僕はどうやら神様の手違いにより飛ばされたみたいです・・・。

わっしー

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第二章

22話

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メリッサとの戦いから数日が経ったある日、僕は冒険者ギルドに来ていた。
「・・・以上で手続きは終わりです。こちらが証明書となりますので常に身に付けていてくださいね。」
そう言って受付の女性がペンダントを渡してきた。
「ありがとうございます。」
僕はペンダントを受け取り首に掛ける。
「では、注意事項を説明させていただきますね。」
受付の女性はボードを取り出して字をなぞる。
この世界の文字は読めないが受付の女性は口頭で説明してくれる。

一、討伐ランクに応じたクエストのみ受注が可能。
一、討伐ランクアップはクエストクリア時のポイントに応じて上昇する。
一、クエスト中の事故や傷病は自己責任。

簡単な説明を聞き終わり僕は掲示板に移動する。
そこには多くのクエストが貼られていた。
「・・・コレだな。」
僕は一枚の貼り紙を手に取る。

『ゴブリンの駆除依頼
ゴブリンが畑の農作物を荒らしてしまうので駆除してほしい。
クエストランクE
拘束期間1週間
報酬 300リル』

「まずはこれをやってみよう。」
僕は貼り紙を手に取って受付に向かう。
「これをお願いします。」
「・・・承りました。では、こちらにサインを・・・。」
そう言って渡されたのは契約書だった。
そこにはずらっと文字が並んでいた。
「あの、僕文字が読めないんですけど・・・。」
「そうなのですね。では、口頭で説明します。」
そして、説明されたのはこのクエスト中の怪我や事故は自己責任でとのことだった。
「あの、それって注意事項で説明を受けたのですが・・・。」
「そうなのですがこうやって念書を取っとかないとあとで文句を言う人が居るんです。」
受付の女性はため息を吐く。
どの世界でもクレーマーは居るみたいだ。
「文字は書けますか?」
「あ、はい。」
事前に書いてもらったこの世界での文字で書いた僕の名前を写す。
「・・・はい。これで、手続きは完了です。では、健闘をお祈りします。」
こうして初めてのクエストに挑戦することになった。

翌日の昼頃に村に到着した。
「お前が今回クエストを引き受けてくれた冒険者か?」
「はい、よろしくお願いします。」
村に着くと村長だという中年の男性に声を掛けられた。
「俺の名前はゴウダンだ。さっきも言った通りこの村の村長だ。」
「正真です。それで、ゴブリンは?」
「夜になると現れる。まあ、それまでは待ってもらうことになるんだが・・・。」
「わかりました。」
そして、通されたのは一軒の民家だった。
「こんな、村の依頼を受けてくれてありがとうございます。」
そう言ってお茶を出してくれたのは一人の少女だった。
「私はマーサと言います。」
「正真です。マーサさんは一人なんですか?」
家の中には彼女しかいなかった。
「はい、小さい頃に両親は流行り病で・・・。」
「・・・すみません。」
「いえ、お気になさらず・・・。それよりも本当に助かります。今まで何度も依頼を出していたのですが誰も受けてくれなくて・・・。」
「そうなんですか?」
「はい、報酬が少ないみたいで・・・。」
そう言うマーサさんからはため息を吐く。
「ゴブリンたちによって農作物を荒らされたためもうどうしようもないんです。今回の報酬も村の皆で出し合ったのですが・・・。」
「そうなんですか・・・。」
「あの、頑張って下さいね!私、応援していますから!」

その夜、僕は畑の近くの小屋に身を潜んでいた。
持ち物は盾と数本のナイフや道具。
ソーマさん達と武器屋を回った時にいろいろな武器を持った結果ナイフに落ち着いた。
「・・・来た。」
畑にゴブリンたちが入って来る。
月明かりに照らされている数を見る限りそこまで数は多くなかった。
ゴブリンたちは畑に生えている野菜を引っこ抜いていく。
中にはその場で食べている奴もいる。
「油断しているな。」
僕は音を立てない様に小屋のそばから出る。
そして、ポケットから道具を取り出す。
それをゴブリンたちに投げる。
「ギギ?」
ゴブリンの一匹が足元に転がってきた物体を手に取る。
瞬間、その物体は激しい閃光を放つ。

『ゴブリンは主に暗い洞窟に生息します。なので、基本光に弱いです。そのためこれを使います。』

道具の名前は「閃光玉」。
強い衝撃を受けると強い光放つ道具だ。
主にさまざまな合図や逃走時の目くらましのために使われる。
今回、ゴブリンは光に弱いという特性を利用した奇襲のために使った。
ゴブリンたちは強い光により目を抑えて悶えている。
「はぁ!」
僕は手近のゴブリンにナイフを突き立てる。
「ギ!」
額にナイフを受けたゴブリンは何度か痙攣した後、後ろに倒れる。
「ギギィ!」
ゴブリンたちは血の匂いを感じたのか武器を取り出す。
ゴブリンの額からナイフを引き抜きゴブリンと相対する。
ゴブリンたちの数は残り4匹。
「武器はナイフか。」
ゴブリンたちが持っていたのはさびたナイフだった。
ゴブリンたちはまだ視力が回復していないみたいだがゴブリンたちは僕の方を向いていた。

『ゴブリンたちは元々、視力は高くありません。そのため、奴らは魔力で相手を見る。』

ゴブリンたちは魔力を感知して相手の力量や位置を見る習性がある。
さっきは突然のことで混乱していたようだが落ち着きを取り戻しつつあるようで陣形を整える。
「・・・。」
僕は集中する。
(ここ数日で何とか身に付けた技・・・。)
次の瞬間、ゴブリンたちは慌てたように周囲をキョロキョロしだした。
その瞬間に僕はゴブリンに肉薄して首にナイフを突きつけた。
その方向に目を向けることなくもう一匹のゴブリンも切り付けた。
「ギギ!!」
ゴブリンたちは不利な状況だと判断したように逃げるため僕に背を向ける。
「逃がすか!」
僕はナイフを2本投擲する。
「ギ・・・!?」
ナイフはゴブリン二匹の腕や脚を翳めて地面に落ちる。
しかし、その瞬間ゴブリンたちは地面に倒れ伏す。
「ギ・・・ギ・・・。」
ゴブリンは弱々しく鳴いたかと思うと白目を剥く。
そんなゴブリンの首にナイフを突き立てて止めを刺すのだった。
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