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第二章
29話
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「ショウマ様!」
村に戻るとソーマさんとカーラさんとあと何人かの冒険者が待っていた。
カーラさんは僕に駆け寄る。
「・・・血の匂いが!?もしかして、怪我を!?」
「・・・いえ、怪我はポーションで治しました。」
「でも、この血の臭いは人のモノですよ?」
「・・・。」
僕が黙っているとアンヤさんが言う。
「ゴブリンの巣は俺とショウマで壊滅させた。ゴブリンの数は80匹。ゴブリンエリートが率いていた。」
「80匹!?そんな無茶な・・・!」
「死体は洞窟内にあるから後で確認しろ。そして、今回の襲撃により村の住人30人の内27人が死亡。2人はゴブリンに凌辱されたが命に別状はない。」
「・・・ほとんど全滅ではないか。」
ソーマさんは絶句する。
「洞窟内には孕ませ袋となった女性が10人。奴らの数から考えると攫われて数ヶ月程度と考えられる。」
「・・・そういえば、数ヶ月前に近くの村が襲われたという話を聞いたな。」
その場にいた冒険者の一人が呟く。
「その孕ませ袋となった女性は?」
「処分した。」
アンヤさんはなんて事の無いように言う。
「なっ!?お前、何考えていやがる!」
冒険者の一人がアンヤさんに掴み掛かる。
「・・・何をそんなに怒っている?」
「本気で言っているのか!?貴様、被害者を殺したというのか!?」
その言葉に僕は胸が痛む。
「被害者か・・・。」
しかし、アンヤさんは一切動揺していない。
「その被害者が生んだゴブリンがこの村を襲い、人を殺めたんだ。なら、この連鎖を断ち切ってやることこそ俺たちの仕事じゃないのか?」
「てめぇ!」
「止めろ、ガンツ。」
もう一人の冒険者が止めに入る。
「どうして止めるんですか、ゲンヤさん!」
「彼の言っていることは間違っていない。孕ませ袋になった者は助けることは出来ない。」
「でもよぉ・・・。」
ガンツさんは納得できていない様子だった。
「・・・とりあえず、被害者の遺体は回収するぞ。」
「ああ、頼む。」
僕たちは洞窟に向かう。
翌日。
村の合同墓地に被害者37名の遺体を埋葬する。
「・・・安らかにお眠りください。」
僕は合掌する。
「ショウマ。」
声の方を向くとアンヤさんが立っていた。
「昨日はありがとうございました。」
「気にするな。お前を手伝うといったのは俺なんだから・・・。」
「それでもありがとうございました。」
僕はアンヤさんにお辞儀をする。
「なあ、ショウマ。お前はこれからどうする?」
「・・・どうするとは?」
「お前は実感したはずだ。自分の無力さを・・・。」
「・・・ええ。」
僕は頷く。
「僕にもっと力があればこの村の人を一人でも多く助けられたかもしれない。攫われた人たちも奴らに凌辱される前に助けられたかもしれない・・・。」
「そうだ。お前はこの先も経験することになるだろう。今回みたいなことを・・・。」
「ええ・・・。それでも、僕は冒険者を続けたいと思います。」
「・・・本気か?」
「はい。僕に救える命はほんの僅かかもしれない。でも、救える命があるのなら僕は冒険者を続けて行きたいと思います。今回救えなかった人に報いるために・・・。」
「そうか・・・。」
そう言うとアンヤさんは懐からナイフを取り出す。
「なら、餞別だ。受け取れ。」
ナイフを僕に寄こす。
「・・・これは?」
「俺のお古だが丈夫だ。お前の武器にはピッタリだろ?」
そのナイフは羽のように軽かった。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」
「ああ・・・それから、これもお前が持っておけ。」
そう言って渡されたのは血で汚れたナイフだった。
「・・・これは?」
「ゴブリンが持っていたナイフだ。ここをよく見て見ろ。」
そう言ってアンヤさんはナイフの柄のところを見せる。
そこにはライオンと盾の紋章が刻まれていた。
「このナイフはゴブリンが持っていたものだ。一本なら冒険者かなんかから襲って奪ったものと考えるのが妥当だろうがゴブリンたちは同じナイフを持っていた。」
「それは、妙ですね・・・。」
「裏にはとんでもない大物がいるかもしれないな・・・。」
アンヤさんの言葉に僕は固唾を飲みこむのだった。
村に戻るとソーマさんとカーラさんとあと何人かの冒険者が待っていた。
カーラさんは僕に駆け寄る。
「・・・血の匂いが!?もしかして、怪我を!?」
「・・・いえ、怪我はポーションで治しました。」
「でも、この血の臭いは人のモノですよ?」
「・・・。」
僕が黙っているとアンヤさんが言う。
「ゴブリンの巣は俺とショウマで壊滅させた。ゴブリンの数は80匹。ゴブリンエリートが率いていた。」
「80匹!?そんな無茶な・・・!」
「死体は洞窟内にあるから後で確認しろ。そして、今回の襲撃により村の住人30人の内27人が死亡。2人はゴブリンに凌辱されたが命に別状はない。」
「・・・ほとんど全滅ではないか。」
ソーマさんは絶句する。
「洞窟内には孕ませ袋となった女性が10人。奴らの数から考えると攫われて数ヶ月程度と考えられる。」
「・・・そういえば、数ヶ月前に近くの村が襲われたという話を聞いたな。」
その場にいた冒険者の一人が呟く。
「その孕ませ袋となった女性は?」
「処分した。」
アンヤさんはなんて事の無いように言う。
「なっ!?お前、何考えていやがる!」
冒険者の一人がアンヤさんに掴み掛かる。
「・・・何をそんなに怒っている?」
「本気で言っているのか!?貴様、被害者を殺したというのか!?」
その言葉に僕は胸が痛む。
「被害者か・・・。」
しかし、アンヤさんは一切動揺していない。
「その被害者が生んだゴブリンがこの村を襲い、人を殺めたんだ。なら、この連鎖を断ち切ってやることこそ俺たちの仕事じゃないのか?」
「てめぇ!」
「止めろ、ガンツ。」
もう一人の冒険者が止めに入る。
「どうして止めるんですか、ゲンヤさん!」
「彼の言っていることは間違っていない。孕ませ袋になった者は助けることは出来ない。」
「でもよぉ・・・。」
ガンツさんは納得できていない様子だった。
「・・・とりあえず、被害者の遺体は回収するぞ。」
「ああ、頼む。」
僕たちは洞窟に向かう。
翌日。
村の合同墓地に被害者37名の遺体を埋葬する。
「・・・安らかにお眠りください。」
僕は合掌する。
「ショウマ。」
声の方を向くとアンヤさんが立っていた。
「昨日はありがとうございました。」
「気にするな。お前を手伝うといったのは俺なんだから・・・。」
「それでもありがとうございました。」
僕はアンヤさんにお辞儀をする。
「なあ、ショウマ。お前はこれからどうする?」
「・・・どうするとは?」
「お前は実感したはずだ。自分の無力さを・・・。」
「・・・ええ。」
僕は頷く。
「僕にもっと力があればこの村の人を一人でも多く助けられたかもしれない。攫われた人たちも奴らに凌辱される前に助けられたかもしれない・・・。」
「そうだ。お前はこの先も経験することになるだろう。今回みたいなことを・・・。」
「ええ・・・。それでも、僕は冒険者を続けたいと思います。」
「・・・本気か?」
「はい。僕に救える命はほんの僅かかもしれない。でも、救える命があるのなら僕は冒険者を続けて行きたいと思います。今回救えなかった人に報いるために・・・。」
「そうか・・・。」
そう言うとアンヤさんは懐からナイフを取り出す。
「なら、餞別だ。受け取れ。」
ナイフを僕に寄こす。
「・・・これは?」
「俺のお古だが丈夫だ。お前の武器にはピッタリだろ?」
そのナイフは羽のように軽かった。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」
「ああ・・・それから、これもお前が持っておけ。」
そう言って渡されたのは血で汚れたナイフだった。
「・・・これは?」
「ゴブリンが持っていたナイフだ。ここをよく見て見ろ。」
そう言ってアンヤさんはナイフの柄のところを見せる。
そこにはライオンと盾の紋章が刻まれていた。
「このナイフはゴブリンが持っていたものだ。一本なら冒険者かなんかから襲って奪ったものと考えるのが妥当だろうがゴブリンたちは同じナイフを持っていた。」
「それは、妙ですね・・・。」
「裏にはとんでもない大物がいるかもしれないな・・・。」
アンヤさんの言葉に僕は固唾を飲みこむのだった。
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