僕はどうやら神様の手違いにより飛ばされたみたいです。 旧バージョン

わっしー

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43話 護衛任務 正真・マリア・シルビア・ジラルド編

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「では、今回はよろしくお願いしますね、冒険者様。」
そう言うのは僕達と同い年くらいの少年だった。
「はい、任せてください!」
今回、僕たちが護衛することになったのはこの少年商人だった。
まだ駆け出しの商人のため護衛は僕らみたいなEランクの冒険者しか雇えなかったみたいだ。
「故郷の村には半年ぶりに戻るんです!みんな元気でやっているかな?」
嬉しそうに語る彼が乗る馬には彼の家族のために買ったと思われるお土産が乗っていた。
「今回は結構稼げたから良かったです!まあ、稼げなかったら故郷に帰ることは出来ませんけどね!」
笑いながら少年は今回のクエストの詳細を語る。
「故郷の村までは2日程の道程になります。皆さんにはその間の身辺警護をお願いしたいと思います。そこまで強い魔物は出ませんが最近は盗賊も増えてきていて危険みたいですからね・・・。」
「盗賊ですか?」
「はい。冒険者になれなかった、ならず者が暴れているみたいです。僕みたいな商人とかには脅威ですが冒険者になれるほどの力を持っている皆さんなら難なく倒すことが出来るでしょう。」
どうやら、そこまで強いわけでもないみたいだ。
それを聞いて少し安心する。
「では、皆さん。よろしくお願いします。」

僕達はシニネン王国の城下町を出て僕たちは依頼主である商人のぺリスと共に彼の故郷の村に向けて出発した。
「ぺリスさんはどうして商人に?」
「俺の家って農家なんだ。兄妹も8人いてその中で俺は5番目。貧しい家だからな・・・。家や畑を継ぐ長男以外は他の職を探さないといけなくなったという時に俺と同じような境遇の連中と集まって冒険者を目指したんだ。」
「ぺリスさんも冒険者なんですか?」
「いや・・・。俺は結局、冒険者になることが出来なかったんですよ。戦いのセンスも魔法の才能もなかったので・・・。」
ぺリスさんは苦笑いを浮かべる。
「そんな時に、俺の師匠である商人と出会って弟子入りすることになったんだ。それからは読み書き計算を学んで今年、独り立ちしたばっかりという訳さ!」
「そうなんですね・・・。」
「まあ、冒険者になれなかったのは残念だが今の仕事にもやりがいがあるし結果だけ見ればよかったと思いますよ。」
ぺリスさんは笑いながら言う。

その後、特に魔物や盗賊に出会うことなく一日目の道程は終了した。
「お待たせしました。」
僕は今日の夕飯を振る舞う。
「へぇ・・・。これは変わった料理ですね・・・。」
今日の献立は乾燥野菜と鶏ガラスープでだしを取り、乾麺をほぐしたもの・・・。
即席のラーメンもどきを作ってみた。
「これは僕の故郷でよく食べられていた料理なんです。こうやって一から作るのは初めてなので上手く出来たかどうかは分かりませんが・・・。」
乾麺はシニネンの城下町バザーで売っているものを使っている。
材料は小麦に似たものが使われており触感ももちもちしていた。
ラーメンの麺というよりはうどんに近い感じの触感だが保存性が高いため買っておいたのだ。
「とても美味しいです!野菜の味と鶏の味がとても合っていてあっさりしてます。」
「ああ・・・。こんなおいしい料理初めて食べたよ。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。」
マリア達にも好評であっという間に鍋一杯分のラーメンもどきはなくなった。
「良かったら作り方を教えていただけませんか?これは良い商売になりそうだ。」
「いいですよ。」
僕は作り方をぺリスさんに教えるのだった。
そうして、一日目は何事もなく終わった。

二日目も同じように歩いているとガラの悪い連中が進路を塞ぐ。
「おっと・・・。ここは通行止めだぜ?ここを通りたければ通行料を払いな。」
「まあ、そこのお嬢ちゃんとお姉さんを差し出すっていうなら男連中は通してやらないこともないが・・・。」
そう言ってマリアとシルビアを見る男どもだった。
「ぺリスさん、彼らが例の盗賊ですか?」
「はい。しかも、結構名の知れた盗賊みたいですね・・・。討伐依頼も出ていたような・・・。」
「おい!返事ぐらいしやが・・・。」
男が僕に触れようとした時、男は宙に飛んでいた。
「・・・あら、ごめんなさい。私の主に汚い手が触れてそうになったからつい投げ飛ばしてしまったわ。」
そう言うシルビアだが目は笑っていない。
「その汚らわしい目で私達を見ていたようだけど・・・。覚悟は良いかしら?」
「な・・・なんだ!?この女!?ボスを片手で投げ飛ばしやがった!?」
どうやら投げ飛ばされたのはこの盗賊団のボスらしい。
「・・・みんな、こいつらを捕まえちゃおう。討伐依頼も出ているってことは懸賞金も出るだろうから・・・。」
「わかったわ。指示をお願い、ショウマ。」
僕は盗賊たちを見る。
盗賊たちは全員皮の鎧を着こみボスである盗賊は剣を腰に差している。それ以外は短剣を身に付けているみたいだ。
「シルビアとジラルドは短剣を持っている盗賊をお願い。マリアはぺリスさんを守りながら援護を。」
『はい!』
「僕はあのボスを倒すから・・・。」
「小僧が舐めた真似を・・・。」
盗賊のボスが僕を睨み付ける。
盗賊のボスのヘイトは完全に僕に集まったみたいだ。
(ここまでは作戦通りだな・・・。)
盗賊たちの戦力は大したことはない。
だが、連携を取られると少々面倒だ。
そのため、連携を取られない様にボスの注意を僕に引き付けてその間に他を片付けてもらうことにした。
(まあ、それが出来たのはシルビアが盗賊のボスを投げ飛ばしてくれたからだけどね・・・。)
そのおかげで盗賊のボスは冷静さを失いこうして挑発に乗ってくれたわけだけど・・・。
「さて、頑張らないとな・・・。」
僕は盾を割って構える。
このパーティーの中では一番弱いのが僕だ。強化魔法を纏えない僕は自身の身体能力だけで戦わないといけない。
「魔力を集中させて・・・。」
僕は破魔魔法を発動する。
「へっ!一対一だというのに魔法なんて使いやがって!」
そう言って盗賊のボスは剣を振りあげて迫って来る。
「死ね!」
剣が振り下ろされる。その剣を僕は盾で受け止めた。
「「デスペル」!」
次の瞬間、盗賊の身体が銀の光に包まれる。
「な・・・何をしやがった!?」
銀の魔力に包まれた瞬間、盗賊のボスの剣の力が弱まる。
僕は盗賊のボスが混乱している隙に腹部を殴打した。
「ぐお!?」
しかし、一発では意識を刈り取ることが出来なかったため僕は連続で殴打する。
「・・・ぐ・・・ふ・・・。」
何発目かわからない殴打の末、やっと盗賊のボスは白目を剥いて倒れる。
「ふう・・・。やっぱり、もう少し力をつけないとね・・・。」
「そうね。」
何時の間にかシルビアが横に立っていた。
「この依頼を終えたら、また鍛えてあげるわ。」
「お手柔らかによろしくね、シルビア。」
この後、僕たちは盗賊たちを縛り上げて村まで連行した。
村の自警団に引き渡してぺリスさんの荷物を下ろしたところで護衛任務は無事終了となった。
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