ続く。
たまに、痛むのか疼くのか右手を懸命に抑えている時もある。
それからというものの厨二の王子様はうちのクラスでよく言えば孤高な存在として扱われているのだ。
不意に彼が顔を上げた。
灰色の目がばっちり合う。
思わず吸い込まれそうな綺麗な目。
何だか、ぼうっと見とれてしまって、すぐにはたと正気に戻った。
こんなに意味もなく見つめられたら、あっちも気味が悪いだろう。
ヤバイ、と前を向こうとした時、彼が、カードの一枚を取り自分の手の甲に乗せた。
パチリと指を鳴らし、カードが宙を舞う。
風もないのに、ひらりと私の机の上にそれは着地した。
驚いてカードに目をやる。
目をつぶり手を広げる美しい天使。
振り返ると、彼は、私にカードをめくれとジェスチャーで伝えた。
素直に、裏を見る。
「今日、放課後視聴覚室に来られたし。」
時計の音が大きく響いた。
舞い散るチャイム。
6時間目、今日の授業はこれで終わり。
彼は、私の全てを見通し、これを投げたのか、はたまた偶然か。
息をのみ、また振り返る。
が、彼はまた、右手が疼くのか懸命に手を押さえつけ歯を食いしばっていた。
どうか、そのまま、つってしまえ。
ムードを壊され、私はひっそりそう願った。
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