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9話 獣人の少年
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翌日。
昨日に比べると大分身体と気分が良くなった。
まあ、相変わらず軟禁状態だが・・・。
とりあえず、運ばれてきた朝食を食べて考える。
今日は美玖ではなくお城のメイドさんが運んできてくれた。
食べながらこれからのことを考える。
まずは、自分の魔法。破魔魔法について・・・。
この前、初めて使ってみたが物凄い魔力を消費することが分かった。
そして、その魔力量に対して僕の魔力は少ない。
現段階では一回使うだけで魔力切れに陥り1~2時間倒れてしまい、しばらく動けなくなる。
「こう考えると本当に使い勝手が悪い力だよね・・・。」
僕はため息を吐く。
「こんな力なんかよりももう少し使い勝手の良いモノなら良かったのに・・・そうすれば兄さんたちの力になれたかもしれないのに・・・。」
「お前か・・・破魔魔法の使い手は・・・。」
僕は声のする方を見る。窓が開いておりそこには僕が助けた少年がいた。
「君は・・・。」
「破魔魔法の使い手だな?」
そう言って少年は近づいて来る。その頭には獣の耳が付いていた。
(獣の耳?こんなのついていたか?)
「おい。俺の話を聞いているか?」
「ああ・・・。ゴメン、少しボーとしていた。」
そう言って少年の方を見る。
「残念ながら僕は魔法が使えない無能です。僕は勇者である兄たちのお陰でこの城に住んでいるだけなので・・・。」
「・・・。」
少年は僕を観察する。そして、首を振る。
「ウソだな・・・お前からは魔力を感じる。しかも他の魔法とは異質な魔法をな・・・。」
「・・・。」
「何故嘘を吐く?」
「別に嘘をついたわけではないさ。」
僕は少年の目を見て嘘が付けないと感じたため腹をくくることにした。
「確かに君の言う通り破魔魔法を使うことが出来る。でも、一回使うだけで魔力切れを起こすようでは使い手とは言えないだろう?」
「つまり、お前は破魔魔法を使えるのだな?」
「ああ・・・。」
僕は肯定する。
「使い手とはいえないけど他の国にこのことが知られればこの国に迷惑が掛かる。だから、僕は無能を演じることにしました。まあ、今回のことで本当に無能だということがわかりましたけどね・・・。」
僕は自嘲気味に答えた。
「お前は無能ではないさ。」
少年は僕をまっすぐに見る。
「お前は他の人間とは違ってあの奴隷商人から俺を救ってくれた。他の人間たちは俺を遠巻きに見ている中お前だけは見ず知らずの俺を助けてくれた。」
そして、少年は僕に頭を下げる。
「本当にありがとう。お前の勇気に俺は救われた。」
「頭を上げてくれ。僕は僕がやりたいようにしただけだ。」
そう言って少年の肩に手を置く。
「僕は君が元気になってくれただけで嬉しいんだ。だからお礼は不要だよ。」
「・・・お前になら任せることが出来るかもしれない。」
そう言って少年は顔を上げる。
「お前に頼みがある。」
少年は真剣な目で僕を見る。その目を見る限り彼が語ろうとしている内容が深刻なものだというものを感じた。
「俺には妹が居るのだがある呪いにかかってしまい、どの魔導師に診せてもどうすることも出来なかった。」
少年はその時のことを思い出して拳を握る。
「そんな時、帝国でその呪いに効く薬があるとのことで俺は単身で帝国に潜入したのだがあの奴隷商の罠にかかって奴隷となってしまったのだ・・・。」
「そうなのか・・・。」
「俺のことはいい。お前の魔法は全ての魔法の無効化。つまり、妹の呪いも無効化することが出来るということ・・・だから・・・!」
そう言って少年は再度頭を下げる。
「お願いだ!俺と一緒に「ケルタイネン王国」に来てくれ!」
「ケルタイネン王国・・・。」
僕は記憶を手繰り寄せる。確か東に存在するという獣人の国だと聞いたことがある。
「君はその国から来たのか?」
「ああ。」
僕は考える。僕としては助けを求められたとあっては行きたい気持ちはある。
でも、この少年の言っていることも真実だとはいえない。
「一刻を争うんだ!もう、妹には時間がない!」
少年は僕に縋りつく。
「頼む!何かあれば俺がお前を守る!この命に代えてもこの国に返すことは約束しよう!だから、一緒に来てくれ!」
そう言って少年は頭を下げる。そんな少年の姿を見て僕は自分が恥ずかしくなる。
確かに善行を行ったところで裏切られることはあるかもしれない。それによりほかの人に迷惑になるかもしれない。
でも、僕がためらったことで救えたかもしれない命を見捨てることになったら僕は自分が許せない。
(ゴメン・・・みんな。)
僕はその場にいない兄妹達に心の中で謝る。僕が今からしようとしていることはとても愚かなことだからだ。
「わかった。僕が君の妹を助けてみせるよ。」
「・・・!?感謝する!!」
そして、僕は支度をする。幸い、この部屋にはいろいろと置いてある。
「そうだ、自己紹介がまだだったね。僕は真田正真。よろしく。」
そう言って僕は手を差し出す。
「俺のことはアルスと呼んでくれ!」
アルスは僕の手を握る。
そして、僕は置手紙を残してアルスと共に城を抜け出すのだった。
昨日に比べると大分身体と気分が良くなった。
まあ、相変わらず軟禁状態だが・・・。
とりあえず、運ばれてきた朝食を食べて考える。
今日は美玖ではなくお城のメイドさんが運んできてくれた。
食べながらこれからのことを考える。
まずは、自分の魔法。破魔魔法について・・・。
この前、初めて使ってみたが物凄い魔力を消費することが分かった。
そして、その魔力量に対して僕の魔力は少ない。
現段階では一回使うだけで魔力切れに陥り1~2時間倒れてしまい、しばらく動けなくなる。
「こう考えると本当に使い勝手が悪い力だよね・・・。」
僕はため息を吐く。
「こんな力なんかよりももう少し使い勝手の良いモノなら良かったのに・・・そうすれば兄さんたちの力になれたかもしれないのに・・・。」
「お前か・・・破魔魔法の使い手は・・・。」
僕は声のする方を見る。窓が開いておりそこには僕が助けた少年がいた。
「君は・・・。」
「破魔魔法の使い手だな?」
そう言って少年は近づいて来る。その頭には獣の耳が付いていた。
(獣の耳?こんなのついていたか?)
「おい。俺の話を聞いているか?」
「ああ・・・。ゴメン、少しボーとしていた。」
そう言って少年の方を見る。
「残念ながら僕は魔法が使えない無能です。僕は勇者である兄たちのお陰でこの城に住んでいるだけなので・・・。」
「・・・。」
少年は僕を観察する。そして、首を振る。
「ウソだな・・・お前からは魔力を感じる。しかも他の魔法とは異質な魔法をな・・・。」
「・・・。」
「何故嘘を吐く?」
「別に嘘をついたわけではないさ。」
僕は少年の目を見て嘘が付けないと感じたため腹をくくることにした。
「確かに君の言う通り破魔魔法を使うことが出来る。でも、一回使うだけで魔力切れを起こすようでは使い手とは言えないだろう?」
「つまり、お前は破魔魔法を使えるのだな?」
「ああ・・・。」
僕は肯定する。
「使い手とはいえないけど他の国にこのことが知られればこの国に迷惑が掛かる。だから、僕は無能を演じることにしました。まあ、今回のことで本当に無能だということがわかりましたけどね・・・。」
僕は自嘲気味に答えた。
「お前は無能ではないさ。」
少年は僕をまっすぐに見る。
「お前は他の人間とは違ってあの奴隷商人から俺を救ってくれた。他の人間たちは俺を遠巻きに見ている中お前だけは見ず知らずの俺を助けてくれた。」
そして、少年は僕に頭を下げる。
「本当にありがとう。お前の勇気に俺は救われた。」
「頭を上げてくれ。僕は僕がやりたいようにしただけだ。」
そう言って少年の肩に手を置く。
「僕は君が元気になってくれただけで嬉しいんだ。だからお礼は不要だよ。」
「・・・お前になら任せることが出来るかもしれない。」
そう言って少年は顔を上げる。
「お前に頼みがある。」
少年は真剣な目で僕を見る。その目を見る限り彼が語ろうとしている内容が深刻なものだというものを感じた。
「俺には妹が居るのだがある呪いにかかってしまい、どの魔導師に診せてもどうすることも出来なかった。」
少年はその時のことを思い出して拳を握る。
「そんな時、帝国でその呪いに効く薬があるとのことで俺は単身で帝国に潜入したのだがあの奴隷商の罠にかかって奴隷となってしまったのだ・・・。」
「そうなのか・・・。」
「俺のことはいい。お前の魔法は全ての魔法の無効化。つまり、妹の呪いも無効化することが出来るということ・・・だから・・・!」
そう言って少年は再度頭を下げる。
「お願いだ!俺と一緒に「ケルタイネン王国」に来てくれ!」
「ケルタイネン王国・・・。」
僕は記憶を手繰り寄せる。確か東に存在するという獣人の国だと聞いたことがある。
「君はその国から来たのか?」
「ああ。」
僕は考える。僕としては助けを求められたとあっては行きたい気持ちはある。
でも、この少年の言っていることも真実だとはいえない。
「一刻を争うんだ!もう、妹には時間がない!」
少年は僕に縋りつく。
「頼む!何かあれば俺がお前を守る!この命に代えてもこの国に返すことは約束しよう!だから、一緒に来てくれ!」
そう言って少年は頭を下げる。そんな少年の姿を見て僕は自分が恥ずかしくなる。
確かに善行を行ったところで裏切られることはあるかもしれない。それによりほかの人に迷惑になるかもしれない。
でも、僕がためらったことで救えたかもしれない命を見捨てることになったら僕は自分が許せない。
(ゴメン・・・みんな。)
僕はその場にいない兄妹達に心の中で謝る。僕が今からしようとしていることはとても愚かなことだからだ。
「わかった。僕が君の妹を助けてみせるよ。」
「・・・!?感謝する!!」
そして、僕は支度をする。幸い、この部屋にはいろいろと置いてある。
「そうだ、自己紹介がまだだったね。僕は真田正真。よろしく。」
そう言って僕は手を差し出す。
「俺のことはアルスと呼んでくれ!」
アルスは僕の手を握る。
そして、僕は置手紙を残してアルスと共に城を抜け出すのだった。
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