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第一章
19話
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『・・・最後まで使えない奴ね。』
メリッサが吐き捨てるように言う。
「メリッサ!もう止めるんだ!お前が復讐したい相手はもうこの世に居ないんだ!だから・・・!」
『貴方は黙ってなさい、コウ。』
コウさんの言葉に耳を貸さないメリッサ。
『・・・もう、戻れないの。この力を手に入れた瞬間に私はこの世界の異物になってしまった・・・。』
「どういうことだ?」
『この力は魔王が使っていた忌まわしい力・・・。人を操り、死してなおその体と魂を縛り付ける・・・。』
「魔王・・・。」
僕たち兄妹がこの世界に呼ばれることになった元凶。
その力の一端を見ることになるなんて・・・。
『どうやら、貴方の力を見誤っていたようね。まさか、銀の魔女と同じ力を使うことが出来るなんて・・・。』
そう言ってメリッサは僕を睨み付ける。
『でも、貴方の魔力も残りわずか・・・。その程度の魔力で私をどうにかできると思わないことね!』
そう言った瞬間、浮遊していた家具や人形などが地面に落ちて行く。
家具や人形からどす黒い靄が沸き上がりそれがメリッサに吸収されていった。
『今度は、全力で相手をしてあげましょう・・・。銀の魔女の末裔!』
靄を吸い取り切ったメリッサが地面に降りてくる。
その目は紅く、髪もブロンドからシルバーに変わっていた。
何よりも彼女が纏う魔力の濃さが尋常ではない。
「さあ、私を楽しませなさい。」
メリッサは中空から大鎌を取り出して僕達に突きつけてきた。
「・・・カーラさんは下がって。」
「ショウマ様?」
僕はカーラさんを守るように前に出た。
「この怪我じゃ、満足に戦うことは出来ないでしょ?なら、僕が戦うしかないよね?」
「無茶です!ショウマ様ではあの女には敵いません!それなら、私が・・・!」
「それこそ無茶だよ。カーラさんはさっきの戦闘でやけどを負っている。そんな状態で勝てるほど甘い相手ではないと思うよ?」
「しかし・・・!」
「大丈夫。破魔魔法があれば魔法を無力化できるのだから・・・。まあ、魔力はあと少ししか残っていないけどね・・・。」
魔力の量を考えるとチャンスは一回のみ・・・。
あの量の魔力を完全に無効化するには武器に通したりしていてはダメ・・・。
メリッサに直接破魔魔法を打ち込む必要がある。
「・・・。」
メリッサを見る。
彼女の持っている大鎌は全長3ⅿ程。
懐に入ってしまえば反撃される心配はないはずだ。
(だけど、懐に入るまでが大変そうだな・・・。)
メリッサとの距離は50m。
その間に彼女が何もしないはずがない。
(・・・一発でも貰うとアウトだよね?)
僕の破魔魔法は全ての魔法を無効化する。
しかし、破魔魔法はその魔法を無力化した瞬間に相殺されてしまう欠点もある。
つまり、魔力を練るまでの間僕は無防備になってしまうのだ。
(彼女の攻撃に当たることなく懐に潜り込んで破魔魔法を打ち込む・・・。残り魔力のことを考えると再度魔力を練ることは出来ない。)
はっきり言えば無謀だ。
今の彼女の力がどんなものなのかわからない中で向かっていくのは無謀だ。
(ゲームとかならもう一度やり直すことが出来るんだけどな・・・。)
しかし、これは現実。
失敗すれば死んでしまう。
その事実に僕は何とも言えない恐怖を感じた。
「・・・どうしたの?もしかして、怖気ついたのかしら?」
メリッサは嘲笑うかのように言う。
「ショウマ。」
そんな僕に声を掛けたのはマリアだった。
「大丈夫。ショウマなら出来るよ。」
「・・・マリア。」
「私が暴走した時、危険なのに飛び込んでくれた。不安でどうにかなってしまいそうな私を抱きしめてくれた。」
「・・・。」
「大丈夫。ショウマは強いよ!あんな奴に負けない!」
そう言ってマリアは僕の手を握る。
「私の力を使って・・・。」
次の瞬間、身体に温かい力が流れてくる。
「・・・これは!?」
その瞬間、僕の内から魔力が溢れてきた。
「私の増幅魔法の力。ショウマの中にある魔力に私の魔力を足したの・・・。」
「・・・ありがとう。これなら、何とかなりそうだ。」
僕はマリアの手を離すとメリッサに向き直る。
「貴方の境遇には同情します。好きでもない人と結婚させられて好きだった人を殺されて・・・。」
僕は魔力を練る。
「でも、貴方に殺されるわけにはいかない。貴方を倒して、ここから脱出します!」
僕は走り出した。
その瞬間、メリッサから魔法が放たれる。
僕はそれを避けて前に進む。
40m、30m、20m、10m・・・。
5m近くまで来ると彼女は大鎌を振りあげて僕に叩きつけてきた。
僕はそれを盾で弾き彼女に肉薄する。
しかし、瞬間に彼女はニヤッと笑う。
「残念でした。」
次の瞬間、後ろから魔力を感じる。
「させるか!」
その声と共に魔力の反応が消える。
「コウ!?」
メリッサは驚愕の表情を浮かべて固まった。
「終わりだ!」
その瞬間に僕は練り上げた魔力を彼女に叩きこんだ。
「ああぁ!!!!」
彼女の身体に銀の魔力が流れ込む。
彼女の身体が銀色に輝く。
禍々しい魔力は彼女の身体からはがされて銀の光に浄化されていく。
「・・・嫌、消えたくない・・・。助けて、コウ・・・。」
メリッサは弱々しくつぶやく。
『ああ・・・。俺も一緒に逝ってやるさ・・・。』
声が聞こえた瞬間、僕の横を光の球が横切る。
「コウ・・・。」
『逝こう、メリッサ。』
「・・・ええ。」
メリッサは安心したように目を閉じる。
銀の光が収まる頃にはメリッサの姿は消えていた。
メリッサが吐き捨てるように言う。
「メリッサ!もう止めるんだ!お前が復讐したい相手はもうこの世に居ないんだ!だから・・・!」
『貴方は黙ってなさい、コウ。』
コウさんの言葉に耳を貸さないメリッサ。
『・・・もう、戻れないの。この力を手に入れた瞬間に私はこの世界の異物になってしまった・・・。』
「どういうことだ?」
『この力は魔王が使っていた忌まわしい力・・・。人を操り、死してなおその体と魂を縛り付ける・・・。』
「魔王・・・。」
僕たち兄妹がこの世界に呼ばれることになった元凶。
その力の一端を見ることになるなんて・・・。
『どうやら、貴方の力を見誤っていたようね。まさか、銀の魔女と同じ力を使うことが出来るなんて・・・。』
そう言ってメリッサは僕を睨み付ける。
『でも、貴方の魔力も残りわずか・・・。その程度の魔力で私をどうにかできると思わないことね!』
そう言った瞬間、浮遊していた家具や人形などが地面に落ちて行く。
家具や人形からどす黒い靄が沸き上がりそれがメリッサに吸収されていった。
『今度は、全力で相手をしてあげましょう・・・。銀の魔女の末裔!』
靄を吸い取り切ったメリッサが地面に降りてくる。
その目は紅く、髪もブロンドからシルバーに変わっていた。
何よりも彼女が纏う魔力の濃さが尋常ではない。
「さあ、私を楽しませなさい。」
メリッサは中空から大鎌を取り出して僕達に突きつけてきた。
「・・・カーラさんは下がって。」
「ショウマ様?」
僕はカーラさんを守るように前に出た。
「この怪我じゃ、満足に戦うことは出来ないでしょ?なら、僕が戦うしかないよね?」
「無茶です!ショウマ様ではあの女には敵いません!それなら、私が・・・!」
「それこそ無茶だよ。カーラさんはさっきの戦闘でやけどを負っている。そんな状態で勝てるほど甘い相手ではないと思うよ?」
「しかし・・・!」
「大丈夫。破魔魔法があれば魔法を無力化できるのだから・・・。まあ、魔力はあと少ししか残っていないけどね・・・。」
魔力の量を考えるとチャンスは一回のみ・・・。
あの量の魔力を完全に無効化するには武器に通したりしていてはダメ・・・。
メリッサに直接破魔魔法を打ち込む必要がある。
「・・・。」
メリッサを見る。
彼女の持っている大鎌は全長3ⅿ程。
懐に入ってしまえば反撃される心配はないはずだ。
(だけど、懐に入るまでが大変そうだな・・・。)
メリッサとの距離は50m。
その間に彼女が何もしないはずがない。
(・・・一発でも貰うとアウトだよね?)
僕の破魔魔法は全ての魔法を無効化する。
しかし、破魔魔法はその魔法を無力化した瞬間に相殺されてしまう欠点もある。
つまり、魔力を練るまでの間僕は無防備になってしまうのだ。
(彼女の攻撃に当たることなく懐に潜り込んで破魔魔法を打ち込む・・・。残り魔力のことを考えると再度魔力を練ることは出来ない。)
はっきり言えば無謀だ。
今の彼女の力がどんなものなのかわからない中で向かっていくのは無謀だ。
(ゲームとかならもう一度やり直すことが出来るんだけどな・・・。)
しかし、これは現実。
失敗すれば死んでしまう。
その事実に僕は何とも言えない恐怖を感じた。
「・・・どうしたの?もしかして、怖気ついたのかしら?」
メリッサは嘲笑うかのように言う。
「ショウマ。」
そんな僕に声を掛けたのはマリアだった。
「大丈夫。ショウマなら出来るよ。」
「・・・マリア。」
「私が暴走した時、危険なのに飛び込んでくれた。不安でどうにかなってしまいそうな私を抱きしめてくれた。」
「・・・。」
「大丈夫。ショウマは強いよ!あんな奴に負けない!」
そう言ってマリアは僕の手を握る。
「私の力を使って・・・。」
次の瞬間、身体に温かい力が流れてくる。
「・・・これは!?」
その瞬間、僕の内から魔力が溢れてきた。
「私の増幅魔法の力。ショウマの中にある魔力に私の魔力を足したの・・・。」
「・・・ありがとう。これなら、何とかなりそうだ。」
僕はマリアの手を離すとメリッサに向き直る。
「貴方の境遇には同情します。好きでもない人と結婚させられて好きだった人を殺されて・・・。」
僕は魔力を練る。
「でも、貴方に殺されるわけにはいかない。貴方を倒して、ここから脱出します!」
僕は走り出した。
その瞬間、メリッサから魔法が放たれる。
僕はそれを避けて前に進む。
40m、30m、20m、10m・・・。
5m近くまで来ると彼女は大鎌を振りあげて僕に叩きつけてきた。
僕はそれを盾で弾き彼女に肉薄する。
しかし、瞬間に彼女はニヤッと笑う。
「残念でした。」
次の瞬間、後ろから魔力を感じる。
「させるか!」
その声と共に魔力の反応が消える。
「コウ!?」
メリッサは驚愕の表情を浮かべて固まった。
「終わりだ!」
その瞬間に僕は練り上げた魔力を彼女に叩きこんだ。
「ああぁ!!!!」
彼女の身体に銀の魔力が流れ込む。
彼女の身体が銀色に輝く。
禍々しい魔力は彼女の身体からはがされて銀の光に浄化されていく。
「・・・嫌、消えたくない・・・。助けて、コウ・・・。」
メリッサは弱々しくつぶやく。
『ああ・・・。俺も一緒に逝ってやるさ・・・。』
声が聞こえた瞬間、僕の横を光の球が横切る。
「コウ・・・。」
『逝こう、メリッサ。』
「・・・ええ。」
メリッサは安心したように目を閉じる。
銀の光が収まる頃にはメリッサの姿は消えていた。
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