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25話 兄妹の決意
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「・・・行ってしまったか。」
俺は剣をしまう。
「まあ、思わぬ反撃を受けたがな・・・。」
そう言って正文は腹を押さえながら刀を鞘に戻す。
「でも、いいの?ミーシャ女王と二人の王子・王女を見逃したらケルタイネンの連中が間違いなく攻め入ってくると思うよ?」
「・・・いや、どちらにしてもケルタイネンとの戦争は止めることは出来ないさ。今回ミーシャ女王たちを彼方に引き渡そうとした理由は俺達兄妹の身の安全の保障のためだったんだがな・・・。」
俺はため息を吐く。
今回の件で正真を城に軟禁する。
正真の自由は無くなるが城から出ない限り安全ではある。
その間にこの世界の問題をすべて解決すればよいと思っていた。
その後は元の世界に帰る方法を探しながら平和に過ごそうと思っていたのだが・・・。
「まさか、正真があそこまで抵抗するとは思わなかったな・・・。」
正真は破魔魔法を使い俺たちに戦いを挑んだ。
力の差は歴然だというのにアイツも途中までは諦めていた様子だった。
「あの、ケルタイネンの王女が邪魔をしなければな・・・。」
あの銀色の光は正真に力を与え、結果俺たちは正真たちを取り逃すことになった。
「まあ、それは仕方ないんじゃない?それでどうする?ケルタイネンの王子に士官でもする?」
「・・・いや、ミーシャ女王の状況やグラルド王子の評判から考えると愚策だろうな・・・。」
俺は美沙の言葉に首を振る。
「じゃあ、どうするんだよ?」
「・・・考えはあるさ。」
俺は二人に向き直る。
「俺が前線に立ってお前たちが逃げる時間を稼ぐ。幸い、俺の魔法は戦闘向きだ。前線に立っても違和感はないだろう・・・。」
「・・・正悟兄さん、本気で言っているのか?」
「ああ・・・。お前たちの配置は後方に置くようにする。正文と美沙は美香たちを守るための護衛として後方に下がらせるように俺が王に進言しよう。」
「そんなことしたら兄さんが!?」
「こうなった責任は俺だ。俺が全て片を付ける。」
「兄さん・・・。」
「正文、美沙。後のことは頼んだ。」
「いや、俺も戦うさ。」
「正文?」
「私も!私達兄妹が力を合わせればケルタイネンの奴なんかに負けないわ!」
「・・・いいのか?危険だぞ?」
「私も賛成ね。」
声の方向を見るとそこには美香たちがいた。
「そのケルタイネンの王子を倒せば戦争は終わるはずだわ。そうすれば、正真だって私の元に戻ってきてくれるかもしれない。」
「私たちは家族。だから責任も家族全員で背負うのが普通・・・。」
「また、家族で平和に暮らすために頑張ろう、正悟兄さん。」
美香と美紀、美玖が口々に言う。
「・・・すまない。」
俺はそんな家族たちに頭を下げるのだった。
『ここまで来れば安心よ。』
そう言ってシルビアは僕をそっと下ろしてくれた。
あの後、兄さん達の追撃もなく王城の裏にある森に潜ることが出来た。
「ありがとう、シルビア。」
そう言いながらも僕はさっきから激しい倦怠感を感じていた。
『無理はしないで・・・。貴方は限界以上の魔力を放出したのだから今はゆっくり休みなさい・・・。』
「僕に何が起こったの?いきなり力が沸き上がってきたのだけど・・・。」
「あれは、マギカ・ブースト。」
「マギカ・ブースト?」
僕が聞き返すとミーシャ女王が頷く。その腕には眠っているマリア王女を抱えている。
「魔力を一時的に増幅させる魔法です。対象に自身の魔力を付与させて魔力を一時的に底上げすることが出来ます。まあ、負担も大きいですから使いどころに困る魔法ですけどね・・・。」
「そうなんですね・・・。」
「この魔法の発動条件も特殊で、その対象に強い思い入れが無いと発動しません。それだけ、マリアは貴方のことを大切に思っていたということですね・・・。」
ミーシャ女王は少し寂しそうにマリア王女を見る。
「さて、今は休みましょう?この後のことは明日ゆっくりお話ししましょう・・・。」
その言葉を最後に僕は眠りに落ちた。
俺は剣をしまう。
「まあ、思わぬ反撃を受けたがな・・・。」
そう言って正文は腹を押さえながら刀を鞘に戻す。
「でも、いいの?ミーシャ女王と二人の王子・王女を見逃したらケルタイネンの連中が間違いなく攻め入ってくると思うよ?」
「・・・いや、どちらにしてもケルタイネンとの戦争は止めることは出来ないさ。今回ミーシャ女王たちを彼方に引き渡そうとした理由は俺達兄妹の身の安全の保障のためだったんだがな・・・。」
俺はため息を吐く。
今回の件で正真を城に軟禁する。
正真の自由は無くなるが城から出ない限り安全ではある。
その間にこの世界の問題をすべて解決すればよいと思っていた。
その後は元の世界に帰る方法を探しながら平和に過ごそうと思っていたのだが・・・。
「まさか、正真があそこまで抵抗するとは思わなかったな・・・。」
正真は破魔魔法を使い俺たちに戦いを挑んだ。
力の差は歴然だというのにアイツも途中までは諦めていた様子だった。
「あの、ケルタイネンの王女が邪魔をしなければな・・・。」
あの銀色の光は正真に力を与え、結果俺たちは正真たちを取り逃すことになった。
「まあ、それは仕方ないんじゃない?それでどうする?ケルタイネンの王子に士官でもする?」
「・・・いや、ミーシャ女王の状況やグラルド王子の評判から考えると愚策だろうな・・・。」
俺は美沙の言葉に首を振る。
「じゃあ、どうするんだよ?」
「・・・考えはあるさ。」
俺は二人に向き直る。
「俺が前線に立ってお前たちが逃げる時間を稼ぐ。幸い、俺の魔法は戦闘向きだ。前線に立っても違和感はないだろう・・・。」
「・・・正悟兄さん、本気で言っているのか?」
「ああ・・・。お前たちの配置は後方に置くようにする。正文と美沙は美香たちを守るための護衛として後方に下がらせるように俺が王に進言しよう。」
「そんなことしたら兄さんが!?」
「こうなった責任は俺だ。俺が全て片を付ける。」
「兄さん・・・。」
「正文、美沙。後のことは頼んだ。」
「いや、俺も戦うさ。」
「正文?」
「私も!私達兄妹が力を合わせればケルタイネンの奴なんかに負けないわ!」
「・・・いいのか?危険だぞ?」
「私も賛成ね。」
声の方向を見るとそこには美香たちがいた。
「そのケルタイネンの王子を倒せば戦争は終わるはずだわ。そうすれば、正真だって私の元に戻ってきてくれるかもしれない。」
「私たちは家族。だから責任も家族全員で背負うのが普通・・・。」
「また、家族で平和に暮らすために頑張ろう、正悟兄さん。」
美香と美紀、美玖が口々に言う。
「・・・すまない。」
俺はそんな家族たちに頭を下げるのだった。
『ここまで来れば安心よ。』
そう言ってシルビアは僕をそっと下ろしてくれた。
あの後、兄さん達の追撃もなく王城の裏にある森に潜ることが出来た。
「ありがとう、シルビア。」
そう言いながらも僕はさっきから激しい倦怠感を感じていた。
『無理はしないで・・・。貴方は限界以上の魔力を放出したのだから今はゆっくり休みなさい・・・。』
「僕に何が起こったの?いきなり力が沸き上がってきたのだけど・・・。」
「あれは、マギカ・ブースト。」
「マギカ・ブースト?」
僕が聞き返すとミーシャ女王が頷く。その腕には眠っているマリア王女を抱えている。
「魔力を一時的に増幅させる魔法です。対象に自身の魔力を付与させて魔力を一時的に底上げすることが出来ます。まあ、負担も大きいですから使いどころに困る魔法ですけどね・・・。」
「そうなんですね・・・。」
「この魔法の発動条件も特殊で、その対象に強い思い入れが無いと発動しません。それだけ、マリアは貴方のことを大切に思っていたということですね・・・。」
ミーシャ女王は少し寂しそうにマリア王女を見る。
「さて、今は休みましょう?この後のことは明日ゆっくりお話ししましょう・・・。」
その言葉を最後に僕は眠りに落ちた。
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