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21話 例え愚か者と言われても・・・。
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僕はその後、王城の一室に軟禁された。入口には見張りの兵士。城の高さは3階。
「・・・。」
このままではミーシャ女王たちはケルタイネンに送られてしまう。そして、グラルド王子のことだからミーシャ女王たちを始末しようとするだろう・・・。
「・・・何か方法はないのか?」
僕は考える。ミーシャ女王たちを逃がしてしまえばこの国に戦火が降り注ぎ多くの人たちが血を流すことだろう。
そして、その最前線で戦うのは兄さん達だ。
「・・・僕って本当に無能だな。」
僕にはどうすることも出来ないから兄さん達に頼って、拒否されれば暴言を吐く。これじゃあ本当に無能ではないか・・・。
「どうすればいいんだ・・・?」
ミーシャ女王たちを見捨ててこの国を守るか。
それとも、ミーシャ女王を助けてこの国を見捨てるか・・・。
「・・・。」
選べない。
この国の人の中には親しい人もいる。兄妹達だってこの国を見捨てようとは思わないだろう・・・。
でも、ミーシャ女王、アルス、マリアさん、ダグラスさん・・・。
彼らとはそんなに長い付き合いではないがそれでも一緒に過ごした時間は濃厚で・・・。
「・・・?」
その時、胸から垂れたモノが目に入る。それはミーシャ女王からもらったネックレスだった。
「・・・。」
『では、これはお借りするということで・・・。もし、平和な世の中になった時には必ずお返しします。』
『・・・ありがとう。』
「そうだよな・・・。約束は守らないといけないよな・・・。」
このネックレスは“貰った”のではなく“借り物”だ。平和な世の中になった時、ミーシャ女王に返すと約束したモノ・・・。
「なら、やることは決まったな・・・。」
僕は立ち上がる。
もう、手には枷は付いていない。
「・・・アルスたちがいる場所は多分地下牢だろうな・・・。」
この城内のことはこの一ヶ月で把握している。
「ここは、三階・・・。出入口には兵士が・・・。」
そして、窓を開ける。外はすっかり夜の帳が降りていた。夜風は少し冷たい・・・。
「下は倉庫だな・・・。」
頭の地図を広げる。そこまで降りることが出来れば地下牢まで向かうことが出来る。
「よし・・・。」
僕は準備をする。
ベッドを動かし、ベッドの脚にシーツを括り付けて窓から外に出る。
「開いててくれよ・・・。」
願いが通じたのか窓は空いていた。
「・・・よし。潜入成功・・・。」
僕は倉庫に降りると足音を立てないように移動する。
「・・・少し、拝借しておこう。」
倉庫には回復薬などの消耗品が保管されていた。僕は持てる分だけ詰め込んで倉庫から出た。
廊下に出ると巡回している兵士が通り過ぎるところだったので急いで隠れる。
その兵士は僕に気が付くことなく通り過ぎる。
「ここから地下牢までは・・・。」
頭の地図を広げる。
僕がいる倉庫から地下牢に行くまでには大したモノはなかったはずだ・・・。
「急ぐか・・・。」
僕はそのまま地下牢に向かった。
地下牢に降りるとそこには見張りの兵士が一人立っているだけだった。その兵士は欠伸をしており隙だらけだ。
「・・・ゴメン。」
僕は後ろから兵士の頭を強打して気絶させた。
兵士が床に叩きつかれる前に受け止めて手足を縛って転がしておく。そして、鍵を奪い奥へと向かう。
「ミーシャ女王様・・・。」
「ショウマ!?どうして、ここに!?」
「助けに来ました。今、鍵を開けます。」
そう言って僕は牢の鍵を開ける。
「ショウマ様!」
そう言ってマリア王女が抱き着いて来る。
「・・・ゴメン。結局力になれなくて・・・。」
「いいんです!ショウマ様が来てくださっただけで私は・・・!」
「・・・ゴメン。」
僕はマリア王女を優しく抱きしめる。
「それよりも急ぎましょう・・・。交代の兵士が来る前にここを出ないと・・・。」
「そうだな・・・。」
アルスとダグラスさんが立ちあがる。
「私たちの荷物は近くに保管されていたみたいです・・・。」
そう言ってダグラスさんはリュックを持ちあげる。
「私とアルス王子がしんがりを務めます。ショウマ殿、案内をお願いできますか?」
「わかりました。シルビアとジラルドの所に向かいましょう。」
こうして、僕たちは地下牢から出るのだった。
「・・・。」
このままではミーシャ女王たちはケルタイネンに送られてしまう。そして、グラルド王子のことだからミーシャ女王たちを始末しようとするだろう・・・。
「・・・何か方法はないのか?」
僕は考える。ミーシャ女王たちを逃がしてしまえばこの国に戦火が降り注ぎ多くの人たちが血を流すことだろう。
そして、その最前線で戦うのは兄さん達だ。
「・・・僕って本当に無能だな。」
僕にはどうすることも出来ないから兄さん達に頼って、拒否されれば暴言を吐く。これじゃあ本当に無能ではないか・・・。
「どうすればいいんだ・・・?」
ミーシャ女王たちを見捨ててこの国を守るか。
それとも、ミーシャ女王を助けてこの国を見捨てるか・・・。
「・・・。」
選べない。
この国の人の中には親しい人もいる。兄妹達だってこの国を見捨てようとは思わないだろう・・・。
でも、ミーシャ女王、アルス、マリアさん、ダグラスさん・・・。
彼らとはそんなに長い付き合いではないがそれでも一緒に過ごした時間は濃厚で・・・。
「・・・?」
その時、胸から垂れたモノが目に入る。それはミーシャ女王からもらったネックレスだった。
「・・・。」
『では、これはお借りするということで・・・。もし、平和な世の中になった時には必ずお返しします。』
『・・・ありがとう。』
「そうだよな・・・。約束は守らないといけないよな・・・。」
このネックレスは“貰った”のではなく“借り物”だ。平和な世の中になった時、ミーシャ女王に返すと約束したモノ・・・。
「なら、やることは決まったな・・・。」
僕は立ち上がる。
もう、手には枷は付いていない。
「・・・アルスたちがいる場所は多分地下牢だろうな・・・。」
この城内のことはこの一ヶ月で把握している。
「ここは、三階・・・。出入口には兵士が・・・。」
そして、窓を開ける。外はすっかり夜の帳が降りていた。夜風は少し冷たい・・・。
「下は倉庫だな・・・。」
頭の地図を広げる。そこまで降りることが出来れば地下牢まで向かうことが出来る。
「よし・・・。」
僕は準備をする。
ベッドを動かし、ベッドの脚にシーツを括り付けて窓から外に出る。
「開いててくれよ・・・。」
願いが通じたのか窓は空いていた。
「・・・よし。潜入成功・・・。」
僕は倉庫に降りると足音を立てないように移動する。
「・・・少し、拝借しておこう。」
倉庫には回復薬などの消耗品が保管されていた。僕は持てる分だけ詰め込んで倉庫から出た。
廊下に出ると巡回している兵士が通り過ぎるところだったので急いで隠れる。
その兵士は僕に気が付くことなく通り過ぎる。
「ここから地下牢までは・・・。」
頭の地図を広げる。
僕がいる倉庫から地下牢に行くまでには大したモノはなかったはずだ・・・。
「急ぐか・・・。」
僕はそのまま地下牢に向かった。
地下牢に降りるとそこには見張りの兵士が一人立っているだけだった。その兵士は欠伸をしており隙だらけだ。
「・・・ゴメン。」
僕は後ろから兵士の頭を強打して気絶させた。
兵士が床に叩きつかれる前に受け止めて手足を縛って転がしておく。そして、鍵を奪い奥へと向かう。
「ミーシャ女王様・・・。」
「ショウマ!?どうして、ここに!?」
「助けに来ました。今、鍵を開けます。」
そう言って僕は牢の鍵を開ける。
「ショウマ様!」
そう言ってマリア王女が抱き着いて来る。
「・・・ゴメン。結局力になれなくて・・・。」
「いいんです!ショウマ様が来てくださっただけで私は・・・!」
「・・・ゴメン。」
僕はマリア王女を優しく抱きしめる。
「それよりも急ぎましょう・・・。交代の兵士が来る前にここを出ないと・・・。」
「そうだな・・・。」
アルスとダグラスさんが立ちあがる。
「私たちの荷物は近くに保管されていたみたいです・・・。」
そう言ってダグラスさんはリュックを持ちあげる。
「私とアルス王子がしんがりを務めます。ショウマ殿、案内をお願いできますか?」
「わかりました。シルビアとジラルドの所に向かいましょう。」
こうして、僕たちは地下牢から出るのだった。
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