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第一章
2話
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「正真!起きろ、正真!」
僕は身体を激しく揺すられる。それにより僕の意識は浮上する。
最初に目を覚ますと正悟兄さんの顔が目に入る。
「正悟兄さん?」
「良かった・・・。なかなか起きないから心配したぞ・・・。」
正悟兄さんは安心したように微笑む。
「僕は一体・・・。」
そう言って辺りを見渡すとそこは見覚えのない広間だった。
そこには多くの人がいて僕たちを囲んでいた。
その人たちの衣装は何というかファンタジーだった。
目の前で椅子に座っている男性は豪奢な衣装を着ている。
頭に王冠みたいなものが乗っている。
そして、その横では良い生地を使ってそうなローブを着た男性。
そして、周りは甲冑を着た屈強な男性たち。
「ここは・・・それにこの人たちは?」
「目を覚ましたようだな。」
厳格な声が聞こえたのでその方向を見ると最初に確認した豪奢な衣装を着た壮年の男性からだった。
「貴方は何者ですか?」
正悟兄さんはその男性に問いかける。
「そう警戒をしないでほしい・・・。私たちは君達の味方だ。」
壮年の男性は答えた。
「私はこのヴァルコイネン王国の王であるグラン・ヴァルコイネン。」
「ヴァルコイネン・・・?」
正悟兄さんは首を傾げる。
「あの・・・聞いたことがない国の名前ですが?」
そう聞いたのは美玖だった。
その声を聞いて改めて周りを見ると美玖の他に美香姉さんに美紀姉さん、美沙姉さんに正文兄さんが近くにいる。
「そうだな・・・。まずは、君たちにはこの世界のこととこの世界に君たちを呼んだ理由を話さなければな・・・。」
そう言ってグラン王が説明をしてくれる。
この世界は地球とは違う世界「ブリストア」。
僕たちの世界と違って魔法があり魔物が蔓延る世界だ。
まあ、アニメや漫画でよくある異世界トリップだということが分かった。
そして、この国、「ヴァルコイネン王国」は東西南北の強大な国に囲まれた小国だということだ。
そして、ヴァルコイネン王国は東西南北の大国からの侵略に怯える毎日を過ごしているとのことだ。
さらに、最南には魔王率いる魔王軍が台頭しており世界の危機とのことだった。
そんな切迫した状況にもかかわらず東西南北の国では小競り合いが絶えず中央にあるヴァルコイネン王国に対して各国から協力体制という侵略行為が行われているとのことだ。
そして、ヴァルコイネン王国が取った行動が「勇者召喚」だった。
「我が王国の古文書にはかつて世界が混乱に陥った時、6人の勇者により平和を取り戻したという記録がある。そして、我らはそれに縋ることにした。」
「6人?」
その時、僕は違和感を覚えた。
それを口にしたのは正文兄さんだった。
「俺達、7人居るんだが・・・。」
「は?」
グラン王は呆けた顔をする。
「そんなはずは・・・。」
そう言ってグラン王は僕達の人数を数える。そして、顔を青くする。
「7人いるだと・・・?」
その瞬間、周りがざわつく。
「あの・・・これってどういうことです?」
美香姉さんが聞くとグラン王が答える。
「いや・・・これは何かの間違いなのか・・・?」
そう言って少し考えた後、グラン王。
「君達はこの世界に召喚されたとき鐘の音を聞かなかったか?」
「鐘の音?」
そう言われても僕はよく分からなかった。
しかし、僕以外の兄妹は何か心当たりがあったみたいで頷く。
「なるほど・・・アレが何かの合図なんだな・・・。」
正悟兄さんは納得していた。
周りを見ていると他の兄妹達もそれぞれ心当たりがあるみたいだ。
「ねぇ・・・。それってどんな音だったの?」
僕が聞くと美香姉さんは驚きの顔をする。
「正真・・・まさか?」
「えっと・・・。僕は聞いてないみたいな・・・。」
僕は冷や汗を流しながら答えると・・・。
「なんと!?」
その瞬間、グラン王は険しい顔をする。
(やばい・・・。この流れって僕追い出されるのでは!?)
僕は顔を更に青くする。
そんな僕を美香姉さんが抱きしめる。
「大丈夫・・・。私が正真を守るから・・・。」
「美香姉さん・・・。」
僕は美香姉さんに抱きしめられて少し安心する。
「グラン王、俺達を元の世界に戻すことは出来るのですか?」
「・・・不可能だ。」
グラン王は静かに答える。
「ふざけるな!」
その時、正文兄さんが叫ぶ。
「俺達を元の世界に帰せよ!今すぐ!」
「出来ないのだ・・・。」
「お前たちの事情に俺達を巻き込むんじゃねぇ!」
「正文・・・。」
正悟兄さんが正文兄さんの肩に手を置く。
「落ち着け・・・。」
「でもよぉ!」
「ここで、俺たちが騒いだところで状況は変わらない。それに、この数を相手に俺達にはどうすることも出来ないだろ?」
「くっ・・・!」
正文兄さんは悔しそうに黙り込む。
「しかし、俺達も無条件で貴方たちに従うつもりはありません。」
「そうだろうな・・・。」
グラン王は正悟兄さんをまっすぐ見つめる。
「我々が出来る限りの支援をすることを約束しよう。それと並行してお主たちを元の世界に戻す方法も模索する。これで、良いか?」
「・・・わかりました。ですが、もし約束を違える場合があれば・・・。」
「覚悟は出来ている。」
そう言ってグラン王は膝をつく。
「王!?いったい何を!?」
「私に出来る精一杯の誠意だ。6人の勇者はもちろん関係ない少年を我らの事情に巻き込んでしまった。」
グラン王は言葉を続ける。
「しかし、我らも後がない。なので、無礼を承知でお願いをする。どうか、私たちに力を貸してはくれないだろうか?」
そう言ってグラン王は頭を下げる。
「正悟兄さん・・・。」
「なんだ?」
「どうせ、元の世界に帰るまではやることがないんだから王様の手伝いをしてあげようよ。」
グラン王は驚いたように顔を上げる。
正悟兄さんは僕を見る。
「お前はそれでいいのか?」
「うん・・・。でも、これは僕の決断だ。後は、兄さん達が決めるべきだよ。」
「・・・そうか。」
正悟兄さんは兄妹達を見渡す。
「私は、正真が居るなら・・・。」
「正悟兄さんが決めたことなら従うわ。」
「私も!」
「皆が居る場所が私の居場所だから・・・。」
美香姉さん、美沙姉さん、美紀姉さん、美玖がそれぞれ答える。
「正文はどうする?」
正悟兄さんが正文兄さんを見る。
「俺は、納得した訳じゃない。だが、皆が残るのなら俺も残る。」
「では!?」
グラン王は顔を上げる。
「わかりました。元の世界に戻るまでは貴方たちに協力しましょう。」
「・・・感謝する!」
こうして、僕たちの異世界生活が始まった。
僕は身体を激しく揺すられる。それにより僕の意識は浮上する。
最初に目を覚ますと正悟兄さんの顔が目に入る。
「正悟兄さん?」
「良かった・・・。なかなか起きないから心配したぞ・・・。」
正悟兄さんは安心したように微笑む。
「僕は一体・・・。」
そう言って辺りを見渡すとそこは見覚えのない広間だった。
そこには多くの人がいて僕たちを囲んでいた。
その人たちの衣装は何というかファンタジーだった。
目の前で椅子に座っている男性は豪奢な衣装を着ている。
頭に王冠みたいなものが乗っている。
そして、その横では良い生地を使ってそうなローブを着た男性。
そして、周りは甲冑を着た屈強な男性たち。
「ここは・・・それにこの人たちは?」
「目を覚ましたようだな。」
厳格な声が聞こえたのでその方向を見ると最初に確認した豪奢な衣装を着た壮年の男性からだった。
「貴方は何者ですか?」
正悟兄さんはその男性に問いかける。
「そう警戒をしないでほしい・・・。私たちは君達の味方だ。」
壮年の男性は答えた。
「私はこのヴァルコイネン王国の王であるグラン・ヴァルコイネン。」
「ヴァルコイネン・・・?」
正悟兄さんは首を傾げる。
「あの・・・聞いたことがない国の名前ですが?」
そう聞いたのは美玖だった。
その声を聞いて改めて周りを見ると美玖の他に美香姉さんに美紀姉さん、美沙姉さんに正文兄さんが近くにいる。
「そうだな・・・。まずは、君たちにはこの世界のこととこの世界に君たちを呼んだ理由を話さなければな・・・。」
そう言ってグラン王が説明をしてくれる。
この世界は地球とは違う世界「ブリストア」。
僕たちの世界と違って魔法があり魔物が蔓延る世界だ。
まあ、アニメや漫画でよくある異世界トリップだということが分かった。
そして、この国、「ヴァルコイネン王国」は東西南北の強大な国に囲まれた小国だということだ。
そして、ヴァルコイネン王国は東西南北の大国からの侵略に怯える毎日を過ごしているとのことだ。
さらに、最南には魔王率いる魔王軍が台頭しており世界の危機とのことだった。
そんな切迫した状況にもかかわらず東西南北の国では小競り合いが絶えず中央にあるヴァルコイネン王国に対して各国から協力体制という侵略行為が行われているとのことだ。
そして、ヴァルコイネン王国が取った行動が「勇者召喚」だった。
「我が王国の古文書にはかつて世界が混乱に陥った時、6人の勇者により平和を取り戻したという記録がある。そして、我らはそれに縋ることにした。」
「6人?」
その時、僕は違和感を覚えた。
それを口にしたのは正文兄さんだった。
「俺達、7人居るんだが・・・。」
「は?」
グラン王は呆けた顔をする。
「そんなはずは・・・。」
そう言ってグラン王は僕達の人数を数える。そして、顔を青くする。
「7人いるだと・・・?」
その瞬間、周りがざわつく。
「あの・・・これってどういうことです?」
美香姉さんが聞くとグラン王が答える。
「いや・・・これは何かの間違いなのか・・・?」
そう言って少し考えた後、グラン王。
「君達はこの世界に召喚されたとき鐘の音を聞かなかったか?」
「鐘の音?」
そう言われても僕はよく分からなかった。
しかし、僕以外の兄妹は何か心当たりがあったみたいで頷く。
「なるほど・・・アレが何かの合図なんだな・・・。」
正悟兄さんは納得していた。
周りを見ていると他の兄妹達もそれぞれ心当たりがあるみたいだ。
「ねぇ・・・。それってどんな音だったの?」
僕が聞くと美香姉さんは驚きの顔をする。
「正真・・・まさか?」
「えっと・・・。僕は聞いてないみたいな・・・。」
僕は冷や汗を流しながら答えると・・・。
「なんと!?」
その瞬間、グラン王は険しい顔をする。
(やばい・・・。この流れって僕追い出されるのでは!?)
僕は顔を更に青くする。
そんな僕を美香姉さんが抱きしめる。
「大丈夫・・・。私が正真を守るから・・・。」
「美香姉さん・・・。」
僕は美香姉さんに抱きしめられて少し安心する。
「グラン王、俺達を元の世界に戻すことは出来るのですか?」
「・・・不可能だ。」
グラン王は静かに答える。
「ふざけるな!」
その時、正文兄さんが叫ぶ。
「俺達を元の世界に帰せよ!今すぐ!」
「出来ないのだ・・・。」
「お前たちの事情に俺達を巻き込むんじゃねぇ!」
「正文・・・。」
正悟兄さんが正文兄さんの肩に手を置く。
「落ち着け・・・。」
「でもよぉ!」
「ここで、俺たちが騒いだところで状況は変わらない。それに、この数を相手に俺達にはどうすることも出来ないだろ?」
「くっ・・・!」
正文兄さんは悔しそうに黙り込む。
「しかし、俺達も無条件で貴方たちに従うつもりはありません。」
「そうだろうな・・・。」
グラン王は正悟兄さんをまっすぐ見つめる。
「我々が出来る限りの支援をすることを約束しよう。それと並行してお主たちを元の世界に戻す方法も模索する。これで、良いか?」
「・・・わかりました。ですが、もし約束を違える場合があれば・・・。」
「覚悟は出来ている。」
そう言ってグラン王は膝をつく。
「王!?いったい何を!?」
「私に出来る精一杯の誠意だ。6人の勇者はもちろん関係ない少年を我らの事情に巻き込んでしまった。」
グラン王は言葉を続ける。
「しかし、我らも後がない。なので、無礼を承知でお願いをする。どうか、私たちに力を貸してはくれないだろうか?」
そう言ってグラン王は頭を下げる。
「正悟兄さん・・・。」
「なんだ?」
「どうせ、元の世界に帰るまではやることがないんだから王様の手伝いをしてあげようよ。」
グラン王は驚いたように顔を上げる。
正悟兄さんは僕を見る。
「お前はそれでいいのか?」
「うん・・・。でも、これは僕の決断だ。後は、兄さん達が決めるべきだよ。」
「・・・そうか。」
正悟兄さんは兄妹達を見渡す。
「私は、正真が居るなら・・・。」
「正悟兄さんが決めたことなら従うわ。」
「私も!」
「皆が居る場所が私の居場所だから・・・。」
美香姉さん、美沙姉さん、美紀姉さん、美玖がそれぞれ答える。
「正文はどうする?」
正悟兄さんが正文兄さんを見る。
「俺は、納得した訳じゃない。だが、皆が残るのなら俺も残る。」
「では!?」
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