僕はどうやら神様の手違いにより飛ばされたみたいです・・・。

わっしー

文字の大きさ
上 下
32 / 62
第二章

29話

しおりを挟む
「ショウマ様!」
村に戻るとソーマさんとカーラさんとあと何人かの冒険者が待っていた。
カーラさんは僕に駆け寄る。
「・・・血の匂いが!?もしかして、怪我を!?」
「・・・いえ、怪我はポーションで治しました。」
「でも、この血の臭いは人のモノですよ?」
「・・・。」
僕が黙っているとアンヤさんが言う。
「ゴブリンの巣は俺とショウマで壊滅させた。ゴブリンの数は80匹。ゴブリンエリートが率いていた。」
「80匹!?そんな無茶な・・・!」
「死体は洞窟内にあるから後で確認しろ。そして、今回の襲撃により村の住人30人の内27人が死亡。2人はゴブリンに凌辱されたが命に別状はない。」
「・・・ほとんど全滅ではないか。」
ソーマさんは絶句する。
「洞窟内には孕ませ袋となった女性が10人。奴らの数から考えると攫われて数ヶ月程度と考えられる。」
「・・・そういえば、数ヶ月前に近くの村が襲われたという話を聞いたな。」
その場にいた冒険者の一人が呟く。
「その孕ませ袋となった女性は?」
「処分した。」
アンヤさんはなんて事の無いように言う。
「なっ!?お前、何考えていやがる!」
冒険者の一人がアンヤさんに掴み掛かる。
「・・・何をそんなに怒っている?」
「本気で言っているのか!?貴様、被害者を殺したというのか!?」
その言葉に僕は胸が痛む。
「被害者か・・・。」
しかし、アンヤさんは一切動揺していない。
「その被害者が生んだゴブリンがこの村を襲い、人を殺めたんだ。なら、この連鎖を断ち切ってやることこそ俺たちの仕事じゃないのか?」
「てめぇ!」
「止めろ、ガンツ。」
もう一人の冒険者が止めに入る。
「どうして止めるんですか、ゲンヤさん!」
「彼の言っていることは間違っていない。孕ませ袋になった者は助けることは出来ない。」
「でもよぉ・・・。」
ガンツさんは納得できていない様子だった。
「・・・とりあえず、被害者の遺体は回収するぞ。」
「ああ、頼む。」
僕たちは洞窟に向かう。

翌日。
村の合同墓地に被害者37名の遺体を埋葬する。
「・・・安らかにお眠りください。」
僕は合掌する。
「ショウマ。」
声の方を向くとアンヤさんが立っていた。
「昨日はありがとうございました。」
「気にするな。お前を手伝うといったのは俺なんだから・・・。」
「それでもありがとうございました。」
僕はアンヤさんにお辞儀をする。
「なあ、ショウマ。お前はこれからどうする?」
「・・・どうするとは?」
「お前は実感したはずだ。自分の無力さを・・・。」
「・・・ええ。」
僕は頷く。
「僕にもっと力があればこの村の人を一人でも多く助けられたかもしれない。攫われた人たちも奴らに凌辱される前に助けられたかもしれない・・・。」
「そうだ。お前はこの先も経験することになるだろう。今回みたいなことを・・・。」
「ええ・・・。それでも、僕は冒険者を続けたいと思います。」
「・・・本気か?」
「はい。僕に救える命はほんの僅かかもしれない。でも、救える命があるのなら僕は冒険者を続けて行きたいと思います。今回救えなかった人に報いるために・・・。」
「そうか・・・。」
そう言うとアンヤさんは懐からナイフを取り出す。
「なら、餞別だ。受け取れ。」
ナイフを僕に寄こす。
「・・・これは?」
「俺のお古だが丈夫だ。お前の武器にはピッタリだろ?」
そのナイフは羽のように軽かった。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」
「ああ・・・それから、これもお前が持っておけ。」
そう言って渡されたのは血で汚れたナイフだった。
「・・・これは?」
「ゴブリンが持っていたナイフだ。ここをよく見て見ろ。」
そう言ってアンヤさんはナイフの柄のところを見せる。
そこにはライオンと盾の紋章が刻まれていた。
「このナイフはゴブリンが持っていたものだ。一本なら冒険者かなんかから襲って奪ったものと考えるのが妥当だろうがゴブリンたちは同じナイフを持っていた。」
「それは、妙ですね・・・。」
「裏にはとんでもない大物がいるかもしれないな・・・。」
アンヤさんの言葉に僕は固唾を飲みこむのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...