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第二章
26話
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ゴブリンの巣があったのは村から数キロ先の森の奥の洞窟。
「準備は出来ているか?」
アンヤさんが僕とマーサさんを振り返る。
『はい。』
僕たちは頷く。
「洞窟の中は暗いためこれを利用する。」
そう言ってアンヤさんはバックの中からランタンを取り出す。
ランタンの中には花が入っていた。
「これは「光蘭灯」。炎に比べて安全性と光量も多い。」
光蘭灯に使われている「光蘭」は北の森に生えている。
光蘭の花びらに一滴水を垂らせば光蘭は輝く。
「これを使えば十分な視界を確保できるしゴブリンの弱体化も出来る。」
「ゴブリンの弱体化?」
「ああ・・・。」
ゴブリンは光に弱い。
日が出ている間、ゴブリンは弱体化される。
「そして、光蘭灯の光は太陽の光と効果は一緒だ。弱体化したゴブリンたち相手なら怪我したお前でも後れを取ることはないだろう。」
そう言ってアンヤさんはマーサさんにランタンと水が入った瓶を渡す。
「お前はこのランタンを持っていろ。」
「・・・はい。」
「では、行くぞ!」
僕たちはゴブリンの巣の中に突入する。
「ギギ!」
ゴブリンの巣に入るとゴブリン2匹が僕達にナイフを振りあげる。
「遅い。」
しかし、振り下ろされる前にアンヤさんはゴブリンを両断してしまう。
「こんな入り口付近にゴブリンがいるということはかなりの数のゴブリンが奥に居るということだな・・・。」
「どれぐらいいるのでしょうか?」
「少なく見積もって5、60程・・・。最悪100は超えるだろう。」
「100!?」
マーサさんは驚きで目を見開く。
「しかし、妙だな・・・。100を超えるゴブリンたちがこんな村に近い洞窟に巣を作ることが出来ているなんて・・・。」
「どういうことですか?」
「ゴブリンたちの繁殖力はすさまじい。しかし、これだけの量となれば食いぶちを確保するだけでもかなり苦労するはずだ。」
そう言ってアンヤさんは両断したゴブリンを見る。
「しかし、ゴブリンたちに飢えた様子は見られない。」
ゴブリンの死体を見るとそこには肉付きの良い様子だった。
「村の男性の死体を持ち帰っていないのが妙なんだ。」
そう言ってアンヤさんは説明してくれる。
ゴブリンにとって女は自分たちの戦力と性欲を解消する道具。
そして、男は食料。
その食料を村に置き去りにしているということは食料が必要ないということ。
「つまり、最低でも50匹いるゴブリンたちは十分な食料があるということ・・・。さらに女を連れ去ったということは戦力を増強しても食料に困らないということですか?」
「ああ・・・。飢えはゴブリンたちの反感を招く。だから、ゴブリンの長はいつでも食料を備蓄する必要がある。それなのにコイツ等それをしなかった。・・・いや、する必要がなかったということか?」
「それはつまり・・・。」
「・・・ああ。これは思っている以上に厄介だぞ。」
アンヤさんは僕の方を向く。
「どうする、ショウマ?これだけの戦力を相手にするのは無謀だ。なら、一度戻って戦力を集めてから挑むべきではないか?」
「・・・攫われた人たちはどうなりますか?」
僕はアンヤさんに聞く。
「戦力を集めて、作戦を練る。さらに、報酬の算出なども考慮に入れると1ヶ月は最低でも掛かるな・・・。」
「そんなに?」
「ああ・・・。残念だが攫われたものはその時には精神崩壊を起こしているだろう。助け出したとしてもきっと・・・。」
「なら、止まることは出来ません。」
僕はアンヤさんをまっすぐ見る。
「その間に他の村が襲われかもしれない。なら、このまま進むべきです。」
「お前一人でもか?」
「はい!」
「・・・どうして、お前はそこまでする?」
「えっ?」
「お前はこの村の人間ではないだろう?お前が命を懸けるほどの価値はあるのか?」
「・・・はい。」
僕は頷く。
「僕は多くの人を助けたいんです。僕の兄妹のように多くの人を助けるのは無理かもしれない。」
「お前の兄妹?」
「はい、僕の兄妹は勇者なんです。僕はそんな兄妹達に巻き込まれただけの一般人でしかありません。兄妹達と違って何の力も無い僕でも何が出来るのか・・・。」
「・・・そうか。」
アンヤさんは頷く。
「なら、進むぞ。」
「アンヤさん・・・。」
「行動で示してみろ。口だけなら何とでも言える。」
「はい!」
僕たちは奥に進んでいく。
「準備は出来ているか?」
アンヤさんが僕とマーサさんを振り返る。
『はい。』
僕たちは頷く。
「洞窟の中は暗いためこれを利用する。」
そう言ってアンヤさんはバックの中からランタンを取り出す。
ランタンの中には花が入っていた。
「これは「光蘭灯」。炎に比べて安全性と光量も多い。」
光蘭灯に使われている「光蘭」は北の森に生えている。
光蘭の花びらに一滴水を垂らせば光蘭は輝く。
「これを使えば十分な視界を確保できるしゴブリンの弱体化も出来る。」
「ゴブリンの弱体化?」
「ああ・・・。」
ゴブリンは光に弱い。
日が出ている間、ゴブリンは弱体化される。
「そして、光蘭灯の光は太陽の光と効果は一緒だ。弱体化したゴブリンたち相手なら怪我したお前でも後れを取ることはないだろう。」
そう言ってアンヤさんはマーサさんにランタンと水が入った瓶を渡す。
「お前はこのランタンを持っていろ。」
「・・・はい。」
「では、行くぞ!」
僕たちはゴブリンの巣の中に突入する。
「ギギ!」
ゴブリンの巣に入るとゴブリン2匹が僕達にナイフを振りあげる。
「遅い。」
しかし、振り下ろされる前にアンヤさんはゴブリンを両断してしまう。
「こんな入り口付近にゴブリンがいるということはかなりの数のゴブリンが奥に居るということだな・・・。」
「どれぐらいいるのでしょうか?」
「少なく見積もって5、60程・・・。最悪100は超えるだろう。」
「100!?」
マーサさんは驚きで目を見開く。
「しかし、妙だな・・・。100を超えるゴブリンたちがこんな村に近い洞窟に巣を作ることが出来ているなんて・・・。」
「どういうことですか?」
「ゴブリンたちの繁殖力はすさまじい。しかし、これだけの量となれば食いぶちを確保するだけでもかなり苦労するはずだ。」
そう言ってアンヤさんは両断したゴブリンを見る。
「しかし、ゴブリンたちに飢えた様子は見られない。」
ゴブリンの死体を見るとそこには肉付きの良い様子だった。
「村の男性の死体を持ち帰っていないのが妙なんだ。」
そう言ってアンヤさんは説明してくれる。
ゴブリンにとって女は自分たちの戦力と性欲を解消する道具。
そして、男は食料。
その食料を村に置き去りにしているということは食料が必要ないということ。
「つまり、最低でも50匹いるゴブリンたちは十分な食料があるということ・・・。さらに女を連れ去ったということは戦力を増強しても食料に困らないということですか?」
「ああ・・・。飢えはゴブリンたちの反感を招く。だから、ゴブリンの長はいつでも食料を備蓄する必要がある。それなのにコイツ等それをしなかった。・・・いや、する必要がなかったということか?」
「それはつまり・・・。」
「・・・ああ。これは思っている以上に厄介だぞ。」
アンヤさんは僕の方を向く。
「どうする、ショウマ?これだけの戦力を相手にするのは無謀だ。なら、一度戻って戦力を集めてから挑むべきではないか?」
「・・・攫われた人たちはどうなりますか?」
僕はアンヤさんに聞く。
「戦力を集めて、作戦を練る。さらに、報酬の算出なども考慮に入れると1ヶ月は最低でも掛かるな・・・。」
「そんなに?」
「ああ・・・。残念だが攫われたものはその時には精神崩壊を起こしているだろう。助け出したとしてもきっと・・・。」
「なら、止まることは出来ません。」
僕はアンヤさんをまっすぐ見る。
「その間に他の村が襲われかもしれない。なら、このまま進むべきです。」
「お前一人でもか?」
「はい!」
「・・・どうして、お前はそこまでする?」
「えっ?」
「お前はこの村の人間ではないだろう?お前が命を懸けるほどの価値はあるのか?」
「・・・はい。」
僕は頷く。
「僕は多くの人を助けたいんです。僕の兄妹のように多くの人を助けるのは無理かもしれない。」
「お前の兄妹?」
「はい、僕の兄妹は勇者なんです。僕はそんな兄妹達に巻き込まれただけの一般人でしかありません。兄妹達と違って何の力も無い僕でも何が出来るのか・・・。」
「・・・そうか。」
アンヤさんは頷く。
「なら、進むぞ。」
「アンヤさん・・・。」
「行動で示してみろ。口だけなら何とでも言える。」
「はい!」
僕たちは奥に進んでいく。
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