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23話 託す者
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「君達には申し訳ないと思っている。」
そう言ってショウマ様のお兄様であるショウゴ様は剣を抜く。
「だが、俺にも守るモノがあるんだ。俺の家族を危険な目に遭わせることは出来ない・・・。」
「あの!私はどうなっても構いません!だから、他の者は逃がしては頂けないでしょうか!?」
「姉上!?」
「姉さま、何を言っているの?」
姉さまの言葉に私は驚く。
「私の首なら捧げましょう!グラルドの真意に気が付かず国を追われた女王の最後には相応しい最後です。でも!アルスとマリア、それにこんな私たちに手を貸してくれたショウマは逃がしてくれませんか?」
「姉上!馬鹿なことを言うな!姉上を置いて俺達だけ逃げるなんて出来るか!?」
「そうだよ、姉さま!私、姉さまがいないと・・・。」
「二人共・・・。」
「残念ながらそれは無理なのよ・・・。」
そう言うのはショウマ様の姉のミサ様だった。
「私だって心情的にはアンタたちを助けてあげたいと思う。そっちの女王様の提案だって受けるのだって私個人としては賛成だよ。」
「では・・・。」
「話はちゃんと聞こうね、女王様?“私個人としては賛成”ってことでこの国やそのグラルドとかいう奴の要求としてはアンタたち全員を差し出さないと戦争は回避できないのよ。一人でも欠けていれば難癖付けて侵攻してくるだろうしね・・・。アンタなら分かるよね?」
「・・・。」
姉さまは何も言えなくなる。確かにグラルド兄様ならやりかねない。
「こっちとしては少しでも戦争を回避する可能性を高くするために行動するしかないわけ・・・。だから、ゴメンね。」
そう言ってミサ様も槍を構える。
「ミーシャ様、お下がりください!ここは私が!」
「ダグラス・・・。でも、貴方一人では・・・。」
「俺も戦ってみるさ・・・。勇者相手にどれほど善戦出来るかわからないけどな・・・。」
「アルス・・・。」
「マリア。」
アルス兄様は前を向きながら私に語り掛ける。
「俺たちが少しでも時間を稼ぐ。最悪、お前だけでも逃げるんだ・・・。」
「そんなことできないよ!」
「お前が逃げ切ればケルタイネンの王族の血は続く。大丈夫、お前とショウマを逃がす時間ぐらいは稼いでやるさ・・・。」
「お兄様・・・。」
「まあ、俺の初めての友が俺の大切な妹の番になるのならこんなに幸せなことはないさ・・・。」
そう言ってアルス兄様は剣を構える。
「幸せにな・・・マリア。」
そう言ってアルス兄様とダグラスは勇者に突っ込んでいく。
「悪いがここで足止めをさせてもらうぞ、勇者!!」
そう言って俺は剣を振り下ろす。
そんな俺の剣をショウマの兄である勇者が受け止める。
「そういう訳にはいかないんだ。お前はここで捕縛させてもらう。」
そう言って俺の剣を弾き、間合いを取ると剣を持っていない左手に魔力を集める。その光は純白で目が眩みそうだった。
「くっ。」
「追尾しろ「レーザー」。」
光の速さで俺に光線が迫る。俺は勘を頼みに身体を横に反らす。
紙一重で何とか避けたがかすった個所は焦げていた。
「・・・なるほどな。お前は「光魔法」の使い手か?」
「その通りだ。」
光魔法は初代勇者の一人が保有していた魔法。
その光は悪しき者達を消し去るという言い伝えがあるが、威力は本当に言い伝え通りみたいだ。
(ちっ・・・。勇者って奴は本当に化け物だな・・・。獣人である俺の速さについて来ている。)
獣人と人では力や俊敏性という観点で大きな差がある。しかし、目の前の男に俺は押されている。
「これが、勇者か・・・。」
俺の獣人としての本能が逃げろと言っている。こいつはけた違いの化け物だ・・・。
「・・・ほう。獣人は強者との力量を計るのが得意だと聞いていたが?」
「そうだな・・・。俺の本能が告げているよ。この場から逃げろって・・・。でもな、俺は逃げるわけにはいかねえんだ!」
「それは王子としての教示か?」
「いいや!俺はもう、全てを妹とショウマに託した。俺がここで死のうとも二人が居ればケルタイネンは終わらない!だから、ここで逃げるわけにはいかないんだよ!!」
「・・・そうか。」
勇者は俺を睨む。
「お前とショウマが出会わなければよかったのに・・・。そうすれば俺たちはいつまでも静かに暮らせたはずなのに・・・。」
勇者は剣を振る。俺との距離は30m。刃が届くはずはない。それでも、毛が逆立ち俺は咄嗟に避ける。
すると、今まで俺がいた場所に閃光が走りまばゆい光に包まれる。
「獣人というのはやりにくいな・・・。まさか、この攻撃を避けられるとは思わなかった。」
勇者は俺を見下した目で見る。
「俺たちはお前たちを許すことはない。俺の大切な兄弟を誑かし罪ここで償うがいい!!」
「しまった!?」
俺は体勢を崩しており動けないでいた。迫るのは光の槍。
(ああ・・・これでお終いなのか・・・。)
俺はやけにゆっくりと感じる時間の中思う。
(あとは、頼んだぞ。マリア・・・ショウマ・・・。)
大切な妹と友を思い俺は目を閉じた。
俺の意識は銀の光に飲み込まれる。
そう言ってショウマ様のお兄様であるショウゴ様は剣を抜く。
「だが、俺にも守るモノがあるんだ。俺の家族を危険な目に遭わせることは出来ない・・・。」
「あの!私はどうなっても構いません!だから、他の者は逃がしては頂けないでしょうか!?」
「姉上!?」
「姉さま、何を言っているの?」
姉さまの言葉に私は驚く。
「私の首なら捧げましょう!グラルドの真意に気が付かず国を追われた女王の最後には相応しい最後です。でも!アルスとマリア、それにこんな私たちに手を貸してくれたショウマは逃がしてくれませんか?」
「姉上!馬鹿なことを言うな!姉上を置いて俺達だけ逃げるなんて出来るか!?」
「そうだよ、姉さま!私、姉さまがいないと・・・。」
「二人共・・・。」
「残念ながらそれは無理なのよ・・・。」
そう言うのはショウマ様の姉のミサ様だった。
「私だって心情的にはアンタたちを助けてあげたいと思う。そっちの女王様の提案だって受けるのだって私個人としては賛成だよ。」
「では・・・。」
「話はちゃんと聞こうね、女王様?“私個人としては賛成”ってことでこの国やそのグラルドとかいう奴の要求としてはアンタたち全員を差し出さないと戦争は回避できないのよ。一人でも欠けていれば難癖付けて侵攻してくるだろうしね・・・。アンタなら分かるよね?」
「・・・。」
姉さまは何も言えなくなる。確かにグラルド兄様ならやりかねない。
「こっちとしては少しでも戦争を回避する可能性を高くするために行動するしかないわけ・・・。だから、ゴメンね。」
そう言ってミサ様も槍を構える。
「ミーシャ様、お下がりください!ここは私が!」
「ダグラス・・・。でも、貴方一人では・・・。」
「俺も戦ってみるさ・・・。勇者相手にどれほど善戦出来るかわからないけどな・・・。」
「アルス・・・。」
「マリア。」
アルス兄様は前を向きながら私に語り掛ける。
「俺たちが少しでも時間を稼ぐ。最悪、お前だけでも逃げるんだ・・・。」
「そんなことできないよ!」
「お前が逃げ切ればケルタイネンの王族の血は続く。大丈夫、お前とショウマを逃がす時間ぐらいは稼いでやるさ・・・。」
「お兄様・・・。」
「まあ、俺の初めての友が俺の大切な妹の番になるのならこんなに幸せなことはないさ・・・。」
そう言ってアルス兄様は剣を構える。
「幸せにな・・・マリア。」
そう言ってアルス兄様とダグラスは勇者に突っ込んでいく。
「悪いがここで足止めをさせてもらうぞ、勇者!!」
そう言って俺は剣を振り下ろす。
そんな俺の剣をショウマの兄である勇者が受け止める。
「そういう訳にはいかないんだ。お前はここで捕縛させてもらう。」
そう言って俺の剣を弾き、間合いを取ると剣を持っていない左手に魔力を集める。その光は純白で目が眩みそうだった。
「くっ。」
「追尾しろ「レーザー」。」
光の速さで俺に光線が迫る。俺は勘を頼みに身体を横に反らす。
紙一重で何とか避けたがかすった個所は焦げていた。
「・・・なるほどな。お前は「光魔法」の使い手か?」
「その通りだ。」
光魔法は初代勇者の一人が保有していた魔法。
その光は悪しき者達を消し去るという言い伝えがあるが、威力は本当に言い伝え通りみたいだ。
(ちっ・・・。勇者って奴は本当に化け物だな・・・。獣人である俺の速さについて来ている。)
獣人と人では力や俊敏性という観点で大きな差がある。しかし、目の前の男に俺は押されている。
「これが、勇者か・・・。」
俺の獣人としての本能が逃げろと言っている。こいつはけた違いの化け物だ・・・。
「・・・ほう。獣人は強者との力量を計るのが得意だと聞いていたが?」
「そうだな・・・。俺の本能が告げているよ。この場から逃げろって・・・。でもな、俺は逃げるわけにはいかねえんだ!」
「それは王子としての教示か?」
「いいや!俺はもう、全てを妹とショウマに託した。俺がここで死のうとも二人が居ればケルタイネンは終わらない!だから、ここで逃げるわけにはいかないんだよ!!」
「・・・そうか。」
勇者は俺を睨む。
「お前とショウマが出会わなければよかったのに・・・。そうすれば俺たちはいつまでも静かに暮らせたはずなのに・・・。」
勇者は剣を振る。俺との距離は30m。刃が届くはずはない。それでも、毛が逆立ち俺は咄嗟に避ける。
すると、今まで俺がいた場所に閃光が走りまばゆい光に包まれる。
「獣人というのはやりにくいな・・・。まさか、この攻撃を避けられるとは思わなかった。」
勇者は俺を見下した目で見る。
「俺たちはお前たちを許すことはない。俺の大切な兄弟を誑かし罪ここで償うがいい!!」
「しまった!?」
俺は体勢を崩しており動けないでいた。迫るのは光の槍。
(ああ・・・これでお終いなのか・・・。)
俺はやけにゆっくりと感じる時間の中思う。
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