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20話 非情な現実
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僕は両手に枷をはめられて玉座に連行される。
その玉座には苦い顔をする王様の姿があった。玉座に続く両隣の通路には兄妹全員の姿があった。
「正真を連れてきました。」
正悟兄さんは僕の隣に立って片膝をつき報告する。
「ご苦労だった、正悟・・・。辛い役割を押し付けて申し訳ない・・・。」
「いえ、兄弟の不手際は兄妹間で処理するのが筋というもの・・・。グラド王がお気になさる必要はございません。」
そう言って正悟兄さんは顔を上げることなく答える。
「さて、ショウマよ。お主はケルタイネン王国に何をしに行ったのか報告してもらいたい。」
「・・・はい。」
僕はケルタイネンでの出来事を話す。
「・・・つまりお主は自分の意志でケルタイネンに向かったのだな?」
「はい。助けを求める者を放っておけませんでしたので・・・。その罰は受ける覚悟はできています。でも、ケルタイネンの・・・ミーシャ女王様たちの力になっては頂けませんか!?」
「正真!」
「ケルタイネンは今、帝国と手を組み力に溺れた暴虐者に支配されています!このままではケルタイネンの民たちはその暴虐者に食いつぶされてしまいます!そんなの可愛そうじゃないですか!!」
僕は王様の目を睨む。
「ケルタイネンだけじゃない!このヴァルコイネンだって奴らに蹂躙されるかもしれない!そんなのを許せるのですか!?」
「・・・お主の言う通りだ。」
「グラド王!?」
側近の男(確かこの国の大臣だったかな?)が驚いた声を出す。
「このままではケルタイネンとの戦争は必須だ。そうなればこの国は多くの血を流すことになるだろう・・・。」
「なら・・・!」
「しかし、向こうの王が条件を出してきた。」
「・・・条件?」
「ああ・・・。ミーシャ女王とアルス王子、マリア王女を差し出せばこの国には手を出さないという契約書を送ってきたのだ。」
そう言って出されたのは黄金に輝く羊皮紙だった。
「そんな・・・。そんなの嘘だという可能性も・・・!!」
「嘘偽りはない・・・。」
僕の言葉を王様は即座に否定する。
「この契約書は「真実の羊皮紙」に書かれている。この羊皮紙に書かれている内容を破ると神より神罰が下る。」
「そんな・・・。それじゃあ、ミーシャ女王たちを見捨てるのですか!?」
「この国のためだ。仕方がない・・・。」
王様の言葉に僕は我慢がならなかった。
「ふざけるな!!誰かを犠牲にした平和に何の意味があるんだよ!!あの人たちはこれからのケルタイネンに必要な人たちだ!そんな人たちを見殺しにしてしまったらケルタイネンにもこの国にも未来はないんだぞ!!」
「正真!!」
その声を聞いた瞬間、頬に鈍い痛みを感じた。
その痛みは即座に冷たいものに変わる。そして、口に広がるのは血の味だった。
「無礼だぞ!グラド王だって助けられるのなら助けたいと思っているさ!だがな!そんなことをすればこの国で多くの血が流れる!それぐらい解れ!!」
「・・・。」
上から正悟兄さんの声が降って来る。どうやら、床に押し付けられているようだ。
「これはしょうがないことなんだ。どんなに頑張っても血が流れるのなら少ない方が良いだろう?」
「だけど・・・。」
「兄さん、正真も突然のことだったから混乱しているのよ。あとは私に任せてくれない?」
「・・・わかった。」
そう言って正悟兄さんの手が離れる。
「正真・・・大丈夫?」
そう言って美香姉さんが手を差し出してくれたが僕はその手を取ることが出来ない。
「・・・みんなにはこの状況を打開する力があるのに何もしようとしないんだな?今、助けを求めている人がいるのに見捨てようとするならそんな力意味ないじゃないか・・・。」
「なに?」
「そんなの勇者じゃない!兄さん達は弱虫なんだ!楽な道しか選ばない臆病者なんだ!」
「・・・。」
「ちくしょう・・・。僕に力があれば・・・。どうして、僕には何もないんだよ・・・。」
僕は自分の無力さに絶望する。
これでは本当に無能ではないか・・・。
僕は悔しさに唇を噛み涙する。
その玉座には苦い顔をする王様の姿があった。玉座に続く両隣の通路には兄妹全員の姿があった。
「正真を連れてきました。」
正悟兄さんは僕の隣に立って片膝をつき報告する。
「ご苦労だった、正悟・・・。辛い役割を押し付けて申し訳ない・・・。」
「いえ、兄弟の不手際は兄妹間で処理するのが筋というもの・・・。グラド王がお気になさる必要はございません。」
そう言って正悟兄さんは顔を上げることなく答える。
「さて、ショウマよ。お主はケルタイネン王国に何をしに行ったのか報告してもらいたい。」
「・・・はい。」
僕はケルタイネンでの出来事を話す。
「・・・つまりお主は自分の意志でケルタイネンに向かったのだな?」
「はい。助けを求める者を放っておけませんでしたので・・・。その罰は受ける覚悟はできています。でも、ケルタイネンの・・・ミーシャ女王様たちの力になっては頂けませんか!?」
「正真!」
「ケルタイネンは今、帝国と手を組み力に溺れた暴虐者に支配されています!このままではケルタイネンの民たちはその暴虐者に食いつぶされてしまいます!そんなの可愛そうじゃないですか!!」
僕は王様の目を睨む。
「ケルタイネンだけじゃない!このヴァルコイネンだって奴らに蹂躙されるかもしれない!そんなのを許せるのですか!?」
「・・・お主の言う通りだ。」
「グラド王!?」
側近の男(確かこの国の大臣だったかな?)が驚いた声を出す。
「このままではケルタイネンとの戦争は必須だ。そうなればこの国は多くの血を流すことになるだろう・・・。」
「なら・・・!」
「しかし、向こうの王が条件を出してきた。」
「・・・条件?」
「ああ・・・。ミーシャ女王とアルス王子、マリア王女を差し出せばこの国には手を出さないという契約書を送ってきたのだ。」
そう言って出されたのは黄金に輝く羊皮紙だった。
「そんな・・・。そんなの嘘だという可能性も・・・!!」
「嘘偽りはない・・・。」
僕の言葉を王様は即座に否定する。
「この契約書は「真実の羊皮紙」に書かれている。この羊皮紙に書かれている内容を破ると神より神罰が下る。」
「そんな・・・。それじゃあ、ミーシャ女王たちを見捨てるのですか!?」
「この国のためだ。仕方がない・・・。」
王様の言葉に僕は我慢がならなかった。
「ふざけるな!!誰かを犠牲にした平和に何の意味があるんだよ!!あの人たちはこれからのケルタイネンに必要な人たちだ!そんな人たちを見殺しにしてしまったらケルタイネンにもこの国にも未来はないんだぞ!!」
「正真!!」
その声を聞いた瞬間、頬に鈍い痛みを感じた。
その痛みは即座に冷たいものに変わる。そして、口に広がるのは血の味だった。
「無礼だぞ!グラド王だって助けられるのなら助けたいと思っているさ!だがな!そんなことをすればこの国で多くの血が流れる!それぐらい解れ!!」
「・・・。」
上から正悟兄さんの声が降って来る。どうやら、床に押し付けられているようだ。
「これはしょうがないことなんだ。どんなに頑張っても血が流れるのなら少ない方が良いだろう?」
「だけど・・・。」
「兄さん、正真も突然のことだったから混乱しているのよ。あとは私に任せてくれない?」
「・・・わかった。」
そう言って正悟兄さんの手が離れる。
「正真・・・大丈夫?」
そう言って美香姉さんが手を差し出してくれたが僕はその手を取ることが出来ない。
「・・・みんなにはこの状況を打開する力があるのに何もしようとしないんだな?今、助けを求めている人がいるのに見捨てようとするならそんな力意味ないじゃないか・・・。」
「なに?」
「そんなの勇者じゃない!兄さん達は弱虫なんだ!楽な道しか選ばない臆病者なんだ!」
「・・・。」
「ちくしょう・・・。僕に力があれば・・・。どうして、僕には何もないんだよ・・・。」
僕は自分の無力さに絶望する。
これでは本当に無能ではないか・・・。
僕は悔しさに唇を噛み涙する。
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