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第二章
30話
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場面は変わりヴァルコイネン。
私はいつものように魔法の特訓をしていた。
「・・・。」
私は手に植物の種を乗せて魔力を込める。
そして、それを的に投げつける。
「「グロウ」!」
魔法を唱えると種は急速に成長し的は植物の蔓によって締め付けられていた。
「お見事です、美玖様。」
そう言うのは私の魔法の指導係のシーマさんだった。
「シーマさんの指導のお陰です。」
「いえ、私は基本を教えただけです。すべては美玖様の才能と努力によるところです。」
「ありがとう。」
私のいた世界ではそんなことを言ってくれる人は居なかった。
私自身、大抵のことが出来てしまう。
それに対しての周囲の反応は妬みや欲望だった。
私と仲良くなろうとしている人間の多くは私を利用しようとする者か蹴落とそうとしようとしている者の二通りだけ。
信用に値するのは兄妹達だけだ。
(正真兄さん・・・。)
その兄妹の内の一人、正真兄さんはこの世界では忌み嫌われている銀の魔女が使っていたといわれる「破魔魔法」に目覚めてしまいこの国を出て行ってしまった。
「・・・もっと強くならないと。」
私たちが弱かったから正真兄さんはこの国を出て行ってしまった。
私たちが強くなって兄さんを守れるようになれば兄さんは戻ってくる。
「美玖。」
私に話しかけてきたのは正文兄さんだった。
「正真についての報告書と手紙が届いている。兄妹は全員集合だと正悟兄さんが言っていた。」
「正真兄さんから?」
正真兄さんには騎士の二人が護衛として付いて行っている。
彼らから、定時連絡として1ヶ月に一回報告書が届けられた。
「まさか、正真兄さん。また、何か事件に巻き込まれたの?」
正真兄さんは先月、館に住む怨霊と戦ったばかりだ。
その報告を受けた美香姉さんが正真兄さんの所に向かおうとちょっとした騒動になったが今回もまた何かあるのかもしれない。
「・・・とりあえず、来てくれ。」
正文兄さんの顔を見て私はなんとなく察してしまった。
「全員集まったな。」
城の一角に設けられた会議室に私達兄妹は全員集まっていた。
「さて、お前たちに集まってもらったのは正真についてだ。」
そう言って正悟兄さんが私達に話してくれた。
正真兄さんが冒険者になったこと。
最初のクエストでゴブリンの巣を謎の協力者と共に壊滅させたこと。
「そして、これが正真からの手紙だ。」
そこに書いてあったのはゴブリンによる凄惨な出来事についてだった。
村が壊滅したことや孕ませ袋にされた女性たちの最後。
攫われた女性の内二人を助けることが出来たことなどが書かれていた。
「・・・かわいそうな、正真。こんなに大変なことに巻き込まれたなんて・・・。」
美香姉さんが悲しそうに言う。
「これについて正真は本格的に動くということだ。」
「動くって具体的に何をするのよ?」
美紀姉さんが正悟兄さんに聞く。
「ゴブリンを絶滅させるとのことだ。」
「なっ!?」
私達は驚いた。
「それは無茶。ゴブリンはそんなに甘い相手じゃない。」
美沙姉さんは冷静に答える。
美沙姉さんの言う通り、ゴブリンの絶滅はかなり難しい。
普通のゴブリンなら村人でも油断をしなければ討伐できる。
しかし、中には規格外の力を持ったゴブリンが存在する。
ゴブリンたちを束ねるゴブリンエリート。
魔法を習得したゴブリンマジシャン。
そして、それらを取りまとめるゴブリンキング。
「・・・つまり正真は俺達にゴブリンたちの討伐を依頼しているということか?」
正文兄さんは厳しい口調で正悟兄さんに確認する。
「いや、手紙を読む限りそんなことは書いていない。」
「アイツは一人でやるつもりか?」
「・・・かもな。」
正悟兄さんはため息を吐きながら答える。
そして、私と美沙姉さんを見た。
「正真からお前たちに依頼があるそうだ。」
「私達に?」
「ああ・・・。この薬の量産をお願いしたいとのことだ。」
そう言って渡されたのは瓶に入ったピンクの液体だった。
「これは?」
「ゴブリンの催淫効果を打ち消す薬だそうだ。」
ゴブリンの精子には催淫効果がある。
そのため、無事助け出したとしても凌辱された女性はゴブリンの精子を求めてしまい最終的には衰弱死してしまうとのことだ。
「・・・そんなものをどこで?」
「報告書にあった謎の男のアンヤって奴に貰ったそうだ。」
「・・・怪しい。副作用は?」
「助け出した女性二人の状態は安定していて副作用はないそうだ。ただ、薬の効果があるのはゴブリンの子を孕む前の女性に限るとのことだ。」
「・・・それでもこの薬の量産が上手くいけば被害者はかなり減るわね。」
「美沙と美玖にはこの薬の成分を確認して量産してもらいたい。」
「わかったわ。」
美沙姉さんは正悟兄さんから薬を受け取る。
「私はどうすればいいの?」
「美玖は成分が分かったらその材料の量産をしてもらいたい。」
「私の魔法を使って?」
「ああ。」
私の魔法は植物の成長を促したり逆に戻したりする魔法だ。
それを使えば材料が植物であればどうにかできる。
「わかった。私頑張るね!」
「頼んだぞ。」
こうして、私たちは薬を作ることになった。
私はいつものように魔法の特訓をしていた。
「・・・。」
私は手に植物の種を乗せて魔力を込める。
そして、それを的に投げつける。
「「グロウ」!」
魔法を唱えると種は急速に成長し的は植物の蔓によって締め付けられていた。
「お見事です、美玖様。」
そう言うのは私の魔法の指導係のシーマさんだった。
「シーマさんの指導のお陰です。」
「いえ、私は基本を教えただけです。すべては美玖様の才能と努力によるところです。」
「ありがとう。」
私のいた世界ではそんなことを言ってくれる人は居なかった。
私自身、大抵のことが出来てしまう。
それに対しての周囲の反応は妬みや欲望だった。
私と仲良くなろうとしている人間の多くは私を利用しようとする者か蹴落とそうとしようとしている者の二通りだけ。
信用に値するのは兄妹達だけだ。
(正真兄さん・・・。)
その兄妹の内の一人、正真兄さんはこの世界では忌み嫌われている銀の魔女が使っていたといわれる「破魔魔法」に目覚めてしまいこの国を出て行ってしまった。
「・・・もっと強くならないと。」
私たちが弱かったから正真兄さんはこの国を出て行ってしまった。
私たちが強くなって兄さんを守れるようになれば兄さんは戻ってくる。
「美玖。」
私に話しかけてきたのは正文兄さんだった。
「正真についての報告書と手紙が届いている。兄妹は全員集合だと正悟兄さんが言っていた。」
「正真兄さんから?」
正真兄さんには騎士の二人が護衛として付いて行っている。
彼らから、定時連絡として1ヶ月に一回報告書が届けられた。
「まさか、正真兄さん。また、何か事件に巻き込まれたの?」
正真兄さんは先月、館に住む怨霊と戦ったばかりだ。
その報告を受けた美香姉さんが正真兄さんの所に向かおうとちょっとした騒動になったが今回もまた何かあるのかもしれない。
「・・・とりあえず、来てくれ。」
正文兄さんの顔を見て私はなんとなく察してしまった。
「全員集まったな。」
城の一角に設けられた会議室に私達兄妹は全員集まっていた。
「さて、お前たちに集まってもらったのは正真についてだ。」
そう言って正悟兄さんが私達に話してくれた。
正真兄さんが冒険者になったこと。
最初のクエストでゴブリンの巣を謎の協力者と共に壊滅させたこと。
「そして、これが正真からの手紙だ。」
そこに書いてあったのはゴブリンによる凄惨な出来事についてだった。
村が壊滅したことや孕ませ袋にされた女性たちの最後。
攫われた女性の内二人を助けることが出来たことなどが書かれていた。
「・・・かわいそうな、正真。こんなに大変なことに巻き込まれたなんて・・・。」
美香姉さんが悲しそうに言う。
「これについて正真は本格的に動くということだ。」
「動くって具体的に何をするのよ?」
美紀姉さんが正悟兄さんに聞く。
「ゴブリンを絶滅させるとのことだ。」
「なっ!?」
私達は驚いた。
「それは無茶。ゴブリンはそんなに甘い相手じゃない。」
美沙姉さんは冷静に答える。
美沙姉さんの言う通り、ゴブリンの絶滅はかなり難しい。
普通のゴブリンなら村人でも油断をしなければ討伐できる。
しかし、中には規格外の力を持ったゴブリンが存在する。
ゴブリンたちを束ねるゴブリンエリート。
魔法を習得したゴブリンマジシャン。
そして、それらを取りまとめるゴブリンキング。
「・・・つまり正真は俺達にゴブリンたちの討伐を依頼しているということか?」
正文兄さんは厳しい口調で正悟兄さんに確認する。
「いや、手紙を読む限りそんなことは書いていない。」
「アイツは一人でやるつもりか?」
「・・・かもな。」
正悟兄さんはため息を吐きながら答える。
そして、私と美沙姉さんを見た。
「正真からお前たちに依頼があるそうだ。」
「私達に?」
「ああ・・・。この薬の量産をお願いしたいとのことだ。」
そう言って渡されたのは瓶に入ったピンクの液体だった。
「これは?」
「ゴブリンの催淫効果を打ち消す薬だそうだ。」
ゴブリンの精子には催淫効果がある。
そのため、無事助け出したとしても凌辱された女性はゴブリンの精子を求めてしまい最終的には衰弱死してしまうとのことだ。
「・・・そんなものをどこで?」
「報告書にあった謎の男のアンヤって奴に貰ったそうだ。」
「・・・怪しい。副作用は?」
「助け出した女性二人の状態は安定していて副作用はないそうだ。ただ、薬の効果があるのはゴブリンの子を孕む前の女性に限るとのことだ。」
「・・・それでもこの薬の量産が上手くいけば被害者はかなり減るわね。」
「美沙と美玖にはこの薬の成分を確認して量産してもらいたい。」
「わかったわ。」
美沙姉さんは正悟兄さんから薬を受け取る。
「私はどうすればいいの?」
「美玖は成分が分かったらその材料の量産をしてもらいたい。」
「私の魔法を使って?」
「ああ。」
私の魔法は植物の成長を促したり逆に戻したりする魔法だ。
それを使えば材料が植物であればどうにかできる。
「わかった。私頑張るね!」
「頼んだぞ。」
こうして、私たちは薬を作ることになった。
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