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11話 状況説明
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11話 状況説明
王国を出てから数日が過ぎた。
僕達の旅路は特にトラブルもなく進んでいた。
「でも、魔物とかが襲ってこないね・・・。ゲームとかだとよくエンカウントするんだけど・・・。」
「げーむというのは分からないが魔物が襲ってこないのは私がいるからだと思うわ。」
「どういうこと?」
シルビアに聞いたところ胸を張りながら答える。
「私はシルバーウルフ。そこら辺の魔物とは格が違うのよ。魔物というのは本能で生きているから格上の相手を見ても襲ってくることはないわ。」
「そうなんだね・・・。」
まあ、確かに人間に変身できるほどの魔物となると上位の個体なんだろうなということが分かる。
「それよりも、獣人。あんたの国まであとどれくらいなのかしら?」
「そうだな・・・。あと、二日という所だな?」
アルスは前を見ながら答える。アルスとシルビアの関係はお世辞にも良いとは言えない。
まあ、シルビアがアルスを警戒しているだけなのでそんなに気にすることはないかなと思う。
気にしたところでどうすることも出来ないし・・・。
「ショウマ、疲れた?」
「大丈夫。早くアルスの妹さんの呪いを解いてあげないといけないから急ごう。」
「気遣いに感謝する。」
そして、僕たちは先を急ぐ。
その夜、僕たちは焚火を囲んだ。
「今のケルタイネン王国はどんな状況なのか一度整理するぞ。」
そう言ってアルスは説明する。
ケルタイネン王国は獣人の国だ。14年前、北の大国「ポライネン帝国」との戦で王が戦死したことで今は第一王女であるミーシャ・ケルタイネンが国を治めているとのことだ。
「当時、14歳のミーシャ王女はその類稀なカリスマ性で国をまとめ上げた。そのおかげでケルタイネンは帝国の属国になることなく今日まで大国としての地位を確立してきた。」
「そうなのか・・・。」
「ポライネン帝国は14年前から各国に侵略行為を繰り返している。西のエルフの国「ビヘレア王国」にも侵略している。南の国は反対側ということと中央のヴァルコイネン王国があることで侵略を受けていない。」
「帝国としては侵略するのにヴァルコイネン王国が邪魔だということなんだね。」
「ああ・・・。ヴァルコイネン王国を帝国に吸収されれば他の国も危機に陥る。そのため、14年前に帝国を除く四国で四国同盟が結ばれたのだがそれもほころびが出てきた。」
「どういうこと?」
「14年前の戦で各国が痛手を受けた。ケルタイネンは王を失い、ビヘレアは多くの将兵を失った。南の国は魔族の侵略を恐れて同盟を援助することが出来ない。みんな自分のことで精一杯なんだ。」
そして、アルスは言い難そうに言葉を紡ぐ。
「そこで各国は密かにヴァルコイネン王国を併合しようと考えている。」
「どうして?」
「まあ、理由としては帝国から自分の国を守るためだな。侵略を受けた際、ヴァルコイネンを盾にして少しでも時間を稼ぐつもりみたいだ。」
「そんな・・・。」
「まあ、併合とは聞こえはいいが簡単に言えば植民地化をして兵や労働力を搾取しようとも考えている。特に、ケルタイネンの獣人やビヘレアのエルフたちは人間を恨んでいるところがあるからな・・・。」
「それってアルスが奴隷にされたことにも関係があるの?」
「ああ・・・。帝国は獣人やエルフなどの亜人を同じ人間だと思っていない。南の国や中央のヴァルコイネンは差別はないがな・・・。」
「それって理由があるの?」
「帝国は「ブリスト教」を信仰しているからな。」
「ブリスト教?」
聞きなれない言葉に首をひねる。
「ブリスト教は人間至上主義の宗教だ。その教えの中には獣人などの亜人は人間になれなかった出来損ないたちでそれを排除して完璧な世界を目指すというものだ。」
「・・・。」
「まあ、そんな理由で俺たち獣人は人間のことをよく思っていない。」
「アルスもそうなのか?」
僕は素朴な疑問を問う。アルスは首を振る。
「俺は気にしていない。人間の中にもいい奴はいるし、獣人の中にも悪い奴はいる。だから、そんなことを論じてもしょうがないと思う。」
「そっか・・・。」
その言葉で僕は少し安心する。
「さて、そろそろ寝るといい。見張りは俺とシルビアが引き受ける。」
「ああ。いつも悪いね。」
「俺が頼んだことだ。気にすることはない。」
そう言ってアルスは笑う。
旅に出てから数日。アルスはいつも見張りをしてくれている。その横でシルビアが見張りをしているという形だ。
獣人は数日寝なくても大丈夫とのことだったが少し心配だ。
そう思いながらも僕は疲れから眠りに落ちるのだった。
王国を出てから数日が過ぎた。
僕達の旅路は特にトラブルもなく進んでいた。
「でも、魔物とかが襲ってこないね・・・。ゲームとかだとよくエンカウントするんだけど・・・。」
「げーむというのは分からないが魔物が襲ってこないのは私がいるからだと思うわ。」
「どういうこと?」
シルビアに聞いたところ胸を張りながら答える。
「私はシルバーウルフ。そこら辺の魔物とは格が違うのよ。魔物というのは本能で生きているから格上の相手を見ても襲ってくることはないわ。」
「そうなんだね・・・。」
まあ、確かに人間に変身できるほどの魔物となると上位の個体なんだろうなということが分かる。
「それよりも、獣人。あんたの国まであとどれくらいなのかしら?」
「そうだな・・・。あと、二日という所だな?」
アルスは前を見ながら答える。アルスとシルビアの関係はお世辞にも良いとは言えない。
まあ、シルビアがアルスを警戒しているだけなのでそんなに気にすることはないかなと思う。
気にしたところでどうすることも出来ないし・・・。
「ショウマ、疲れた?」
「大丈夫。早くアルスの妹さんの呪いを解いてあげないといけないから急ごう。」
「気遣いに感謝する。」
そして、僕たちは先を急ぐ。
その夜、僕たちは焚火を囲んだ。
「今のケルタイネン王国はどんな状況なのか一度整理するぞ。」
そう言ってアルスは説明する。
ケルタイネン王国は獣人の国だ。14年前、北の大国「ポライネン帝国」との戦で王が戦死したことで今は第一王女であるミーシャ・ケルタイネンが国を治めているとのことだ。
「当時、14歳のミーシャ王女はその類稀なカリスマ性で国をまとめ上げた。そのおかげでケルタイネンは帝国の属国になることなく今日まで大国としての地位を確立してきた。」
「そうなのか・・・。」
「ポライネン帝国は14年前から各国に侵略行為を繰り返している。西のエルフの国「ビヘレア王国」にも侵略している。南の国は反対側ということと中央のヴァルコイネン王国があることで侵略を受けていない。」
「帝国としては侵略するのにヴァルコイネン王国が邪魔だということなんだね。」
「ああ・・・。ヴァルコイネン王国を帝国に吸収されれば他の国も危機に陥る。そのため、14年前に帝国を除く四国で四国同盟が結ばれたのだがそれもほころびが出てきた。」
「どういうこと?」
「14年前の戦で各国が痛手を受けた。ケルタイネンは王を失い、ビヘレアは多くの将兵を失った。南の国は魔族の侵略を恐れて同盟を援助することが出来ない。みんな自分のことで精一杯なんだ。」
そして、アルスは言い難そうに言葉を紡ぐ。
「そこで各国は密かにヴァルコイネン王国を併合しようと考えている。」
「どうして?」
「まあ、理由としては帝国から自分の国を守るためだな。侵略を受けた際、ヴァルコイネンを盾にして少しでも時間を稼ぐつもりみたいだ。」
「そんな・・・。」
「まあ、併合とは聞こえはいいが簡単に言えば植民地化をして兵や労働力を搾取しようとも考えている。特に、ケルタイネンの獣人やビヘレアのエルフたちは人間を恨んでいるところがあるからな・・・。」
「それってアルスが奴隷にされたことにも関係があるの?」
「ああ・・・。帝国は獣人やエルフなどの亜人を同じ人間だと思っていない。南の国や中央のヴァルコイネンは差別はないがな・・・。」
「それって理由があるの?」
「帝国は「ブリスト教」を信仰しているからな。」
「ブリスト教?」
聞きなれない言葉に首をひねる。
「ブリスト教は人間至上主義の宗教だ。その教えの中には獣人などの亜人は人間になれなかった出来損ないたちでそれを排除して完璧な世界を目指すというものだ。」
「・・・。」
「まあ、そんな理由で俺たち獣人は人間のことをよく思っていない。」
「アルスもそうなのか?」
僕は素朴な疑問を問う。アルスは首を振る。
「俺は気にしていない。人間の中にもいい奴はいるし、獣人の中にも悪い奴はいる。だから、そんなことを論じてもしょうがないと思う。」
「そっか・・・。」
その言葉で僕は少し安心する。
「さて、そろそろ寝るといい。見張りは俺とシルビアが引き受ける。」
「ああ。いつも悪いね。」
「俺が頼んだことだ。気にすることはない。」
そう言ってアルスは笑う。
旅に出てから数日。アルスはいつも見張りをしてくれている。その横でシルビアが見張りをしているという形だ。
獣人は数日寝なくても大丈夫とのことだったが少し心配だ。
そう思いながらも僕は疲れから眠りに落ちるのだった。
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