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第一章
20話
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「どうやら、終わったみたいだな・・・。」
そう声を掛けてきたのはアルスだった。
「・・・うん、メリッサは破魔魔法で浄化できたみたいだ。」
辺りには壊れた家具や穴が開いた床や天井など悲惨な光景が広がっていた。
「・・・う~ん。」
後ろの方から声がすると思ったらキアラさんが頭を抑えながら体を起こす。
「私は一体・・・。」
「目を覚ましましたか?」
僕が声を掛けるとキサラさんは頷く。
「はい。大丈夫で・・・あぁ!?」
キサラさんは目を見開いてホールの惨状を見る。
「これは、どうゆうことですか!?何が起こったのですか!?」
「実は・・・。」
僕はこれまでのことを説明する。
話を聞き終わったキサラさんは青い顔をして僕達に頭を下げるのだった。
「申し訳ございません!そんなに危ない物件だったとは知らずに・・・。あまつさえ、お客様に処理を任せてしまうことになるなんて・・・。」
「そうですね・・・。今回のことはじっくり説明してもらわないと・・・。」
ソーマさんが笑顔でそう言うが目が笑っていない。
「・・・はい。」
キサラさんは肩を落としながら答えるのだった。
翌日。
僕たちはシニネン不動産にいた。
そこには疲れ切ったキサラさんとその上司であろう人が待っていた。
「ソーマ様、此度は私たちの不手際で危険な目に遭わせてしまい申し訳ございませんでした。」
上司である男とキサラさんが頭を下げる。
「キサラから詳しい事情を聞き、当該の物件について調査させてもらったところアレはお客様にお売りできる物件ではなく近々、腕利きの冒険者による浄化を予定していた物件だったのです。」
上司の話だと・・・。
あの洋館は50年前に屋敷の住人が惨殺された事件があったということだ。
それ以降、何度かあの洋館を買った人間はいたのだがそのいずれも謎の怪死を遂げたということで封印処理を行っていたということだ。
しかし、不動産会社としてはどうにか売りたいと考え、怪異専門の冒険者に怪異を解決して洋館を販売しようとしていたという訳だ。
その旨を物件の見取り図と一緒にメモで冒険者に対しての報酬額を書いた書置きしていたのだがキサラさんはそれを物件の値段と勘違いをして今回の騒動に至ったという訳だ。
「話を聞いた後、すぐに冒険者に捜査を依頼したところもう怪異は確認されなかったとのことでした。」
そう言って上司はパンパンの袋を取り出す。
「お詫びとお礼を兼ねて私共が所有する最高級の物件をご用意させていただきました。怪異の解決に対しての御礼金もお付けいたしますのでどうか・・・今回の件は御内密に・・・。」
上司とキサラさんは深々と頭を下げる。
僕は物件の見取り図を見る。
この前の洋館よりもさらに広く、城下町の近くに広大な庭も併設されており立地も良い。
「・・・今度は本当に大丈夫ですか?」
「はい!わたくしが補償いたします。ですので、どうか・・・!どうか、今回の件は・・・。」
「・・・わかりました。カーラ。」
「何よ?」
「俺はもう少し、彼と話をする。その間、ショウマ様たちのことを頼んだ。」
「わかった。」
カーラさんはソファから立ち上がる。
「では、ショウマ様。行きましょうか?」
「えっ?でも・・・。」
「大丈夫。ソーマはこういうことが得意なんですから。」
そう言ってカーラさんは僕の手を引き部屋を出るのだった。
「あの・・・ソーマさんを一人にして大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ!アイツ、そういうことは得意ですから!」
そう言ってカーラさんは料理を注文する。
僕たちが入った料理屋はシニネン王国屈指の最高級レストランだった。
「・・・これっていくらなんだろう?」
恐ろしく美味しい料理の数々・・・。
メニュー表を見ても値段は書いておらず庶民である僕としては気になってしょうがない。
しかし、そう思っているのは僕だけのようでカーラさん達は気にすることなく食べていた。
「しかし、今回は大変だったな・・・。」
アルスは綺麗にお肉を切り分けながら今回のことを話す。
「ええ・・・。本当に怖かったです。」
マリアは食事の手を止め、答える。
「今回はショウマとマリアに全て押し付けてしまったな・・・。俺たちがもっとしっかりしていれば・・・。」
「気にしなくていいよ。アルスたちが僕達を逃がしてくれたから何とか出来たわけだし・・・。」
「いえ、今回は私たちの落ち度です。守るべき主に対して剣を抜いてしまったわけですから・・・。」
「それに魔法を封じられただけであんなに戦えなくなるとは思っていなかったな・・・。」
二人は苦い顔をして答える。
今回の戦いでこの世界での魔法はそれだけ重要だったということだ。
そして、それを封じてしまう僕自身の魔法の脅威も・・・。
「俺は強くならないとな・・・。魔法が無くてもお前たちを守れるほどの力を・・・。」
「お兄様・・・。」
「・・・ねぇ。皆に相談があるんだけど。」
僕はこの街に来てから考えていたことを話すのだった。
ここから僕たちの物語が始まる。
そう声を掛けてきたのはアルスだった。
「・・・うん、メリッサは破魔魔法で浄化できたみたいだ。」
辺りには壊れた家具や穴が開いた床や天井など悲惨な光景が広がっていた。
「・・・う~ん。」
後ろの方から声がすると思ったらキアラさんが頭を抑えながら体を起こす。
「私は一体・・・。」
「目を覚ましましたか?」
僕が声を掛けるとキサラさんは頷く。
「はい。大丈夫で・・・あぁ!?」
キサラさんは目を見開いてホールの惨状を見る。
「これは、どうゆうことですか!?何が起こったのですか!?」
「実は・・・。」
僕はこれまでのことを説明する。
話を聞き終わったキサラさんは青い顔をして僕達に頭を下げるのだった。
「申し訳ございません!そんなに危ない物件だったとは知らずに・・・。あまつさえ、お客様に処理を任せてしまうことになるなんて・・・。」
「そうですね・・・。今回のことはじっくり説明してもらわないと・・・。」
ソーマさんが笑顔でそう言うが目が笑っていない。
「・・・はい。」
キサラさんは肩を落としながら答えるのだった。
翌日。
僕たちはシニネン不動産にいた。
そこには疲れ切ったキサラさんとその上司であろう人が待っていた。
「ソーマ様、此度は私たちの不手際で危険な目に遭わせてしまい申し訳ございませんでした。」
上司である男とキサラさんが頭を下げる。
「キサラから詳しい事情を聞き、当該の物件について調査させてもらったところアレはお客様にお売りできる物件ではなく近々、腕利きの冒険者による浄化を予定していた物件だったのです。」
上司の話だと・・・。
あの洋館は50年前に屋敷の住人が惨殺された事件があったということだ。
それ以降、何度かあの洋館を買った人間はいたのだがそのいずれも謎の怪死を遂げたということで封印処理を行っていたということだ。
しかし、不動産会社としてはどうにか売りたいと考え、怪異専門の冒険者に怪異を解決して洋館を販売しようとしていたという訳だ。
その旨を物件の見取り図と一緒にメモで冒険者に対しての報酬額を書いた書置きしていたのだがキサラさんはそれを物件の値段と勘違いをして今回の騒動に至ったという訳だ。
「話を聞いた後、すぐに冒険者に捜査を依頼したところもう怪異は確認されなかったとのことでした。」
そう言って上司はパンパンの袋を取り出す。
「お詫びとお礼を兼ねて私共が所有する最高級の物件をご用意させていただきました。怪異の解決に対しての御礼金もお付けいたしますのでどうか・・・今回の件は御内密に・・・。」
上司とキサラさんは深々と頭を下げる。
僕は物件の見取り図を見る。
この前の洋館よりもさらに広く、城下町の近くに広大な庭も併設されており立地も良い。
「・・・今度は本当に大丈夫ですか?」
「はい!わたくしが補償いたします。ですので、どうか・・・!どうか、今回の件は・・・。」
「・・・わかりました。カーラ。」
「何よ?」
「俺はもう少し、彼と話をする。その間、ショウマ様たちのことを頼んだ。」
「わかった。」
カーラさんはソファから立ち上がる。
「では、ショウマ様。行きましょうか?」
「えっ?でも・・・。」
「大丈夫。ソーマはこういうことが得意なんですから。」
そう言ってカーラさんは僕の手を引き部屋を出るのだった。
「あの・・・ソーマさんを一人にして大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ!アイツ、そういうことは得意ですから!」
そう言ってカーラさんは料理を注文する。
僕たちが入った料理屋はシニネン王国屈指の最高級レストランだった。
「・・・これっていくらなんだろう?」
恐ろしく美味しい料理の数々・・・。
メニュー表を見ても値段は書いておらず庶民である僕としては気になってしょうがない。
しかし、そう思っているのは僕だけのようでカーラさん達は気にすることなく食べていた。
「しかし、今回は大変だったな・・・。」
アルスは綺麗にお肉を切り分けながら今回のことを話す。
「ええ・・・。本当に怖かったです。」
マリアは食事の手を止め、答える。
「今回はショウマとマリアに全て押し付けてしまったな・・・。俺たちがもっとしっかりしていれば・・・。」
「気にしなくていいよ。アルスたちが僕達を逃がしてくれたから何とか出来たわけだし・・・。」
「いえ、今回は私たちの落ち度です。守るべき主に対して剣を抜いてしまったわけですから・・・。」
「それに魔法を封じられただけであんなに戦えなくなるとは思っていなかったな・・・。」
二人は苦い顔をして答える。
今回の戦いでこの世界での魔法はそれだけ重要だったということだ。
そして、それを封じてしまう僕自身の魔法の脅威も・・・。
「俺は強くならないとな・・・。魔法が無くてもお前たちを守れるほどの力を・・・。」
「お兄様・・・。」
「・・・ねぇ。皆に相談があるんだけど。」
僕はこの街に来てから考えていたことを話すのだった。
ここから僕たちの物語が始まる。
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