僕はどうやら神様の手違いにより飛ばされたみたいです。 旧バージョン

わっしー

文字の大きさ
上 下
26 / 57

25話 兄妹の決意

しおりを挟む
「・・・行ってしまったか。」
俺は剣をしまう。
「まあ、思わぬ反撃を受けたがな・・・。」
そう言って正文は腹を押さえながら刀を鞘に戻す。
「でも、いいの?ミーシャ女王と二人の王子・王女を見逃したらケルタイネンの連中が間違いなく攻め入ってくると思うよ?」
「・・・いや、どちらにしてもケルタイネンとの戦争は止めることは出来ないさ。今回ミーシャ女王たちを彼方に引き渡そうとした理由は俺達兄妹の身の安全の保障のためだったんだがな・・・。」
俺はため息を吐く。
今回の件で正真を城に軟禁する。
正真の自由は無くなるが城から出ない限り安全ではある。
その間にこの世界の問題をすべて解決すればよいと思っていた。
その後は元の世界に帰る方法を探しながら平和に過ごそうと思っていたのだが・・・。
「まさか、正真があそこまで抵抗するとは思わなかったな・・・。」
正真は破魔魔法を使い俺たちに戦いを挑んだ。
力の差は歴然だというのにアイツも途中までは諦めていた様子だった。
「あの、ケルタイネンの王女が邪魔をしなければな・・・。」
あの銀色の光は正真に力を与え、結果俺たちは正真たちを取り逃すことになった。
「まあ、それは仕方ないんじゃない?それでどうする?ケルタイネンの王子に士官でもする?」
「・・・いや、ミーシャ女王の状況やグラルド王子の評判から考えると愚策だろうな・・・。」
俺は美沙の言葉に首を振る。
「じゃあ、どうするんだよ?」
「・・・考えはあるさ。」
俺は二人に向き直る。
「俺が前線に立ってお前たちが逃げる時間を稼ぐ。幸い、俺の魔法は戦闘向きだ。前線に立っても違和感はないだろう・・・。」
「・・・正悟兄さん、本気で言っているのか?」
「ああ・・・。お前たちの配置は後方に置くようにする。正文と美沙は美香たちを守るための護衛として後方に下がらせるように俺が王に進言しよう。」
「そんなことしたら兄さんが!?」
「こうなった責任は俺だ。俺が全て片を付ける。」
「兄さん・・・。」
「正文、美沙。後のことは頼んだ。」
「いや、俺も戦うさ。」
「正文?」
「私も!私達兄妹が力を合わせればケルタイネンの奴なんかに負けないわ!」
「・・・いいのか?危険だぞ?」
「私も賛成ね。」
声の方向を見るとそこには美香たちがいた。
「そのケルタイネンの王子を倒せば戦争は終わるはずだわ。そうすれば、正真だって私の元に戻ってきてくれるかもしれない。」
「私たちは家族。だから責任も家族全員で背負うのが普通・・・。」
「また、家族で平和に暮らすために頑張ろう、正悟兄さん。」
美香と美紀、美玖が口々に言う。
「・・・すまない。」
俺はそんな家族たちに頭を下げるのだった。

『ここまで来れば安心よ。』
そう言ってシルビアは僕をそっと下ろしてくれた。
あの後、兄さん達の追撃もなく王城の裏にある森に潜ることが出来た。
「ありがとう、シルビア。」
そう言いながらも僕はさっきから激しい倦怠感を感じていた。
『無理はしないで・・・。貴方は限界以上の魔力を放出したのだから今はゆっくり休みなさい・・・。』
「僕に何が起こったの?いきなり力が沸き上がってきたのだけど・・・。」
「あれは、マギカ・ブースト。」
「マギカ・ブースト?」
僕が聞き返すとミーシャ女王が頷く。その腕には眠っているマリア王女を抱えている。
「魔力を一時的に増幅させる魔法です。対象に自身の魔力を付与させて魔力を一時的に底上げすることが出来ます。まあ、負担も大きいですから使いどころに困る魔法ですけどね・・・。」
「そうなんですね・・・。」
「この魔法の発動条件も特殊で、その対象に強い思い入れが無いと発動しません。それだけ、マリアは貴方のことを大切に思っていたということですね・・・。」
ミーシャ女王は少し寂しそうにマリア王女を見る。
「さて、今は休みましょう?この後のことは明日ゆっくりお話ししましょう・・・。」
その言葉を最後に僕は眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処理中です...