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14話 悪意の塊
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俺は城の地下牢に幽閉された。手には魔力食いの腕輪が付けられており獣人の証である獣の耳や尻尾は消えていた。
獣人は人間やエルフのように体外から魔力を放出することが出来ない。その代わりその魔法の力を体内に溜めることで他の種族よりも強靭な肉体を手に入れることが出来る。
その表れが獣の耳と尻尾なのである。
「無様な姿だな、アルス。」
地下牢に現れたのはグラルド兄上だった。
「ふふ・・・。こうやってお前が無様に地下牢に入っている姿を見ていると最高の気持ちだよ。」
「・・・何しに来た?」
「な~に、可愛い弟の姿を拝みに来たのさ、アルス。」
その顔には邪悪な笑みが張り付いていた。
「しかし、姉上も馬鹿だよな・・・。いつもの姉上ならこんな紙切れで騙せるはずはなかったけど丁度お前が帝国に行ったことで俺としてはやりやすかったよ。」
「やっぱり、お前の仕業だったのか!?」
「ああ、そうさ。」
そう言ってグラルド兄上は楽しそうに語りだす。
「俺は気に入らなかった。俺を認めようとしない姉上も姉上に期待されているお前やマリアも・・・。」
そして、グラルド兄上は俺を睨み付けた。
「だから、俺は全てを壊してやろうと思ったのさ。姉上やお前はマリアのことを大切にしていたからそのマリアに何かがあれば何か行動を起こすだろうと思ったのさ。」
そして、兄上は笑い出す。
「本当に傑作だったよ!姉上やお前が動揺する姿は本当に滑稽で最高だった。それからお前はマリアの呪いを解くために帝国へ行ったと聞いた時、俺は奴隷商にお前を捕まえるように命じたんだ。」
「・・・奴隷商ともつながっていたのか?」
「ああ・・・。まあ、その様子だと上手くいかなかったようだがな・・・。まあ、最終的にお前の無様な姿を見れたのは僥倖と言ったところかな。」
「・・・。」
俺は兄上を睨む。昔から気に入らないと思っていたがまさか、ここまで腐っていたとは思っていなかった。
「お前が居なくなった後の姉上は本当に最高だったよ!すごい動揺しちゃってさ!俺の言うことなんでも聞いてくれるようになったよ!」
兄上は腹を抱えて笑う。その姿は本当に醜くてぞっとする。
「は~あ・・・。こんなに笑ったのは何年ぶりだろうな・・・。もうすぐお前やマリアが死ぬ。そうなったら次は姉上にも真実を聞かせながら徐々に衰弱させようかな・・・。ああ・・・姉上はどんな顔をするのだろう・・・。どんな言葉を投げかけるのだろう・・・。想像しただけでイッチャいそうだ!」
「・・・この下衆が!」
ガン!と俺は檻の柵を殴る。しかし、今の俺ではびくともしない。
「まあ、お前はここで死を待っていろよ。マリアも姉上もすぐにお前の所に送ってやるからさ・・・。本当に優しいな、俺は!」
そう言って兄上は地下牢から去っていった。
「・・・。」
俺は真実を知って動揺する気持ちを抑える。
「・・・頼んだぞ、ショウマ。」
俺はその場にいないショウマに祈るのだった。
獣人は人間やエルフのように体外から魔力を放出することが出来ない。その代わりその魔法の力を体内に溜めることで他の種族よりも強靭な肉体を手に入れることが出来る。
その表れが獣の耳と尻尾なのである。
「無様な姿だな、アルス。」
地下牢に現れたのはグラルド兄上だった。
「ふふ・・・。こうやってお前が無様に地下牢に入っている姿を見ていると最高の気持ちだよ。」
「・・・何しに来た?」
「な~に、可愛い弟の姿を拝みに来たのさ、アルス。」
その顔には邪悪な笑みが張り付いていた。
「しかし、姉上も馬鹿だよな・・・。いつもの姉上ならこんな紙切れで騙せるはずはなかったけど丁度お前が帝国に行ったことで俺としてはやりやすかったよ。」
「やっぱり、お前の仕業だったのか!?」
「ああ、そうさ。」
そう言ってグラルド兄上は楽しそうに語りだす。
「俺は気に入らなかった。俺を認めようとしない姉上も姉上に期待されているお前やマリアも・・・。」
そして、グラルド兄上は俺を睨み付けた。
「だから、俺は全てを壊してやろうと思ったのさ。姉上やお前はマリアのことを大切にしていたからそのマリアに何かがあれば何か行動を起こすだろうと思ったのさ。」
そして、兄上は笑い出す。
「本当に傑作だったよ!姉上やお前が動揺する姿は本当に滑稽で最高だった。それからお前はマリアの呪いを解くために帝国へ行ったと聞いた時、俺は奴隷商にお前を捕まえるように命じたんだ。」
「・・・奴隷商ともつながっていたのか?」
「ああ・・・。まあ、その様子だと上手くいかなかったようだがな・・・。まあ、最終的にお前の無様な姿を見れたのは僥倖と言ったところかな。」
「・・・。」
俺は兄上を睨む。昔から気に入らないと思っていたがまさか、ここまで腐っていたとは思っていなかった。
「お前が居なくなった後の姉上は本当に最高だったよ!すごい動揺しちゃってさ!俺の言うことなんでも聞いてくれるようになったよ!」
兄上は腹を抱えて笑う。その姿は本当に醜くてぞっとする。
「は~あ・・・。こんなに笑ったのは何年ぶりだろうな・・・。もうすぐお前やマリアが死ぬ。そうなったら次は姉上にも真実を聞かせながら徐々に衰弱させようかな・・・。ああ・・・姉上はどんな顔をするのだろう・・・。どんな言葉を投げかけるのだろう・・・。想像しただけでイッチャいそうだ!」
「・・・この下衆が!」
ガン!と俺は檻の柵を殴る。しかし、今の俺ではびくともしない。
「まあ、お前はここで死を待っていろよ。マリアも姉上もすぐにお前の所に送ってやるからさ・・・。本当に優しいな、俺は!」
そう言って兄上は地下牢から去っていった。
「・・・。」
俺は真実を知って動揺する気持ちを抑える。
「・・・頼んだぞ、ショウマ。」
俺はその場にいないショウマに祈るのだった。
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